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十二魔将。
魔王軍の幹部であり、魔将と称されるように将軍格の有力魔族だ。
その力は高く。一対一なら魔王であるオレに勝てる奴などいないが……数人がかりでボコられるとオレでも拙いくらいの強さはある。
闇の帳や超回復があっても危険度は変らない。
むしろ、闇の帳や超回復がなければ、一対一でも負けるかもしれない程だ……。
まぁ、かもしれないってだけで、実際に戦うなら、切り札用に取っておいたクエスト特典を、惜しみなく使うので、魔将全員を敵に回すような事態にでも成らない限り、問題はない。
それにだ、現在の十二魔将は……かなり弱体化している。
死者が出るたびに、次点の魔族を繰り上げてきたので、オレの魔王就任時からくらべると3分2はすでに入れ替わっている。
そのため、古参の魔将と新参の魔将とでは、かなり力の差が開いてきている。
だが、勇者がオレの首を狙いやすくなるので、それはそれで構わない……と、言いたいところだが、事情が変わった。
勇者は……ぶち殺さなくてはならないッ!
もちろん、元・勇者の方である。
聖属性の雷撃を得意とする……電光石火、疾風迅雷。縦横無尽に戦場を走る―――雷刃の勇者“グラン”
剣技と魔法を合わえた魔法剣を得意とする……イラっとくる程に爽やかな好青年―――日輪の勇者“ウォード”
蹴り技を得意とする……なんか一人だけ、テンション高い割に悲壮感が半端無い―――仮面の勇者“タカシ”
J○J○立ちやシャフ度を得意とする……オレの過去を見てるようで痛々しい―――天駆の勇者“アカシア”
撃剣術を得意とする……剣聖、剣匠。お調子者のサムライモドキ―――落日の勇者“シグレ”
嘘か本当か、百八を数える勇者必殺剣を得意とする……初代勇者を名乗る初老の戦士―――地平の勇者“ロットバル”
こいつらが……“敵”だッ!
そして、こちらの手駒である、再編された現在の十二魔将の顔ぶれはというと……。
武将“隻腕辣腕豪腕鬼将軍”
空飛ぶ軍隊蟻“フライアンツ”
智将“ドライセン=ドライセン”
双子嬢“サラとサララ”
以上四名が戦死したので、序列=強さ、に従い再編成を行った結果―――
吸血皇“アルト・ノワール”
戦闘卿“スパシーダ”
悪食大公“カバドン”
傭兵王“ガルディアス”
獣神姫“セーレス”
小魔法使い“キリト”
安楽死“ハニィマール”
怪生物“ゲ・レ・ゲーレ”
吸血皇女“エルザ”
正邪“ハイン”
わん子“シュヴァルツ”
鬼眼蒼手“コウメ”
―――こういった顔ぶれとなった。
吸血皇は、初代勇者との戦いに破れて消し飛んだはずだったが……。
「魔王様より頂いた宝器によって、弱点が是正された結果でしょう。
本来なら灰になった後、浄化されればそこで終わりだったのですが……どうやら吾輩は、事実上不死身となったようです!」
吸血皇に、クエスト報酬を渡したのは、致命的な失敗だった気がする。かと言って、今更返せとも言えない……。
それにしても、隻腕辣腕豪腕鬼将軍の戦死は地味に痛い。
個人ならともかく、軍勢を率いて戦える数少ない魔将だったのに……。
そもそもだ、魔将。つまり将軍のくせに、指揮能力の低い奴が多すぎる!
まあ、雑兵がいくらいようと、比喩ではない一騎当千が現実にある世界なんで、相手によっては、時間稼ぎにもならないため。指揮能力と軍勢の数が重要になった事など、これまで一回も無かったのも事実だが……それでも指揮官が欠けるのは厳しい。
隻腕辣腕豪腕鬼将軍は、日輪の勇者“ウォード”に普通に討ち取られ。
空飛ぶ軍隊蟻“フライアンツ”は、雷刃の勇者“グラン”に纏めて焼かれて討ち取られ。
智将“ドライセン=ドライセン”は、天駆の勇者“アカシア”と戦い、策に溺れて自滅。
双子嬢“サラとサララ”は、仮面の勇者“タカシ”と戦い。何か因縁が合ったらしく……熱い人間ドラマの末に、上の人から開放されたようだ。
ちなみに双子嬢の“上の人”の生死は不明で、消息も不明となっている。チッ
何にせよ、魔将の4人が討ち取られ。魔将最強の吸血皇も破れ。相手は全員健在まま……惨敗としか言いようの無い結果である。
神々との戦いより被害が大きいのは、元とはいえ、さすがは勇者と言うべきだろう。
さて、ここにきて、思わぬ強敵が立ちふさがることになったが……それは問題ではない。
オレが“本気”で狩る気になったんだぜ?
百戦錬磨の初代勇者“ロットバル”。
オレが最強にしてしまった吸血皇を手玉に取った、こいつはたしかに脅威だが……聖邪“ハイン”の敵じゃない。
なぜなら、こいつの百八の剣技は全て……聖属性だからだ。
ハインを壁役に、ダメージディーラーとして優秀な、白兵戦最強の戦闘卿“スパシーダ”と組ませれば……確実に勝てる。
電光石火の勇者“グラン”
雷化による高速移動&体当たりによる、一対多を得意とするこいつは、群体のフライアンツとの相性は最悪だったが……悪食大公“カバドン”なら余裕だ。
悪食の名と、名前の通りの姿をした、カバドンはなんでも食べる。それこそ、火や雷などの実体の無いモノも平気で食べる。
人間サイズの雷撃だったら、軽く丸呑みするだろう……。
―――切り札の雷化を使った時が、勇者の命日となる。
天駆の勇者“アカシア”
色物枠としか思えないが、当人は真面目であり、それがシュールさを増す要因にもなっている。
―――だが……強い。
智将が致傷になったのも、行動を深読みしすぎたからだけではなく、馬鹿げたパフォーマンスに惑わされ、ペースを握られてしまったからだ。
そのため、踏まなくても良い地雷を踏み抜き、自滅することになった。……逆に言うなら、ペースに飲まれなければ、恐れるに足りぬと言うことだ。
小魔法使い“キリト”なら、人の話を聞かないもの同士気が合うだろうし、逆にペースを乱せる確率が高い。
そして、そこを……安楽死“ハニィマール”が、[突然死]を仕掛ければ、確実に仕留めることが出来る……はずだ。
キリトではなく、吸血皇女“エルザ”でも良かったのだが……同じ病を患うモノ同士故に、意気投合し過ぎて離反するかもしれず、予期せぬ化学反応を起こすかもしれない。結果が全く予測できないので、普通にやめた。
日輪の勇者“ウォード”
こいつは極めてまっとうな人格者だ。さわやかなイケメンを地で行く男で、許されるなら、我が手で全力で爆破してやるところだが……。
隻腕辣腕豪腕鬼将軍と正面から戦って、普通に勝てるほど強いので侮れない。
初代を除けば、最強の勇者と言っていいだろう……。
だが、 傭兵王“ガルディアス”と獣神姫“セーレス”
そして……わん子“シュバルツ”の魔将三人を相手に出来るほどではない。それは、落日の勇者も同じだ。数で押せば勝てる。
前言を撤回するようだが、数の暴力も侮ってはいけないって事だ……。
ざっと、こんな感じで攻めれば、元勇ズとも十二分に戦えるだろう。
そもそもだ、こっちは12体。相手は6人。適当にやっても、二対一で戦える計算となる。
もとより負ける確率は低い。
そもそもだ……何故? 一対一のタイマン勝負をしなくてはならないのだ?
これはゲームなんかじゃない。正真正銘、現実……のはずだ。
だったら戦力の逐次投入などと言う下策を取る理由もない。
卑怯? 卑劣? 外道? 笑わせるな!
オレは“魔王”だッ!
世に蔓延する、全ての悪徳の化身と謳われる魔族の王だッ!
言ったはずだ? オレは本気で狩る、と……。
「……作戦は以上だ。質問は無いな?」
「魔王様……これはちょっといくらなんでも……吾輩のプライドが……」
「わーい、ふるもっこターイム! だね? だね? ねぇねぇ それでいいのー?」
「世情的にどうかと思うが……良い策ではある。所詮、勝負は勝ってなんぼだからな……」
「さ、さすがは魔王様ですぅ! ボクには、その発想はありませんでしたー! ゲス過ぎて……もう、最高ですッ!」
「静寂世弱紫若無著幽寂……弱弱弱弱弱弱弱弱弱弱ッ!?」
「うkszsbん:、54えhthっdwふぁあ? ふぇgrhc1!」
「おうどんたべたry」
「ひょい、パクッ……むーしゃむーしゃ。ふむ、妙なのが紛れていたので思わず食ってしまったが……甘すぎだ。口直しを要求する」
「……任務了解で候」
「ねえ? 父様も一緒に狩って良いの?」
「……くらい……さむい……ひかり…お……ひ…か……」
「わんわんわん、お!(あたしにお任せ下さい! 集団でのぉ…狩りはぁ…得意ですぅ!)」
「本気で言ってるのかい? 全くアタシもヤキが回ったもんだねぇ……」
「ないようだな……ならば、征けッ!」
号令とともに飛び出していく新生・十二魔将を見送った後、水晶球に目を移す。
そこに映しだされたのは、リア充イケメン勇者の“ウォード”が、魔王軍の砦の一つに攻め込み。
守護役である……えーと? 守護役であ…る……あれ?……誰だっけ?
………
……
ま、まあいい。とにかくオレの配下で、守護役を命じた……大斧を持った馬面の魔族を、華麗に葬り去った所のようだ。
勇者の勝利を受けて、随行していたどこかの国の兵士たちも湧き立つように喜んでいる。
―――だが、その喜びは突然止まった。
砦にはゲートがあり、連続使用は出来ないが、魔王城から直接人員を送ることができる。
そこに現れたのは、十二の魔将。
呆気にとられた勇者と兵士が、十二魔将に囲まれる。
―――さあ、フルボッコタイムの始まりだッ!
二対一?
傭兵王と獣神姫とペットの三対一?
甘いわッ!
もう一度繰り返そう……オレは本気だとッ!
必勝を狙うなら……十二魔将全投入で、一人ずつ順番に、闇討ちするに決まってるだろーがッ!!!
日輪の勇者“ウォード” ………死因:十二魔将によるフルボッコ
残りの元勇:5名
今勇:気絶中
魔王による、元勇者たちの屠さt……元勇ズとの戦いは、こうやって始まったのであった。
元勇者の愉快な仲間たちは、勇者と違って転生していたり、遺体が保存されてなかったりしてるので、復活は出来ませんでした。
(´・ω・)カワイソス
需要があるかどうかわかりませんが、リクエストを募集します。
キャラの使い捨てが激しい著作ですが、本当に使い捨てにするには、惜しいキャラがいるはずです。
そこで、リクのあったキャラから適当に選んで、追加エピソードを挿入する予定です。
このキャラの事をモット詳しく知りたいと言う方は、感想欄にでもリクを投下してください。
余裕があって、気が向いたら、エピソードを書きますw
また、書き下ろしたエピソードを読んだ結果。キャラのイメージが崩れて「全身に目玉が有ったことが黒歴史にされた男、はこんなこと言わない!」状態になる可能性もありますので、予め、ご了承を願います。




