姫殿下と王宮騎士2
あ、今更のご挨拶です。
ノリで適当に書いてます。
適当に読んでくれたら嬉しいです。
魔法と魔術には明確な線引きがある。
魔法は体内に精製された魔力を用いて使用されるもので、魔術は外界の力を借りて行使される。
姫殿下はその魔力量が異常に多く、魔法大国と言われているこの国、ルートビリアでも、常人の何倍なのかすらも測れていない状況だ。
「普通にキラキラしてる時は綺麗なんだがなぁ。光り過ぎると困るな」
と、金ピカのレイヴィスが言う。
「そうだね、光りすぎると困るね」
遠回しに嫌味を言ってみると、しかしレイヴィスは豪快に笑った。
「俺の鎧が反射しちまって、眩しい眩しい!」
だったら脱げば良いのに、と苦笑する僕。気にせずに大笑いするレイヴィス。レイヴィスの後ろで、動き回る髪の毛達と一緒に品定めをする姫殿下。
あの髪が動いたり瞳と共に輝いたりしているのは勿論、青い色素も、姫殿下が持つ魔力によるものだ。
体内で精製されるだけでは処理しきれず、身体が勝手に魔力を放出してしまう。だから光るし、勝手に動く。天然の大魔法使いだ。
「いつも以上にきつめに封印しちまっても良いんじゃねぇか?」
とレイヴィスほ言うが、僕は首を横に振る。
「封印を今より強めたら、解放した時のギャップで破裂する可能性もあるよ」
「…………そいつは……」
顔を引き攣らせるレイヴィス。それもそうだ。ここ、ルートビリア王国は魔法大国であり、平和の国だ。血なまぐさいものやグロには耐性が弱いし、そもそもこの男、レイヴィスは、予知夢とはいえ姫殿下の死を知った時、大泣きしていた。それが当然だと思える程度には、こいつは姫殿下を溺愛している。
「ケイネスよ! これはなんじゃ!」
「それは、複数の光の術式を組み込んで作った記録装置です。少しの時間ですが、映像を残すことが出来ます」
試作品だけど。
「まーた奇っ怪なもんを作ったなぁ」
「近々、帝国あたりが商品化するんじゃないかな」
奇っ怪というほど奇っ怪では無い。お隣さんのスクデリア帝国では似たようなものの研究が進められていて、僕はそれを劣化版で真似しただけだ。
「ならばこれはなんじゃ!」
「水筒ですよ。水の術式で空気中の水分をかき集めて、飲める水にして噴出します」
「ほむ!」「そいつは良いな」
レイヴィスも姫殿下も好反応。
しかし
「でも、勢いを調整出来ないからすごい勢いで出ます」
「わきゃーっ!!」
遅かったようだ。姫殿下は魔具から出てきた水鉄砲を顔面に浴びて、瞬く間にびしょ濡れになった。
「今はもっぱら、悪戯用ですよ」
水かけ合戦用のオモチャだ。
「調整くらいなら、ケインならすぐ出来るだろ」
とレイヴィスは言うが、そう簡単にはいかない。
「水をかき集める量とかはある程度なら調整出来るんだけど、そもそも空気中にある水分がどれくらいなのか、によって変わっちゃうんだよね」
「なーるほど」
発明は簡単では無い、ということだ。
魔法は、無いものを生み出す事が出来る。魔力を変換させれば良いからだ。しかし魔術ではそうもいかない。外界から借りるため、その外界(術式が届く範囲)に出現させたいものが無ければならないのが原則だ。
ならば魔法のほうが優れている、と思われがちだが、そうでは無い。
1の魔力からは1しか生み出せないのが魔法。1の魔力で、術式によって倍増可能なのが魔術だ。
「ならこれはなんじゃ!?」
「ただの灯火ですよ」
生活必需品だって置いている。
世界の生活を支えているのは、魔法では無く魔術だ。魔力量が少ない人にも使えるようにと工夫して作られた様々な魔具達。一定の魔力を注げば、夜中でも光を灯せるし、術式として組み込んだ音楽を流すことも出来る始末だ。
「お前の店に来ると、魔具ってほんとにすげぇなぁと思うぜ」
「魔具はほんとにすごいよ。魔術を生み出した人は偉大だ。でも、魔具はもっと進化するよ。新しい魔具が、今もそこかしこで作られてる」
戦うための魔術。生活のための魔術。ただの遊びとしての魔術。本当に色々作られていて、未来は希望に満ちている。
気球や魔法に頼らずとも、人が空を飛ぶ日は近い。
「おう、ケイン、お前の目も輝いてるぞ」
と、レイヴィスが笑った。
「そりゃ勿論」
先日救ったばかりの命である姫殿下を見つめながら、僕は、世界の生活に思いを寄せる。
「この世界の未来は、すごく明るいから」