3話_哀しあい_
「ふぅ...間にあったにゃぁ」
そう言いながら私は教室に入っていく。
視線が刺さる。
でも、誰も話しかけてこない。
目が合うと――すぐ逸らされた。
誰も友達を見るような視線を感じず、ある視線は全て厄介者を見る目だった。
「ふぅ..椅子が固いにゃぁ」
机に教科書と巾着をつける。
椅子を引いてバッグを不自然に開いているスペースに置く。
皆後ろにバックを置いていた。
私だけ...広く使えてラッキーにゃ!
「授業めんどくさいにゃぁ」
口が止まらない。
静かだと、余計なことばかり考えそうで。
それに人当たりをよく見せれば友達ができると思ったから。
(誰か話してきて欲しいにゃん...)
理由は簡単で友達をパパとママに見せて喜んでほしかったから。
きっと喜ぶ。
……うん、絶対。
そう思うと、口元が勝手に緩んだ。
そうやって座ったままを過ごす。
その間に、昼休みに向けて計画を立てるのだ!
(うにゃぁ...どうしよう....高木ちゃんは皆に優しいから友達になれるかにゃ....)
誰に話しかけようかを悩む。
(藤木ちゃんは..いけるかにゃぁ...迷惑じゃないかにゃぁ...)
誰に話しかけようかを悩んでいると、いつの間にかご飯の時間でした。
(うにゃぁ...先生に当てられることも絶対にないし...気づかなかったにゃ)
私は机の上にランチョンマットを広げた。
「行かなくちゃ」
そのまま席を立つ。
みんながうっすらとこちらを見る。
皆の机の上にはご飯があって、いただきますの寸前だった。
「あ...先生..」
私は偽りの笑顔を先生に見せて近づきます。
この先生は私のクラスの担任でとっても優しい人だ。
私にも話しかけてくれるし、私の今の環境に満足してるか?とか、いろんなことを聞いてくれた人だ。
「あ..カリンちゃん?私がついであげるからね?」
給食の時、当番の皆は、私の分をついではくれません。
親から言いつけられているのか、同調圧力でもう後戻りが出来ないのか...そんなのはどちらでもよくて。
胸は痛くない。
興味なんかない..皆、私の事を子供だから...とうざけてるだけなんだ。
皆、私の事を好きなはずだから。
(今日もついてるにゃぁ...)
...先生がついでくれるの、嬉しいなぁ。
教師だからかなぁ?
先生のいる日は絶対、私の給食をついでくれた。
「ありがとうにゃ!」
私は元気に言う。
笑顔で、そんな先生を生徒たちは、皆大丈夫なんだろうか?というような瞳で見る。
「ひっ」
先生の喉から、怯えた声が漏れた。
担任の先生は気が弱かった。
何をするにもキョドキョドしている。
何にそんなに怯えているんだろう...私はそう思った。
「カリンちゃん?嫌いなものがあったら言ってね?何かあったら言っていいからね?」
そう言ってバイバイと手を振ってくれます。
そんな教室の黒板の上にはみんなが習字で書いた漢字が張付けられていました。
そこには
【友情】【勝利】【夢】【愛情】【可憐】
色んな文字がありました。
その紙一枚一枚に名前が刻まれていて、私の名前が刻まれた漢字はありませんでした。
保護者会かなんかで外した方が良いとでもいわれのだろうか。
それが、胸の奥をちくりと刺した。
「うん...おいしいにゃ!」
今日も昼ごはんは、温かいのに――冷たかった。
(美味しいはずにゃ)
それからみんなで食器を返して、昼休みが始まった。
みんな外に出ていて教室に居なかった。
教室には先生が残っていて、この人といると、どうにも心配をさせちゃうから、最近は外に出て時間になるのを待っていた。
「...だが..今日は違うにゃ!」
今日は皆の遊びに入れてもらうにゃ!
私は計画していた通り、縄跳びをしている赤木ちゃんたちのところまで行く。
「あの...赤木ちゃん!」
私がそう名前を呼ぶと、困ったような顔をした。
「私も一緒に縄跳びしたいにゃ!」
迷いなく私は言った。
心臓がバクバク鳴っている。
言っちゃったにゃぁ。
「え..あ....縄跳び..いる?」
そう言われました。
ですが、私が欲しいのは縄跳びを超えた先でした。
「持ってるにゃ!一緒にしちゃ..ダメかにゃ?」
「え..あ...うんごめんね..一緒には出来ないんだ..」
赤木ちゃんは本当に優しそうな声で言う。
喉が詰まる。
空気が、うまく入ってこない。
心臓だけが、やけにうるさい。
でも..パパとママに友達を見せたい...そんなことを思うと、私は赤木ちゃんに近づいていました。
「あの..お願いにゃぁ!」
赤木ちゃんの手を掴む。
赤木ちゃんが身を引くのが分かった。
すると、そんな時赤木ちゃんの隣にいた三浦ちゃんが私の体を突き飛ばした。
突き飛ばされた私は、砂の地面に体を打ち付ける。
「あ!」
私を押した三浦ちゃんが声をあげる。
「ひ...ごめ..」
三浦ちゃんは謝る。
(赤木ちゃんの為に私を突き飛ばしたんだろう...三浦ちゃんは優しい子だにゃ.....友達になりたかったにゃ...)
「大丈...あ....ごめん」
赤木ちゃんも心配をしてくれた。
でも、皆は倒れている私を見て離れていく。
それは申し訳なさそうに。
私は一人取り残された。
「……ダメだった、にゃ..」
手持ち無沙汰だから地面の砂を触る。
「こっちこそ...ごめんにゃぁ..もっと大人になるにゃぁ」
何がダメだったんだろう。
……私、そんなに変だった?
やっぱり子供っぽい私がダメなのかなぁ。
大人にならないと。
「藤木ちゃんにも.......」
藤木ちゃんに話しかけるのはいいや!
迷惑だろうし...申し訳ないや。
そう思って私は学校の終わりの14時になるのを待ち続ける。
その間、椅子に座って、血が出るほど強く腕を握り締める。
じわりと、赤い血が滲んだ。
我慢しなくちゃ..寂しくない。
切り傷が腕にできていく。
キーンコーンカーンコーンと音が鳴る。
「長かったにゃぁ..もう帰る時間にゃぁ..」
そう思って帰ろうとすると、一人の少女が目に入った。
その少女は並木 立花ちゃんだった。
並木 立花ちゃんも一人だった。
「あ..忘れてるにゃ...」
教科書は全部持って帰ってる子だったのに、一冊の教科書をランドセルから落として気づかぬまま家に帰って行っているところだった。
誰一人とてそれを拾う気はない。
私はそっと、その教科書を拾いあげる。
立花ちゃんは、ちょっと前にあった授業参観でママが暴れて孤立してしまったんだ。
お母さんと大喧嘩して、それから皆に距離を置かれている子だった。
異種族の問題だったきがする。
「....どこかにゃぁ」
迷惑だろう..でも私は立花ちゃんを追いかける。
立花ちゃんは何度か笑顔で会話をしたことがあった。
孤立してる立花ちゃんが心配で声を掛けたら少しだけ、話してくれたんだ。
嬉しかったなぁ...また距離を置かれるようになっちゃったけど。
私はその背中に持ち前の足の速さで追いついて、肩を叩く。
「立花ちゃん....これ...落としていったにゃ..」
「え..あ....うん」
そう言って優しく私から教科書を取っていく。
そしてそのまま駆け足で離れていく。
何か言おうとしても声が出なかった。
私も家に帰ろうとすると、ふと声をかけられる。
「か....カリンちゃん...ありがと!....また明日!..」
一生懸命に気まずそうに立花ちゃんは話す。
私は急いで振り返る。
「立花ちゃん...うん...また明日にゃ!」
私は満面の笑みで言った。
私が子供すぎるからか、教室で居ない存在下のように扱われる日々。
久しぶりにあったかさを感じた。
私は人目をいつも通り避けながら、珍しく鼻歌を歌いながら帰った。
時刻は14時を過ぎたあたりだった。
あらゆる所要や家事を終わらせる。
洗濯に買い出し、色んなことを今日は早急に済ませた。
「そろそろかニャ~」
ライカは待つ。
カリンが帰ってくる時間だ。
私は待ち遠しくて、しっぽが左右に揺れ続ける。
テレビをつけて洗濯物畳む。
買い物で、冷ややかで、怯えた目で見られる時間も終わりました。
「近所では嫌われちゃったかぁ」
とほほ、とあきれたように笑う。
「にゃにもしてにゃいのに」
後は帰りを待つだけだった。
家にある家族の写真。
色んな思い出であり、そんな大切な物たちを眺める。
そんなことを考えているときに家のインターホンが鳴る。
私は急いで玄関に向かう。
「カリン~おかえりにゃぁ~」
扉を開けて、迎え入れる。
「ただいまにゃぁ~!ママぁ!」
開始早々抱き着くを食らい、ヒットポイントを削られる。
家事を最速で終わらせた甲斐があった。
オーマイガー..ヒットポイントがほとんどゼロよ!
ラスボスかよ...
コーヒーのCMみたいに心で呟く。
こんなご褒美があるなんて。
「やるにゃぁ!初期装備で私のhpを削り切るなんて」
全部のhpを削り切るチートキャラだ。
「えへへぇ!mん!mん!」
必死に私のおなかに顔を擦り付ける。
あら...なんか機嫌よさげ?いつもより楽しそうだ。
その所為か私まで嬉しくなる。
「追加攻撃かにゃぁ!?」
「くらうにゃぁ!」
「カリンが可愛すぎるにゃぁ!」
私は地球の裏側に届くぐらいの声で叫ぶ。
多分ブラジルの人、聞こえたんじゃないかな?
「私!おて手!洗うにゃ!」
「カリンは偉いにゃぁ」
「当たり前にゃん!一人の淑女としての常識にゃん!」
「カリン?ランドセルが曲がっていてよ?」
「ありがとうにゃん!ママ様!」
「いくにゃぁ!カリン号出発ニャ!」
私はカリンの後ろに立って、カリンを電車のように見立てて手洗い場に行く。
会話に知性を感じないとは言わせん。
「ママぁ!カリン号目的地周辺であります!」
「今からお手洗いを開始します!」
私はカリンの両手を一緒に持って、手を一緒に洗う。
「ママぁ、近いにゃぁ!私一人でもできるんだにゃ!」
「近くにゃいわよ~!」
「んぅ!確かに近くにゃいのかぁ」
「そうにゃそうにゃ!」
「パパとママももっと密着してるときあるにゃ」
「ブフッ!」
私は吹き出す。しっぽが立ち、耳が毛だつ。
「カリン?何の話にゃ?」
表情を笑顔で取り繕え私!察せさせるな!
「にゃ?暗い部屋でママぁがパパぁと仲良さそうなときにゃ!」
オーマイーガー全部みてんかい!
「カリンほら見て流星群が見えるにゃ」
「家の中に流星群はありえないにゃ!」
私は恥ずかしくなって無意識にカリンの視界をしっぽでふさぐ。
「ほらカリン世界はこんなにも広いにゃ」
「いやママのしっぽで何も見えないにゃ!」
「カリン?ベランダから裸で踊ってるパパがいるわよ?」
「今パパいないにゃ!どんな事実よりそっちのが嫌にゃ!」
「カリン?ほら見て綺麗なパパが降ってるよ?」
「流星群になってるにゃ!」
前から思ってたけど、ママ誤魔化したりするの下手すぎニャ!
パパもパパで下手いから毎日大変ニャ!
私はツッコミをこなしながら、汗を拭きとるようなしぐさをする。
でもそんなところも大好きニャ!
「ママぁ!」
「なぁに?カップケーキだと思ったらパパだったの?チクショー!」
「ママの顔が顔白くなってるニャ!ママ太夫じゃなくて、違うにゃ!いつまでおてて洗うにゃ!」
ピカピカにゃ。手がピカピカにゃ。
「本当ニャ!ごめんねぇカリン」
「いいにゃ!でも泡立ちすぎて鏡が汚れちゃったニャ!」
鏡に泡がいっぱい付着していた。
「本当ニャ!ごしごし!これでいいにゃ!」
「あ..ちょ,,ママぁ!」
私の手を使って泡を拭きとると鏡が新品同様に拭き取れた。
私のては泡だらけだったはずなのに。
まだ動揺してるニャ!てかどんだけばれたくない事してたにゃ!?
「ママ!それ私の手にゃ!てかどうやって鏡ピカピカにしたにゃ!私の手で!」
私の手に泡すらついていないのに。
「拭いただけにゃよぉ~」
誤魔化そうとして、変な力覚醒してるにゃ!
私は自分の手をみて目を見開く。
「いや待つにゃ、これはどっちの能力にゃ?私のか?ママのか?」
ガラスを綺麗に拭き取る程度の能力....かにゃ?
「どうしたにゃ?」
「いや、なんでもないにゃ!ちょっと私は特別なだけニャ.....」
何かの扉が開いたカリンであった。
「そうにゃ!カリンは特別可愛いにゃ!」
そう言って肩に手を乗せて、列車ごっこのまま頭の匂いをかがれた。
「やめるにゃ!吸うにゃぁ~!」
「いい匂いにゃ!カリンは落ち着くにおいがするニャ!」
「パパの匂いはどうなのニャ?」
「安心できて、ずっと隣に居たくなるような匂いにゃ!」
「ママって、パパのこと大好きだにゃ!」
ママは顔を赤くして言う。
「パパがかっこよすぎるにゃ!」
わき腹をこちょこちょと抱きしめられます。
「私もママとパパが世界で一番好きニャ!」
私達はお互いのしっぽを絡める。
そうやって、しっぽで愛を表現しあい、今日の出来事を話す。
パパが帰ってくるまでの間。
愛のカタチとは何だろうか....きっと説明できないや...だから、しっぽは無意識に絡み合います。
その後は、二人でテレビを見ながらパパの帰りを待つ。
私が勝手にお菓子を食べて怒られたり。
ママをびっくりさせたりして遊んだニャ!
そして時刻は過ぎて19時ごろ。
「まだかにゃ~」
そう一人でライカが呟く。
学校から帰ってきて手を洗ったカリンは、色々遊んだ後、眠そうにしていた為、寝かしつけた。
今ではスヤスヤと私の太ももで眠っていた。
私はお父さんの帰りを待っていました。
そんな時、鍵が開く音がするので、すぐにカリンを太ももから枕にすり替えて、迎えに行きます。
耳の良さを誇りに思うわねぇ、こればっかりは。
「ごめん、遅くなった」
「アニャタ!全然いいにゃ、お疲れ様にゃ!荷物もらうにゃ!本当いつもありがとうにゃ!」
ありあまる感謝をできるだけ言葉にして私は伝える。
「ははっ、ありがとう、カリンは?」
「今は少しだけにぇてるにゃ!起こしてくるにゃね~」
「助かるよ、よし誕生日プレゼントも完璧だ!」
お父さんこと、リントは親指を立てあって、ニコッと笑う。
私はその姿を見て、しっぽでハートを作りながら親指を立てる。
その姿を見てリントは悶絶する。
そんなリントを置いて私はカリンを起こしに行く。
カリンは無事に起きて、皆で手を繋いで外に出る。
「出発だ~!」
「出発だにゃぁ!」
私はパパに続いて嬉しそうに言う。
寒くないような服装で、玄関の扉の鍵を閉める。
22時までには帰宅して、23時までには私を寝かしつけたいとのことらしく、目的地直行らしい。
今日は私の誕生日で幸せな日だった。
「楽しみだニャ~」
ニコニコしながらママとパパに手を繋がれてる私は、スキップのようにリズムを取って歩く。
「にゃぁ~にゃぁ~」
鼻歌を歌う。
今日はよく歌ってしまうにゃ。
幸せが体の動作からにじみ出る。
それは紛れもない本能からの幸せだった。
気をしっかり保たねば、頬が緩んで仕方ありません。
パパとママはそんな私を見てはお互いに顔を見合わせて、私よりも幸せそうに頬を優しくあげました。
「少し並んでるなぁ」
パパは人と話すときに話し方を変えているようで、お店につくと口調がすこしかわりました。
こっちのパパもカッコいいです。
私は指をさしながらパパを目立たせる。
「よし、パパたちも並ぶぞ~!」
甘い匂いと人のざわめきが混ざる店前でそう言って、私たちは並びました。
少し多くは並んでおり、順番まで少しかかりそうでした。
「結構並んでるなぁ」
「.....あ!」
私は声をあげる。
私の膀胱が限界の警告を鳴らしています。
そう、私はトイレに行きたくなった。
「ママぁ」
甘い声を出して伝えます。
「あらどうしたの?」
「ママぁ、トイレに行ってくるにゃぁ!すぐ戻ってくるにゃぁ!」
近くにコンビニがあるから、そこで済ませるにゃ!
「カリン?道分かるにゃぁ?」
「大丈夫ニャ!」
「そう?じゃあすぐ戻ってくるのよ?」
「すぐ戻るにゃ!」
そう言って私は持ち前の足ではしりました。
その途中全身が傷ついて痛そうで、悲しそうな人がいた。
とぉっても、気になったんだけど時間がなくてカリンは反応が出来なかった。
(大丈夫かにゃぁ、あの人)そんな風にカリンは思うしかできなかった。
テレビのニュースの時のように。
「急いでるにゃ!」と言って私は直ぐにパパとママのもとにもどりました。
辛そうで、優しそうな人だったにゃぁ。
大丈夫かにゃぁ?
「ただいまにゃ!カリンは早いにゃ!」
私はエッヘンと小さな胸を張る。
頭を火をおこす勢いで撫で続けられる。
順番はまだ少しだけあった。
前はまだかとチラチラと私は見る。
(早くスイーツ食べたいにゃぁ)
そんな時、早く店内に入りたい私のために、パパが周りに気を使いながら肩車をしてくれました。
「もうにゃにやってんのよ~」
私の年頃で肩車なんて子供っぽいとでも言うように言う。
そんなママがまんざらでもなさそうにしっぽをフリフリする。
そしてついに店内に入る順番が来る。
「もうすぐにゃね~」
肩からは降ろされ、定員を見ます。
そして、私は定員の指示に従い、丸いわっかの地面に敷かれたフラフープのようなものの内側に立つ。
それはケンケンパのゲームのようになっていた。
パパの肩からは降りていたため、三人でそのわっかの中に入る。
何かのイベントでしょうか?
今までにない、変な催し物でワクワクした。
何が起きるんだろうと。
それなのに、少しだけ違和感があった。
「はぁい、ここに並んでください~」
定員がそういうと、私たちが輪っかの中にいると、
店前でずっと動かなかった、背の小さな定員が動き出しました。
「同い年ぐらいかにゃぁ?」
私は不思議とその定員さんを見ていて、
こっちに向かって歩いてきたためなんだろう?と思う。
私の横を通り過ぎて私の前に立つとき、
その小さな少女は一言、人には聞こえない、ネコ科の私たちだから聞き取れた音量で言葉をつぶやきました。
「私は....私は....こんなことの為の概念体じゃないのに」
震えた声で呟いていた。
概念体?
それよりも、大丈夫かにゃ?
そのフード付きの服だから顔は見えない。
仮面だろうか..声も機械的でボイスチェンジャーでもつけているみたいだった。
そんな少女が震えた手で、そっと身を屈みました。
にゃんだろう?
そして私たちの足元の輪っか三つに手を触れさせました。
私はその震えたような体が可愛そうに見えて、無意識のうちに手を伸ばす。
震えた声だったから、どうにか暖かくなってほしかった。
「大丈夫だにゃ!この世界はパパもママもいる!幸せない世界なの!だから安心してにゃ!私が君を安心させるにゃ!
きっと今悲しくても幸せになれるにゃ!」
幸福論を語ったりはしない。
本当に優しそうに私は、背が低い彼女の頭を撫でました。
パパがしてくれたように。
私は上手く頭を撫でてあげられたのでしょうか?
季節は寒くなりそうな時期で、震えただけかもしれないけど。
わたしにはそうは見えなかった。
少女はピクリと体を動かしました。
「こら、カリンなにやっているの!すみませんにゃ...それにしても。君も大丈夫?震えてるけど」
ママが私に注意をする。
私たちのような下位種族となぁてしまったものたちが、生意気なことをしているように、見えたんだろう。
でも私の意をくんだのか、ママもすぐに小刻みに震える少女に言葉を掛けた。
私と変わらない背丈の少女を心配するように。
「ライカ、どうした?」
パパはどうしたのか?と聞いたとき、
その瞬間――足元の地面が消えた。
「「「にゃ??」」」
その瞬間私たちは何が起きたのか分かりませんでした。
店の中のオレンジ色の光が私たちを照らしていたはずだった。
多くの人に囲まれていたはずだ。
「ごめんなさい!カリン..ごめん,,,,」
それは顔を隠した背丈が小さな彼女が言った、震えた言葉だ。
言葉にも、ならない泣きじゃくるような声だ。
体すらも震えている少女。
過呼吸になり。とても見ていられない姿だった。
そんな彼女の姿が、次の瞬間、上へと消えました。
これらはすべてが一瞬の出来事で、ネコ科であるから認識できた光景だった。
「え?」
パパとママは、私を世界で一番かわいいと言っていましたが、その一瞬は、互いの姿が認識できなくなった。
その瞬間地面に立っていたはずの私達の家族は、
皆、地面の中におちていきました。
その瞬間、重力が反転したような感覚が襲いました。
次の瞬間私は、横に蹴り飛ばされたような強い衝撃を体にあじわいました。
「にゅがぁぁ!」
骨が折れんばかりの衝撃で叫び声をあげる。
何者かに蹴り飛ばされた。
状況が整理できない。
直ぐに蹴り飛ばされながら着地をして、隣を見ると、
もう体制を整えて何かを見つめている、パパとママの姿があった。
「にゃんだお前ら」
ママが怖い声を出す。
牙を出し、威嚇している。
普通の人間であれば、倒れているほどの痛みが脇腹に広がる。
それでも私は前を見続けられた。
≪私たちはネコ科。
人間は落ちてから考える。
ネコを簡単に説明しないのならば、こう言えよう。
猫は、落ちる前にもう答えを出している。
三半規管が強いのではない。
迷う時間が存在しないだけだ。
だから猫は、今日も当たり前みたいに、
この世界に――正しく着地する。≫
「ケホっ!..はっ...パパぁ?,,,,,ママぁぁ?..痛いにゃぁ..」
私は安心できる言葉が漏れる。
面倒くさく生意気で、甘えることのできる魔法の言葉を。
わき腹を蹴られて、痛みで瞳が溢れそうになる。
わき腹は折れてないかにゃぁ?。
「カリン?大丈夫だ」
パパが私の名前を呼び、頭を撫でる。
パパはこんな時でも私の好きな撫で方をしてくれて心が少し落ち着く。
「で、お前たちはにゃんだ?」
パパも人語を忘れて、低い声を出す。
前を向くと、3人程の黒いマントの着た集団がいた。
黒いマントを、その三人皆がまとっていながら、ギザギザな襟元や、水玉柄のように穴が開いている者もいた。
同じような仮面もつけていて、個性的な集団だ。
その不気味さは、まるで不気味という感情を押し付けるような不気味だ。
私は怖くて。怖くて。
本能的に逃げたくて。
でも此処が何処かも分からなくて。
周りには、オレンジ色の光なんてなくて。
この暗い路地裏のような場所には、
白い点滅する外灯があるだけだった。
そんな外灯だけが頼りだった。
(暗いにゃぁ...ママぁ..パパぁ,..)
月明りってのは、こんなに心細いんだ、
「怖いにゃぁぁ~」
涙がこぼれる。
私はなんて弱い生き物なんだ。
ママが私に近づき、手を繋ぐ。
「お前たち!にゃにが目的にゃ!」
ママは叫び威嚇する。
当たり前のように、こんな不気味な集団に対して危険だと直感が叫ぶ。
そしてその不気味な仮面の集団の、代表のような奴が口を開く。
「お前たちは愚かで汚れた種族なはずだろう」
一人が語る。
その語りは自信に溢れていて、声は酷く歪なものだ。
ボイスチェンジャーでも使っているのか?
パパは警戒を一瞬たりともと解かず警戒を続ける。
機械音が不気味に響き渡る。
「死してようやく償える種族は存在する」
何を言ってるんだにゃ?涙が止まらないにゃ。
「お前ら!カリン達に手を出してみろ!絶対に殺すにゃぁ!」
パパとママが威嚇をし続ける。
「お前ら、にゃにをしているのか分かってるのか?犯罪行為だニャ!」
.........
無言が続く。
そんな無言を壊すかの如く不気味な男が話し続ける。
「悪は死すべきだ!例え鏡の前だろうと私はそう言おう!」
危険だ。
俺のそう直感が告げる。
カリンとライカを連れて、どうにか逃げられないだろうか。
俺達は主に逃げに特化した種族だ。
相手との間合いを読み、逃げの一手を探し続ける。
俺達の種族は簡単に言えば雑種のイエネコだった。
≪雑種のイエネコは異なる猫が交配して生まれた存在だ。
選ばれなかった血で、世界に残った存在。
強くないから戦わない。
速くないから先を読む。
牙が短い分、空気に敏感だ。
人間より多くを感じ、
人間より少なくを望む。
力を持たなかったから、意味を読む。
勝たない代わりに、生き延び、
支配しない代わりに、関係に身を置く。
それは進化ではない。
選ばれなかった結果だ。≫
ライカが小さな弱い牙を出そうとしたその時。
「ライカ!手を出すにゃあ!」
俺は叫ぶ。
「手を出せば、法の牙は俺たちに向く!それが狙いかもしれない!」
ライカは、ハッとして牙を隠す。
泣き続けるカリンに目をやる。
泣き止ませられない自分にストレスがたまる。
「........お前たちは。危険だ」
狂気を胸に持つ人間が言う。
声は歪で、聞いたこともないほど暗い、機械音だった。
仮面の下には機械があるのだと思う。
「お前ら、にゃにをしているのか分かってるのか?犯罪行為だニャ!」
「法が守ってくれると?そんな醜いものに縋るのか?お前らが?今さら?お前らが法に縋っていい種族だと?
同一の種族が...犯罪者の奴らが?..自分の立場になったら乞うのか?
法などに我々が怯えるか?」
機械音の奥底にある、感情的なその言葉に、希望を見出す。
感情があるなら。
話が通じそうな相手で俺は少し冷静になろうとする。
「手を出させることは目的でもないという事か?なら、どうにか話しあいで、解決しないか?」
なるべく相手を尊重する意思を見せるためにも 言語を寄せる。
身をかがめ敬意を示す。
それは土下座であった。
もしカリンやライカが助かるなら..俺は地面に這いずり回ってでも、ピエロを演じるだろう。
「話し合い?それは対等なものがするものだろう?
男なら種族がどうだろうと恐怖を飲み込め。例えお前が抗おうが、
意味を読む生き物は、意味を作る側には立てない」
この言葉は、俺にあからさまな自分たちが上の立場であることを示す言葉だった。
己が意志を強制してくる気だ。
こいつらは覚悟が決まっているのかもしれない。
だが覚悟が決まっているならば。
何故俺たちはまだ生かされている?
「法を裏切り、殺しをした種族が、法に守られる?勝手な話が過ぎる気がするが?それに法は鎖じゃない、
法とは線路だ...俺たちは法という線路を壊してるんじゃない。
敷き直しているだけだ。
乗るかどうかを“選ばせている”つもりで」
俺たちには選ばせる気もないと、言っているようなものだった。
抗えと言いながら、抗いようがないような感覚がして、心が苦しくなる。
無言の中、動じないことでも見せつけるように俺は叫ぶ。
「なにをするきにゃ!」
「黙れ!」
三人の一番前の人間が、片手に鉄の塊を持ってこちらに向ける。
「???」
潤んだカリンの瞳はそれをすぐには認識できませんでした。
ですがカリンよりも早くその武器を銃だと、俺は判断する。
俺はすぐにカリンの前に立ちました。
空気が固まる。
そして鈍い大きな音がする。
――バン!と。
そして本当にごく少量の血がカリンの頬にかかりました。
「にゃぁがぁ」
俺の悲鳴がこだまします。
小さな悲鳴です。
俺は苦痛にもがく。
(ふざけるなぁ...痛い..なんだ....痛い以外考えられない)
太ももを撃ち抜かれたのか。
「ぐぅあ」
太ももから血が流れる。
太ももが熱い。
映画みたいに血が噴き出ることもなく。
動脈を貫いていて、最小限の勢いで、あふれ出る血が妙に生々しくて吐きそうになる。
鉄の錆びたような強い匂いがする。
その瞬間、隣からとんでもない殺気をかんじました。
ライカだった。
ライカも反応はしていたけど動けなかったみたいだ。
「だのむ、カリンだけは」
そんな愚かな自分の発言を俺自身は、とんでもなく醜く思った。
ライカは手も出せずいる状況に俺の足を見て、薄らと涙があふれる。
俺も痛みから、乞うように瞳に感情を灯す。
何が何だかがわからなくなる。
「難しいことは分からないが...でもおねがいだ.....俺はいいんだ.....だから....」
上手く言葉に気を遣えない。
火でふとももを焼くような痛みが脳を支配する。
「お願いニャ!パパとカリンを殺さないで!絶対に殺させないにゃ!」
涙も言葉もすべてが自分以外を救おうとするものだった。
二人で不気味な集団を睨む。
俺は口を開こうとするが、不気味な声にさえぎられた。
「何故お前らが私を苦しめる」
この集団は異質だった。
カリンはいつの間にかライカに抱きしめられていた。
俺とあのマントの連中が喋っている間にライカとカリンは俺の後ろに隠れたようだ。
「はは」
流石はライカだ。
(絶対に二人を守らなくては..絶対に生きて..家族の幸せをカリンに..)
説得できるだろうか。
最初にあった優しそうな定員。
俺たちをここに移動させたときに、小さな涙を流していた謎の彼女。
そのすべてから、向けられる視線に心地よさまで感じていた。
恐怖なんてそこにはなかった。
視線に敏感だった俺がだ。
違和感があった。
俺の種族が追い詰められ。
暴れて、多くを殺した種族なのは有名な話なのに。
哀を込めた視線を感じていた。
「なんで...カリンから狙った?」
なるべく、平静を装って話す。
なぜ一番前にいた俺ではなかったのか。
「.....そいつが死んだ時...お前らは怪物となる...それは罪だ..」
そう呟く。
そんな理由で?ふざけるなよ?
「にゃぁ!パパぁ!ママぁ!」
叫ぶカリンを二人で見る。
「「死んでも守るから大丈夫ニャ!」」
二人でカリンを安心させようとする。
二人でカリンの幸せを願う。
これが家族か。
若くして、争い、家族を失ったライカと俺。
お墓の前で、早くに俺たちを一人にした両親を、俺はライカと共に憎んだ。
俺たちを活かすために死んだ両親たちを。
お墓には落書きとゴミが捨てられていた。
そんなごみすら漁ってでも、俺たちは生き延びてきた。
俺たちは、俺たちを置いていった両親を恨んでいた。
でも今なら気持ちがわかる。太ももの激痛で、死ぬかもしれないと感じて。
でも死んでもカリンを生かしたかった。
その俺たちの辛かったあの頃を、繰り返すわけにはいかない。
生きないといけないのに、
無意識に出た言葉は「死んでも守る」だけだった。
≪死んでも守る・それは俺とライカが口にするには不義理な言葉だった≫
死ぬ気で守る。死んでも守る。
意味合いは違えどどちらも力を持つものが言えるセリフで。
力のない俺たちには言う資格すらない言葉なはずだった。
「どうして、善が貴様らを囲う?どうして悪が我らを囲う?」
一人呟き続ける。
機械をはさんだ音声だというのに感情を感じる。
悩んでいるのか?そんな中途半端な気持ちでカリンを殺そうとしたのか?
憎しみを抱き、不気味な男を睨みつける。
「怖いにゃぁ...パパぁ!」
涙があふれてやまないカリンを見る。
どうか泣き止ませようとするライカの姿が俺を強くさせる。
「おにぇがいにゃ!見逃してほしい。死にたくない。カリンを一人にしたくない!」
深々とした土下座。
地面に頭を擦り付ける。
屈服。屈辱。太ももの激痛。
そのすべてが可愛く見えた。
ヒーローになれない。
でも父親でありたい。
俺ができるのは、抗いもせず、ただただ独白。
俺が死ねば家族の文字は欠ける。
だというのに。
出る言葉は、自分を抜いた言葉だった。
「誰が殺したくて殺そうとしていると思っている!?でも殺らなくちゃいけないんだろう!」
不気味な仮面から苦痛な声がこぼれる。
あふれ出すように。
意味は分からない。
「何故、こんなにも愛に溢れた者たちを殺さなくてはならない!何故、愛をあの時知らなかった!なぜ今になってだ!
これが正しいことなのか!」
叫びながら天に向かって叫ぶ。
こんな種族の為に、心を揺さぶってくれる。
「早く殺すんだ。そうしなければ」
後ろに控える、マントの一人が声を発する。
「分かってる!分かりたくないんだ!」
一度無視に関する話をしたと思う。
≪人は、見えないものを避けるんじゃない。
見えてしまうと困るものから、目を逸らす。≫
彼らもそれと同じような状況のような気がした。
仮面の下には優しい涙がたまっているのかもしれない。
「嫌だ、分かっているんだ、でも嫌でも殺らなくちゃいけないんだ」
吹っ切れたように銃の引き金が引かれる。
不気味の仮面の人の潤んだ声が、かき消される。
生々しい発砲音が何発も響く。
バン!バン!バン!あまりの大きな音にびっくりする。
音は控えめでも、目の前で鳴る火薬の音は怖くて仕方がなかった。
火薬のにおいは直ぐに、
パパの血の匂いでかき消される。
「ごほっ......はは」
俺は笑う。
動脈から逆流する血液を大量に吐いて。
全てを受け止めて俺は満足だった。
(あぁ死ぬ..)
本能的にそう思った。
「よかったよ、お前たちがナイフでもなく銃を選んでくれて..」
俺は言う。
死を覚悟して、俺は強くなった。
「何が良いんだ?」
「銃に対する恐怖心は薄くてな、まだカリンを守れそうだ....それ以上動いてみろ...
俺の全てをかけてでも貴様らに地獄をあびせてやる!」
血がのどに詰まってガラガラの声で叫ぶ。
防衛本能を超えた、子供を優先して守る本能。
俺達の種族にもこんなに素晴らしい機能があるじゃないか。
選ばれずとも..いいものを持っているんだ。
「あにゃた....?」
「にゃんだ?お前ら上手くにげてくれ?」
返事が薄くなる。
「おら、何発でも撃てよ、俺は倒れない絶対に!」
俺は世界で一番、カッコイイんじゃないか?なんてばかなことを思う。
真っ赤な液体が体を包む。
痛い。苦しい。
そんな時、ライカの顔が上から俺の顔を覗き込む。
そしてリンカの顔も見えた。
「あれぇ?どうしたんだぁぁぁ....?」
何で顔が見えるんだ?
あれそういえば体に力が入らないな。
なんで上から,,二人の顔が..
「早く逃げるんだ、俺がこいつらを殺してる間に.....」
体に力が入らないのに、
どうやって抗おうか。
それよりも..
「俺は倒れているのか?」
皆の声が遠ざかる。
カリンとライカが俺を見る。
「「パパぁ!」」
二人は世界でいちばん好きな呼び名を泣きながら叫ぶ。
ダサいな、俺。
……こんなところで。
「立てよ...俺...」
死んですら守れやしない。
弱い種族だ。
種族のせいにしてないとやってられない。
だって二人の涙が頬に落ちるの、見ることしか出来ない。
≪生物には限界がある≫のだな。
「やだ、やだぁ、やだぁ」
「ごめんなぁ恨まれている種族で」
最後に俺は、カリンに隠し続けたことを謝罪した。
カリンの頬を触れやしない。
体が一切動く気がしない。
だがそれではダメなのに。
最後の力を振り絞っておポケットから小さな箱を取り出して、ライカに渡す。
頬をあげて...
「たんじょお...う...び..」
口が動かなくなった。
血が吹きこぼれる。
そして瞳が嫌という意思を無視して閉じていった。
目から光が消える。
目は閉じきることなく、視界は黒に染まる。
「うそにゃぁ!知ってる!全部しってた!恨まれてるのも、嫌われてるのも!でもどんなパパでも好きだにゃぁ!
だからおきて!私の事、またおこしてにゃぁ!」
嗚咽を起こしながらカリンは叫ぶ。
ライカはひたすらにパパと呼んで泣き続ける。
そして静かに鉄の塊は。
パパの暖かい血で染まった私たちに向けられた。
(あぁ...リント....私の番だね)
そしてまた一発の発砲音がする。
バン!と..。
その瞬間、カリンは何かに抱きしめられた。
「うぐぅ」
私の苦痛にもがく声が漏れる。
カリンに覚えのある赤い液体が飛ぶ。
「ママぁ!」
「....可愛いカリン......よかった.....今度はすぐに体が動いて」
私は報いたよ!リント...私頑張ってるよ?
動けなかった自分に一矢報いたんだよ。
(褒めてよね..リント..)
最初の一発目。
私はね、私の保身に走った、自分に怒りが溢れていた。
でも報いたんだよ....。
「カリンぃ?よかった.....今度はすぐに体が動いて」
そう何度か繰り返す。
震えた体で繰り返す。
何を言っているのか、自分でも分からなかった。
頭で何を言っているのかも整理できない。
「嫌ぁ!ママぁ!一人は嫌!」
もう涙か血液かも分からない。
熱い。痛い。脳がそれに支配される。
パパはこれを何発も耐えたんだ。
あぁ...本当に..。
パパに惚れてよかったにゃぁ......
私は最後に必死に笑顔を作る。
「カリン?....お誕生日おめでとう......これ欲しがってた純白のリボンにゃぁ......」
パパが渡してくれた箱を開けて、カリンの頭に結ぼうとする。
でもダメで、力が入らない。
心臓を撃ち抜かれていた。
血がカリンの方に流れていく。
情けないことに、カリンの頭の上に乗せただけになった。
「嫌にゃぁ!嫌にゃ!白くない!だから新しいリボンがほしいにゃぁ!」
二人の血液で赤く染まったリボンを見て言う。
次の機会を無意識のうちに作ろうと、カリンはもがいた。
涙があふれ、嗚咽が止まらない。
過呼吸のように思考がまとまらず言葉さえもままならない。
「幸せにしてあげられなくて....ごめんにゃぁ........幸せな思い出を作ってあげられなくて....虐めを無くせなくてごめんにゃぁ..
ごめんにゃぁ.......こんなダメな親でごめんにゃぁ..」
懺悔。
それは最も自分に向き合う時間。
「マ......ママぁ...」
「あぁ........世界で.............一番........................愛しい子だにゃぁ....お前らカリンに手を出してみろ...絶対に...
ぜった....」
そうして抱きしめたまま、ママは目を閉じる。
私は泣くことしか出来なかった。
「はっ.......ふっ.....」
呼吸がままならない。
「うにゃぁぁ!」
泣いてる私につられてか、不気味な仮面の人たちが胸を抑える。
そんな震えた体で、ママの死体を掴んで、私から引き離す。
(やめるにゃ!やめて!...嫌にゃ!)
泣きながらママの体に抱きしめる。
でも初戦は子供の力で直ぐに蹴り飛ばされた。
「俺たちは正義だ!
世のためだ死んでくれ!
ガキだからと、抗いもせず...大人に甘えて...
そんな頼ってしまう大人がいるような、甘えた環境で暮らしていいはずないだろう!貴様らが!
その生は罪と断言しよう!」
必死に震える声で言う。
被害者のようなその態度がむかついた。
やるならそんな潤んだ声で言うな...憎しみが湧く。
「うぐぅ」
私は首を絞められ、持ち上げられる。
私だけには優しい殺し方をしようとする。
私に心配をかけまいとパパとママは最後まで笑ってくれた。
本当は叫び、頭がおかしくなる程痛かったのに。
「いや!」
私は暴れる。体を蹴る。こいつらを殺してやりたい..そう思う。
「パパ....ママ.........助けっ!」
苦しくて咄嗟に名前を呼ぶが反応は無い。
ギュっと力がこもる。
息ができない。
脳に酸素が遅れない。
私は声を必死に出そうとする。
パパとママが最も言いたかったはずの言葉を。
私が言う。
「死にたく,,ないにゃぁ,,,,」
あまり強い力に意識が遠のく。
徐々に気持ちいような感覚がやってくる。
あぁ..死ぬのだろうか。
その時、遠くで走ってくるような、そんな足音が聞こえたきがした。
(だれだろう.......私はしぬのかな?)
動かない脳がそんな野暮なことを考える。
【気づけるはずない】存在が近づいてきている気がしました。
足音がする....誰かがくる...
【気付かない事が】得意な私にとっては特別な足音が。
きっとヒーローさんです。
パパみたいに強くてママみたいに優しい。
最強さんです。
だからあと何度か、助けを呼ぼう。何故だかそう思いました。
「..あxぐぅ......助けっ!」
その瞬間視点が切り替わりました。




