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加藤は、割と気づいていないけれど
自分が秀でている自覚がないので
それで、やっかみの対象になる(笑)。
おまけに、見た目も結構なので
それも、やっかみの対象になったりする。
日本よりも、どちらかと言えば
アメリカンに似合いそうな感じだ。
優れた研究をしても、優れていない人々が邪魔したりする(笑)それも人間だが。
女の子の場合は、もっとひどいらしい。
顔形、姿は割と
生まれつきで、努力であまり変わらないと
信じられている(笑)。
なので、愛らしいなな、などは
やっかみの対象になっていたりしたから
それで、あの店からは出ていく運命に
あったらしい。
そういう理由で、ダメな集団が
均一してダメなのは、当然である。
「イギリスで研究した方がいいんじゃないかなー」ルーフィは、そんな風につぶやく。
「どうして?」と、加藤は理解できない。
神様は、傍観してその判断は正しい、と思う。
比較的、新しい科学者に日本は理解が低い。
産業振興が第一だから、反物質融合、なんて
言っても理解できないだろうし(笑)。
核物質を消せる、なんて言えば
廃棄物を消せとか言われるのがオチ(笑)だろう。
「そうかもしれないね」加藤は、穏やかだ。
客観的なので、ルーフィの言葉が
すぐには理解できなくても、即座に否定はしない。
否定ばかりするひとは、論理的じゃないから(笑)
それは、どんなに有名な学者でもそうだ、と
加藤は経験上感じていた。
理由をまず考えてから否定するのではなく
即座に否定するひとは、大抵
威張りたいだけだあ(笑)と、いつも研究所でも
そう思っていた。
そういうひとは、大抵顔つきも強張っていて
目つきも鋭く、理論的ではなくて感情的、と
言う感じ。
ルーフィはそうじゃなかったので、なんとなく
お友達になれそうな感じ。
「ルーフィさんは、魔法使いをどうして辞めたんですか?」と、加藤。
ルーフィは、さらりと答える。
「自然にそうなったんですね。元々僕は、魔法で生まれた。アメリカンの主人の下に。
それは18世紀の事なんですけど。
それで、主人が眠りに入ってしまったので
目覚めてほしい、と思って。
力のある魔法使いを探して旅していた。
その途中、ちょっとした失敗で
並列世界に旅してしまった。
そこで、めぐちゃんに出逢った。」
ルーフィは、想い出を懐かしそうに語る。
「見た目、ふつうの人間に見えます」と、加藤。
「そりゃ、わしもそう思う。わし自身も人間の姿をしているだけじゃ」と、神様。
「化けてるんですね。タヌキぽんみたい」と、なな。
みんな、笑顔になった。
「ななちゃんだって化けてるでしょ、メークで」と、加藤。
「これは装甲なの」と、なな。
本当の顔を見せないように、と言う装甲
なのだろうか(笑)。
「それで、並列する世界、つまり、加藤さんや
ななちゃんの住んでいる世界に行って、めぐちゃんに出逢ったんです。
彼女は、僕の恋人のMegの過去に似ている
並列世界の住人で。
どういう訳か、僕を慕ってくれた。
それは、とても有り難い事だけど
僕は、魔法使いだし、Megもいる。
人間のめぐちゃんとは、元々生きる世界が違う.....」ルーフィは、少し言葉を曖昧に。
「それで悩んでいたら、魔法が使えなくなったんです。なぜか」と、ルーフィは言った。
魔法で作られた魔法使いなのに、魔法が使えないのは変だし、消滅するのがふつう。
そんなふうに、ルーフィは言った。
「めぐちゃんが、がんばってくれたから
僕は人間でいられる、って事ですね、神様?」と、ルーフィ。
神は、うなづく。
「そうすれば、めぐちゃんの希望は叶わないのに。もうひとりのめぐちゃん、Megの幸せを考えてそうしたんだろうね。なんてステキなんだろ、めぐちゃんは」と、ルーフィは感激した。
元の世界に戻れば、魔法を失ったルーフィは
もう、異次元のめぐに会う事はできなくなる。
でも、別世界で幸せになってほしい。
そういうめぐの望みで、アメリカンの神様は
特別に、ルーフィに生命を与えたのだろう。
めぐは、前世で
ルーフィに、命を助けられているけれど
今のめぐは、その事を覚えていない。
ルーフィは、そのことにとても
感激したのだろう。
助けられたお返しではなくて、ルーフィと
Meg、つまり自分の並列世界の存在の
幸せを願っての事、だから。
加藤は、ふつうの人間だから
そういう魔法使いの世界認識がよく理解できない。
地上に生きて、2次元の平面を動き
せいぜい飛行機に乗って3次元の移動をするくらいで
+時間で4次元、それ以上の多重次元に
どうやって移動するのかなど、数学的に
式を書けるくらいだった。
モデルならもちろん{0.0.0.0...}と
座標が4つ以上になるだけで計算はできるのだけど。
反物質は、常に隣接しているが
別の次元に存在する。
隣接時空間は10^500もあるのだから
その中のいくつかが並列していても理論的には
不都合はない。
科学者としての加藤は、会話していても
そんな研究の事を、いつも考えているのだった。
なので、損得の話とか、男女の話とか
そういう話題に興味がない(と言うか、雑音にしか感じない)のであるが
別に、加藤自身はそれが高級だとか
偉いとか思った事も無かった。
面白いからしてるだけ、で。
なので恋愛も、そういう時期が来たら
するものだろう、ぐらいにしか
考えていなかった。
ルーフィが、そうであるように。
「じゃ、とりあえずどこかでお茶でも」と
ルーフィは、イギリスふうにお茶に誘う。
ななのオレンジいろのマーチに乗って、郊外を
ドライブしようか、と思ったけれども
ななはイギリスの免許がない(笑)ので
とりあえずルーフィがドライブ。
「右ハンドルなんだね。」と言って
長身のルーフィは、シートを後ろにスライドさせた。
」
加藤は、すぐにスウェーデンに飛んで
加速機で、反物質の確認実験をした。
予想通り、物質の側にあるヒッグス
粒子配列は規則的だった。
「つまり、隣接時空間ではそれらが真逆のはず」と、計算して
粒子をぶつけてみると、物質は光子に戻る。
反対に、反物質から物質を作る事も可能だ。
「ただ、人間の科学ではいまのところ
巨大加速機が必要だ、が。」
スウェーデン王立研究所ではそこまでにしておいて、加藤はすぐにイギリスに戻り、ルーフィたちに礼を述べた。
「いろいろありがとう。これで、人類は救われる」
ルーフィは「あの式を、どう使うんですか?」
「とりあえず、常温超電導を実用にします。それから、重力加速エンジン、光子エンジンを作ります。」と、加藤。
超電導は、陽電子が陰電子を連れて金属の中を通るので電子同士が譲り合って、電気抵抗=0になる現象。
ふつうは冷やさないと起こらないが
金属中の電子の軌道を変える事など、反物質を使えば容易い。
その金属を、常温超電導物質として作れば良い。
重力加速機は、その隣接時空間を操作して
(めぐたちが空を飛ぶように)エンジンの
釣り合い錘の質量を一時的に
を増減すると、エンジンは回転しつづける。
焼玉エンジンのような、簡単なものでいい。
光子エンジンは、超電導状態を加減することで
光子を引き寄せたり、離したりする事で
推進力を得たりすることができる、いわは
原始的機関だ。
どれも、クリーンエネルギー。
無尽蔵に得られる。
「すごい。18世紀には思い付かなかった」と
ルーフィ。
「それは、イギリスふうジョーク?」と、加藤は笑った。
皆も笑った。