1200
加藤は、自分たちの世界に
神様と、それと、ななと一緒に戻り
それから、すぐに研究所に行き
常温超伝導合金を作った。
ふつうの高温超伝導ではー200℃くらいに冷やさないとならないので
作れない、回転式モーターや
小型の装置。
そういったものでも、これなら作れると
加藤は、わくわくしていた。
ふつうの超伝導は
-----------------------------
[-]電子
===>[+]陽電子[-]自由電子===>
[+]核
-------------------------
と、避けていくので電気抵抗が0になるのであるが
反物質超伝導は
-----------------------------
[-]電子[+]反電子
===>[-]自由電子===>
[+]核[-]反核
-------------------------
とでも表現できようか。
即ち、光子をヒッグス粒子が捕捉する様を逆転しているような
関係で、物質の電荷を解放するものである。
その手法は理論的に正しいが、実際に作れるか否かが問題である。
加藤は、それを容易にやってのけて
それを全世界に発表した。
だが、再現実験が誰も出来ないのは当然である(笑)。
それは、18世紀の魔法だから。
「STAPの再来か」などと揶揄されたが
工業製品として、日本のSONYや、松下などから
モータが発売されると、批判は収まった。
何しろ、実際に回転し、消費電力のほとんどないモータが
実存するのである。
困ったのは、最大電力、つまり最大トルクで起動してしまうところだが(笑)
それは回生ブレーキ、つまりふつうの金属でコイル巻き線を作り
起動の際だけ電力を回生させてブレーキにしたり
超伝導回路の一部に、ふつうの金属で回路を作り
インバータを入れたり、など
各社様々である。
送電線にこれを使い、砂漠にソーラーパネルを置き
昼間の国から、夜の国へと直流送電を行った。
結果、エネルギー問題はほとんど起こらなくなり
今度は、国境や通貨が邪魔になってきた。
ひとびとも、エネルギーが無尽蔵に手に入り、自動車や鉄道などの
輸送コストが低くなると
争う必要もなくなったので、侵略もなくなった。
もともと、攻撃の元となる人間の精神的な力動と言うのは
動物的な欲求の欠乏から起こるものである。
その精神的力動も、オキシトシン回路で起こらない。
あらゆる物質の輸送や移動が
低コストで行われ、電力も無料に近くなる。
砂漠で太陽光発電を行い、水を電気分解し
水素を作る。
2(H2O)=2(H2)+O2
である。それによって
水素燃料電池自動車を動かしてもいいし、
レンジエクステンション水素エンジンを動かしてもいい。
元手が無料なので、あらゆるものが
安く手に入る。
その時点で、様々な争いは無くなった。
元々、動物はむやみに争うのは嫌いである。
自分の領域があり、餌が十分にあれば
別に争う動物はいない。
争いの原因が外から齎されなければ。
めぐたちのように、平和な共和国に住んでいると
特に防御の必要もないから、のびのびと
好きな事を言っていられるけれど
ななのように、いつも防御をしていないと
危険な国に住んでいると
装甲のようにメークをしたりして、誰だか
解らないような顔にしたり
話ひとつするにしても、自分の立場を
気にしたりするような、そんな違いに
よく似ている。
加藤たちが、特に製品作りを
秘密にしなかったせいで
超伝導は、あたりまえになった。
電気自動車は、少ない電池で走れるから
とても軽量になり、高性能になった。
次に、加藤たちの研究所は
重力エンジンを実用化した。
さきの、反物質融合を応用し
質量を規則的に増減する制御プログラムを
実用化した。
その座標を、ピストンや釣り合い錘に設定する
事で
回転式のエンジンのエネルギー源にする事が
できた。
焼き玉式エンジンのような、単純な作りで
往復運動機関が動く。
気体圧縮も出来るので、冷凍機を電気のない
ところでも動かす事ができる。
砂漠の真ん中や、赤道直下でも
冷凍機が動作するし
エネルギー源にすれば、自家発電ができる。
面白いのは、あらゆるものが安価に、いつでも
入手できるようになると
富に執着する意味がなくなること、だった。
その頃、加藤と研究所は
光粒子エンジンの開発を進めていた。
常温超電動で、電磁石のようなギャップを
作ると
そこには光も磁界も侵入できないのは
ピンチ効果より明らかだが
反物質超電動なら、急に
超電動/通常電動の状態が変化可能だ。
その都度、光粒子が飛ばされるので
その、規則的な変化を動力源として
発電所を興したり、ジェットエンジン、ロケットエンジンの代用になる、と言う発想である。
開発は難航したが、その間に
世界では変化が起きていた。
いつでもどこでも、エネルギーが手に入るので
エネルギー源同士を通貨のように交換しあう事が
経済を動かし始めた。
もともと無尽蔵のエネルギー源なので
絶対値である。
誰でも、それを資本の代わりにして
産業を興せる。
発想と、実現力。
報酬もないので、あくまで知的な楽しみである。
貧富の差もなくなったし、金持ちだからと言って
貧乏人を差別する事もできない。
知的でなくても、エネルギー源は
無尽蔵であるから
裕福に暮らせる。
(実は、今現在でも太陽エネルギー源で同じ事が出来るが、売って儲けようとしなければ)。
不当な差別や、争いはなくなっていく。
人々は、自分達のフィールドで
平和に生きて行けるようになる。
日本は、弥生時代以前のように
日本人だけの平和なフィールドに戻る。
それでも、加藤のような人々の研究は続く。
それが好き、だからである(笑)。
加藤の仕事は、高く評価された。
それまでの世界なら、例えばエネルギー源を高く売っている
業界から疎んじられたりするところだったが
経済そのものが、貨幣流通から
エネルギー源そのものの物々交換的やり取り(データだが)に変わってしまったし
無尽蔵なエネルギーを、水や空気のように豊富に使える事で
エネルギー売買企業なども、存在の価値が無くなった。
世界中で、働く必要が無くなった。
例えて言うなら、野生生物のように
エネルギー源を採集して生きて行けるようになったので
最早、人間として争う必要は全く無くなった。
ただ、恋愛の悩みだけは残る(笑)が
それも、以前のように
収入の不安、生活不安などは何もない。
エネルギー源が、例えばどの家の庭にも
当然に存在し、それを流通する事が出来るなら
それほど困る事もない。
それまでの経済が、貨幣の流れだけで
成立していた代わりに
エネルギーの流れを置いただけ、である。
特に社会で、嫌な事をしなくても生きていける人々は
安らかに暮らせる事から、基本的に
村の中から出なくなった。
つまり、争う種も減る訳だ。
家族の在り方も、変わった。
それまでの家督相続とは、私財を受け継ぐためのものだったが
いつでもどこでも、簡単にエネルギーが得られ
無尽蔵に源があるとなると
人々が老後を心配する必要もなくなったし
相続しなくても、いつまでも利益は
自然に発生する。
無理して家族を運営しなくてもいいし
子供を育てる必要もない。
家族、なんて言う狭いフィールドで
子供を囲う必要がなくなったし
恋愛のふりをして、働きたくない悪い女が
結婚を身売りの如く行う行為も、できなくなった。
加藤が、結婚や恋愛に疎遠なのも、実はそれだった。
騙された振りをして、婚姻させられたら
それで一生縛られる、なんてのは面倒だったし
とかく感情的な、女子供に関わると
トラブルの素(笑)なので
近寄りたくない、そう思っているのが
本音だった。
なので、ななについても
出来るなら、いなくなってくれると嬉しい、
そんな感じだったりもする。
もちろん、愛したいような人がいれば
愛そうとは思う。
けれども、ここ数十年
日本は、文化が混乱していて
人間にとって、大切なものが何か、と
言う事が
経済混乱によって、蔑ろにされていた。
その元凶が、市場論理で
貨幣価値が変化する、つまり
地味な労働も、市場相場で水泡に帰す事、だった。
加藤は、それは科学の力で破壊したのだった。
エネルギーコストが下がる事は、それほどの意味を持っている。
国家も、租税で運営する必要もなくなるし
そもそも国家自体が不要になった。
地球全体で、エネルギー流通の
ルートメンテナンスをするには
インターネットのように、国家はせいぜいドメイン、くらいの意味で充分だった。
そんな中、本当に恋愛、家族と言うものが
シンプルに人間に問われる事、となった。
なぜなら、霊長類ひと科の隣人たちと違う
人間の特色として
発情期がない事が挙げられるが
その発情期は、食物の安定供給、つまり
コレステロールの貯蔵で起こるのであるから
つまり、社会がひとに与えた変化への適応。
いま、加藤たちは新たな変化を齎す。
家族を持って群れを作る必然を、環境から崩したのである。
みみっちい家族単位の争いや、
醜い排他と関係なく育つように
子供は、社会資本として育てる事も
もちろん可能となった。
エネルギー源は潤沢で、尽きる事がないからである。
好きで家族を持ってもいいし、そうでなくても死ぬ瞬間まで、人々は
収入が得られるのだから
年金も、健康保険も不要になる。
個人用エネルギー源が、ひとりにひとつあればいいだけだ。
そういう環境で、恋愛は、婚姻は
どのような意味を持つのだろう?
(いま、、それに近い現状だが(笑)
加藤が研究に没頭して、ななは暇(笑)だ。
「神様、加賀さんは科学と結婚したんですね」と、可愛らしく不満を言う。
かわいいうちはいいが、かわいくなくなると
鬱陶しい(笑)と、神様は思って
笑顔になったりするが
それも人間の生き方だろう。
「ななちゃん、加賀と言うのは彼のペンネームでね。本当は加藤、と言うんだよ」と、神様。
ななは、少し考えて「何か、理由があるんでしょうね」
神様は頷き「加藤くんはね、ちょっと有名な人だった。正義感のために、大きな国営企業を
ひっくり返してしまったり」と。
ななは、ふーん、と
特に気にしていない感じ。
それも、若い娘らしいと
神様は思う。
危険なくらいの個性は、ななも気づいていたのだろう。
「それで、女の子に興味を持たないのかしら
ななは、悪い子じゃないのに」と
少し幼めに言葉をつなぐなな。
「うむ。しばらくわしの知り合いの
修道院にでも」と、神様が言うので
ななは「どこの国ですか?」
めぐたちは、夢のような旅の日々から
電車に乗って現実に戻って。
ここは、めぐたちの高校。ミッション系で、
先生の多くがクリスチャンだったり。
「あー、まあ、事情は様々だから」と、教頭先生の言葉を
予想通りに受け止め。
あまりに予想そっくりだったので
笑いをこらえるのに必死の4人。
校長室。
「では、戻ってよろしい。」と、教頭先生の声。
それと、担任の、ベテランで穏やかそうな
女性教員。
ふんわりと太って、穏やかそう。
白髪に眼鏡。
いかにも修道僧っぽい。
「あ、皆さん、隣の修道院で体験入院(?)をしているので、今度の日曜日にどうぞ」
学校をずる休み(笑)した罰、だろうか。
進学上、記録しない代わりに指導、とか(笑)。
世の中、取引である。
えー?と言いたくなっためぐだったが
取り合えず敬謙そうに(笑)。
ありがとうございます。と、一礼。
礼節も大切だ。(笑)。
校長室は1階で、玄関のそば。
たいていどこの学校でもそうなのは、お客様が
よく来るから、それと
校長先生は大抵ご老体(笑)なので
階段が辛いとか
そんな理由もあったりもする。
でもめぐたちは元気元気。
ふるーい、木造の廊下、擦り減って
つるつるの床を
白い上履きで歩きながら、担任の先生に
「先生、あの、学園祭でね、あたしたち、バンドしたいんです」と、めぐ。
先生は、穏やかに「受験勉強は大丈夫?....あ、めぐさんは図書館か。naomiさんは郵便局、リサさんは国鉄、特待生でしたね。れいみさんは、あ、そうか。大丈夫ね」
先生は、それぞれしっかり覚えてる。
それと言うのも、もともと進路の事で
リサが出奔したんだから(笑)。
「バンド、いいですね。楽しくやりましょうね。」と、先生がにっこり言うので、れーみぃは
呆気。
「反対するかと思った。」
「皆さん、もう受験は終わったようなものだし。それならいいんじゃないかしら。音楽は先生も好きです。」と、先生は、太ったお腹を膨らまして、何が歌いそう。
R&Bですね、きっと(笑)。
その週の土曜、めぐとれーみぃは、お買い物に出た。
路面電車に乗って、坂道の駅前へ。
「体験入院かーぁ。なんか、病院と間違えちゃうよぉ」と、めぐ。
「やっぱ罰ゲームなんじゃない?」と、れーみぃ。
「そっかぁ。だって、学校サボりだもんなぁ
内申書に書かれちゃうよ」と、れーみぃ。
「ところで、れーみぃはさ、どこ受けるの?」と、めぐ。
「あのね、」と、れーみぃは耳打ち。
「えーーーー!ハイウエーパトロール!!」と
めぐが大きな声だしたので、路面電車の運転手さんはびっくりして
電車が揺れた(笑)。
「すみません」と、ふたりで謝り、車内はにこやか。
「若いっていいわね」と、初老のご婦人。
ふくよかに、のんびりと。
路面電車を駅前で下りると、めぐの携帯へメール。
from:kamisama@god.com;
あー、わしじゃ。
こないだ、ルーフィー君に会った時
東京駅から一緒じゃった旅人がな、シスター志望なんじゃと。
それで、ちょっと連れて行くから
よろしく
相変わらず音声でメールを書いているらしい。
「なにこれ?」と、めぐは呆気(笑)。
そのうちにも、路面電車は図書館前を過ぎ、駅前へ。
図書館のアルバイトは、きょうは
クリスタさんが行っている。
天使さんだけど、やっぱり
自由になるお小遣もほしいだろうし(笑)とか
言って
めぐは、見た目がそっくりな事をいい理由にして
クリスタさんを、バイトの代役にしている。
「きょう、バイトはー?」れーみぃが聞くと
「クリスタさんが」と、めぐ。
「いいの?お小遣なくなっちゃうよー」と、れーみぃは
路面電車の吊り革にぶら下がるふり。
ニス塗りの電車の中は、いい匂いがする。
床油も、しっかり塗られていて。
緑色のシート、人影はまばら。
駅前について、めぐはとことこ、と
電車を下りる。
れーみぃも続いて。
駅前は賑やか。まるで、極東で起こっている
エネルギー革命なんて関係ないみたいだ。
ヨーロッパの北の外れ、ここは
フランスの隣。
共和国だから、元々
経済競争には縁が遠い。
いろいろな国から、のんびり暮らしたい
ひとたちが、移民してくる国。
だから、争いもそんなにはない。
お金はそんなに持っていなくても
信用で買えるから、必要なものは
べつに、お小遣でなくてもだいじょうぶ。
でも、クリスタさんは天使さんだから
国籍不明(笑)なので
銀行口座が作れないから、お小遣がいる。
「さーてぇ、どこいこか」と、めぐ。
「お買い物、お買い物。とりあえずはお菓子かな」と、れーみぃ。
「だめぇ、修道院って持ち込み禁止なんだって」と、めぐ。
「えー?死んじゃうよ。そんなの。」と、れーみぃ。
そんなふたりの背後から、山高帽子にえんび服、ステッキのおじいちゃん。
神様の変装だ(笑)。
「あー、もしもし、お嬢様?」と。
いつものユーモアである。
びっくりして振り替えるめぐ、と、れーみぃ。
神様といっしょに、
なな。
小柄だし、日本の女の子は
随分幼げに見える。
「あ、ああ、神様か」と、めぐ。
「神様?」と、れーみぃ(笑)。
「ああぁ、あのねぇれーみぃ。劇団のひと。」と、めぐは適当(笑)。
「ああ、図書館のね」と、れーみぃが誤解したので助かる(笑)。
図書館にはシアターもあるから。
それには構わず、神様はのんびり。
「おお、これが、ななじゃ。ななちゃん、こっちがめぐ。」と、適当な紹介(笑)。
「はじめまして。」と、なな。
ななの方が小柄なので、ヨーロッパの
女の子たちは見上げる感じ。
でも、めぐの方がかなり年下。
「ああ、はじめまして。ななさんね。あたしはめぐ。ホントの名前はマーガレットだけど
みんなそう呼ぶわ。こっちはれーみぃ。ホントの名前はれいみ。」と、にこにこ。
「はい。わたしは、ほんとの名前もななね。
。」と、にっこり。
でも、ぎこちない。
日本だと、互いの上下とか、所属とか
そういうもので気をつかうけど
それがわからないので、おどおど。
言葉がたどたどしいのもある(笑)。
「神様、その格好なんとかなりませんか」と、めぐ(笑)。
「変装じゃから」と、神様は
楽しそう。
「時代を考えてください。それじゃ変装ってより目立ってますよ」と、めぐ。
「クリスタに似てきたのお、ははは」と、神様は気にせず。
「似るわけないでしょ。まったく」と、めぐはなんだか(笑)。
「クリスタって、ルームメイトの?」れーみぃ。
「ああ、天使じゃ。わしの」と、神様はまた
余計な事を言うと(笑)。
「天使さん?」と、ななはメガネの奥でびっくり目(笑)。
「めぐ?」と、れーみぃ。
「あ、あー、劇団のね。役。それじゃ、神様、あたしたち買い物するから。」と、めぐは
冷や汗たらたら(笑)。
「お、おお、そうか。では、さらば。」と
神様は白昼堂々、術を使って
金色の粉を振り撒いて飛び去った。
ななは、あっけ(笑)。
「あ、それじゃ、St。Blancheへ?」と、めぐは
学校のとなりの修道院の名前を言うと
ななは「名前は聞いてないけど、どこでもいいの」と、にっこり。
そっか、と、めぐはにっこり。
やっと、普通の会話になった。
「ルームメイトが天使さんなんですか?」と、なな。
「ぃ、いえ、あの。劇団のね」と、めぐ(笑)。
ああそうか、と、ななは、ははは、と笑った。
めぐたちも、釣られて笑うけど
どこまで話していいものやら(笑)。と
ななが、魔法を知っている事を
神様は、話していないので
その割に、いろいろ話してしまうから(笑)。
どぎまぎのめぐ、だったりして。
「じゃ、買い物買い物」って、れーみぃ。
路面電車の停留所から、坂道の上り。
煉瓦の敷石と、道路。
真ん中にケーブルカーの軌道。
いつだったか、めぐが
スクーターの少年を助けた、坂道だ。
「あ、ステキなお店。」ななは、ショーウインドーがおおきな
洋品のお店に惹かれた。
「ああ。観光客はみんな見るね。」と
れーみぃが言うその口調が、めぐは可笑しくて笑った。
「みるね、って
なんか、日本映画の中国人みたい。
ラーメン屋さんかなんかの(笑)」と言うと
れーみぃもおかしくて笑った。
「ワタシ、
イイアジ
ツクルアルヨ
」と、ラーメンのコマーシャルみたいな
真似を、れーみぃは
寄り目でするので、めぐは可笑しくて大笑い。
ななは、言葉がよくわからないけど
その、日本語イントネーションと
寄り目が可笑しくて笑った。
土曜日で、ひと通りも多いけど
道行く人々も、楽しげな3人に、にこにこ。
「ちょっとだけ、見ていかない?」と
アースカラーの、染め物で作られた
ニットふうのワンピースが飾られた
そのお店に、ななは惹かれた。
「いこうか」と、めぐが言うから
れーみぃもうんうん。うなづく。
お店の中は、けっこう狭くて
いろんなものが並んでて。
「あ、こっちもステキ、あれも」と
ななは楽しそう。
「着てみたいなぁ」とか。
「あ、でも着ちゃうと何か買わないと」と、めぐ。
「そうなの?」と、ななはびっくり。
日本だと、試着して見て
それだけ、なんて言うのはふつう。
でも、それにも礼儀があって。
お店の人と話をして、こんなものが着たいとか
見てみたいとか。
そういう、交流があって
お店の品物を始めて、出してくれる。
「お客様の手を煩わさないのが、ヨーロッパ流なの」と、れーみぃ。
ななは、びっくり。
「日本だと、自分で持って自分で着て見るけど」と。
「アメリカンね、それ」と、めぐ。
そーなんだぁ、と
ななは驚く。
「ヨーロッパって割と階級別の名残があるのね」と、めぐ。「でも、アメリカンのお店もあるのよ。ハンバーガーとか、おもちゃとか」
と、笑った。
ななは思う。
古くからの伝統って大切ね。こういう町で
修道院に入るのは、日本よりいいかも。
なんて思って、突然思い出す。
「日本のお札しかない!」(笑)。
日本語で言ったので、めぐもびっくり。
でも。「ああ、クレジットカードあるでしょ。」と、めぐ。
「持って来てないの。いきなりだったから」と
ななは泣きそう。
湯上がりみたいなメークで泣くとピエロみたい(笑)。
「あ、でも、あれはあるでしょ。免許証とか」と、れーみぃが言うと、ななはハテナ?
「免許証でお金になるの?金融?」と言うと
そうじゃなくて、と、れーみぃは笑って
「免許証にICチップ認証があるから、あれで
エネルギー取引が出来るの」と、加藤が開発した
それ、自然エネルギー国際収受の話をした。
「さすが、ハイウエーパトロール。市民の味方」と、めぐは両手をパチパチ。
からかわないでよ、と
れーみぃは笑いながら「ななさんの持ち分のエネルギーから、こっちで引くの。その分だけ使えるわ」と。
ななは、びっくり。
加藤さんの研究が、ヨーロッパまで届いてるなんて。
のんびりしてるのに、すごい事を
してる人なんだ、って。
加藤の意図するところではなかったが
結局、そういう事になってしまった(笑)と
加藤は、苦笑する。
エネルギーが世界共通の単価になる。
それを通貨の代わりに使う事も、まあ可能。
そうすれば、為替相場のギャンブラーたちに
利益を与えずに済む(ふつう、それでみんな損してるのに気づかないだけである。)
そういう事で、大企業を中心に
ポイントセールス、とかICカードを決済に使う動きと、これが合致した。
地球上どこで取っても、エネルギー単価は同一。
ただ同然である。
そういう事で、前記の通り
人間の暮らしは安定した。
穏やかに暮らせると、争いも減る。
この世界は、生物のオキシとしん回路が
活性化している。
神様たちの能力で。
それも前記の通りだが、そのせいで
発情が明確でなくなった。
もともと、人間の発情期は任意である。
動物のそれが、種の保存のための機能なのに
人間のそれは、自由選択である。
鍵になっているのは、ひとそれぞれ。
思い出であったり、理想であったり。
霊長類の隣人では、例えば環境だったりする。
カンボジアに済む類人猿の一種、ハヌマンラングールの観察で発見したのは、日本の京都大学であると、前記した通り
1990年代に話題になった。
グループのボスが交代すると、周囲の雌が
全て発情する。
排他の原点は、そのように動物的なもので
人間のように知能の高い生物にはふさわしくないが
どこかに、それは残っている。
「ニットを編んでくれた人が居て、
送ってくれる人が居て
売ってくれる人が居るから着られて。
なので、買う人のために試着があるから
買わないなら着ない方が、その人たちの
気持ちを考えると、いいんじゃない?って
お母さんが言ってたっけ」と、れーみぃ。
ななは、突然嫌な事を思い出したように
「説教は沢山よ!お金だすからいいんだ。」と
口調も変わってしまって。
おそらく、相当嫌な事を
誰か、母親か何かに言われて居たのだろう。
自宅に戻らず、修道院に入りたいと言う
理由が、なんとなく伺われる。
日本も、ここ30年ほど
そういう、渡来の人の考え方に侵されていたから
ななのような女の子は、無意識に
その中に浸りきってしまっている。
それを、加藤は嫌ったのだろう。
女の子を守りたい。
それは男の理想の愛であるが
その女の子が、自分さえよければいい、と
他人の迷惑を考えない人なら、加藤たち
真の日本人、いや、真の人類は忌み嫌うだろう。
なぜかと言うと、人類そのものを
育むような優しさがあるのが女の子の本質である。
たとえ、ボスが変わったら
我が子を捨てて発情する類人猿が
祖先であったとしても
後に生まれた子供たちを、共同して育てるのも
また、類人猿の隣人の姿であり
金を払えば、迷惑を掛けてもいい。
そんな女の子だったら、愛したいと
加藤は思わないだろう。
性的な対象なら別だが。
「ごめんね、お説教じゃないの」と、れーみぃ。
優しい子だから、ななが怒った事に戸惑って。
「あ、いえ。ごめんなさい。わたしこそ」と、ななも正気に戻る。
嫌な気持ちを思い出したと。
でも、ななも思う。
なな自身が、知らず知らずに
怖い考え方に巻き込まれて居たこと。
幼い頃は、摘んできた野の花が
枯れたくらいで悲しがり
摘む事が、良くなかったと
泣いてしまうような子供だったのに。
ななは、まだ
野の花を摘んだ事があるので
生命を奪ってしまう自分の怖さに
気づいたりする。
そうして、弱いものへの
思いやりを思い出していくのだけれど
都市育ちで、野原に出た事もなく
人工的なものに囲まれていると
自分の怖さを自覚する事もない。
なので、なな、より若い
子には、怖さの自覚が少ない。
めぐや、れーみぃは
日本とは違った環境で、貧しくも心豊かに
育ったから
ものを作る人の大変さも実感できる。
めぐなどは、おばあちゃんが畑を持っているから
容易に植物が枯れてしまう事、長い時間を
掛けて育てる事の重みが実感して解る。
そういう体験のない、都市の子供は
不幸にして、生き物としての自分を
意識できなかったりする。
ジェームス・ワットが蒸気機関を発明して
動力が近代化する以前は
都市、と言っても自然が隣接していた。
それでも、人力や馬力で
運搬する労働の尊さは
機械の力より高コストだったから
その努力は評価されなくなった。
そういう人々は、報酬が得にくくなったりしたのだ。
後に、内燃機関が発達し
自然を人間が侵略するようになった。
機械が、人間の行動の価値を変えたので
労働の価値は多様化する。
それが、貨幣価値をも多様化したから
同じ働きをしても、報酬が変わるので
貨幣価値も、異なる。
人馬でいくら頑張っても、トラックよりも
多くの荷物を運べないから
報酬は知れている。
苦労は、報われない事もある。
加藤たちの研究で、エネルギーが簡単に
誰にでも手に入ると
そうした不公平はなくなる。
誰にでも、容易くエネルギーが得られ
価値は同じだ。
等しく人類は平等な貨幣を得た事になる。
なので、ななのように
経済の動向に支配されて、人としての
本質を、知らないうちに変えられる事もない。
世界で、どこで取り出しても
エネルギー価値は同じであるし無尽蔵。
慌てる事もないし、永久。
そうなった時、人の心はどう変化するのだろう。
「じゃ、ニットワンピース買ってこうかな?買うならいいんでしょ?着ても」と、ななは言う。
「別にいいけど、夕方にSt.Blancheに集合だし。それ買っても着れないよ、修道服だし。
あたしたちは、日用品を足しに来たの。」と、めぐは
なーんとなく「買うならいいんでしょ」と言う言い方が好きになれない。
別に咎めている訳でもないのに、誰に言い訳してるんだろう?と(笑)。
それは、なな自身が気づかないけれど
記憶のどこかにある、誰かの視線だったりする。
優しくない、誰かの。
そういうものに、無意識に言い訳してるのだ。
「え!ななも修道服着るの?」と、ななは驚く。
「そうみたいよ、あたしたちも着るんだもん。体験入院なのに。」と、めぐは笑って。
「でもぉ、ステキなんじゃない?グレーの修道服。しょっちゅう着れないし。」と、れーみぃ。
「それと、説教じゃないけど、スカート短いと修道院じゃ叱られそう」と、めぐ。
説教じゃないけど、と前置きしないといけないので、めぐは内心「メンドクサイなぁ」と
思ったりする。
もっと素直に聞けないのかなぁ(笑)
と、18歳のめぐはまだ子供であるし、この国は
子供は子供らしくしてても、大人が護ってくれる国。
ななは、混沌の日本から来たので
誰にも護ってもらえない緊張から、装甲メークをしたり(笑)。
そんな中、護ってもらえそうな加藤に気持を寄せた.....つまり、ハヌマンラングール的に
保身の気持もいくらかあったりしたのだろう。
「うんうん。つけまつげとメークも叱られます。落としていったほうがいいよ」と、れーみぃ。
「やだ、恥ずかしいもん」と、ななは笑顔で。
「神様にお仕かえするのに、顔を偽ってはいけません、ってか」と、れーみぃは
修道院の院長先生の口調を真似て。
あははは、とめぐは笑う。
「あたしたちだって素顔だよ」と、めぐ。
「それは、18歳だもん。あたしは26だから、やっぱ、お肌も劣ってるし」と、なな(笑)
「どっちみち、修道院で落とされるんだから、叱られないうちに落としといたほうがいいわ」と
れーみぃは、さすがにお巡りさん志望(笑)規範に忠実だ。
「そっかあ、ありがとう。れいみさん、めぐさん」と、なな。
「れーみぃ、めぐでいいわ」と、れーみぃ。
「なんであんたがめぐでいい、っていうのよ」と、めぐは笑う。
「あ、そっかぁ(笑)、まあいいよ」と、れーみぃ。
「じゃ、あたしもなな、でいい」と、なな。
「うん、そーしよ、なな、あ、”シスター・なな”、ね」と、めぐ。
「はい!”シスター・めぐ ”?」と、なな。
ななとしては、上下が決めにくいのは不思議な感覚だけど
それも、渡来人の文化で
日本文化ではない。
日本の集団は、上下ではなく
互いに思いやる集団であり
上下とか規律、とか差別するのは大陸の文化である。
なぜかと言うと、日本は島なので
差別すると行き場がなくなってしまうが
大陸の文化で差別があるのは、国境がはっきりしていないからである。
排他、と言ってもいい。
それなので、日本で差別、と言うと
言い出しっぺは大陸系、渡来人である事に違いない(笑)。
しばらくすれば、神様の薬(笑)が効いて
渡来人たちも穏やかな心を取り戻すはずなのだが。
元々、渡来人の中で差別に遭って
追い出されて日本にやってきた人達
だからである。
つまり、祖国に戻れば
エネルギー取引に参加できるなら
戻るだろう。
ななは、ふつうの日本人だけれども
知らないうちに差別に遭遇するのは
つまり、日本を渡来人が侵食しようと
企んでいる訳で、それが
日本を住みにくくしていると言う事になる。
それなので、遠い北欧にやってきて
一から出直したいと言うななの気持ちは
理解できる。
でも、やはりなかなか癖は抜けない(笑)。
近くのスーパーマーケットに、めぐとれーみぃ、ななは立ち寄る。
「着替えとか」と、めぐは
地味な白い、木綿のアンダーを見立てて。
「ずいぶん地味ー」と、ななは日本でいつも
しているように言う。
それが友愛の表現だと、日本では
そう感じていた。
でも、めぐは微笑み「地味の方がいいのよ、シスターなんだもの」
と言うと、ななは「そこまで成り切らなくても」と、日本ふうに本音と建前を表現する。
でも、めぐは北欧の子供だから
「神様の花嫁になる、って修業だもの」と
笑う。
一日だけね、とWink(笑)。
なるほど、と
ななも納得。
確かに、修道服の下が派手な色物では
不謹慎だ。
でも、そんなふうなななの感覚も
実は、古来の日本人のものではない。
古来は、八尾萬の神様に見守られて、と
言われるように
太陽や月、闇の森にすら神様が居て
裏表なく、と言うのが古来の日本人的
感覚であり
武士の圧政が始まった頃から
農民が本音と建前、つまり
嘘をつきはじめたと言われていて
それは、取りも直さず
渡来人の文化であったりもする。
現在でも、中国やロシア、韓国など
不条理な圧政のある国々の
民衆はそうした、嘘の文化が好きだ。
見てなければ、規則は破っていいとか
そういう、差別の温床になるような発想。
それは、八尾萬の国には有り得ない感覚であり
ななも、そうした渡来人の感覚に
染まってしまっている事を
北欧に来て、初めて実感したりして(笑)。
それは、ななの責任ではないが。
環境が汚染されているのである。
環境とか国籍が違う事は
大した問題ではなくて。
人間が考えた主義、とか
主張などと言うものは
別に、個人が従う必然はない事を
日本は、国家が認めている。
思想の自由、信教の自由である。
なので、いろいろな主義の人が日本に渡来しても
別にいい。
でも、それらの人が
日本人に対して
自由を束縛する事はできない、と言う
日本はアメリカン寄りの
自由な国であったのだ。
つまり、影に隠れて
日本の人を束縛しようとする傾向に
ななも抑圧されて、それで
自然体から離れてしまった。
ななは、めぐを羨ましく思う。
「どうして、そんなに堂々としていられるの?」と、ななは尋ねる。
ななの知る、おばあちゃんみたいに揺るぎない自信に溢れているように、不安定な、ななからは見える。
めぐは、不思議そうに微笑んで「どうでもいい事じゃない、下着のデザインなんて。見せて歩く訳でもないし」当然、と言うふうに
言うので
なんとなく、ななは
無視されたような気がして。
同時に、加藤の雰囲気に良く似ている気がした。
加藤は、周囲が何を言って
からかっても、因縁をつけても
超然と微笑んでいた。
そんなものは取るに足らない、と言う風に見えて
ななは、それに憧れを感じた。
「どうして、気にならないんだろう。周りが」
ななは、ずっと
周りを気にして来たから
それで、怖くないのかと
加藤を不思議に思った。
それは、文化の違いなのだけれども。
遠い北欧で、ななは
似たようなめぐに出逢う。
「加藤さんみたいだ」と
思わずつぶやいて。
「かとーさん?」めぐは、聞き逃し。
「うん、ルーフィさんに魔法を教えてもらった」となな。
ルーフィ、と言う名前にどっきりするめぐだけど(笑)
それ以前に、魔法の話を平気でした事にもっと
どっきり。
ルーフィのところは、ここと並列時空間なんだって事は、たぶん、神様も言ってないだろうけど、と、めぐは思った。
でも、魔法の話をしたって事は
たぶん、まだ魔法を取り戻していないんだろうな、って事も
めぐは感じる。
「シスター・めぐに似てる気がしたの」と、なな。
「ルーフィと、あたしが?」と、めぐは
またまたどっきりする。
魔法使いって見抜かれたような気がして。
その事は、まだ、こっちの世界では
誰も知らない。
「そのかとーさんって、シスターななの好きな人?」と、めぐは、ななのメークを落としながら。
スーパーマーケットの
メーク落としコットンの試供品(笑)。
そういうところは学生である。
つけまつげも取って、ななは
地味に可愛い。
ななは、恥ずかしそうに頷いた。
「かとーさんとめぐが似てるって。え?
シスターななってシスター趣味?」と、変なとこで洒落た、れーみぃ。
(笑)。
「なに、それぇ、あたしはやだかんね、そんなの。シスターってそういうとこ?」と、めぐも
口調が変(笑)。
スーパーの端っこ、化粧品コーナーで
騒いでるなんて
どこの国もJKは同じかな(笑)。
ななも、ノーメイクだとJK、って言っても
平気。
「ほんと、その方がずっとかわいいよ」と、れーみぃ。
うんうん、と、めぐ。
ななは、直接
ルーフィたちの世界に行ったから
いま、いる世界とは
似て非なる時空間だと気づいていない。
まあ、それはそれでいいんだけど。
「じゃ、夕方に修道院ね」れーみぃは
支度してくる、って言って
ケーブルカーで、坂道を昇っていった。
「じゃ、あたしたちも夕方まで支度ね。
と言っても、何もする事ないか」と、めぐは
にっこり。
ななも、素顔でにっこり。
そうすると、めぐよりも幼く見える事もある。
「いつも、メークするの大変でしょ。」と、めぐは言う。
「うん、でも、日本じゃそうなの。」
「めんどくさいね、日本って」と、めぐは率直だ。
「こっちはそんな事ないの?」と、なな。
「うん。修道院は特にそうだよね」
「修道院は日本でもそうだよ」と、ななは笑う。
そっか、とめぐも笑った。
「じゃ、加藤さんの好みになりたい、って。
ひたむきだなぁ、ほんと」と、めぐは
意外に、恋に純粋な、ななに親近感を持つ。
「好みになりたい、って言うか、自分が
知らないうちに汚れてたみたいな気がして。
日本にいると、そうなの。
みんな悪い子だし」と、ななは思い出すように。
「なんか、わからないよ」と、めぐ。
わたしも、中にいるとわからないけど、と
ななは前置きして
「こっちに来ると、清々しいの。これが
ふつうの暮らしだって思う。周りを
気にして合わさなくてもいいし。
それが普通なんだよね、ほんとは」と
ななは、柔らかい笑顔で。
ななのいた日本は、めぐの国より
危険が多かったので
類人猿の隣人のように、保身の為に
女たちが婚姻を求める。
しかし、経済、つまり餌の確保につながる
金銭の価値が不安定だから
婚姻を得たとしても安定せず、それゆえ
危機感から発情が続くと考えられた。
危険を省みずに短いスカートをはいたり
するのも、そういう心の現れであったとすると
男たちも、心の愛よりも生殖を目的に
心ない発情を繰り返すようになっていたのが
つまり、イギリスで起きた産業革命以降
続いていた不平等感。
ルーフィたちの魔法や、魔女が迫害されたのは
実は、そうした産業革命の方向性を
魔法が無にする事を恐れた
国家の、権力維持の為の画策であった。
ルーフィのご主人は、アメリカンだったので
難を逃れた、と言う訳で
長い時を経て、ルーフィが伝えた魔法で
日本の科学者、加藤は
不平等感、閉塞感の強かった
経済を安定させる事に成功した。
スピンリアクションによる反物質反応や
常温超電導、ゼ−ベック熱吸収などである。
スピントロニクス併用によるそれらが
新たな産業革命と呼ばれ、少なくとも
アジアンやアメリカンの生活を
安定させたから
つまり、それらは
日本では婚姻の増加が勿論得られ
発展途上国のように、若年層が増えた。
昭和のベビーブームと同じである。
人間的な愛を得た子供たちが増え、
不幸な人達は幸せになった。
当然である。
自然界と同じように、潤沢な餌と
時間があれば、あまり攻撃的に
なる必要はないからだ。
人間は、生まれる前から持っている
動作の様式と
生まれてから学ぶ行動があるけれど
コンピュータは、人間の模倣だから
例えて言うなら、ブートアップと
OSが、元々あって
学習するのは、アプリケーション。
そんな感じだけど、例えば、ななが
周りを気にするのは、基準が曖昧なところで育ってきた、そんな感じでもある。
お父さんが割と不在がちだったり、いても
あんまり、きっちりと理論的でなかったりとか
そういう理由で、いつも
言う事が違う人に育てられていたりすると
基準がわからないので、いつも
確かめながら行動するようになったり。
女の子は割と、かわいそうなのは
お父さんといつまでも一緒で居られなかったり
するし、その割にお母さんは
頼れなかったりするし。
日本人の社会、会社員である大人が
多いけれど
日本の会社は、割と賃金以上に
個人を束縛する事が多いから
それで、お父さんも
子供まで手が回らないとか
そんな、可哀相な事情もある。
お母さんは、まだ若かったりすると
精神的に未熟だし、どうかすると
お母さん自身が、曖昧な育ちかたをして
周りに合わせる事しかできなかったりすると
子供は、もっと不安定になる。
そんな、ななからすると
めぐや、こっちの人は
安定してるな、と
思ったりするのは当然で
長い歴史のある古い国と
わずか70年前まで、宗教国家で
考えを持ってはいけない、周りと
合わせなければいけない、天皇陛下万歳
一億総懺悔(笑)なんてやっていて
いきなり次の日から民主主義、なんて
言う不安定な国とは、やっぱり違うのだ。
でもそれは、選べないから
誰のせいでもない。
ななが、加藤の好みでないとしても
仕方ない事だ。
コンピュータで言えば、ハードウェアは
だいたい人間は同じである。
好みの入り込む余地はないが、それが
解剖学的な性別であるとしよう。
ブートアップでBasicInOutSystemが
決定されるが
それが、神経であるとか
生物的機能である。
オペレーティングシステムで、それらを
どう動かすか決まるが
このあたりから、人間には学習が関与する。
極端な話、同性にしか興味が持てないと言う
エルトンジョンのような人もいる。
加藤のように、嘘つきが嫌いなために
しばし嘘つきな女子や、狡猾な人は
面倒だ、と敬遠する人もいる。
日本では、貨幣価値変動のせいで
真っ当な労働より相場、商売、そんな
風潮がしばらく続いていて
それは、加藤のような人々の
最も嫌うところで
しかし、ななたちのような人々の
いた環境は
そうした損得勘定になんでも左右される
環境だったので
知らず知らずに、ななもそうしていたと
それだけの事で、別に
ななが気に病む必要はないのだが(笑)。
良し悪しでなく、好みの問題なので
必要とされるところに、行けば
良いのだ。
そうした、客観的な視点を持たない
ななは、相対的に加藤に否定されたと
思っているだけで
なな自身の価値が低いと思ってしまった、と言う誤解である。(笑)。
ななが、加藤から見てー1であったとしても
加藤の尺度が、+をーと見なしているのかも
しれない、などとは考えないのは
つまり、絶対的な尺度を学習してこなかった、と
言う事である。
そういう不安定な人は多い。
何故かと言うと、学校教育などでも
そこまでは教えないから、と言うのもあるし
教えて、教師や親が論破されてしまったら
面子が保てない(笑)とか
言う、教育不適格な教育者が多いと言う問題のせいもある。
コンピュータで言うなら、継ぎ足し継ぎ足しで
作ったOSのようなものである。
実際のコンピュータもそういうものが多いが、
人間でもそうだ、と言う事である。
ななは、自分のソフトウェアを直そうと
気づいた訳だ。
ななは、平凡なサラリーマンの父で
父の事は好きだったから
お父さんに気に入られようと、幼い頃から
行動していた。
それを、プログラムとして覚えてしまっただけ、である。
お父さんは、いつも正しい訳じゃないから
機嫌を気にしていると、安定したプログラム
ではなくなると言う事だ。目的値が
お父さんの気分、と言うのは。
model nana_think;
parameter real nana_wish;
real father_wish;
equation
father_wish=maximum;
nanafish=father_wish;
end nana_wish;
のような
単純な思考だが、それで問題なのは
お父さんが会社でいじめられたりすると
機嫌が良くならないので
ななは、困ってしまったりして
混乱する。
そこに、客観性があればいいのである。
if (father_damege=100 )then {end}else...
のような。
100と言う客観的な数値があればいいのである。
日本でも、個人商店のひとや、自由業の
お父さんなら安定感があるのは
自己責任で働くから。
会社、と言うと
日本の場合、上役が、そのまた上に
いじめられ(笑)みたいな構造なので
つまり、経済構造が相場主体に動くようになると
その不安定が全てを左右してしまう。
コンピュータで言えば、電源の電圧が
いつも変わるようなものだし(笑)
あまり家にいないお父さんの代わりに
お母さんは経済の影響を直撃(笑)されるし
感情的なひとも多い。
法律を守らないような、渡来人の文化に染まった
お母さんは多いので
そういったストレスを子供が影響する事も
多い。
大抵、頭の悪い人がイジメをするので
(理知的な人は、イジメても一円にもならない事を理解する)
法律で防御するのはいい事である。
当然だが、人間は
プログラムと言っても
電子的に記憶していない。
記憶細胞が、接続して
記憶するのだけれども
この仕組みは、そのままコンピュータ作りの時に
電気技術者が真似た。
大きな違いは、感情も記憶する事で
事柄を覚える時に
その時の気持ちも
覚えている、と言うあたりで
これは、進化の時に
危険な事を、事柄と
結びつけて覚えていた種が
危険を避けて生き延びた、と
そんな風に考えられている。
つまり、不条理な事が多いと
怒りながらいろんな事柄を覚えるから
始終怒っていた記憶を思い出す。
その感情を意味するのが、人間の脳みそでは
化学物質なので
例えば、怒りはノルアドレナリンとか
優しさはオキシとしん、とか。
そんな風にできているので
神様たちは、それを使おうと考えた。
加藤たちは、薬ではなくて
環境を変えたので
世代が変わるまで、しばらくの間
覚えていた記憶の傾向は続く事になる。
ななの、不安定だった幼い記憶は
変わらない、、と言う事だ。
つまり、国家が
先導して、貧富の格差を増やしているなら
そんな政治は不要な訳だし、国家など必要ない。
そう思う人たちが多いと
加藤たちの革命は上手く行くだろう。
神様たちも、そんな風に思うけれど
例によって手は出さない(笑)。
女の一生は短いなどと言って
家督相続が実効であるように装う国家に
騙されずとも、自然エネルギー源を
持っていれば、相続に因らず
死ぬまで安泰。
女たちも、焦って結婚をする必要もなくなる。
そもそも、女は
家庭を運営するので
束縛が多かったが
家庭、そのものが不要になれば
ただ、打算なく愛そうと
する人だけが選ばれる事になる。
それが、人種を好ましくする事は
多分、間違いない。
加藤とて、恋愛については
不幸な過渡期に生きてしまった、と言える。
生まれた頃の日本企業は、協調的で
国家主導の共和制、であった。
会社が倒産しそうになると、国が助ける。
それで日本は安泰だったから
日本人は、ゆったりと暮らせていた。
そういう時代、
加藤とて恋をしない訳でもなかった。
打算も偽善も不要な、幼い恋でもあるが
意味なく、ひとりの人を好きになり、
その人のためになりたいと思う。
子供だから、それは生殖の欲求でもない。
そばにいて、話すだけで嬉しい。
そういうものであったと加藤は記憶する。
雪深い北の地で、道の向こう側の
お菓子のお店の娘が、そうだった。
その子も、加藤に出会うと
恥ずかしいのか、頬を赤らめて
いたりするのだけれど
そんな、気持ちは
恋愛、なのだろうかと
加藤は思う。
加藤は、その地に
父の都合で来ていたのだが
それも父の都合で、東京に戻る事になったり。
それで幼い恋は終わりだけれども
加藤にとって、それは
美しい想い出のひとつであったりもする。
でも、恋ってそんなものだし
誰だって、無垢な気持で好きになってしまう。
それでいいのである。
そのあと、家庭を営むのが大変なのは
国家や都市生活が良くないので
なので、親類縁者で寄り添って生きていたのは
類人猿と同じ。
会社、なんてもののせいで
それができない都市が悪いのだ。
その会社ってのは、つまり資本を出す人の都合なので
そういう資本主義を、加藤はエネルギー資源の自由化で
破壊した、と言う訳だ。
都市なんて、物の怪のようだ(笑)。
好きな人の子供がほしい、って言う気持を
叶えられない国家なら、そんなものはいらないと
加藤は、その遠い日の幼い恋の思い出を回想して思う。
生活なんて面倒なものがなくて、心だけで恋して
しあわせだった頃に戻りたいと思っても、もうできない。
なので、ファンタジーに浸ったりする。
ファンタジー、幻想だけど
ひとそれぞれだ。
小説でもいいし、絵画でも映画でもいい。
心が楽しめるもの、つまい
機械っぽく言えば、快い状態に保てるもの。
過去に快かった時を思い出せるものでもいい。
ソフトウェアで快い状況を作れるなら
ドラッグは要らない。
お坊さんは瞑想でそうなるし
シスターはお祈りでそうなる。
加藤は、そこまで修業ができてないから(笑)
音楽を聴いたりする。
楽器を演奏する彼だから、器楽もいいし
歌も官能的である。
加藤は、たまたまミスター・メロディーと
言う歌を聞いた。
直接的ではないが、R&B歌手の
ナタリー・コールが、偉大な歌手の
お父さんを偲んで歌ったようだ曲。
ダイナミックな歌を聴いていると、それこそ
人生だと言う気持ちになってくる。
娘にそう慕われて、お父さんは幸せだろうと
思うし、それなら艱難辛苦を乗り越えても
娘を育てたいと思ったりするが
それもファンタジーだ。
リアルに、例えば自分の娘が
短いスカートはいて下着見せて歩いてたら
衝動的に殺意を抱くかもしれない、と
加藤は自分の危険性を思う。
彼は、国営の大企業を転覆させる程の
危ういところを持つ事を自覚しているのだ。
元々、男は誰しもファイターである。
彼もそうだ。
「でも、戦いは終わったんだよな」加藤は思う。
エネルギーがいつでも無限に入手でき
枯れる事がないから
もう、争う事はない。
家族、なんて小さいドメインを守る為に
戦うのは、家督相続と個人資産が必要だったから。
もう、誰でも富裕だし、資産家だ。
自由に恋愛して、人生を楽しめばいい。
古代の日本でも、子供は村の共同体で
育てる風習が、農村ではあったりした
が
近代でも、イスラエルなどには
まだ、そんな風習があったりする。
しかし、それも終わる。
無理に種を残す必要がないのだ。
人間としての知見を、データとして
ネットワークに残せば、それは
自己増殖するように広がって行く。
人間が滅びても、ネットワークが残っている限り。
「寒いな」加藤は、高原の研究所にいるので
寒さを感じた。
原発が停止して、昭和の時代の頃の
気温に戻っただけだ、と加藤は観測する。
200万Kwの原発があれば、熱の80%は
捨てているから、残る800万Kwは
環境に排出しているので
それで、日本は暑かった。
冬でも、原発の周囲の海には熱帯魚が
泳いでいたりした。
地球温暖化の原因は、原発だったのである。
その証拠に、停止してから冬が酷く寒い。
周囲の海が冷えたせいである。
24時間熱を膨大に排出し続ける原発が
停まって、よかった事のひとつだ。
地球温暖化も収まるだろう。
「ヨーロッパは寒いだろうな」と
加藤は、めぐたちの国を思ったり。
なぜか、ななの事は
気になりはしなかったが
そんなものである(笑)。