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 勇者一行+影武者 VS 巨人の堕慧児

 

 オッズは9.999:0.001 ……といった感じか?


 冗談抜きで、アレンが勝てる可能性を敢えて見出すなら……複数付与された加護による巨人の堕慧児の自滅しかないだろう……。


 

 加護は祝福と違って、効果が独特な分だけ、取り扱いが難しく。

 さらに、加護と同時に制約的なものが与えられる事も珍しくない。

 

 例えば、虚栄の邪神“イリーテュム”の加護“理想の投影(イデアル)

 

 これは以前述べたように、己の理想とかけ離れた現実を、己の妄想に基づいて改竄する能力となるのだが……。

 

 それはつまり……“常に理想の自分”であり続けなくてはならないと言うことだ。

 

 裏を返せば“理想を常に追い続けなくてはならない”ってことでもある。

 

 分かりやすく言うならば、夢が叶って、夢が夢じゃなく成った瞬間……理想を抱く必要が無くなった瞬間―――

 

 ―――加護は失われ、理想は空想に戻る。

 

 厳密に言うならば……“役目を果たしたので消滅する”……と、称するべきだろう。

 

 祝福が失われることは無いが……加護は、失われることがある。

 

 そもそも加護を何故与えるかというと、それは与える側に“目的”があるからだ。

 

 ようするに加護は、何かしら“役割”を果たすことを期待して与えられるものであり。役割を果たしてしまえば存在意義を失うってことだ……。

 

 またそれは同時に、役割を放棄した場合も同じであり……件の例で言うならば、理想を追うのを止めた時点でも加護は失われる。

 

 つまり、それが“制約”

 

 常に理想を追い続ける事を強要して、妥協を許さない。

 

 そんな理由で、理想の投影(イデアル)は、強力ではあるが……最終的には全てを失う泡沫の夢に等しい加護なので、オレならいらない。

 

 だがまあ、己の意思で“拒否”できるだけ……まだマシな方だと云えよう。


 

 例えばそう……怒髪の邪神“イーラ”の加護“倍返しだッ!”の場合はシャレにならない。

 

 効能はシンプルで……“怨みや妬みなど負の情念を力に転化する”……と、言った感じであり。

 

 ブライトンにぶっ飛ばされたオルデバーン15世が、あっさり復活してきたのもこの加護の力であり。ブライトンや傭兵王が命を削って使った黄金の魔力を、苦も無く使っていたのは、この加護のおかげだろう。

 

 これだけ聞けば、強力で使い易い。良い加護だと思うかもしれないが……それは早計というものだ。

 

 負の情念を力に転化するのは任意ではなく……強制だ。

 

 しかも、本来なら時間ともに折り合いをつけたり、考え方を変えたりして自分なりに昇華すべき感情が、力として固定化されるのだ……。

 

 固定された力。憤怒の炎は、暴力として振るわれない限り消えることはない。

 

 つまり、反省も後悔も逃避も、愚痴すら一切許されず。

 

 ただ悶々と情念を、いつか何かにぶつけるその瞬間まで、延々と蓄え続けることになるわけで……。

 

 そんな負の情念を蓄えた状態では、当然ながらまともな思考は期待できず。それこそ賢王と呼ばれた男の息子であり。

 賢王を次ぐだけの聡明さを備えた逸材であろうと……怒りで目が曇れば、短絡的な行動に出るのも仕方がないだろう……。

 

 強力だが……デメリットが高く。拒否する余地もない。ある意味では最悪の加護と言え……まさしく加護が呪いと云われる証左でもある。

 

 また、複数加護がある場合。それぞれが相乗効果でパワーアップすることもあり得るが……それ以前に、相殺されたり。効果が競合しあって、不具合が発生する可能性の方が高い。

 

 仮に、例に上げた二つの加護を同時に取得した場合を考えよう。

 

 妄想が理想に……つまり、現状の不満が解決する。


 そうなると、負の情念を力に変える能力が無意味になる。負の情念が“理想化”によって霧散するからだ。

 

 つまり、加護の一つが無効化される。

 これでは加護の意味が無い。

 

 また、こうも考えられる。

 理想化によって不満が解決した結果……怒りの矛先が消滅した場合だ。

 

 溜まりに溜まった力のぶつける対象が無くなっても、燃え盛る憤怒の炎は消えることはない。

 

 そうなると悶々とした思いを抱え続けるか……八つ当りするしかなくなる。

 

 だが、八つ当たりしたくらいで消えてくれるほど甘くはないだろう。

 

 つまり、精神的に詰む。

 

 憤怒の炎に心を焼かれ狂うか……叶った理想に八つ当たりして台無しにするまで終わらない。

 

 どう転ぼうとろくな結果に成らないだろう……。

 

 しかし、逆に、こうも考えられる。


 憤怒が理想化され……情念が理想的に昇華されるようになり……憤りをブツケルのに理想的な状況が整えられ……発散された情念を再び貯めこむのに理想的な環境が与えられる可能性だ。

 

 つまり、加護のデメリットが、対する加護のメリットで打ち消され。あたかも永久機関の如く、加護の恩恵を受け続けることが出来る事になる。

 

 まあ、あまりにも都合が良すぎるので可能性は低く。むしろ、前者の自滅コースの方が極めて高いとは思うが……実際にどうなるかは不明としか言えない。

 

 加護の内容に関しては、魔眼で直接観るか、遠見の水晶球を通して精霊視を使って“解析”すればある程度は分かる。

 

 この世界における超常能力の大半は魔力に帰結する。ならば、加護や祝福も……魔の王であるオレが理解できないはずがない。

 

 ―――とは言え、中の人の理解力には限界があるので、パーフェクトな完全解明は不可能だ。

 

 それでもまあ、直に使ってるところを見れば、100%に近い詳細データを知ることは可能だ。

 

 オレが直接あったことのある二人の御子。ドラゴニュートとドヴェルグの加護の詳細は判明しているが、遠見の水晶球越しでしか見てないオルデバーン15世の加護は、大まかにしか分からない。

 

 加護と加護が重なった時にどう云う風に処理されるかは未知の領域ではあるが、両者のデータが揃ってれば予測はできる。


 だが、揃ってないなら仕方がない……それに、サンプルも少なすぎる。

 

 祝福に比べて加護持ちが多いと言ってもだ。それは祝福持ちが極端に少ないだけで、加護持ちが少数であることは変わらない。

 

 ましてや人類の人口が大幅に減った現在。その希少な加護持ちも多くが亡くなったはずであり。さらにその加護を与えるべき存在である神々が引き篭もったのだから……サンプルが少ないのは仕方がない。


 

 ―――概ねオレのせいだが、それは脇においてくれ。

 

 と、とにかくだ!

 

 巨人の堕慧児が、加護を使ってるところを遠見の水晶球で観るか……オレが直接会って魔眼で診ればどうなったか分かるので、対策を立てれるようになるはずだ……。

 

 とりあえず遠隔術式を、復活にセットしてることを確認する。

 

 うむ、問題はない。復活地点は……白樹の国“セラント”でいいや。

 

 影武者は生体ゴーレムなんで、復活の対象から外れるが……木っ端微塵にされない限り。自力で復活できる……はずだ。それにダメならダメで、改めて作り直せば良い……うむ、やはり問題はない。

 

 さて、予測通りなら……そろそろ勇者一行と巨人の堕慧児が邂逅する頃だ―――


 

  予想①

 巨人の堕慧児のデカさに気づき……速やかに撤退する。

 

  予想②

 デカさに怯むも、調子乗ったまま戦いを挑み……瞬殺される。

 

  予想③

 実情を見て、難民保護≒誘拐or人質の誤解が解け、和解する。


 

 

 ①なら問題なし。予定通り吸血皇に頑張ってもらえば良い。

 ②でも、遠隔術式は用意済みなんで問題なし。

 ③だとチト厄介だが、それはそれで悪くない展開だ。

 

 

 ―――さぁて、どうなった?

 

 

 

 

 

 「……………え?」

 「結果オーライ……と言って良いのか?」

 「…………意味不明ですわ」

 「任務完了……で、良いの?」

 

 「あ…ありのまま! 今、起こった事を話すぜッ!!



  山のような巨体を見てこりゃヤベえよ!?

  ……と思っていたら、いきなり泡吹いて倒れてきた。



  な、何を言っているのか、わからねーと思うが……。

  俺も、何が起きたのか? わからなかった……。


  頭がどうにかなりそうだった……勇者必殺剣だとか出落ちだとか……。

  そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ!


  もっと恐ろしいものの片鱗を……味わったぜ……」

 

 

 その答えは―――



 予想④ 加護によって自滅してた。



 ―――でした!

 

 

 

 

 ちょっとまったああ!!? え? マジ? あと影武者自重しろ! ……って、はえ?



 [邪神の御子の死亡が“システム”により確認されました]


 [享楽の邪神“アーケディア”の御子・巨人の堕慧児“ロイ・ガミューサ”:死亡]


 [死因:食中毒]

 

 [残る邪神の御子に、加護が再配されます]

 

 [享楽の邪神“アーケディア”の加護“一か? 八か!”が再配されました]

 [悪食の邪神“グウラ”の加護“オレサマオマエマルカジリ”が再配されました]

 [独善の邪神“スペルビィア”の加護“絶対正義”が再配されました]

 [羨望の邪神“インヴィディア”の加護“おうどんたべたい”が再配されました]



 ―――マジだった!!?

 

 自滅の詳細は、次回にて解説予定。


 祝福はメリットのみ。

 加護は一長一短。ただし、場合によっては罠化する。


 ちなみに邪神の御子は加護だけでなく、祝福もちゃんと受けてます。


 勇者に無条件で与えられる予定なのは“祝福”です。

 加護は“試練”を超えない限りもらえません。


 試練を受けてでも、加護を授かる価値があるかどうかは微妙なとこですがw


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