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重い鉄扉は、地下駐車場の

壁に点在しているが


そこに空間があると言う事を暗示している

かのようだ。



ジョナサンは「もう、地下鉄が出来たのかな?」と、ななに告げ




ななの表情を見て、どことなく察する。



「ななさんには、好きな人がいるのでしょう。


すみません、僕がいけない。

気づかなくて。ななさんを

愛してしまいそうでした」と、ジョナサンは

ジェントルマン。




科学の子だから、ななのように

幼い頃の親に嫌悪を持っているような



テンションもなく、健康的だ。




その事で、ななは



加藤を連想したのだった。





「わたしこそ、ジョナサンと


行きずりでもいいから恋してしまいたいと

思った。でも、それはいけない事。」





動物的な繁殖の為のプログラムを

楽しむ、汚濁した女に


もう少しで陥るところだった。



恋、と言う言葉を

使ってはいけないところなのだけれども。




「ジョナサン、ありがとう」と、ななは

少女の気持ちを思い出させてくれた彼に


感謝の気持ちを伝えた。



実らなかった恋だけれども、加藤との素敵な

思い出は


一生、大切にしょうと

ななは思う。



それだけで、ずっと

幸せに生きていけそうな、そんな気になる

ななだった。




いつか、おばあさんになって

からでも



素敵な思い出があれば、いつまでも

青空のようにさわやかに生きていけそう。




そう、ななは感じる。



でも、ななは

それなりに26才だから。


自分の体が魅力的だと無言で訴えている。


生き物だから当然なのだけど


子供を宿す、女として生まれた

性質で



600万年前は、社会も経済もなかったから

好きなように、衝動で

繁殖をしていった、そんな記憶が

ななにももちろん、ジョナサンにもある。



家族や経済、社会や租税、収入とか

変なもののせいで、人間は自由に恋愛が

できなくなった。


例えば、不安定な暮らししか送れない

かつてのなな、みたいな

派遣社員だと、例えば

婚姻は難しい。


子供でも出来たら、お金が掛かるのに

そこで派遣終了、なんて事になったら


子供がかわいそう。




そう思うと、婚姻もできない。



少子高齢化社会の原因は、派遣なんて

制度を作った国、だったりするのだ。



その、金銭も経済も、加藤が壊したし



エネルギー革命のせいで、派遣、なんて

事して働かなくても


良くなったし、働く必要もなくなった。




その派遣、なんてものも


一部のお金儲けが好きな人のせいだったから

ついでに、加藤が壊してくれた(笑)。




だから、ジョナサンと行きずりの恋に

墜ちても別ににいいのだけど



やっぱり、そうはできないのが

なな、だし


だから、神様が魔法をくれたのだろう。



神様は、そんな二人に

天から、ささやく。



「生命体は、そういうものじゃ。

別に、恥ずかしい事じゃなくて

人間は、社会があるから

繁殖のプログラムを隠蔽しないと

社会が、繁殖の場所になってしまう(笑)と言うだけじゃ」




実際、生命体にしてくれと

願って生まれて来た訳ではない(笑)。


勝手に、繁殖をするようにできているだけ、だ。



プログラムと言っても単純なもので




赤ん坊のような声、丸い体つきの曲線、

あるいは匂い。



そういうものに触れると

大切にしたくなるだけで



雄の場合は、遺伝子を残そうと

媒体を移動させたいと


行動する。




それだけなのだ。



それは、人間としての



たとえば

なな、や

ジョナサンの人格とは無関係に生じる。





生命体、この地球に発生したのは


当初は、水の中で

太陽の光から、炭酸同化作用で


有機物を作り、酸素を

作るような


微生物から始まって



その有機材の中から



収縮するタンパク質が発生した。




収縮と弛緩で、運動ができる。


筋肉のもと、である。




そうして、動く事ができるようになると



それが、動物のもと、になる。




その頃は自己増殖だから



自分の複製を残そうと

遺伝子が複写を始める。



そうすると、ひとつのフィールドが


狭くなるので



ふたつにわかれようとする。




そうして、めでたくふたつに別れると



それが生命体の誕生である。



別に、尊くもない(笑)。




すっと、飛んで


人間、ななやジョナサンの体の中でも



遺伝子が複製をあちこちで残している。


ただ、遺伝子を後世に遺そうとする

媒体を作る器官でも

媒体が増殖するので


放出したいと要求する、それだけだ(笑)。



なので、別にそれは

恥ずかしい事でも

何でもない(笑)



ただ、好みの相手でないと

繁殖したくないと言う部分は


そうして、様々な種類を

残したので



人間が生き延びた、と言うだけの事だった。





それは、文化にも言える。



損得だったら、損より得した方がいいに決まっている。




得すればうれしいのは



極めて生物的な感覚である。



でも、損得をするのが


資本家で



労働者は、資本家の損得のために


無理矢理残業をさせられたり(笑)



損得のため、と嘘ついて


労働者をイジメたりするのは

損得ではなく、醜い

資本家たちの心に住む悪意であるが



言って見れば、それは


増殖できない不幸な遺伝子媒体が

死んで行く断末魔の叫び、である。



遺伝子媒体のタンクが満杯になると


ストレスが掛かるが



機会に恵まれず


つまらない損得のために

明け暮れる

主に、年老いた資本家たちは



自らの存在を主張する事くらいしかできない。




他に楽しみを知らない愚かな人物なので


自己主張くらいしか関心がないのだ(笑)。



イジメの方法を考える暇があったら


金儲けの方法でも

考えた方が


順当だが



それほど賢くないのだ。




(笑)


ジョナサンは、鉄扉のドアノブを

ひとつひとつ、捻ってみた。




「開かないよ」と、ななは

ジョナサンのひたむきさに笑顔になる。



蒲田区役所の地下から、JR蒲田駅の方向に向かって

地下トンネルを掘ろうにも

それには、駅地下の東急ストアを移転して



東急目蒲線を地下に移す必要がある。



その工事はまだだ。





でも、それならどうして地下駐車場に

扉があるのだろう?





「開いた」ジョナサンは

扉のノブの一つが、たまたま鍵が

掛かっていない事に気づき



それを捻る。




大きな防火扉のような、鉄の扉は

重々しく開こうとして

軋み音を立てた。




「止めて、ジョナサン、怖いよ」ななは

ジョナサンの後ろに立って


彼の上着を引っ張った。



暗闇を恐れるのは、近代の人間の感覚である。


灯りがなかった頃は、日暮れの後は

闇だったし



人類以前には、樹上で生活していたが

やはり、夜は闇だった。




樹上で生活すると言う知恵が無ければ


やはり、夜は他の動物に食われると言う

危険があったので



それは怖い、ものであったろう。



ななは女の子だから、もちろん

防御的である。




それも、人類以前からそうで


雄に襲われると言う危険を避ける為の

知恵、である。



近代文明社会でも、法律が護る、とは言うものの


襲われてからでは遅い。


現に、派遣社員時代に

大塚のような男が


仕事を装って、夜遅くに

会社に呼び出したりする(笑)。



そういう危険を避ける経験的に

女の子は、防御的だったりする。





だけれども、遺伝子にそれがあるのなら

ジョナサンにもそれはあるはず、だが



少年、ジョナサンの冒険心と言うか


過大な行動力が、向こう見ずな事を

彼に誘う。





ドアを開き、隙間から足を踏み入れようとしたが....



暗闇を恐れる感覚は、そんな風に

長い時間を生きてきた人類の経験の

蓄積であるから



それなりに信憑性があると言える。



なので、科学の子ジョナサンにも

ふつうの子(笑)ななにも通じる。



だけど、生まれてから学んだような事は


本当か嘘かわからない事もあるから



闇雲に信じるのは、それこそ

暗闇を恐れないような無謀な事だ。



例えば、教師がしているからと言って

勉強のできない子供を見下す、なんてのも

誤りのひとつで


教育基本法にそんな事は書いていない(笑)。

学習指導要領にもあるはずもない。



そんな、虐めは

教師の醜い自己顕示であるし、違法なのだが

そんな事は、たとえ教師がしていても

間違いだ(笑から、通報すればいい。)



勉強が出来なくても、発明家になった人もいる

(笑エジソンもそうだ。)





「!」ジョナサンは、足元が怪しい事に気づき

墜ちてしまいそうになった。




上着を掴んでいたななは

反射的に、助けようとして


身体が浮いた。



ななは、反射的に

空飛ぶ魔法を使ってしまって(笑)


暗闇に落ちるのは避けられた。



でも、ジョナサンは「ありがとう、でも

穴に下りて見たかった気もする」と、少年らしい冒険心を少し、忘れていない。




クリーム色の鉄扉を閉じて

ななは「落っこちたら痛いかも」と、笑う。




そだね、と

ジョナサンも笑った。




科学の子、ジョナサンは母も父も知らないけれど

それだけに、正しい教育を得ているので


いろいろな行動にも、正邪を見極める。



1960年代くらいまでは、アメリカンでも

それがふつうだった。




もちろん日本でもそうだったのだけど


正邪を見極められると都合が悪い人達が

正しい事を教えなくなったので


その人達が大人になる頃、世の中が

暴力的になったりするのは


割と、当たり前かもしれない。



どうしていいか、解らないのだから。





嘘を教える人も多い。



ドイツ人音楽家ワーグナーが、ユダヤ人

音楽家メンデルスゾーンを匿名で

非難したりした、とか

歴史的事実だけど



でも、周りがみんなそうしていたら

ドイツ人として、ユダヤ人を差別する

事が良くない、と

判断する事を、ドイツ人社会で

知る事は難しいし



そう教わる事も困難だ。



正邪と言うのは、そういうものである。













神様は、そんな彼らを天上から


微笑みながら見下ろし「自然の子供と

科学の子供か。いつか、どうなるのかの」と


少し未来を覗いて見たくなった。


神様は、その、少し先の未来を覗いて見る。



変わりないような世界で、ひとびとは

楽しく暮らしている。


家族を持たなければならない事もなく


望めば、子供も産めるけれど


女といえども、出産から解放されたい人は

そうする。




ジョナサンのように、科学的に生まれてくる

親のいない子供も増えた。


そういう子供達は、子供達同士で

コミュニティーを作って育つし


国の共同保育園で、豊かに暮らすから


かえって、妙な親のエゴイズムを知らずに

育つ分健康的で


魅力的な人間になる。



変な自己顕示とかは、ほとんど

親の強要による切迫観念のせいなので



そういう、おかしな闘争心もない。



平和で穏やかな子供達は、それでも


愛に目覚めて


恋したりする事もある。




父親が不在がちの家庭の男の子みたいに


変な母親に強要されて



男性としての自立が遅くなる、なんて事もない。



反対に、女の子が


父親のような男性を好む、なんて事も

少ない。




それでも、やっぱり

メンデルスゾーンと、アンデルセンみたいな


三角関係が起こったりするけれども



不幸に思い込む事もない。


過剰に思い込むのは、それも

育児の失敗による強迫観念である。




自然のままの類人猿のように、社会に

過度に抑制されなければ、親とて


子供達に強要する事もない。



それら強要は、大抵

仕事か何かで時間や金銭の余裕がないために

子供を大人の都合で支配しようとして起こす

ものだ。



なので、会社も金銭もない世界なら


大人もむやみに強要する事もない。




人類有史以来あった、農耕と牧畜より

生じる貯蓄の概念、転じて

貨幣の存在が



めぐりめぐって信用貨幣となってから

起きた異常な不公平は、全て

加藤の破壊行為で消え去ったのだった。


そうして、快い事ばかりに触れて

育った子供達は


朗らかになる。


医学的にも認められているが


脳神経の接続点で、グリア細胞が

グルタミン酸を制御しており



不快な事が度重なると、制御が壊れ

グルタミン過大になったりして



快いと感じなくなる。




みんなが自由に生きられるようになって

科学の子供達は、そういう危機に遭遇する

事はなくなった。



何の事はないが、不快な事のほとんどは

嫌な人や集団と付き合わなくてはならない

から、起こるので




働く必然がなくなれば、嫌な事を

する必要もない。




嫌な事をしなくても生きて行けるからである。




そうして生まれて育った、科学の子供達2世は

生まれつき、自由だ。



もとより規制されなくても、原野で

自由に生きて行けるし



親のようなものが規制しようにも

親そのものがいないので

思い通りに生きて行ける。




人間は、原始に戻れたのである。




いや、原始よりも自由なのは


エネルギー源が永久にあるという事で

狩猟も採集もしなくてもいい。



租税も無くなったし、そのせいで

住民登録などという面倒なものもなくなった。


どこに住んで、何をしてもいいとなれば



一日を、ほとんど開拓的に

過ごす事になる。




そういう環境なら、快い事に

満ちているのだろう。






神様は、そんな人間たちの


近未来を天上から見下ろして




「進化が進むと、どうなるのかのぉ」と


興味は続く。



神様は、感慨を以って

地上を臨む。


「人類の進化じゃの」



環境適応と言ってもいい。



生き物が、環境に合わせて生きていく

性質である。




浜松医大の研究で言えば



不快な事が続くと、脳内のグリア細胞が変化して


いつも気分が不快になってしまう、と言う

性質を見てもそうで



不快、つまり


いつも環境中からストレスがあると


そのストレスに備えるために、防御適応を

しなくてはならないので



故に不快な気分が続くのであろう。



見えざる敵からの防御である。



人類に進化する以前は、天敵があって


ジャングルの中で、いつも防御を考えて


生きていた人類の始祖たちは

ある時、樹上で暮らす事を覚えた。



その環境では、猛獣もいない。




そうすると、人類の始祖たちとの


同類同士の、割と安全な争いが



その、防御の対応であった。




人類に進化して、社会を作ると

今度は、人間たちの争いが


その、防御と攻撃の目的になったりする。




主に、それは損得とか言う概念の影響で

つまり、貨幣が起きて経済があるせいである。



イジメも差別も、結局は損得であり

正義も悪もそこにはないことから

それと分かる。




神様の視点では、誠に不思議な事である。



意味なく争っても、何の利得もなく

エネルギーの無駄なのだ(笑)。




つまり、天敵がいなくなって

暇になった人間の欲望が、それを齎したと

言う事なのだろう。




それを、一人の科学者と魔法が

破壊し、貨幣も経済も無くし


損得と言う概念のない人間社会になった事で



子供達は、醜い人間の争いから解放されて

永遠に子供達のまま、生きていく事が出来る。




子供達同士で愛しあって婚姻する事も出来るし


原始社会のように、家族ではなく

共有した群れで生きる事もできる。



ひとりで生きる事も、もちろん可能だ。





ただ、生きてしまった為に


人間として生れついたので


かわいいもの、愛らしいものを

愛でたい、そばに置きたいと

思ったりする。




そうしないと、不快になるのは

行動力が余ってしまうからである。


(笑イジメをする人が、可愛いくないのは

そのせいだ。)




歌い踊る、文章を書く、映画を作る。


楽しみの為に人間は動くようになる。









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