二人との出会い
恋愛小説(というかラブコメ?)を書くのが初めてで極めて執筆スピードが遅いです……。
駄文ですが読んでいただけると嬉しいです
そもそも、【主人公】であるこの二人と【クラスメイトB】である僕がどうして知り合ったのか。
今から約1年前、僕たちが高校生の夏の事。僕は趣味であるクレーンゲームをするために、学校の後に駅前のゲームセンターに寄り道した。僕は電車通学のため、いつも駅前のゲームセンターに寄っている。いつもなら家近くの駅前で遊ぶのだが、その日は欲しい景品があったので学校近くの駅前にあるゲーセンで遊ぶことにした。そこで遊んでいたのが健だった。
というか彼は一人で太鼓を叩くリズムゲームの匿体の前に居たのだが、曲を選べずにおろおろして居た。バチを持ったまま画面を眺めている。
(あ、初プレイかぁ)
と温かい目で見ていると、健がこちらを見て言った。
「君、クラスメイトだよね?ちょっとこのゲームのやり方教えてくれない?」
流石モテモテ系主人公、接点のない僕の名前は覚えていなかったが、クラスメイトだということは認識してくれていた。ちょっと嬉しい。
「良いよ、バチで太鼓の端を叩いてみて」
健は言われたとおりに太鼓のふちを叩いた。すると画面がスクロールして曲のカテゴリーがアニソンからJPOPに変わった。
「出来た!ありがとう!」
彼がゲームを始めたのを見届けて、僕は目的のクレーンゲームへと向かった。
結果は大勝利だった。2000円を使って、欲しかった景品は全て取ることが出来た僕はホクホク顔で店を後にする。すると後ろから
「ちょっと待って!」
と女の子の声が聞こえてきた。それと同時に
「おーい!」
と健の声が聞こえてきた。
振り返ると健と見覚えのない女の子。同じ高校の制服、そして青色のリボン(学年ごとに色分けされており、1年は青、2年は赤、3年は緑。ちなみに男はネクタイの色が違う)ことから同級生らしい。でも分からない、誰だろう……。そう思っていると少女と健は顔を見合わせる。
「なんだメスゴリ……。お前、彼と知り合いなのか?」
「もやしこそ、彼に何の用?」
僕の目の前で二人は互いをにらみ合いながら罵声を浴びせていた。え、何なの?ものすごく怖いんだけど……。
「ふ、二人とも僕に何か用……?」
僕はかなりビビりながら二人に聞くと、二人は口をそろえて言った
「「俺(私)にゲーセンの遊び方を教えて!!」」
モブと主人公とヒロインが出会ったのは、夏の盛り7月半ばの夕方のゲーセンだった。
場所を近くのファミレスに移して二人に話を聞く。健の方はともかく、女の子の方は全く面識がない。
「ごめん、僕君のこと知らないんだけど……」
ちょっと怖がりながら女の子に話しかける。すると彼女は先ほどとうってかわって朗らかに話し始めた。
「自己紹介遅れてごめんね!私は五十嵐杏奈。君の隣のクラスだよ」
「え、でも体育でも見かけたことない気がする」
僕の通う学校では1学年8クラスで体育は2クラス合同で行う。隣のクラスということは体育で見かけたことがあるはずだ。
「ああ、逆の隣だね。君は5組でしょ?私は4組だから」
言われてみれば、隣のクラスと言っても逆の隣なら全く面識が無くてもおかしくない。
「でも、ゲーセンでの遊び方を教えて欲しいなんてどういうこと?」
一番の疑問だ。そもそもゲーセンでの遊び方なんて個人の自由だし、教えることなど何もない。
「実は私、アイドルとして芸能活動もしてるんだけどね、次の仕事がゲーセン巡りの旅っていうテレビ番組なんだ」
僕は思わず飲んでいたコーラを床に吹き出してしまった。今、さらっとすごい事言わなかった!?しかもなんだその番組。やる気あるのか。
「ゲホッゲホッ……、アイドルとかそう言うの言って良いの?」
僕はむせながら彼女に聞く。すると彼女はあっけらかんと告げた。
「協力してもらうんだから、隠し事は無い方が良いでしょ?」
たしかに事情を知っていた方が、僕としても助かる。でも待てよ?
「そういう番組って大体その道に詳しい人が案内するんじゃないの?」
「実はその人が入院しちゃって、代わりの人が見つからないんだって。そしたらプロデューサーが『最近のJKならゲーセンくらい行くでしょ!大丈夫!』って……。私、ゲーセンなんて行ったことも無いのに……」
ああ、なるほど。たしかに最近の若者はゲーセンに行くイメージあるよね。プリクラとかもあるし。でも行かない人はめったに行かないんだよね。
「なるほどね……。僕で良ければ、教えられることは教えるよ」
別に断る理由もないし、困ってる人をそのままにしておくのもなんか嫌だし。
「本当に!?ありがとう!」
テーブルから乗り出して僕の手を両手で包み込んで感謝してくる彼女。その笑顔にドキッとしてしまう。いや、僕みたいに女性耐性無い人は触れられただけで心臓バクバクだよ?それが美少女なら猶更。
「それで、五十嵐さんの方は分かったけど、小日向君は何で?」
僕の隣で不機嫌そうにメロンソーダを飲んでいた小日向君に声を掛ける。彼は少し言い辛そうにしながらもこう言った。
「俺に妹が居て、ゲームがとても好きなんだ。だから今度ゲーセンに連れて行こうと思って下見に行ったんだけど、初めてだから勝手が分からなくて」
少し恥ずかしそうに笑いながら言う健。そうか、似合わない場所に居るとは思ったけど、妹さんのためだったのか。
「分かったよ。じゃあ、明日は土曜日だし3人で今日行ったゲーセンに行ってみようか」
僕がそう言った瞬間、空気が凍った。
「悪いけど、このもやしと一緒は耐えられない」
「俺も、メスゴリと遊ぶなんてごめんだぜ」
二人の憎悪のオーラが見える。ひええ……。
「わ、分かった。じゃあ、明日は五十嵐さん。明後日は小日向君にしようか」
僕は震えながらもなんとか妥協案を提示する。二人ともスケジュールに問題はないようで、連絡先を交換し、その日は解散になった。
(しかし、これは大変なことになったのではないか?)
なんせモブである僕が主人公とヒロインとゲーセンに行くという、絶対に起こりえないイベントだ。
(明日と明後日、それに週明け、不安だなぁ……)
モブである僕は、あまりにも身の丈に合わない状況に不安を隠しきれずにいた。そんな僕の心情とは逆に夏の空には星が煌々と輝いていた。