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<36>

 焦るオレを置いてきぼりに状況はますます悪化していく。

 

 仲間を庇おうと飛び出し。聖拳で、攻撃は最大の防御とばかりに相殺しようとしたが、相殺しきれず。敢え無くブレスを全身に浴びたマリアンヌは……即死したようだ。

 

 魂の離別は、まだみたいだが……早急に蘇生しなくては冥府往きは免れない。

 

 それに激高したのは、ブライトンだった。

 

 「マリー!? ………貴様は許さん!!!

  

  天に三門…地に三門…地平の果ての海原に一門……時は来たレリ!

  七・門・開・闢ッ! 魔砲掃射ッ! 

  

  ――― 一斉射g(フルバー)ッ!?」


 「サセルト思ウカ?」

 

 「危ないッ! ……きゃぁ!?」

 

 荒ぶる感情のまま、無防備に大技を放とうとしたブライトンだったが、相手がその隙を見逃すはずもなく。竜人の御子は、竜爪(ドラゴンクロー)で襲いかかった。


 そして、その間に、エミリアが超反応で割って入って、双剣で受け止るも……人と竜人の膂力差は大きく。あっさりと弾かれ、エミリアは地に叩きつけられる。


 「消シ飛ブガ良イ! 竜閃光(ドラクゥカノーネ)ッ!」

 

 倒れたエミリアに止めを刺さんと、竜人は両手を組み、竜の顎門(アギト)を模した指印(サイン)から、ゴンブトのレーザーカノンを放つ。


 「エリー!? ……クッ! サンシャインッ!!

 

  ―――うぉおおお!! クロス! リミッツッ!!」

 

 「サセヌト言ッテイル! 龍鱗防陣(スケイルガード)ッ!」


 その直前。一拍遅れた勇者アレンが、エレミアと竜人の間に飛び込み。サンシャインを放ち牽制。流れに乗って光翼を展開して剣で強襲を仕掛けた。

 

 だが、相手の竜人もさるもので……擬似陽光に怯みはしたものの龍鱗を浮かせた両腕でソレをガードした。

 

 「ブライトンッ!」

 

 「クッ……分かった。一度下がる!」

 

 「逃サヌ……征ケ! 我ラガ同志にして眷属足ルモノドモヨ!」

 

 呪文を中断したブライトンは、アレンに促され。炭化しかかっているマリアンヌの遺体を抱え、エミリアの倒れてるところまで下がる。


 そして、追撃を避けるために結界の展開を始めた。

 

 アレンが死力を尽くして、竜人の御子をなんとか抑えているが……敵は竜人1体だけではない。

 

 背後に控え、戦いを見守っていた数十の蜥蜴頭どもが、機を見て下された竜人の号令に従い……雪崩れ込むようにブライトンに襲いかかったのだ。

 

 絶望的な状況を目にしながら……オレは何も出来ない。


 く……遠隔術式を組み換え忘れたのは、致命的すぎた。


 そんな、焦り戸惑うオレに耳に聞こえたのは……呑気な女勇者一行の会話だった。

 

 「………うーむ。想定外ではあるが、敵には違いないのではないか?」

 「えー? カワイイは正義だよ?」

 「……ミリー。

 

  ふむ、そうですね。サーたんはどう思います?」


 く……こいつら。いや、八つ当たりしても意味が無い。


 「あ? ああ、そうだな。急いては事を仕損じる。

  一度引いて、情報を集めるべきだとオレは思うぞ」

 

 「ふーむ。一理あります……サリーはどうです?」


 「うぬぬ……悩ましいな……」

 

 悩ましいのはオレだってばよッ!!

 

 こっちもヤバイが、アッチはもっとヤバイ……。

 

 竜人はなんだかんだ言って強い。さらに御子としての力……邪神の祝福を受けているのだから手に負えない。


 アレンは格上相手に良く頑張ってるが……負けるのは時間の問題だ。守勢に回った瞬間に終わるだろう……。


 ブライトンの結界を壊そうと暴れている蜥蜴頭どもは、大した脅威ではないが、それは万全の状態の話だ。、


 今の彼らなら……数の暴力に押しつぶされる可能性の方が高い。

 

 マリアンヌとエミリアが健在なら押し返せたかもしれないが……上の人抜きのブライトン一人じゃ無理に決まっている。

 

 どう考えても勇者一行の命運は尽きた。完全に詰んだと云わざるをえない……全滅はもはや避けられない。

 

 だとしたら……女勇者が、クエスト的に正解である可能性に期待するしかないのか?

 

 否ッ! こうなれば仕方がない……色々と割りきって“決断”するしかない。

 

 神々の鳥船の操縦盤(コンソール)は、複雑怪奇なプログラムで組まれた制御システムによって管理されている。


 そのため単純化された簡単な操作で、船を十全に操ることが可能である。


 だから、わずか四人でも過不足無く操船できたわけだ……が、ここからは違う。

 

 オレにプログラムの知識はない。だが、この船のプログラムは魔導式。つまり“術式“で組まれているようだ。

 

 ならば! 術式なら……魔王(オレ)の得意分野であるなら! やってやれない理由はない!!

 

 「悩んでいても埒があかない……取り敢えず撃ってみるか?」

 「反応を見るの? ……うーん? アレ? サーたん?」

 「十中八九魔王がらみであるはずですから……その方が良いかもしれませ……ん?」

 

 水晶球から目を無機質な操縦板に移す。そして、両手をかざし魔力を流し込み……強引に干渉を始める。

 

 [神々の鳥船の中枢システムに接続しました]

 [アカウント“サタン” ハッキングを開始します]

 [ファイアウォール一層を突破しました]

 [ファイアウォールニ層を突破しました]

 [ファイアウォール三層を突破しました]

 [攻性防壁が起動しました]

 [アカウント“サタン” クラッキングに成功しました]

 [アカウント“サタン”の優先順位がアドミニストレータに変更されました]

 [攻性防壁が沈黙しました]

 [神々の鳥船の中枢システムを掌握しました]

 [火器管制システム:手動から自動に切り替わりました]

 [アカウント“ナルシア” が凍結されました]

 [アカウント“ミリアム” が凍結されました]

 [アカウント“サリアス” が凍結されました]

 [巡航操縦システム:手動から自動に切り替わりました]

 [航路が入力されました:目標地まで残り38時間です]

 [入力された航路の巡航を始めます]

 

 よし! これでこっちは放置できるッ!

 

 「悪いが急用が出来た。

  ……そのうち戻ってくるから、ゆっくり待っていてくれ」

 

 「「「……はぁ!?」」」

 

 唖然する女勇者一行に、オレは笑顔で別れを告げる。

 

 取り敢えずこいつらには、リケイド大陸に帰ってもらうことにした。

 この船の急所は把握済みなので、その気に慣れば轟沈&爆殺も容易なのだが……切り捨てる決断を下すには情報が足りない。

 

 レッツ先送りって奴だが……今はそれで良い。

 

 後は……そう、冷静に考えればなんてことはない。

 

 遠隔術式が使えず、魔法も射程外だと言うなら……オレが直接逝けば良い!! 


 水晶球を見ると、まだ全滅はしてないようだ。


 ―――よし! まだ間に合う!!

 

 「ハハハハッ! 勇者ヨ……ココマデノヨウダナ!」

 

 力尽き、片膝をつく勇者。


 背後では障壁を破られたブライトンが、自滅覚悟で火球を宙に浮かし牽制しているが……完全に手詰まりに陥っている。自力での起死回生はもはや不可能だろう。

 

 「クッ……また、聖王国から出なおしか……」

 

 「何ヲ言ッテイル? 聖王国ハ滅ンダゾ?」

 

 「なんだって!?」

 

 「人造勇者ニヨッテ誅サレタラシイゾ……愚カナ話シヨ」

 

 「なっ!? 一体何が……」

 

 「サアナ? 我モ知ラヌ

  ソレニダ……今カラ死ニ往クオ前ニハ関係アルマイ?」

  

  消シ飛ブガ良イ!

  

 「……ああ、お前がなッ!」

 

  ―――絶界竜(ニュークリ)ッ!? ぐふっ……!?」

   

 オレは手加減抜きの魔力衝(マジックブラスト)を無造作に放ち、勝ち誇った笑みを張り付かせた竜人を木っ端微塵に吹き飛ばした。

 

 そう、女勇者一行と別れたオレは、転移(テレポート)で勇者と竜人の間に割って入ったのだ。

 

 何の事はない……今のオレなら……自由に動けるオレなら、この程度の距離……!

 

 そして、この程度の相手など……障害にすらならない!!

 

 「待たせたな!」

 

 竜人を一撃でぶっ飛ばした後。あっけにとられる勇者一行&蜥蜴頭ズに、オレはドヤ顔で言ってのけたのであった。

 

 

 魔王が玉座から動けない。

 つまり、行動に大きく制限がかかっていた理由がコレです。


 ぶっちゃけ強すぎるんですw


 現在の状況は、システムの穴を突いたと言うか……十二魔将全員を敵に回すというマヌケっぷりが予想外過ぎた結果と言うか、概ね……黒幕? 的にはまさに、想定外すぎる!? ……って、そんな感じの状態です。


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