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オトヒメじゃねぇ!作戦会議?編

作者: 直美

会話文です。できれば感想をお聞かせください。

骨董屋

「咲季」の二階、亀田の部屋で奏は遠慮なく煎餅をばりばり食べていた。

「ウラシマ様は今、鷹属の若であられる雅隆様に……いや、あのバカハゲにとらわれている」

ずずっと、お茶で煎餅を流し、奏はあぐらをかいた膝にひじをついた。

「そのハゲタカとかって、なに? ミドリガメ」

「亀田だ! オトヒメ」

丸々とした黒い瞳に緑色の髪の青年は、浦島太郎を竜宮城へ連れていったカメの末裔だそうだ。

オトヒメ、と呼ばれた奏は不機嫌そうに煎餅をかじる。

「そのオトヒメて呼ぶのやめろよ! おれが乙姫の継承者とかって、いうのはわかったけどよ。どうして、太郎を助けれるのがおれだけなわけ?」

「太郎じゃなくて、律様だ。勝手に名前を決めるな」

「だって、ウラシマったら、太郎だろ? それよっかさ、ミドリガメ説明よろしく」

「鷹属はその名のとおり鷹の一族だ。といっても、擬人化したやつらの集まりをいうんだが、その若バカハゲヅラは龍神家秘伝若返りの薬を手に入れたがっている。それを作れるのは歴代のオトヒメだけなんだ」

「ちょい待ち、おれそんなもん作れないぞ! 薬剤師じゃあるまいに」

「やればなんでもできる」

投げやりだな、と思いつつ奏は湯呑みに茶を注いだ。

「だったらさ、おれを拉致ればいい話だろ」

「そうだが、それは第二の目的で本当はウラシマ様を嫁にしたいんだ。まっ、一目ボレてやつだな」

「じゃあ、ミドリガメが助けてもOKじゃん」

誰が助けにいってもかわらないではないか。なぜ、自分でないといけないんだ。

「それがダメなんだな。ウラシマ様はオトヒメがヒーローだと信じてるんだよ。悔しいことに、ホレてるし」

「あぁ、ミドリガメって太郎にホレてんのか! でもさ、おれオトコにホレられても、そんな趣味ないから迷惑」

「俺だって、そんな趣味ねぇ! 律様は女だ」

「あっそう。でもさ、ここでミドリガメが太郎助けにいったら、カッコイイ! て、ことになってホレるかもよ」

「そうなればいいが、いや図々しい考えはできない」

照れ屋なのか、硬派なのか、知らないが焦れったい奴だ。

「まっ、そりゃあ置いといて」

奏は横に置くジェスチャーをして、提案する。

「ハゲタカ? ヅラタカ? どっちでもいいけど、ようはそいつに毛を生やしゃいいんだろ? なら、育毛剤でてをうってもらって、太郎とはトモダチからはじめてもらえばいいじゃん!」

「なんて適当な……いっとくが若といっても雅隆は五十歳、ウラシマ様は十四歳だぞ」

奏の楽観思考に亀田は呆れた。

「げっ、ロリコンかよ! きしょいハゲヅラ」

奏は寒そうに両腕をさする。

「だから、なんとしてもウラシマ様を助けなければならないんだ」

「嫁にしたい相手そうそうかえしてくれないと思うけど」

奏は冷めたお茶を口にした。亀田は塩昆布をぽんと口に入れた。

「クソガキのわりによくわかってんな」

「奏だ! どうやって取りかえす? まっ、二年内になんとかすりゃいいか」

親の同意で結婚できるまで、まだまだ時間がある。その間になにか策をねり、奪還すればいいのだ。

「そんなのんきなこといってられるか!ウラシマ様が一人どれだけ心細い思いをしてるか考えてみろ!」

「だ・か・ら、ミドリガメが助けにいきゃいいだろ」

「どあほ! ウラシマ様はお前に助けをもとめてきたんだ」

「おれ太郎しらないんだけど、えらい傍迷惑なことおしつけてない?」

「そんなことしるか! ウラシマ様を助けろ!」

「え〜っ、めんどくせぇ」

奏は塩昆布にのばした手をパシンと叩かれる。

「それは俺のだ!」

「ケチ。よくばってくってると脱水症状でくたばるぞ」

はたっと奏は思いつく。

「ハゲヅラくたばらせばいいじゃん!」

「なんて単純なんだ、アホ! もっと真面目に考えろ」

亀田に睨まれ、奏は肩をすくめる。

「マジメーだけど? 他になんかいい案あるか? ミドリガメ」

「ないから考えてるんだろ、バカ」

「いい案ならありますよ」

襖を開け、楽があらわれた。片手には漆塗りの四角い箱をもっている。

「なに、本当か! 楽殿」

「はい、亀田さん」

「で、いい案てなんだよ、楽」

「それは奏の反対、若返らせればいいんです」

「それじゃあ、相手の思う壺だろ」

亀田が龍神一族はアホの集まりかとぼやく。

「いえいえ、赤ん坊にするんですよ。そうすれば、手が出せないし、部下にも指示が出せません」

「そりゃ、いい考えだ。オトヒメより楽殿の方が役に立つ」

「オトヒメじゃねぇから、いいんだよ」

奏は叫んで、バリバリと煎餅をヤケ食いした。

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