第二話(仮)
ジリジリジリジリ
「ん・・・んん・・・」
ジリジリジ・・・
「もうちょっと寝たい・・・」
なんて甘えさせてほしいといつも思う。
仕事の後なのだからもう少し優しく起こしてくれてもいいじゃないか。
カチッ
僕はヘッドギアを外しながらいつものように愚痴を唱えた。
「おはよう、現実世界」
目覚まし時計によって引き戻された世界はいつものように暑かった。
7月下旬の暑さは体に堪える。
僕は渋々ベッドから起き上がり、冷蔵庫から冷えたコーヒーを取り出した。
「ぐ・・・ぐ・・・ぐ・・・ぷはっ!やっぱり朝はコーヒーだね」
独り言が寂しく部屋を舞う。
「さてとー、準備準備」
そう言って僕はクローゼットを開け、スーツに手を伸ばした。
「今日は黒か、それともグレー、いや青か」
手が止まる。
僕は毎日この選択に悩む。
いわゆる優柔不断なのだ。
ティントロン・・・ティントロン・・・
ん、朝から電話?
ピッ
「はい、もしもし」
誰だろうか。
「グッドモーニング!ブラック!ちゃんと起きてるかなあ?」
声の主はブロンドだった。
「起きてる起きてる。朝から何の用?」
「なんか扱い雑じゃなあい?もっとかまってー」
はああああああ。
朝から鬱陶しい。
ハイテンションすぎて胃もたれを起こしそうだ。
「かまうも何も、出勤前だぞ?電話してる余裕なんてないよ」
「私はもう準備できてるもーん!それに今はブラックが泊まってるホテルの前だし」
「え・・・」
「今日の占いのラッキーカラーが黒だったから、せっかくだしブラックと一緒に行こうと思って!」
「なんなのそれ、ほんと嫌なんだけど」
「えー、そんなこと言わないで!さ、早く行きましょ!」
男性なら一度は憧れたシチュエーションだと思う。
理由はどうあれ、女性が迎えにきてくれて一緒に出勤ないし登校するというシチュエーションは。
しかし、勘違いしないで欲しい。
「なんで占いなんか・・・」
「だって私、乙女だし」
「乙女言うな!男だろ!」
そう、ブロンドは男だ。
男なのだ!