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樹怨  作者: 壬宇羅
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ハジマリ

「見えてきたよ~、あれが今日泊まる別荘だよ~」


そう言って、バスから身を乗り出し、頭角が見えてきた別荘……。(いや、どう見ても山小屋だろ)を指差して、楽しそうにはしゃぐのが、今回の、林間宿泊会の言出しっぺ、"杉野美鈴"だ。


元々俺は、参加メンツには含まれては居なかった。

しかし、夏休みも中盤に差し掛かり、半分夏バテ気味の状態で、テレビの甲子園を眺めながら、別段どちらを応援しようとも、野球を見て楽しもうとも思わず、ただぼぅっと眺め、丁度、いい具合に氷菓子が溶けてきた頃。唐突に電話が掛かってきた。

相手は、級友の女子で、「林間宿泊会があるんだけど、あたしちょっち参加できなくなっちゃったからさ、代わりに行ってきてくれないかなぁー」と、なんとも断りにくい事を言われ、仕方が無いから承諾したのが事の始まりだ。


今思えば、この時もっと考えていれば、あんな惨事には見舞われずに済んだだろうな。



もっとも、男女比4対2、何故半々にしなかったんだ、と言う状態を除けば、まったく普通なように思えたんだ。少なくとも、その時の俺は、そう思っていたんだ。


「着きましたよ~」


到着後、バスの扉が開いた瞬間、雷光の如く車外へ駆け出し、まだバスの中で、もたついているメンバーに手を振りながら、喜々とした笑顔で、きゃきゃとはしゃぐ美鈴。

車内には、雷光の如く駆け出した馬鹿の持ち物が散らかっている。

美鈴よ、その気持ち、わからんでもないが、ちょっとは落ち着け、荷物全部置きっぱなしじゃ無いか。


はぁ~っと、一息溜息を吐く。

その間に、美鈴の荷物は、お世話係の手によって車外へ運び出されていた。


その運び出した、お世話係は、"柊ハルカ"である。

常に美鈴の付近におり、護衛からなにから、全てを担っている。

ハルカがいない美鈴は、ただのドジっ子高校生だろう。

美鈴のドジは、全てハルカが回収し、それにより、なんとか一般生徒同様の生活が出来ている。


ハルカのナイスフォローに、親指をグッと立て、サインを送るが、フッと一蹴される。


男子には無愛想なのが難点だな。


残りのメンツは、俺を除いて唯一の男、"林達也"……、てか、こいつ、俺が参加する前から、参加が確定していたようだが、仲がいいのだろうか?

そのような感じは一切感じた事がないのに。

ってか、こんな楽しそうな事やんなら、俺も前持って誘えよ。


それで、運転手に、小学生料金は半額だよ、とからかわれているのが、"森嶋理子"正直なところ、一度も会話をした事がない気がする。


そして、最後が俺の幼馴染……。先に言っておくが、別に深い意味は無いぞ。

"花野椿"、花野と書いて、"かの"と読む、なんとも変わった苗字が、第一印象として一番の印象に残るところだろう。

まぁ、当人それを気にしてるから、大きな声じゃ言えないんだがな。


まぁ、そんな面々が今回の、林間宿泊会のメンバーって訳だ。


とか、何とかしてる間に、バスの扉が閉まり。「出発しまーす」と言う、運転手の声が、俺以外誰もいない車内に響き、プシューっと、空気圧の下がる音が聞こえたと思うと、バスは動き始めた。


「ちょ、ま、降ります!…、降りま~す‼」

「兄ちゃん、立つんじゃねぇやい。すぐに止まるからよ」


と言って、止まるまでに数秒かかり、更には、バス代も割高に取られ、何故目的地から遠ざけられたのに、多めに払わにゃならんのだ、と心の中で大喚きした後で、忌々しそうな顔つきを運転手に、アピールした後に、のっそりと降りてやる。


「そうだい、兄ちゃん、あんたらあそこの山小屋に行くんだろう?」


そうか、運転手もあそこは山小屋って言う認識なのか。

まぁ、あんななりじゃ仕方がないよな。


「……、兄ちゃん? 聞いてるかい?」

「…あぁ、はいはい、聞いてますよ」

「あの山小屋な、あんまりいい噂を聞かないんだよ……、用心した方がいいぜ。 これ、おいちゃんからの、ちょっとしたプレゼントだ」


そう言って、俺の手に虫除けスプレーを握らせた。


てか、カラだよな……。


「一応、礼は言っておくが、こんなゴミ、よこすんじゃねぇよい」


カラの虫除けスプレーは、宙を舞い、崖のしたへと落ちていき、緑の中に消えて行った。


「あっ、こら。人が折角やったもんを捨てるんじゃねーよ」

いいから、とっとと、業務にもどれ、次の停留所で人が待ってるさ。


はぁ~っと、溜息をついてあいつらの待っている、停留所に向かった。

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