ぽっちゃり夢子のフツーの日常。
息抜きに書いた話の為、主人公がかなり個性的なタイプです。序盤を読んで合わないな…と、思われましたら、ブラウザから戻る事をオススメ致しますm(_ _;)m
ふっくらとした丸みのある顔に、丸い眼鏡を掛け、少し硬めの長い黒髪は、左右で三つ編みにしており、小さな身長、大きな体重。
それが、私。杉崎夢子、高校1年。15歳である。
私は教室片隅系、オタクと呼ばれるような種族だ。そして、オタクと言うのは見た目からだけではなく中身でも間違いではない。
おまけに最近では腐り掛けてきてもいる。ヤバイ気がする。
友達も同じ様な系統が多い中、二人のモテる幼馴染みの男子達のせいにより、リア充の女共(女の子、なんて可愛い表現をヤツらに当て嵌めてしまっては、女の子に大変失礼だ)に時折、陰口を叩かれたり、時には呼び出されたりもするのだ。
私は、ほっそりではない分、ひっそりと暮らしたいと言うのに…!
「ちょっと〜、猛クンが、アンタみたいなデブにも優しいからってぇ、調子に乗らないでくれる〜?」
「そうよ!杏里だって、アンタみたいなデブ、幼馴染みでもなければ視界にだって入れたくない筈なんだからね!」
はい、こちら呼び出し会場の定番、放課後の体育館裏です。高校入学したばかりだと言うのに、既に3回目のお呼び出し。面倒だからまとめて来いよ…嘘です、すみません。
これが格好良い男の子からの告白のお呼び出しならば、喜んで来るというものだけど、残念ながら、それは有り得ないんだなー。むしろ私を告白で呼び出そうとする美形男子が居たら、その人は相当マニアックな好みをしていると言えるだろう。何せ私の容姿は前述した通りなのだから。
「黙ってないで何とか言いなさいよ、このデブ!」
……はい、3回目の発言頂きましたー!
「……、ない……」
「は?何、デブ、ビビッて泣いちゃう感じ〜?」
4回目…。うん?なんの発言かって?
「ヤダー、アタシ達がイジメてるみたいじゃ〜ん!」
「これに懲りたなら、デブは猛クンと杏里クンに近寄らないで…「私 は ! デ ブ じ ゃ な い !! ぽ っ ち ゃ り 系 だ !!!」…よ、ね?」
台詞が被ったが、もう我慢の限界だ。
仏の顔も三度まで、と聞いた事がある。だから、3回目までは、我慢した…してやったが、合計3人、合わせて5回も言いやがった、このリア充女共は!
そう、私のNGワードは“デブ”だ。確かに?ちょーっとだけ?太めかもしれないけど?デブデブ言われるのは傷つく。そして例え本当の事でも…ムカツク。と、言う訳で。
「訂正しろ。デブじゃない。ぽっちゃり系だ」
某忍者漫画の某キャラではないが、今まで大人しく話を聞き(流して)黙って(早く帰りたいなーとか思って)いた、教室片隅系オタクが叫んだ事に驚き、リア充共は目を見開いていた。目潰し食らわせてもいいかな?いいかな?
「訂正しろ。デブじゃない。ぽっちゃり系だ」
大切な事なので二度言いました。
仁王立ちでズイッと、奴らの化粧臭い顔を順に見回し、フンッ!!と鼻息荒く『聞こえなかったのか!!』と言うと…
「ヤダ、何コイツ、キモ。怖いんですけど…」
「もう、いいよ!早く行こう!」
「こんなおかしなヤツ、あの二人がマトモに相手するワケないよね!」
とか言い出し、後退りしながら逃げて行ってしまった。
チッ、アイツ達…“デブ”の言い逃げじゃないか!今度会ったら“ぽっちゃり”と呼ぶように訂正してやる!
「ゆめちゃ〜ん、良かったぁ、居た〜!」
さて、帰るか。
そう思って、体育館裏から校舎へと繋がる渡り廊下を歩いていると、なよっちい喋り方をしているが…見た目は、黒髪で短く清潔感のある髪型と、明るめな黒色の瞳、赤フレームの眼鏡が似合っている、一見、優等生タイプのイケメンな幼馴染み、その一。猛と…
「だから、言ったじゃーん?ユメちゃんならダイジョーブだって〜」
こちらはチャラい喋り方で、地毛の茶髪に、ゆるふわパーマを当てたような髪型(実は驚く事に本物の天パなのだ!)、アーモンド形の明るい茶色の瞳、ピアスホールこそ無いが、指輪やらブレスレットやらをジャラジャラ身に着けたチャラいイケメン。もう中身も外見も見たまんまのチャラ男の幼馴染み、そのニ。杏里だ。
「ゆめちゃんが僕らのせいで呼び出されたって聞いて、僕、心配で心配で〜、杏里くんと探してたんだよ〜!何かイヤなことされなかった?言われなかった?大丈夫?ごめんね、ごめんね…」
軽く握った拳を胸の前に置きオロオロと心配して、泣きそうな顔で謝ってくる乙女チックな猛を見て…
私は『なんで、こんななよなよした男が良いのだろう?見た目か?所詮見た目なのか!』と思っていた。
猛は悪い奴ではない。むしろ昔から心が優しい良い奴だ。しかし、本当になよなよ、くねくねしているんだ…動きが。誰だ!このなよなよした男に“猛”だなんて強そうな名前をつけた奴は!猛のご両親だろが!とセルフボケ&ツッコミをしていた。勿論、心の中で。
「大丈夫だ、問題ない。猛のせいじゃない、気にするな…でも、来てくれてありがとう」
ビシッとした態度で答えた。どこぞのクーデレキャラ気取りで。
「う、ううん」
何故か頬を赤くした猛がブンブンと頭を横に降った。頬を赤くする要素が今の言葉のどこかにあったか?…謎だ。
「あはっ、ユメちゃんは昔からオトコマエ?だもんね〜?」
ヘラヘラ笑う杏里からは、心配していたという空気は感じられない。
まあ、心配される程の事でもないから全く構わないが…ちょっと腹立つなコイツ。
私が呼び出された原因は、私に昔と変わらず優しい猛のせいだけではなく、お前も原因なんだよ!取り巻きの女子生徒が居る前で、昔のように無邪気に抱き着いたり、腹の肉を掴んでくるからだよ!イケメンのチャラ男なら何でも許されると思うなよ!
「ヤダァ、杏里クン、ひっどぉーい!夢子だって女の子なのにぃ〜!」
「ごっふぁ!!」
さっきの女共を真似て、抱き着くフリして体重をかけたタックルをかましてやった。ふっ、ぽっちゃりの重量を舐めんなよ。
「さて、猛」
「なっななな何ぃ!?」
声が裏返っている。安心しろ、お前のようななよなよした奴にタックルをかまそうとは思っていない。本気で吹き飛びそうで怖いから。
「帰ろう。今日は、おやつにプリンを作ってあるんだ。沢山作ったから、暇なら食べに来なよ」
「う、うんっ!わあ、ゆめちゃんが作るお菓子って、とっても美味しいから楽しみだなぁ、是非行くよ〜!」
パアアッと花が咲いたような可愛らしい笑顔を向けられ、無言で猛の頭をぐりぐりと撫で回しておいた。猛、お前はそのまま、真っ直ぐに育てよ!…何キャラだよ。
「あ〜!いいな、いいなぁ!オレも〜!オレもユメちゃんの作ったプリン食べたーい!」
復活した杏里も後ろからドカッと抱きついて来て、オレもオレもと言ってきた。
「1個、500円な」
「ええ〜っ!?お金取るの?!」
「あ、僕、今日は1000円持ってきてるよ」
ボケ殺し、猛…もとい天然が入ってるだけの猛に…
「猛からは、お金取らないから大丈夫だよ」
と、言っておいた。『えぇ〜、マジでオレからは金取る気なの〜!?』とか言ってる、ゆるふわチャラ男の杏里に…
「仕方ないから、杏里にもご馳走してあげるよ」
と言えば。
「ふ、ふんっ、仕方ないから食べてあげる!別にユメが作ったから食べたいんじゃなくて、プリンが好きなだけなんだからねっ、勘違いしないでよね!」
「………」
馬鹿だ、馬鹿だと日頃から思っていたけど…コイツ、やっぱり馬鹿だった。よく同じ高校受かったな。
「…さ。猛、早く帰ろう」
「う、うん?」
「ちょっ、放置プレイしないで〜!猛まで放置しないで〜!ユメ好きでしょ?ツンデレ!だから、ちょっとお礼代わりにツンデレしただけなのにぃ〜」
「そんな似非ツンデレはいらん」
「ゆめちゃんは、ツンデレが好きなの?」
「うん。普段、ツンツンした態度で冷たいのに、ふとした瞬間に優しくなる…デレられると床ローリングしたくなるね」
「…床ローリング??そうなんだ〜?じゃあ、僕ツンデレになるよ〜!」
「ははっ、なれると良いね?」
「うんっ!」
絶対無理だろ。てか猛はピュアッピュアなままで居て下さい。
「ほ、ほんとに放置された……」
…あ。杏里を忘れていた。
「杏里、早く来ないと本当に置いてくよー?」
「わっ、ちょっとちょっと〜、待ってよ二人共〜!」
これが、教室片隅系オタクでちょっと“ぽっちゃり”な私、杉崎夢子の至ってフツーの日常である。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました(^^)