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サボタージュ失敗

突然だが、入学式というものに参加したことは誰しもがあると思う。あの長ったらしい、校長の話を聞き、生徒代表と守りもしない入学主席の人間のスピーチ。出る価値はあるのだろうか?


特に寝不足で、眠くて仕方がなく集中を欠いてまで出る必要性はあるのか?


俺はないと考える。故に俺は、具合が悪いですという適当な理由で入学式を欠席していた。そんな俺がどこにいるかと言えば、生徒会室である。何でこんなことになったのかと言えば、入学式前に、具合が悪いといい、抜け出してきて保健室に行こうとしたのが最大の失敗だった。あのまま、寮に帰っていればよかったのだ。


廊下を歩いていると、生徒会副会長を名乗る女に拘束されここまで連行されたのだ。


「さて、君新入生でしょ?名前は何だったかな~?」


白い髪に赤い目。雪の精霊とでもいえる容姿を持ったこの生徒。テーブルをはさんで対面に座っているこの少女は非常に楽しそうにしながら、ニコニコと俺を見てくる。


「や、山田太郎です」


「ダウトー」


思わず、偽名を使ってしまったが、一瞬で見破られてしまい、気まずい空気が流れる。


「まあ、いいよ~。ずっとこの部屋から出れないだけだから」


「・・・冬空 紫音です」


「それが本名?」


「はい」


「じゃあ、紫音君と呼ばせてね~」


いきなり呼び捨てかよ・・・これだからコミュニケーションお化けは。


「君はそれで何をしていたのかな~」


「具合が悪かったので保健室に行こうとしてたんです」


「元気そうに見えるけどな~」


「副会長の前なので、頑張っているんです」


「アハハハハ、口説き文句としてはれー点かな。もっと、羞恥心を出して上目使いにしないと女の子はそそられないよ~」


といきなり、副会長の性癖をぶちまけられた。


「副会長の性癖は知りません」


「え~、こんなに美少女なのに~?」


「そんな嗜虐心丸出しの女には怖くて近づけませんね」


「生意気だな~。これでも、結構モテるのにな~、男女問わず」


「そうですか、それで、帰っていいですか?」


「何でそんなに冷たいんだよ~。サボろうとしてたこと報告したくなってきちゃうぞ~」


「いえ、僕はさぼりじゃなくてただ具合が悪いだけの一般生徒なので」


あくまで俺をさぼり魔だと言いたいらしい。まあ、その通りなのだが認めることはしない。断じてしない。


「へ~、いいよ。じゃあ、帰っても。何なら保健室まで送って行こうか?」


「結構です」


「私はさ、魔眼持ちでね?人の考えていることが見えるんだ~」


少女の眼が妖しく光る・・・まるで見るものすべてを引きずり込むような妖しい眼。さっきの精霊という言葉は撤回する、精霊ではない。これでは雪の悪魔だ。


「・・・・・・・」


魔眼、ごく少数が持って生まれる特殊な魔法の籠った眼。それは生まれつき自分の意志に関係なく常時発動してしまう。そもそも魔法というのは主に三つに分けられる。基本属性魔法、系統外魔法、特殊属性魔法。基本属性は、火、水、土、雷、風のことだ。才能によって異なるが、多くの人間は鍛錬次第でこのうちのどれかが使える。特殊属性とは、音や血、氷や回復など基本属性以外の属性魔法を特殊属性と呼ぶ。系統外魔法は、大まかにいえば、そのどちらでもない魔法だ。ほとんどの人間には使えない極めて特殊で貴重な魔法のことを言う。もし本当にこの少女が言うように人の心が読めるならそれは系統外魔法に属するだろう。


「今まで俺を試してたんですか?自白するか?・・・いやそれにしては、変ですよね?」


心が読めるなら、俺の名前なんて聞く必要はなかった。でも、俺が偽名を言った時自信をもって違うといった。俺がサボったことも確信を持っていた。つまり・・・


「副会長の魔眼って、嘘が分かるんじゃないんですか?」


「・・・・・・・・」


少し面食らったように、大きく瞳を開いた副会長。


「正~解~」


心底つまらなそうに、俺の推測の正解を告げた。


「何で分かったのかな~」


「心が読めるなら、俺の名前なんて聞く必要はなかった。でも、俺が偽名を言った時自信をもって違うといった。俺がサボったことも確信を持っていた。嘘が分かるなら、この理由を説明できますよね?先輩?」


俺は勝ち誇った笑みを浮かべる。気に食わなかった、先輩に一杯食わせた気分は最高だ。生意気な後輩にしてやられたのだから悔しくないはずがない。しかも寄りにもよって、嘘を見抜かれたのだ。


「生意気な後輩にしてやられた気分はどうですか?嘘を見る魔眼を持ちながら、嘘を見破られてしまった気分は?」


顔を真っ赤にした副会長を見て、つい調子に乗り、あおる、あおる、あおる。ここぞとばかりに煽った。どうやら、最近ストレスがたまっていたらしい、ここまで煽るつもりはなかったんだが・・・まあ、いいか。向こうが悪いのだ。


「フフフフフフ、君って意外と抜けてるよね~」


さっきまで、顔を赤くして震えていた先輩の顔が出会った時と同じ白い雪のような顔色に戻っている。


そして心底愉快そうに、口角を上げ俺を見下ろした。


「?」


「だって、君今自分でサボりを認めたようなものだよ~」


「・・・・・・・あ」


「アハハハハ八、間抜けだね~」


「どうどう、負かしたと思った先輩に実は負けてたって気分は?」


嗜虐心全開で笑う先輩。悔しがる、俺。さっきと立場がひっくり返ってしまっている。


「まあ、いいや。十分笑ったし、報告はしないでおいてあげるよ~。帰っていいよ~。」


・・・殴ってやりたい。殴りたい衝動を抑えて、俺は扉に向かうため立ち上がった。すると、先輩が思い出したように名乗りを上げる。


「あ、その前に覚えておいてね~。私は2年Aクラス。新条 智里。よろしくね~」


「ええ、二度と会うこともないでしょうが」


そう言い捨てて、俺はドアを閉めた。

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