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【詩集】手になじむ詩

古代魚の瞳 胸の中

作者: につき

古代魚の瞳


磯より海中へと

膝、腰、胸、頭の先まで

沈んだ石段を下りていく

泡は儚い蝶の白くはたはたと昇る

青と緑の戻れない静まり

ときおり過ぎる魚の群れ

銀に黄色に赤に青に

差し込む光の八方へ散らばり

揺らめく影の落ちる底へと

御影石の鳥居を潜り

貝に覆われた狛犬の間を抜ける

もうすぐ光は見えなくなる

行き着く先の暗い回想

三度澄んだ音が鳴る

燈明の灯と棚引く煙

紫檀に金文字の戒名が光る

もう一段もう一段と

落ちて行けば

奥底で鈍く光る

巨大な古代魚の瞳

「おまえはなんなのか」

問いかけに、わたしは確かに答えた




胸の中


かつて胸の中に泡があって

あるとき潰れそうになったのに

はたして潰れず


かつて胸の中に血の塊があって

あるとき破裂しそうになったのに

はたして破裂せず


いま胸の中には隙間があって

しゃがみ込んでいたわたしが

逃げ出してしまった


いま胸の中には洞があって

何だか小さな動物が

雨宿りする

お読み頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 泡が弾けたり揺らめいたりして、何か別のものにフュージョンするイメージが、とても美しく浮かんできました。 「胸の中」のほうでは、最後の一文がすごく好きです。 痛みよりも空虚よりも、小さな生き…
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