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あけおめことよろ~

 [闇の帳]


 それは、魔王であるオレ固有の特殊能力である。

 

 絶対減(アブソリュート)衰結界(アブソーバー)と称される緩衝障壁だ。

 

 オレの意思とは無関係に展開される能力で、あらゆる……それこそ金色オーラを放つ神力を使った攻撃ですら100分1まで減少させる……反則的な力だ。


 ただし、あくまでも“減少”であって……防御力自体が上がる理由ではない。

 

 つまり、オレの素の防御力を上回る攻撃を受けた場合。それを無傷で防ぎきる事は不可能だと言うことだ……。

 

 ―――だが!

 

 朦朧となった意識が覚醒する。

 ひび割れた頭蓋が修復され……流れる血が止まる。

 

 邪神の御子であるドヴェルグの渾身の一撃を入れ。追撃のために再び振りかぶった頃には……オレの傷は“全快”していたのだ!

 

 [自動治癒能力(オートリペアー)]

 

 魔族や神々は、元々自己治癒能力は高い。


 だが、オレの治癒力は、それらに比べても異常だ。

 

 なにせ……“魄”すら回復するからな!!

 

 魄を使った自己治癒は、少なからず魄の総量を削る。そのため、いずれジリ貧となるのが道理なのだが……魔王は違う!

 

 オレの自己治癒は、肉体のみならず……幽体にも及ぶため、長期戦も余裕なのだッ!!

 

 つまり、たった今不意打ちで食らった。脳天かち割られるような、普通なら致命傷となる一撃でも……大ダメージでも……この程度なら(・・・・・・)……オレはすでに、完全回復してるのだよ!!

 

 「甘いわッ!」

 

 「ぬぬッ!? わっしの斧を受け止めたじゃとー!?」

 

 [両手の魔爪(デモンズクロー)]

 

 聖剣より鋭く、魔剣よりも硬く、ある程度だが伸縮自在の鉤爪である。


 さらに、猛毒、麻痺、痙攣、吸収、減衰、石化、魅了、呪殺などの豊富な

追加効果もある。

 

 この魔爪なら……例え神器であろうと、受け止められない道理はなく。

 

 ―――受けただけで済ませるほど、優しくもないッ!!

 

 左手の魔爪で受け止め。右手の魔爪で、斧を絡めるように交差させ……力任せにッ!

 

 「ふんっ!」

 

 「ぬわっ!? わ、わっしの斧がッー!!?」

 

 おや? 弾き飛ばすつもりだったが、力余って斧を粉砕してしまったようだ……。

 

 金剛石並みの強度を持つ斧の柄も、魔爪の腐食効果&魔王の膂力の前には、小枝同然だったらしい。

 

 珠玉の逸品だったであろう神器級の斧を破壊され、驚愕のまま固まる逆髭酒樽の御子。

 

 ―――だが、遠慮はしない!

 

 右手の魔爪を……魔槍に見立てて束ねて伸ばす。それを無造作に御子に突き刺す。そじて、間髪入れず左手に収束させていた魔力を開放する。

 

 「無情に爆ぜよッ!」

 

 「ぬうぅぅ!? ぬっわーーーッ!!?」

 

 そう、オレの得意技である魔力衝(マジックブラスト)だッ!

 

 土手っ腹を貫かれて身動きの出来ないところに、至近距離から追撃だ……避けれるはずも、防げるはずもない。

 

 竜人の御子と同様に……木っ端微塵に吹き飛ぶしかあるまい?

 

 「チッ……やはり、蘇るか……!?」

 

 「ぬぅわぜじゃ……なぁぜ、わっしの邪魔をする!!」

 

 浮かび上がるドヴェルグの幽体。それに追従するように、肉体が再構築されていく。

 

 オレの再生能力も大概反則だが……こいつはソレ以上だ。

 

 祝福だけではなく、なんらかの“加護”を受けてるのは確実だが……どういう能力だ?

 

 幽体……つまり、魄を削れば良いのか?

 

 ―――いや、無駄だな。


 オレの魔爪は、魄すら切り裂く! ……はずなのだが、ヤツの幽体が傷ついた様子はない。

 

 即ちソレは、退魔対霊攻撃であっても、生半可な攻撃では通らないってことだ……。

 

 もちろん、金色の魔力であれば、威力は十分に通るだろう。

 

 だが、オレには神の祝福などない。

 

 邪神の祝福を受け入れていれば、金の魔力も使えるように成った可能性は高いが……それだったら、そもそも、コイツと戦っていないだろうから詮無きことだ。

 

 ならば打つ手はないのか?

 

 いや、それは有り得ない(・・・・・)

 

 オレの再生能力に対するキラーアイテムとして[封咒の杖]が有る。

 

 他にも、凶悪な特殊能力であればあるほど……それに対する対抗策が存在する

 

 だからこいつにも、攻略法が存在するはずなのだ!!

 

 「わっしは偉い……わっしは強い……わっしには才能がある……わっしは天才じゃ……。

 

  そんな……わっしが、負けるはずぬぇええだっ!!!!」

 

 うおっ!? 砕いたはずの斧を再構築しやがったー!?

 

 復元できるのは、己が肉体だけじゃないのか?!

 

 ―――拙い。悠長に弱点や攻略法を探ってる場合じゃねーな……。

 

 しょうがない。代償を考えるとあまりやりたくないが、速攻で……それこそ、一撃で終わらせれば大丈夫だろ? たぶん。

 

 「無詠唱(ノンスペル)―――


  多重展開(マルチブラー)


  ―――旋風刃(ツイスターブレード)

  ―――水華樹槍(コーラルランス)

  ―――炎舞(フレイムダンサー)

  ―――岩山割破(ロックブレイカー)


  四重合成魔法(クアッドコンフリクト)


  ―――風林火山・(ススキターティオー)陰雷(ゲニウス)ッ!」


 ぐっ……け、結構キツイぞ!?

 

 何時か見たブライトンのように、オレの全身が金色のオーラに包まれる。

 

 ブライトン……と言うより、上の人の功績だ。

 

 良い見本を見せてくれた……お陰で無駄手間が省けた。


 邪神の祝福? はははっ! 最早いらんよッ!!

 

 

 「フンッ!!」

 

 「ぬっ!? わ、わっしが……!? 偉大なるわっしが、なぜ負けるんじゃああぁっー!!? うぼぁっ!?」

 

 「オロカモノが……何故、勇者が仲間と共に戦うか知らんのか?

 

  一人では……勇者でさえ単独では、(魔王)には勝てないからだッ!!」


 

 ―――金の魔力に、小細工は要らない。

 

 ましてや、魔王の膂力が加わるならば、ただ殴るだけで十分だッ!

 

 そういや、元の世界で誰かが言ってたな……“階位(レベル)を上げて物理で殴れば良い” ……って、うん、まさに至言だ。

 

 邪神の御子が幽体ごと木っ端微塵になったのを確認したので、覚醒状態を解く。

 

 ぐっ……。

 

 一瞬の代償として大きすぎる気もするが、しっかりと数ヶ月分の寿命が削られたようだ。……まあ良い。

 

 冷静に考えると、粉砕(ディスインテグレート)で、魂ごと消し飛ばせば良かった気もするが……ま、まあ良い。

 

 実のところ、魔王であるオレの余命は……後数千年は余裕で有る。よって、たかが数ヶ月。まさに誤差でしか無く惜しくはない。

 

 もっとも、だからと言ってクエスト攻略に何千年どころか、数百年もかけるつもりはない。

 

 むしろ、今年中……は、無理だろうが、少なくとも1~2年の内には終わらせる所存である。

 

 ピコンッ!

 

 おお?! また何か更新されたのか?!!

 

 このタイミングと言うことは、恐らく御子の撃破が条件だったのか?

 

 まあ良い。確認すれば分かることだ。どれどれ―――


 

 [過半数を超える邪神の御子の死亡が“システム”により確認されました]


 [怒髪の邪神“イーラ”の御子・狂える次賢王“オルデバーン15世”:死亡]

 [羨望の邪神“インヴィディア”の御子・悪食大公“カバドン”:死亡]

 [独善の邪神“スペルビィア”の御子・嗤う教皇“アインハイン・ヴァイワッハ”:死亡”]

 [悪食の邪神“グウラ”の御子・竜神皇子“ドルアーネ”:死亡]

 [虚栄の邪神“イリーテュム”の御子・僭称せし者“ダルカン・ジー”:死亡]



 ―――って、おい、待てッ!?

 

 死んだ御子の数が、二人ほど多くないか?

 

 賢王の子と、竜人と地妖精の、三体しか撃破した覚えはないぞッ!!? ……って、ちょ! おまっ!?

 

 なんでソコに……十二魔将の名がある!?


 ―――何時からだ?

 

 配下からスパイや裏切り者が出る事は想定内だが……邪神の御子が、よりにもよって十二魔将の中に居ただとッ!?

 

 ………ハッ!?

 

 オレが……魔王であるオレが、理不尽な勘違いによって城を追われたのも……魔将に紛れた邪神の御子が扇動していたからか!!

 

 クッ!

 

 オカシイと思ってたぜ……いくら何でも、あの勘違いは酷すぎたからな……。

 

 第三者が扇動していたと考えれば、辻褄も合う。 クククッ……。

 

 ヤルではないか!! まさか斯様な搦手で来るとは……だが、オレを自由の身にしたのは間違いだったな!

 

 ふははっ……!!

 

 ―――策士策に溺れたようだなぁ!

 

 よかろう! ココからはオレ自身が相手だ!! 残る御子も……我が手で狩り尽くしてくれるわッ!!


 ……ん?


 

 [享楽の邪神“アーケディア”の御子・巨人の堕慧児“ロイ・ガミューサ”:活動中]

 [強奪の邪神“アヴァリティア”の御子・鎮守森の巫女“マリッサ”:活動中]

 [情慾の邪神“ルクスリーア”の御子・精霊の愛兒“フラムソワーズ”:活動中]

 


 ……………だれだ? 知らんぞ?!

 

 十ニ魔将どころか……オレの配下ですら……無……い?

 

 あれ? 扇動は!?

 

 オレが追い出されたのは、邪神のしわざ……だ……ろ……?

 

 あれれ……? あるぇ~???

 

 つまり……だ。

 オレが追い出されたのは……正真正銘……自業…自得なの……か?

 

 


 

 

 

 ふ、ふふっ……オーケー! オレのログには何も無い! 無かった!

 

 取り敢えず……残る邪神の御子も粉砕してしまおう! そうしよう!

 

 八つ当たり? ハハハッ! オレは魔王だ! 世の悪徳の化身であるぞッ?

 

 良識なぞ……あるはずなかろうッ!

 

 覚悟するが良い!

 

 泣こうが喚こうが笑おうが怒ろうが騒ごうが―――

 

 

 [条件が満たされましたので、残る邪神の御子に加護がランダムに再配されます]

 

 [怒髪の邪神“イーラ”の加護“倍返しだッ!”が再配されました]

 [悪食の邪神“グウラ”の加護“オレサマオマエマルカジリ”が再配されました]

 [独善の邪神“スペルビィア”の加護“絶対正義”が再配されました]

 [羨望の邪神“インヴィディア”の加護“おうどんたべたい”が再配されました]

 [虚栄の邪神“イリーテュム”の加護“理想の投影(イデアル)”が再配されました]

 

 [以後、御子の数が減るたびに加護がランダムで再配されます]


 

 ―――もう遅いわ! 鎧袖一触ッ! 捻り潰……し…て……くれ…………る゛ッ?!

 

 をぉいッ!?


 ちなみに、嗤う教皇“アインハイン・ヴァイワッハ”は、聖王国崩壊に巻き込まれ事故死しました。


 加護の[絶対正義]は、“己が正義と信じる”行いの全てが肯定され、自身に強運(グッドラック)を、敵対者に不運(ハードラック)を与える……はずでした。

 

 いくら運が良かろうと……死ぬときは死ぬと言う好例?です。


 <告知>


 新作を同時投稿。

 世界観は共通。時代は、この作品の魔王様が誕生する直前です。


 10~20話、程度のお話になる予定で、主人公は“異端”な異端審問官。

 ヒロインは龍神です。


 [異端審問官と異端者……と言うか、龍神娘の物語] こちらもよろしく、お願いします。


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