表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

ラブソングス

ズルいズルいと私から何でも奪おうとする妹 VS 婚約者の(自称)病弱な幼馴染

作者: 間咲正樹
掲載日:2026/05/03

「メリル、ちょっといいかな」


 私がリビングで一人本を読んでいると、お父様から声を掛けられた。


「はい、何でしょうかお父様」

「うん、実は得意先のニャッポリート商会からこんなものをいただいたんだが、メリルに似合うんじゃないかと思ってね」


 お父様が差し出されたのは、眩いピンクダイヤモンドのネックレスだった。

 まあ、綺麗。


「これ、私がいただいてもよろしいんですか?」

「ああ、メリルにはその……いつもいろいろと我慢させてしまっているからね」


 お父様は気まずそうに、頭を掻く。

 うふふ、お父様ったら。


「ああ! お姉様! ズルいズルい!!」


 その時だった。

 甲高い声が、私の鼓膜を震わせた。

 そこにはお父様が再婚して私の義理の妹になったオーレリアが、目を血走らせながら立っていた。


「お姉様だけそんないいものを貰うなんてズルいわ! 贔屓よ贔屓ッ!」

「い、いや、オーレリア、お前にはいつもこの手のものは買ってやってるだろう。この間だって、これと似たようなネックレスを買ってやったじゃないか」

「でも私はそれが欲しいの! それなのにお姉様だけズルいわ! ズルいズルいズルいッ!!」


 オーレリアは地団駄を踏んで、子どもみたいに癇癪を起こしている。

 こうなるともう、手が付けられない。


「お父様、私は構いませんので、このネックレスはオーレリアにあげてください」

「え? 本当にいいのかい、メリル?」

「わあい! やっぱりお姉様は話がわかるわね!」


 オーレリアは私の手からネックレスを奪い取ると、逃げるように走り去って行った。


「まったくあの子は……。すまないなメリル、いつも」

「うふふ、私は大丈夫ですわお父様。ああ、そろそろジュード様とお茶会の時間ですので、出掛けますね」

「ああ、ジュード様によろしくな」


 私は馬車で、婚約者であるジュード様のご実家である、ハンプソン家へと向かった。




「メリル、会いたかったよ!」


 ハンプソン家に着くと、玄関先で待ち構えていたジュード様にギュッと抱きしめられた。

 あらあら。


「先週もお会いしたばかりじゃありませんか、ジュード様」

「そんな! 一週間もメリルに会えなかったんだよ!? 僕は胸が苦しくて、今にも死にそうだったよ! メリルは僕にとって、太陽であり空気であり水であり栄養そのものでもあるんだから!」


 私にいろいろと担わせすぎでは?

 もしも私と長期的に会えないような事態になったら、このお方は本当に死んでしまうかもしれないわね。


「ああ、早くメリルと結婚したいなぁ。そうすれば毎日一緒にいられるのに」

「うふふ」

「ジュードオオオッ!!!」

「……!」


 その時だった。

 大地を震わせるほどの大声を上げながら、一人の若い女性がハンプソン家(こちら)に走って来た。

 それはジュード様の()()幼馴染である、マルヴィナさんだった。


「……また君かマルヴィナ。なんでいつも君は、僕とメリルが大事な時間を過ごしているところに現れるんだ?」

「そんなことより、今から私の買い物に付き合ってよジュード! 来週の、王家主催の夜会に着ていくドレスを選びたいの!」

「だから、なんで他人である僕が、そんなことに付き合わなきゃいけないんだよ」

「酷い! 他人だなんて! 大事な幼馴染である私に向かって!」

「いやいや、子どもの頃に何度か夜会で会ったことがあるだけだろ? それなのに幼馴染面とか、ハッキリ言って怖いんだけど」

「酷い! 酷いわジュード! ゴホゴホゴホッ! もう先が長くないかもしれない幼馴染に、そんな残酷なこと言うなんて! ゴホゴホゴホッ!」


 マルヴィナさんはわざとらしく咳き込んだ。


「……今さっきここまで、その健脚で走って来たじゃないか。間違いなく、君は百まで生きるよ」

「クッ! お願いだから目を覚ましてジュード! あなたはその女に、洗脳されてるだけなのよッ!」


 マルヴィナさんは私にズビシと、指を差してくる。


「ねえ!? いい加減ジュードを解放しなさいよ! 洗脳なんて汚い真似して、恥ずかしくないの!?」

「そう言われましても。私はジュード様のことを、洗脳なんてした覚えはございませんわ」

「でも――」

「帰れッ!!」

「っ!? ……ジュード」


 ジュード様がマルヴィナさんに、氷のように冷たい視線を向ける。


「それ以上僕のメリルを侮辱するつもりなら、こちらにも考えがあるぞ。警察に訴えて、然るべき処置を取ってもらうことになる。それでもいいんだな?」

「……クッ! きょ、今日のところは一旦帰ることにするわ。ではまた、来週の夜会でね!」

「あっ、オイ!」


 マルヴィナさんはとても病弱とは思えない、アスリートのような綺麗なフォームで走り去って行った。

 相変わらず、嵐のような人ね。


「……ハァ、ごめんよメリル。また君に嫌な思いをさせてしまって」

「うふふ、ジュード様のせいではございませんので、どうかお気になさらず。――ところでジュード様、一つお願いがあるのですが」

「ん? 何だいメリル! 僕にできることなら何でもするよ!」

「それはですね――」




「オーレリア、来週の王家主催の夜会、よかったらあなたも私と一緒に出席しない? ジュード様に許可はいただいたから」


 家に帰るなり、オーレリアにそう訊いてみた。

 先ほどジュード様にオーレリアも夜会に参加させてもいいか伺ったところ、渋々オーケーをもらったのだ(大分苦い顔はされていたけれど)。


「えっ!? いいのお姉様!? やったー! やっと私も、ジュード様にお会いできるのね!」

「お、おい、メリル、お前はそれで、本当にいいのか?」


 お父様が顔を青くされている。

 オーレリアにジュード様を会わせたら厄介なことになるのは目に見えていたので、今まではお父様が気を遣って、意図的に会わせないようにしてくれていたのだ。


「ええ、私は構いませんわお父様。オーレリアももう子どもではないのですから、問題はないでしょう?」

「あ、うん、まあ、お前がそれでいいなら……」

「あー、楽しみー! ねえお父様、私、夜会に着ていく、新しいドレスが欲しいわ!」

「ええ!? またかぁ」


 うふふ、私も夜会が楽しみだわ――。




「はじめましてジュード様! 私がメリルお姉様の可愛い妹の、オーレリアです!」


 そして迎えた夜会当日。

 念願のジュード様にお会いできたオーレリアは、いつにも増してハイテンションだった。


「あ、うん、はじめまして、ジュードです」


 そんなオーレリアに反して、ジュード様は至って塩対応。

 うふふ、このお方は、私以外の女性には、いつもこんな感じなのよね。


「わぁあああ!! 私が想像していた通り、ジュード様ってメッチャイケメンですねッ!!」


 オーレリアは両手をブンブン振りながら、大層興奮している。


「え? そ、そうかな……」


 が、当のジュード様は、あまり嬉しくはなさそう。

 むしろ顔にハッキリと「面倒だな」と書かれている。

 だが、私の妹である以上、邪険にもできずどうしたものかと思っているのだろう。


「ああもう! こんなイケメンと婚約してるなんて、お姉様ばっかりズルいズルい! ねえジュード様! お姉様との婚約は白紙にして、私と婚約しましょうよ! 私のほうがお姉様より、絶対可愛いですし!」

「は、はぁ……!?」


 オーレリアの爆弾発言に、流石のジュード様も開いた口が塞がらないご様子。

 うんうん、それでこそオーレリアね。


「ジュードオオオッ!!!」

「「……!」」


 その時だった。

 会場中を震わせるほどの大声を上げながら、マルヴィナさんがこちらに走って来た。

 ――うん、これで役者は揃ったわね。


「ジュード、会いたかったわ! 今日こそあなたの、洗脳を解いてあげるからね!」


 マルヴィナさんはジュード様の左腕に、ガバリと抱きついた。


「オ、オイ、マルヴィナ!?」

「なっ!? 何よアンタ!? 私のジュード様に汚い手で触んないでよッ!!」


 途端、オーレリアがマルヴィナさんに食って掛かった。


「ハァ? アンタこそ何者よ! そんな不釣り合いな高いドレス着て。アンタみたいなブサイクに着られて、せっかくのドレスが泣いてるわ」

「な、なんですってえええええ!?!? ブサイクはそっちのほうじゃないッ!! その二重、どーせ整形でしょ? 私そういうの、すぐわかるんだからッ!」

「ハ、ハアアアア!?!? な、なんでアンタにそんなことわかんのよ!?!? 変な言いがかりはやめてよッ!!」

「アハハ! やっぱり図星だったんじゃない、この整形女が!」

「なっ!? こ、このクソ女があああああ!!!」

「ぎゃっ!?」

「「「――!!」」」


 鬼のような形相になったマルヴィナさんが、オーレリアの頬に思い切りビンタを喰らわせた。

 あらあら。


「コ、コラ、マルヴィナッ! 何てことするんだ!?」


 慌ててジュード様が止めに入ろうとする。


(いった)いわね、このクソブスがああああああ!!!!」

「ぶべらっ!?」

「「「――!?!?」」」


 今度はお返しとばかりに、オーレリアがマルヴィナさんにビンタを一発。


「何すんのよおおおおおおおおお!!!!!!」

「こっちの台詞じゃああああああ!!!!!!」


 オーレリアとマルヴィナさんは、その場で取っ組み合いの喧嘩になった。

 うんうん、これぞキャットファイトね。


「そ、そこの君たち、やめなさい!!」

「大人しくするんだ!!」


 警備員の方たちが駆けつけて、二人を拘束した。


「放しなさいよ、この女を、殺してやるんだからあああああ!!!!」

「やれるもんならやってみなさいよおおおおお!!!!」


 あらあら、この期に及んでまだそんなに吠えてるなんて、ある意味尊敬しちゃうわ。


 二人は暫く暴れていたものの、それでも屈強な警備員には敵うはずもなく、会場外に連行されていった。

 うん、これでよし。

 王家主催の夜会でここまでの問題を起こしてしまった以上、厳罰は免れない。

 よくて修道院送りといったところかしらね。


「なるほど、これが君の狙いだったんだね、メリル。毒を以て毒を制すということか」


 ジュード様が顎に手を当てながら、うんうんと深く頷かれる。


「うふふ、幻滅しましたか?」

「まさか。むしろもっと君のことを好きになったよ。――やはり君は僕の理想通りの、聡明な女性だ」


 ジュード様は私の手を取り、手の甲に優しいキスを落とされた。

 まあ。


「僕と踊っていただけますか、レディ?」

「ええ、もちろん」


 華やかな音楽に合わせて、私とジュード様は手と手を取り合った。



拙作、『戦争から帰って来た婚約者が愛人を連れていた』がコミックグロウル様より2026年3月6日に発売された『選ばれなかった令嬢には、本命の彼が待っています!アンソロジーコミック』に収録されています。

よろしければそちらもご高覧ください。⬇⬇(ページ下部のバナーから作品にとべます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー
― 新着の感想 ―
これぞまさしく…… 『毒をもって毒を制す』か…… 正直申しまして、タイトルの時点からニヤニヤしておりました。 そして厄介女子二人の予想通り、否、予想を上回る暴れっぷりにはもう笑うしかございませんでした…
修道院行くんだな。( *´艸) 第2幕開幕 修道院エクソシスト倶楽部会員2名追加(祓えなさそう)!Σ( ̄□ ̄;)
さだこvsかやこみたいな。相互に食い合って滅べ。 ただ、未見なので噂話としてしか知らんのだが、上記のふたりは合体すると聞いたことが。 姉のすべてを奪い去る病気を克服した幼馴染、とかいう二身合体した上級…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ