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12話_色づく世界_


思考が止まる。

理解が追いつけず、ただ圧倒された。

言葉も出ず、ただ目が離せない。


「あ、あぁ」


驚きのあまり、声が出る。

地面にはいくつもの絵画や浮世絵のような、"絵"が置かれている。

絵のほかにも、乾いた絵具や、容器が転がっている。

――ここは美術館だ。

名画があること自体は、不思議じゃない。

問題は部屋だ。

爆発でもあったように崩れた、扉から正面の壁。

その一面に、描かれた"絵"だった。


「なんだよ...これ」


どこまでが現実で、どこからが幻なのか分からない。

今まで見た、異種族よりも衝撃的だった。

和文先生も言葉が出ず、一緒に立ちすくんだ。

"それは"一枚の"絵"だ。

一枚……?


「違う...」


"絵"という部屋だった。

芸術なんて分からない。

(だけど....これはありえないものだ)

目の前にあるのに、そう感じる。

部屋の窓と壁が壊れていて、開放的に外の景色を映す。

(風が吹いている)

元々、廃墟のような場所だったのだろう。


「綺麗だ....」


崩れた壁からは、崩れた建物。無事な建物。外灯や色々なモノが見えるはずだった。

(...塗られている)

そのすべてに、色が塗られていた。

この部屋から見る景色が、すべて一枚の絵になっていた。

外のすべてのものに、宇宙のような色が描き込まれていた。

絵柄で言うなら、ラッセンのような幻想的な色彩で、技術の昇華を表した。

目の錯覚を生かした、アートでもあった。


「あぁ.....」


現実ではありえない、紫色の光の蝶が、空に浮かんで断層のように身を崩す。

空に絵など描けるはずないのに、その幻想的な絵の所為か、蝶が見えた。

部屋の入口からは一枚の、絵に見える。

ただ、少し横に動くと、崩れた壁や窓から見える景色が変わる。

この部屋のどこから見ようと全てのモノが塗られている。

外には、"空"と衰退した"街並み"はもうない。

見る角度によって、外の景色の絵が変わり続ける。


「眩しい....」


夕暮れ時の太陽が眩しかった。

街に描かれた宇宙に太陽が沈んでいく。

夜になった時、空がどっちか分からなくなりそうだ。

時に眩しく、時に暗くなる。

そんな、部屋の正面から目が離せない。

部屋の地面にはやっぱり、価値が付くほどの、絵や芸術作品があるのに。

その壁から目が離せなかった。

空に、少女や何も見えないのに。


「あぁ...これを作っていたのか...」


そんな言葉が聞こえた。

和文先生の声だった。

その声で気づく。

中に一人の女性がいた。

紫色の髪にベレー帽。

薄い紫の薔薇のような、スカートの短いドレスを着ている

腰まで伸びた紫の髪が、サラサラと揺れる。

右手にはキャンバスと筆を持っている。

これほどに広大な芸術を、一筆一筆で描いているのか?

(さすがにあり得ない)

そう思ってしまう程、凄かった。

この絵を見ていると、世界の自由を伝えるように、"希望"という気持ちが溢れる。

紫色のドレスは、絵を描くときは着替えるだろう。


「少し..もったいないような」


その美しい女性すら、この"絵"の一部に見えた。

それ程までに綺麗な女性だった。

少し派手なドレスすら吞み込みそうなるほど。

だが、そんなスカートの裾の方に絵具を、擦り付けたような跡がある。

まさか……着ているものまで、絵の一部にしているのか?

少し体が痩せているようにも見える。


「君が描いたのか?」


和文先生は、驚きを隠せないまま聞く。

こくりと、その女性は頭を下げる。

そして口を開いた。


「....勝手に開けた?」


表情が動かぬまま冷たく言った。


「え..あぁ、勝手に開いたんだ」


和文先生がそう言う。

彼女が開けたわけじゃない。

それは、女性の位置を見て分かった。

中に二人いれば分かるが、一人しか居なかったのだから。

扉を見ると、ドアノブが壊れていて、勝手に開いてしまったようだ。

先生のノックで壊れたのか?それ程までに壊れかけの扉だった。

そんな扉を見たとき、扉に一つの女の影が現れた。


「んぅ!」


突然聞こえた声に、和文先生は背中を引っ張られた。


「うっ!」


素っ頓狂な声をあげて、首根っこを掴まれた和文先生が、部屋の外に放り出された。

それと入れ替わるように、真っ白なキツネ耳の少女が現れた。

その顔に、見覚えがあった。

雪命ゆきめ さくだ。

あの子供たちの頭を撫でていた。


「和文....いつもみたいに、水と食べ物....部屋の前に置いて」


朔は冷たい口調で言う。

白い尻尾がユラユラと揺れている。


「あぁ、部屋に入って悪かった...あぁ...うぅ.....すまない...あれを言い表わせない」


困ったような顔をしていると思う。

俺だって、そうだ。

こんな非現実的なのに、現実的に感じるこの絵を、なんていえばいいか。


「とにかく悪かった...あの歌っている子..あの子にもこの食べ物と水を渡しておいてくれないか?」


「んぅん...渡しておく、ありがと...引っ張ってごめんなさい....」


「すまない...ありがとう」


「んぅ...バイバイ」


朔は単調的に、少し照れたようにお礼を言った。


「紫苑ちゃん...部屋にいれちゃって...ごめん」


朔は申し訳なさそうに、頭を少しだけ俯かせる。

白い耳と尻尾が、下に向かって伸びる。

朔は名前を呼びながら思う。

彩雲さいうん 紫苑しおんあまりにお似合いな名前だ)

俺はそんな朔が落ち込んでいるように見えて、可愛いく見えた。


「????...別にいい...入っても...」


紫苑は慰めるように言う。


「いいの?....」

「集中...切れるの....嫌なだけ」

「そうなの?...良かった...この絵を壊したくない」


尻尾を嬉しそうに振る。

あの時よりも、素に近いのか、朔は甘えん坊のように見える。

(それよりも、なんか和文先生に申し訳ないな...俺だけ追い出されなかったし)

会話に耳を澄ませる。

当事者でない、傍観者なのだから。


「コン、コン、コン!」


透き通るような声が、ドアの外から響く。

(効果音を自分の声でやるんかい!それに、この声色は...さっきの歌声の子?)

どうやら、こちらの部屋に来たようだ。


「んぅ....氷室 ルカ(ひむろ るか)....」


何故か、朔は嫌そうな顔をする。

紫苑の表情は変わらず、扉に視線を向ける。

扉が開いていく。


「大きな音がしたけど....大丈夫?」


綺麗な声が聞こえる。

少し低い、カッコいいような声。

庇護欲っていうんだろうか。

そんなのも、掻き立てられる。


「紫苑ちゃん、ごめんね...邪魔したかな」


黒いストレートの髪が、襟足を中心に腰あたりまで伸びている。

スタイルは抜群で、体は綺麗な曲線を描いた。

幼さを残しながら、大人びた顔をしている。

首にチョーカーのようなものをつけていて、上着は白いポロシャツを一枚で、袖をめくって肘まで出していた。

サイズが合っていないのか、お腹が少し見えていて、首元の緩い服装をしていた。

ジャージのようなズボンを履いていて、靴はスポーツ靴を履き、少しだけ汗ばんでいた。


「.....大丈夫....今は書いてないから」


「そっか、よかったよ」


地面に落ちた絵画などを避けながら、入口左の開いているスペースに行く。


「紫苑ちゃん、これ描いたんだ。

当分は入ってないし、知らなかったけど....凄いね」

「んぅ...凄い....見てると...こんな世界なのに綺麗に見える...まだ知らないものがあるって....キラキラしてる...」

「朔、私も同じだな。

この絵を見てると、簡単に夢が叶っちゃいそうな、そんな気がする」


相変わらず表情が変わらず、分かりにくいが、少しだけ紫苑は嬉しそうにした。


「....ありがと」

「相変わらず、あんたは無口で綺麗だねぇ」

「んぅ..文句?」


悪いなぁ、酷いなぁ、と言いたげな顔で朔が、ルカを煽る。


「噛みついてくんな、キツネが」

「んぅう!」


二人は睨みあった。

キツネ耳がある、女の子が一人。

人間の女の子が二人?

この場所では、人間を多く見かける気がする。


「汗...垂らさないでね...」

「はいはい、そんな汗かいてないよ、キツネさん」

「ルカ!私!朔!」


宅急便の魔女みたいに言うな!


「はいはい、朔ちゃん」

「んんぅ」


満足そうに朔は笑顔になる。


「久しぶりだね、三人で会うの」


ルカが、ふとそんなことを言った。


「んぅ...久しぶり」

「うん....久し」


二人は答える。

三人が温かい視線で互いを見る。


「三人?」


そんな時、紫苑が疑問を発した。


「あれ、私と朔と紫苑で三人じゃん」


紫苑は、頭を可愛くコクリとかしげる。


「ねぇ....そこに居る...透明な色は何?」


突然、紫苑が俺の方を指す。

指の方向をなぞるように、ルカと朔が俺を見た。


「透明?」

「んぅ...分かんない」


二人は頭をかしげる。

紫苑は、瞬きを一度もしていないと感じるほど、俺から視線を外さなかった。


「透明の色....ありえない....

・ジェームズ・タレル。この人は≪光だけで空間を作り≫存在しないものを作った...

・イヴ・クライン。≪見えない作品≫を作った...空気という空虚そのものを、芸術にした。意識と価値の境を溶け合わせた...

・デュシャン。≪全ての物が芸術の作品だった≫日用品も、芸術と言えば芸術となる。≪意味で芸術を成立させた≫...」


困ったように、紫苑は意味の分からない事を言い出した。

だが、ずっと俺の方を指がさしている。

見えている?

――だが、あまりにも反応がおかしい。


「さっきの三人は、"認識"によって無いモノを....存在しない価値を生み出した...それは芸術の本質の一つだ...だけど」


ルカが頭をかかえながら、口を開く。


「なんか、運気のいい壺を売るみたいな話?」


「....違う.....そこに....いる」


紫苑は空虚を見続ける。


「ちょっと、紫苑?大丈夫?」

「??...そこに...いる...見えないの?」


心配そうにルカが聞く。

紫苑は、自分に言い聞かせるように喋っていた。


「んぅ...紫苑?」


耳としっぽが怯えるように、シナシナになる。


「ある...透明な色....何?....これは...だれが連れてきた?」


二人が驚いたように体を震わせる。


「透明人間がいるって事!?いるの?」

「んぅ!」


二人が、俺を威嚇する。


「違う...透明人間じゃない...存在するものを無いモノにしても無駄...私、見間違える....ありえない.....本当に透明な色がある」


紫苑には、俺がどう見えているのだろうか。

影だけあって、そこに人が居るようにみえているのか?

俺のいる位置だけが、水やガラス越しのようにぼやけて見えているのか?

自信が呪いの透明の理念は、思ったよりも難しく感じた。


「んぅ?...紫苑..難しい」


頭の上に「?」が浮かんでいるように、朔は首を曲げる。


「紫苑...絵のかきすぎじゃない?」

「ルカ...朔....イルノ....概念的存在?....概念体?」

「概念体?...概念体ならありえる。

でも、もし誰かが居るとして、なんでそんな凄い奴が、こんなところにいるの?」


ルカは紫苑の事を信頼したのか、俺の方を見て聞く。

ルカと朔は見えないからか、自身の体を強張らせた。


「あ、え、あの、見えるのか?俺の事が」


動揺してしまう。

もしかして...そんな希望的観測に、実感がすり寄ってくる。

だが、俺の言葉への返事は無かった。


「んんぅ...紫苑の話...むじぃ...誰かいるなら出てきて」


俺は、必死に三人の前で手を振った。

ルカや朔の肩を揺らす。

でも無駄だった。

肩を揺らした事実すらなかったことになる。

紫苑の肩も触ろうとするが、距離を取られた。


「あ!ここ!俺ここに居る!」


醜いぐらいに、アピールをする。

必死にアピールする自分が、滑稽に思えた。


「なんか....動き回ってる...キモイ」

「おい!キモイ言うな!認識すらされてないのに!キモイが出た!」

「え、なんかキモいの?」

「ぬぅ...kimoi」


なんかめっちゃ嫌われてない?

最初、みんな怖がりながらも、興味津々じゃなかった!?

あと、朔!めっちゃ滑舌よく言うなよ!


「こんな酷い仕打ち!」


俺は肩の力が抜けて、地面を見るように落ち込む。


「あ、なんか落ち込んでそう...」

「え、馬鹿?」

「んぅ...ダサい」

「ダサいが出た!馬鹿も出てた!?」


ありえない!

一方的だから、言い返せもしない。


「君は....私達の...敵?」

「もしいるなら、答えて...悪意があるなら困るし」

「悪意...怖い」


三人の瞳が自身に集中する。

こんな可愛い子たちに、怯えた目で見られるのって、こんなに苦しいんだ。

初めて知った。

苦しいはずなのに。

それでも――嬉しかった。

(視線って、こんなにも"嬉しい"んだ)

ライブや演劇の視線を浴びるとは違うんだろうが。

不思議と、心地いいものだった。


「悪意はない!信じてくれ!」


俺は、意地でも首を切られたくない、巨人のごとく首を振る。

(....怖いんだ)

慣れていく自分が、怖かった。

どんな犯罪行為だろうとばれない。

人としての、一線が壊れていくんだ。

敵じゃないんだ!。

――俺を...助けてくれ...


「もってくれぇ!俺の首ぃぃ!」


やばい、クラクラする。

本当に最終回かも、脳が揺れて死にそう。

体が疲れちゃう。


「....ふふっ....可愛い...」


紫苑が俺を見て、表情をあまり変えていないのに、笑った気がした。


「え、どうしたの?」

「...首...頑張って振ってる....そんな気がする」

「んぅ...いい子?」

「...分かんない...でも...いやじゃない」


皆が俺の事を話している。

朔と紫苑は表情が、あまり変わらず話している。

俺の声は届かない。


「もしさ、いるならここに何か書いてよ!」


ルカはそう言って、何も書かれていない、扉横の壁を指さした。


「紫苑?ここって大丈夫?」

「...大丈夫...この絵は完成してるから...紫色の絵具...それ使って」


そう言って、俺の前に一つのパレットが置かれる。


「んぅ!....綺麗な紫...」


興味深そうに朔が、作られた紫の絵具を見て言う。


「青5赤2黒2と少し緑...ある程度は感覚」


紫苑は迷わずにそう言って、俺に渡したパレットの上の紫色の作り方を説明した。

俺はそのパレットを拾う。

次の瞬間...三人の視点からパレットが無くなる。


「本当にいるの?姿とか、見せられない?パレットどれか使っていいやつある?」


ルカが、目の前で消えたパレットを忘れてしまったかのように紫苑に言う。


「んぅ..イル?」


皆が頭を悩ませた。

一人を除いて。


「透明な色の形....変わった....私のパレットのカタチ?」


空虚に向かって紫苑は言った。


「持ってるよ、やっぱり≪俺が≫関わったら見えないんだな」


俺はそう言って首を縦に振った。

絵具が他のいろと混ざらないように、最小限の動きで。


「え、どういうこと?」

「分からない...私のパレットは、そこにあるので全部....でも....私のパレットと同じ形の、透明な色が見える...」

「んぅ?...むじぃ」

「偶然もってるだけじゃ?」

「ありえない...このパレットは....孝之のものだ」


三人が頭を抱える。

俺はそれを無視して、先ほど言われた壁にそっと筆を入れる。

筆を傷つけないように、なるべく邪魔にならなそうな壁に。

一線を入れる。

絵具の線が綺麗に続かず、途中で切れる。

それにカーブを描くようになってしまって、真っすぐの線は書けなかった。

(たった、一つの真っすぐの線も書けない。

どれだけ頑張ったら、一つの世界の"絵"を描けるようになるんだ)

振り向けば、夢のような希望の世界が広がっている。

三人が頭を悩ませている横で、俺はパレットを元の位置に置いた。

三人が、突然現れたはずのパレットを見る。


「このパレット、使っていいんだよ?」


ルカは現れたパレットを見て、言う。

まるで、まだ書かないの?とでも言いたげに。


「ルカ....多分.....書いてる」

「え?」

「そこにパレットと同じ、紫色の線がある」

「??でもそれって最初から無かった?」


ルカが不可思議なこと言った。


「んぅ...私も最初からあったと思う...」


朔までも、変なことを言う。


「うん...確かに...私はその線を描いた....そう思っている....でも....私の線じゃない」

「どういう意味?」

「周りを気遣う優しさ...揺れてしまう不器用さを感じる」


紫苑は興味深そうに、線を見る。


「この線....私は好きだ」


紫苑はまだ乾いていない、星空色の紫を人差し指に付ける。


「君は.....君が関わり触れたモノを....全て透明な色にしてるの?」


紫苑はそんな絵具が付いた手で、俺の頬に触れた。

俺が触れたモノが透明になる。

カリンを抱きかかえた時、紙に文字を書いたとき、すべてが気づかれなかった。

透明なのが自分だけなら、紙が浮いているように見えるはず。

存在自体が消えて、周りはそれを受け入れた。

俺はそのことをすべて思い出した。

紫苑の発言に、心の底からうなずく。


「触れたものも、透明にするってこと?」

「少し...違う.....触れたモノは無になり....離れたモノは有になる....気づくことが出来ない」

「無くなった事実すら、気づけないってこと?」

「....そう」


紫苑は呟く。

そっと俺の方を見た。

俺は変わらず、その疑問に頭を縦に振る。


「んぅ...良く分かんない...」

「朔、頭が、」


ルカが残念なものを見る目で朔を見る。

朔はそんな視線に気づいて、ルカを睨む。


「でも紫苑?気づけないならどうしようもなくない?」


俺はルカのその言葉を聞いて、心を落とす。


「そう...だね...でも...私はこの子とお話がしたい...」


紫苑は思った。

この子が書いた一つの線。

私には無い、誰かへの気持ちが乗っていた。

紫苑にとって苦手な、"表現"の才能を感じたんだ。


「そっか...まぁ悪い奴じゃなさそうならいいや!」


ルカは能天気にもそんなことを言う。


「ねぇ紫苑?話ししようよ...最近歌が、いいの作れないし、久しぶりに三人で話したい」

「うん....いいよ、四人でね」

「あぁ、そうだった。もうヒトリいるんだもんね」

「んぅ!うちも....話す」


紫苑は、そう言いながら俺の傍まで来る。


「...これが...透明の色...」


紫苑の顔が俺の顔に近づく。

そのあまりに綺麗な顔に、俺は身を反らす。

顔が赤く染まる。

伸びた髪で、顔を隠したくなる。


「うぁ!」


俺は身を反らしたまま、地面に尻もちをついた。

そんな俺に、つられるように紫苑が倒れてくる。


「っ....」


紫苑は変わらぬ表情のまま、俺に馬乗りになる。

だが、紫苑の体は俺には触れていない。

地面に膝をついて、馬乗りになるように、体を囲んだ。


「ごめんね...触れたら、消えるでしょ?」


そう言って俺に触れることなく倒れた俺を上から見つめる。


「へぇ...ここに居るんだ?」


ルカがそう言って、俺の顔を覗くように見る。

ルカの髪が顔に掛かる。

ふといい香りがした。

心臓がとんでもない音をたてる。


「んぅ....うち、見えない」


朔がそう言って、俺の顔の目の前に迫る程、顔を近づけた。

ダメだ!綺麗な顔が、匂いが。

三人とも柔らかそうな肌をしてる。

なんでこんなに皆可愛いの!

≪俺は女の子が好きなんだ!≫

心臓が緊張で破裂する!


「皆...ここに横になって...」


紫苑が突然そう言って、二人を開いた地面に導く。

(よかった、離れていった。もしかして、助けてくれたのか?)

透明な俺を紫苑は「こっちだよ?」っと、隣を手でトントンとする。

その瞬間、俺の世界は色づいた。

失っていた何かが、戻ってきた気がした。

三人は手を繋いで俺の事を待っていた。


「ごめんね...手、繋ぐと....私....多分消えるでしょ?」


紫苑は謝る。

(そんなことない...俺に話しかけてくれるだけで...)

紫苑の顔から目が離せない。

あぁ...綺麗だなぁ。

俺はそんな気持ちを抑え込んで、他の二人と共に横になる。

四人で、同じ天井を見上げる。

俺は天井を見て

――言葉が出なかった。

またもや驚きが体を包んだからだ。


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