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Symbiotic girl 共生少女  作者: 月見里歩
1章
13/22

ハローエレノア(その3)走馬灯

 前回の流れ。

・地下研究室での、エレノア対モンスター。

・エレノアは、なぜか美咲を助けようとする。

・美咲、エレノアの行動に負い目を感じて、囮になろうとする。

・美咲を守らなければ、エレノアは生き残れる可能性がある為。

・エレノアは美咲が囮になる事を許さず、守る事を選ぶ。

・美咲とエレノア、現状維持だとモンスターに負ける事が、ほぼ確定。

・二人は言葉が通じないが自己紹介をしあう。

・エレノアが美咲に噛みつき、毒を注入。

・美咲、モンスターに殺されるよりは良いと受け入れる。


※一部表現、内容、誤字、スペースを編集しました。

 苦しくない。




 痛くない。




 不快さも無い。




 寒さも感じない。




 ただ、走馬灯……みたいなものが見えた。


「学校、クラスのみんな、葵ちゃん、お母さんとお父さん、お兄ちゃん……って、なんでお兄ちゃんがトリなんだろ」


 ぼんやりと、そんな事を思った。


「私、ブラコンなのかな? どっちかと言えば、お兄ちゃんの方がシスコンだったと思うけど」


 そんな事を思っていると、走馬灯なのに長居する兄が、何か言った。


「美咲が×××××××××××」


 夢でも言っていたなと思った。


「もう一回、ゆっくり言って、そしたら思いだせそう」


「美咲が、強く願えば」


「うん」


「絶対、叶うよ」


「なんだぁ、いつもの気休めだなぁ」


 美咲は、思い出してしまえば、こんなものかと思った。


「大丈夫だから、いつもみたいに、声に出して」


 兄は続けた。

 声に出してと、美咲に兄はいつもそう言っていた。

 言わなくてもいつも美咲を心配してくれたが、言えば何でも相談に乗ってくれた。


「うん、ありがと」


「どうしようもなくなったら、助けを呼ぶんだぞ」


「うん」


 お兄ちゃんは、本当に心配性だなと思った。


「絶対、駆け付けるからな」


「うん」


 でも、それはちょっと無理かもしれないと思った。


「最後に来てくれてありがと」


「最後じゃないさ」


 兄は走馬燈の中で、美咲に優しく笑いかけた。





「……生き、てる?」


 美咲が目を覚ますと、エレノアに首を噛まれてから、僅か数秒しか経っていなかった。

 首の傷からは、そんなに血が出ていない。

 既に出血自体が止まり始めていた。

 エレノアは美咲の首から牙を抜いてからも、変わらず美咲を抱え、守りながら、必死に猫猿達と戦い続けていた。


『××××!ミサキ、××××』


 戦いながらエレノアは、美咲に呼びかけた。

 すぐに視界では翻訳失敗と表示される。

 何を言っているのかも、言葉の意図も、美咲には通じなかった。

 だが、それで問題無かった。

 ただ美咲の生存を確かめられれば、エレノアは、それでよかった。


 美咲は、ただただ目の前の光景に目を見開いていた。

 体感時間が遅くなるのを感じ、音が遠のいていく。

 そして、美咲を除く全てが、スローモーションに見え始めた。


 さらに、白っぽい靄が部屋を満たし始めた。

 それは煙では無い。


 美咲の目には、お馴染みの絶望的な状況に重なって、部屋中に幽霊の様なビジョンが見えていた。


 美咲の意識が落ちていた僅かな間に、エレノアは追加で前脚に矢を何本も受けているし、槍にも何度も刺されて傷だらけで、疲労からか動きも精彩を欠き始めていた。

 さっきまで対処出来ていた事に、エレノアの処理が追い付かなくなってきて見えた。


 美咲の目には、輪をかけて絶望的な状況が、スローになった事によって客観的に見えていた。

 その光景に重なって、部屋中に幽霊の様な“何か”が見えるのだ。


 世界がスローに感じる体感時間の変化と、視界に広がる異常な光景。

 原因は、どう考えても一つしか考えられなかった。

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