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そして、動物として

種を存続する事からも解放された

人間たち。




ジョナサンのように、母も父も存在しない

人類もいる。



でも、愛を知らない母や父なら

いない方がいいのかもしれない。





ななのように、人間から生まれて

育てられても



父や母が、社会に苛まされて

傷ついた心では



その痛みからのストレスで、子供が

傷ついてしまったり。




そんな社会なら、ないほうがいい。





人が人として、幸せに生きられないなら。







ラーメン屋さんの中国人たちは、祖国から

日本に出てきた。





だけど、平和だし


祖国の人々ばかりか、中国を侵略した

日本人を助けて、一緒にラーメン屋さんで

働いたり。



べつに、有名なラーメン屋さんになっても


食べ物の値段を上げたりもしないし



有名な事を自慢したりもしない。



食べ物を作る事が好きなのだ。





ななも、そんなに中華好きでもないけれど


その美味しさは解るから


わりと、わかりやすい美味なのかもしれない(笑)。

そして、動物として

種を存続する事からも解放された

人間たち。




ジョナサンのように、母も父も存在しない

人類もいる。



でも、愛を知らない母や父なら

いない方がいいのかもしれない。





ななのように、人間から生まれて

育てられても



父や母が、社会に苛まされて

傷ついた心では



その痛みからのストレスで、子供が

傷ついてしまったり。




そんな社会なら、ないほうがいい。





人が人として、幸せに生きられないなら。







ラーメン屋さんの中国人たちは、祖国から

日本に出てきた。





だけど、平和だし


祖国の人々ばかりか、中国を侵略した

日本人を助けて、一緒にラーメン屋さんで

働いたり。



べつに、有名なラーメン屋さんになっても


食べ物の値段を上げたりもしないし



有名な事を自慢したりもしない。



食べ物を作る事が好きなのだ。





ななも、そんなに中華好きでもないけれど


その美味しさは解るから


わりと、わかりやすい美味なのかもしれない(笑)。

ジョナサンは「ごちそうさまでした」と

日本語で言ったけれど



「ああ、中国語だとなんて言うの?」と

言って、店の中国人青年を笑わせる。



「にーはお、は、お店の名前か」と、ななも

わからない(笑)。




お店に来ていた人々は、みんな

近所のおばあちゃんとか、おばさんとか。


なぜか、おじいちゃんは少ない(笑)のも



よくある事。





その、誰もが楽しそうだと

ななは思う。




この店は、経済がどうなっても

以前からずっと、和やかであったのだろう。




そんなふうにななは思い




ごちそうさまでした、と


お店を後にして

ジョナサンと、お店の外に出て

京浜急行の線路を斜めに見上げながら

公園の方に行った。





お年寄りたちが、和やかに

ゆったりとラーメンを食べられるのも

老後が心配でなくなった事もある。



年金、などと言うものに頼らなくても

生きている限り無尽蔵のエネルギーが

得られるから、で



そのために年金に加入しなくても

良くなったななたちも、実際に

お金の為に働く必要もなくなった。




財産も貯蓄も不要なのだ。



でも、やっぱり、ななとしては

話相手くらいはほしいと思う。



「ジョナサンはさ、ひとりで生まれて来たんだよね」と、ななは尋ねる。




「そうだけど?」ジョナサンは不思議そうに。


公園の入口の車止めを跨ぐ、長身のジョナサンは

さすがにアメリカンだ。





「淋しいって思う事ない?ひとりで」と、ななは

公園の生い茂った木々を見上げて。





「べつにないなぁ。ずっとこうだったし」と

ジョナサンはにこやかにそう言う。




「家族、そうね。

わたしも、いなくてもいいって

思う事もあるけど

」と、ななは

自分が意図を持って話しているのではない

けれど


でも、なんとなく

心淋しいのかな、なんて

自分自身でそう思った。




公園には、幼い子供やお母さんたち。



楽しそうだ。




ちょっと前みたいに、ママ友、なんて言う

気持ち悪いシンジケートも見られないのは



ママたちが、みんな自由だからだ。




かつてのママ友、なんてのは

たいていどこかで会社とか、学校とかの

利害関係が重なっていて窮屈な、女同士の

無法地帯(笑)だったりしたのだけれども



それも、元々は


経済が無秩序で、基準が無かったからだ。




会社の上役だから威張っていい、とか

差別していい、なんて事はないのに



そういう事が流行っていたのは

みんな、そのせいだ。





自分の中の悪を許してしまう、幼稚さが

あるのは




つまり、そういう父母に育てられて

真似をしているから。




自分が父母になった時、同じ事をしてしまうし

仮に会社で管理職になった時、部下を

イジメてしまうのも。



自分が格好悪いと思わないからだ。






ジョナサンは、科学によって育てられたから

そういう間違いを冒さないだろう。




もちろん、ななたちのように

経済から

解放されれば、べつに


子供を産んで育てたとしても、

子供に当たる事もない。




たいてい、母親が子供に当たるのは



社会からのストレスとか、時間がないから、とか


お金がないから(笑)。




そういうものは、みんな経済からの抑圧である。




損得もない、貧富もない世界なら


子供だって明るく育つのだ。




もっとも、貧乏だって

べつに明るく育ってもいいのだ。



楽しそうに公園で遊んでいる子供達を

見て、ななは気づく。



猿のような叫び声を上げて暴れる子供が

いないし、表情がとても愛らしいのだ。



「かわいいね」と、ななは声に。




親たちもにこやかで、のどかに

笑いながら会話をしている。



ここは蒲田で、どっちかと言うと

裕福な人の住むところでもなかったけれど



それでも、下町の昔からの住人は

いがみ合う事なく暮らして来た。




都市の暮らしに、江戸時代から

慣れて来た人々は、アメリカの黒人のように


陽気で楽しそうだったことを

ななも覚えている。




暮らしが貧しいと言っても、ものを欲しがる

訳でもなく



日々の暮らしに落ち着いている。




どこの土地でもそうで、移住してきた者が

妙に都会人のふりをしたりするけれど


400年前から江戸に暮らしているような

人は、土着の田舎者っぽい(笑)

温かみがある。





「ななさんは、子供好きですね」ジョナサンはにこやかに。





「うん、うるさいとか思ってたけど、今はそう思う」と、なな。




小さな子供達は、公園の砂場で遊んだり



噴水のお水に触れたり。




のんびりとした時間を過ごしている。



ジョナサンは「いいですね、子供好きなのは。

僕も、子供好きです」と、父母の記憶はないので

ジョナサンは、それだけに

遠い人類発祥からの記憶に基づいた言葉を

紡ぐ。


誰にでもある気持ちなのだけれども

ふつう、父母からの影響が大きいので

忘れかけているのだ。



本当は、誰だって子供を愛しいと思う

記憶が、心にあるのだ。





ななも、その記憶を

思い出して




そういえば、加藤さんは

最初から自由な感じで

ストレスがなさそうだったな、なんて

思い出して


科学の子供、ジョナサンと

似てる、なんて

思ったり。




風の渡る公園で、ゆたかな時間が

過ぎている。


ラーメン屋さんから、公園の中を通って

ななとジョナサンは、お散歩。


こういうの、いいな、って

ななは思っている。


すらりとした長身の美青年ジョナサンと、デート(笑)



ななは小柄だけど愛嬌のある子なので、美形の長身に憧れたりする。







区役所の方から、そんな、ななの気分を壊す男が近づいてきた。


大塚である。


毟れたような茶髪と、ずんぐりとした短躯、蟹股だったが

今は、平穏な社会になったせいか、穏やかそうな表情になって


以前、派遣先の課長に取入って、深夜に

ななを会社に呼び出したりした男と同じ大塚、とは思えない。


以前は、無意味に偉そうな表情だったのだけれども。





「斉藤さん」大塚は、ななの名前を呼ぶ。



ジョナサンの存在に気づき、少し緊張の声だ。




「どちらさまですか」と、ななは冷たい(笑)。



今はどうなったか知らないが、卑怯な手を使って

女の子をモノにしようなどとは最低の男だ、と

ななは思ったから



防衛である。




ななは、忘れなかった。


大塚が、サッカーのワールドカップを

会社で応援しようと


夜の10時半に会社に集合と言って来たのだった。



もちろん、ななは

そこで何が起こるのか想像がついたから

行かなかった。



そんな事をしてまで、派遣の仕事を

続けたくなかったからだ。





「俺は、いざとなったら

君を守るつもりだった」と、今は穏やかになった

大塚は言う。




その言葉をななは受け流し「そんな事はどうでもいいの。それなら、私を呼び出したのは何故?断ればいいでしょう」と、ななは

過ぎた事で、忘れかけた事を

いつまでも気にしている大塚が


粘着で嫌だ(笑)と思った。





イジメに関わると、大塚だって

上に逆らえばイジメられる。



そんな事はわかってるけど、もし、なな自身を

心配するなら、呼び出したりせずに

守るのが男だと、ななは思った。


大塚自身が安全で、ななを危険に晒して

何が守るだろう、とも(笑)。




「仕方なかったんだ。派遣から社員にしてやるって課長が言って。」と、大塚は情けない顔になったけれど


ななは、顔もみたくないと思った。


反論もしたくない。



関わりたくないと思ったけど




「誰よ?主犯は」と、ななは

わかっているけれど聞いた。






「杉山」と、大塚は言った。



杉山と言うのは、40くらいの容姿に恵まれない

ふて腐れた女で



イジメグループのボスだった。




ななの容姿を妬んで、そういう悪事を

企んだのだろう。




それらも、皆過去の事だと


ななは思う。




今は、平和な世の中で



そういうイジメ、とかも

みんな貨幣流通経済に投機性があるからだ。



損得があるから、損したくないから


群がって、得したいと思う

憐れな悪者たち。



でも今は、損得はなくなった。



それも、加藤の発明のおかげだ。





ななは、加藤を思い出す。




そんな、杉山や大塚の嫌がらせを

ものともせずに超然と笑顔で過ごしていた。


それなので、派遣先の社員たちが


劣等感に駆られるのだった。



何をしても相手にされず、感情的にもならない

加藤。


正しい事をしている、などと言う

主張もなく



ただ、相手にしないだけの彼。




イジメなどと言うものは、べつに


気にしなければどうと言う事もないものだ。





そう言外に言っているようだ加藤が



イジメに抑圧されている彼ら全員の


愚かさを自認させ、劣等感を刺激するので


(笑)


なお、彼らは加藤を敵視するのだった。




その事を思い出し、ななは

やはり、大塚を嫌いだと思った。




瞬間。





ふわ、と


ななの体が宙に浮いた。





反射的に、ジョナサンの手を取ると




あれ不思議。ジョナサンも宙に浮いた(笑)。



忘れていたけれど、ななは

神様から飛ぶ能力を貰っていて


飛びたいと思うと、飛んでしまったりする。



大塚をみたくないと思ったから



飛んで(笑)



ジョナサンも一緒に。





「変な男だね」と、ジョナサン。


科学の子だから、正義や平等は解るけど

利己とかは理解できない。




「なんで、法律で禁止してるような事でも

会社の上司が言えば従うのだろう」と。






「そういうところが変だったの。日本は。

派遣なんて制度がいけないのよ」と、ななは実感。



お金を払えば何をしてもいい、なんて

絶対変だ。



自分がブスだからって、可愛い女の子を

イジメる杉山も変だ(笑)。

ちょっと笑顔になれば、誰だって可愛いくなれるのに。




それで、その派遣先を辞めたのだけど。




もう過去のこと。




今では、派遣制度もなくなり

日本には平和が訪れた。



損得勘定が、日本を蝕んでいたのだけれども


それは日本人に化けた渡来人が仕組んだ事だった。









宙を舞いながら、ななとジョナサンは




「空もいいですね」と、小鳥みたいに

ふんわり。




でも、小鳥だって

のんびり飛んでいる訳でもなくて




食べ物を探したり、繁殖の相手を探したり


忙しいのだ。




一生は短いのだから。





人間は、加藤の発明と

ルーフィの伝えた18世紀の魔法のおかげで

その何れからも自由になった。



いくらでもエネルギーは得られるし、

繁殖だってしなくてもいい。




でも、元々生き物だから



好き嫌いの感覚や愛は

600万年前から変わらない。




ななは、ジョナサンの事を

好ましいと思う。でも、恋愛の対象には

ならないような、そんな気がしていたり。



安心して委ねたいような、そういう気持ちに

なりたいって。



ななの心はそう言っているようだ。



ななは、宙に浮いているのが

心許ないので

すぐ近くの区役所の屋上に降りた。


羽田空港が遠くに見え、京急の3階建線路が

すぐ近くに見える。




ジョナサンは、楽しそうに「空飛べるのって、すごいね」と喜んだ。




それが、神様に貰った能力だから

ななにとってべつにうれしい事でもないけれど(笑)。




でも、秀でているから嬉しいと言うのも

変だとななは感じていた。




幼い頃から、ななは愛嬌のある少女だったけど

あまり勉強は得意ではなかったりして。



それは、学校の教師が

勉強の成績の優劣で生徒を差別していたりするからだったりして



そんなものなら勉強なんてしたくないと

思ったのもあった。




それも、実は

教師たちが損得の勘定に毒されていたからで



本来の教育は、学ぶ楽しさを教えるものであるのに



教師たち自身が、それを知らず


利己のために成績の優劣を

攻撃の手段にしてしまっていて



結局は、それで職業を得て

金を得るために勉強をしていたのだから


貨幣流通経済の、貨幣価値が絶対的でないからいけない、と言う事である(笑)。





貨幣が無くなれば、理由をつけて

攻撃をしなくても良くなるのだ。



何故ならば、攻撃しなくても

エネルギーは潤沢に、永遠に得られるので



攻撃に無駄エネルギーを使う理由はないし

疲れるだけだ(笑)。




元々心に劣等感がなければ、優位なものを

攻撃、と言う


優位、と言う羨望もなくなるのである。



別に、経済がどうであれ

好ましいひとは、好ましい。


ななにとって、安心できるひとなら


近くにいて、頼りになってくれると嬉しいって

思うし




別に、家族でなくても

恋人でなくても。



男の子でも女の子でも、別にいいって思う。




それは自然な気持ちだし、生き物としての

群れの名残だったりする。



変に家族とか、って線を引いて

分けたがるのは、損得勘定のせいで




いまでは、誰でも無尽蔵のエネルギーがあるのだから


損得なんて気にしなくてもいいから




別に、自由に恋愛してもいい。






それはそうだけど、でも古いタイプのななとしては



やっぱり、男の子ジョナサンと、いきなり

恋愛するというのも(笑)




変だ、し

はしたないって思う。




そう、慌てて恋愛したり

結婚しなくても


別に生きていけるのだ。



屋上の風に吹かれて、ななは思うけど




「どうやって降りようか?」と、大切な

事に気づいた、ななだった(笑)









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