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ヒロインの選択 〜ドアマットヒロインと気付いた私は幸せになれるのでしょうか?〜  作者: しずもり


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2/3

中編

説明回?な話で、少々長めです。



私、転生者だけではなくて人気ラノベのヒロインでした!


テヘッ。



・・・・じゃ、な~いっ!!



 前世に夢中になったラノベのヒロイン、しかも虐げられて殺されかけたりするドアマットヒロインが私!?



驚きの事実に青褪めていく私を見て心配してくれた参列者が、お父様にこの場の収拾を促していた。



お父様も思いがけない出来事に慌て、参列者に詫びと葬儀の締めの挨拶をして、即解散になった。


こんな葬儀の終わり方って、と思っていても一同解散するしかないよね。



 母方の祖父母や兄弟は射る様な視線をお父様に向けて『話は後日に』と帰って行ったし、父方の祖父母も苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


でも、実は父方の祖父母の口の端が上がっている事を私は見逃さなかった!



こんな大きな醜聞は、噂好きで、人の不幸は蜜の味な貴族社会ではすぐに噂は広まるだろう、と誰もが思っていただろう。



けれどこの日の事は公では大きく騒がれる事は無かった。後で知った事だけれど、水面下では話に上がる事はあっても、表向きは全く話題にされる事は無かったようだ。


なぜならば、カテッツォ前侯爵夫妻が方々に手を回したから。


理由は至って簡単。侯爵家の血筋を疑いようのない白銀色の髪に紫の瞳を持つ姉弟を見たからだ。しかも弟の方は侯爵家待望の跡取りである。


そりゃ『跡取り、跡取り!』とうるさく騒いでいた前侯爵夫妻が、息子の醜聞を嬉々として揉み消すわけだよね。



 葬儀の後、屋敷に戻った私は前世の記憶、大半はラノベの内容を必死に思い出していた。


お母様の死をもっと悲しみ、悼んでいたかったけれど今はそれどころじゃない。



 差し当たっては思い出した前世の記憶、ライトノベル小説『雪の下に咲く恋の花』、通称『雪恋』の内容を全て思い出さなければいけない。


だって、この先の私の人生にとって重要な案件だよ?


重要も重要、最優先事項でしょう!!




確か、小説の内容はこんな感じだった。



 ヒロインのリリエルは六歳の時まではカテッツォ侯爵夫妻のもとで侯爵令嬢として何不自由なく育ってきた。


けれどそれは母親の死をキッカケに嘘に塗り固められた幸せだった、と気付いてしまう。突然現れた父の愛人とその子どもたちがきっかけとなって。



 カテッツォ侯爵令息であるラインハルトは、王立学園在学中に西のゴルド辺境伯の長女フィリアと婚約を結んだ。

これは完全なる政略結婚で、当主だった前カテッツォ侯爵が、遠縁ではあるが国王陛下に頼み込んで実現した、いわば王命に近い縁組だった。



 カテッツォ侯爵家は歴史も古く筆頭侯爵家の地位に長く置かれていたが、それも今は昔のこと。

リリエルの祖父の代の頃には、借金塗れでいつ爵位を返上してもおかしくない状態であった。


 そこで前侯爵は財力もあり武の誉と名高いゴルド辺境伯との縁組を望んだのだ。お金を借りまくる気満々で。返す気もさらさら無かっただろうけど。



 当然、ゴルド辺境伯側は難色を示した。

辺境伯家には全くと言っていいほどメリットの無い、いや、カテッツォ侯爵家の事情を知っていればデメリットしかない縁談だったからだ。



しかし、縁組の話が上がる三ヶ月ほど前に、フィリアは婚約者を病気で亡くしていた。病死なのだからフィリアに瑕疵があったわけではない。


だが、フィリアには病気で亡くなった婚約者の前にも、魔獣討伐で亡くなった辺境伯騎士団に所属していた婚約者が居たのだ。



 流石に二度も婚約者を亡くしているのは外聞が悪い。家族や辺境の者たちが気にせずとも、ゴルド辺境伯家も立派な貴族家だ。王都に居らずとも社交界で面白おかしく噂される程には注目されている家柄だった。


カテッツォ前侯爵はそこにつけ込んだのだ。

加えてこの時、既にフィリアは二十三歳で少々行き遅れを懸念される歳でもあった。


 二度も婚約者を亡くした妖艶な容姿を持つ彼女を『魔女』や『死神』などと、彼女の美貌に嫉妬した女性たちが流す悪意ある噂と、それを鵜呑みにし縁談を申し込むのを尻込みする貴族令息たち。


 今後、彼女に縁談を申し込む者などいないのでは、と娘を愛しているが故に両親の心は揺らいだ。

結局、国王陛下からの口添えもありフィリアは一年後、ラインハルト・カテッツォと結婚する事になった。


 残念ながら、そこに当事者たちの気持ちはない。

フィリアは家の為に、と王命に近い縁談を受けただけだったし、ラインハルトには悪友たちと出掛けた下町の飲み屋で、既に運命の恋人ローザと出会った後だったからだ。


 彼らは家の為にと婚姻し、リリエルの前では仮面夫婦を装っていただけだった。

五歳の娘には仲の良い両親に見える程度には、だが。



しかし父親のラインハルトの方は、婚姻後もずっと運命の恋人と逢瀬を重ね続け、愛人となった恋人に子まで産ませていたのだ。



 確かに平民が侯爵家の嫁と認められる事は無いとはいえ、横から掻っ攫うようにフィリアに妻の座を奪われたローザの恨みが深いのは理解出来る。


 叶わぬ事と思いながらも、一度はカテッツォ侯爵夫人になる未来(ゆめ)を心に抱いてしまったのだろう。何しろラインハルトの愛は自分に向けられていたのだから。



 その愛人生活が思ったよりも早くに終わりを告げ、カテッツォ侯爵夫人になる未来が目の前に開かれたのだから浮かれる気持ちも分からなくはない。



 但し、前妻の葬儀の場で()()は無い。



一応は貴族の葬儀だと気を遣ったのかも知れない。


・・・・いや、気遣ってはないな。


きっと浮かれて彼女の中の貴族のイメージで着飾ってきたのだろうね。

既に貴族の一員になったつもりで。



まぁ、結果的にはカテッツォ前侯爵夫妻への()()()()にはなって、侯爵家に迎え入れられる事になったのだから彼女たちとしては正解だったのだろう。



 本当のところ、前侯爵夫妻に認められたのは、姉クララと侯爵家の跡取りとなる弟ガブリエルだけだったと思う。ローザは子どもたちのオマケ程度の存在だったのだろう。



かくして後妻とその子どもがカテッツォ家に入り、そこから虐げられ始めたのがこの小説のヒロインであるリリエル、つまり私だ。



 元々、カテッツォ侯爵家の特徴を全く引き継がず、愛していない妻そっくりのリリエルの事をラインハルトは、自分の娘として愛情持つことは出来なかった。ほぼ同時期に自分によく似た子どもが生まれていたのだから、そう思うのも仕方がない。

当事者としては『腑に落ちん!』という言葉に尽きる話ではあるけれど。


 更に前侯爵夫妻も息子に全く似ない容姿の上、跡取りにもなり得ない孫娘には全く関心が無かった。


跡取りを、の声を無視し続けた嫁が死んでも『役立たずな嫁だった』ぐらいにしか思っていない。

実際にはリリエルを産んで以降、ラインハルトがフィリアの寝所に訪れる事が無かったのが原因であったのに。



 そういうわけでフィリアの死後、すぐにカテッツォ侯爵家に迎え入れられたローザたちによって、母の形見もリリエルの部屋も、持ち物も全て奪われた彼女は屋根裏部屋へと押し込められる事になる。

そうして使用人以下の待遇で、普通の使用人の倍以上働かされる日々を送る事になったのだ。


給金は貰えないのに屋敷のハウスメイドからローザやクララの侍女の役目まで、侍女というのは建前で、虐める為に彼女たちの傍に置かれているだけのこと。


 将来、学園に通う為に家庭教師が二人につけば、家庭教師から出される課題をやらせる為に授業の間中、リリエルを壁際に立たせる。

貴族の義務として孤児院への慰問、バザーの為の寄付品は全てリリエルに押し付けられる。



 彼女たちはやりたい放題だった。しかしリリエルもカテッツォ侯爵家の長女である。

だから屋敷を出れば、何不自由ない生活を送っているように偽装させられていた。


ドレスはクララのお下がりを、躾と称した体罰は見えない部分に。

それがリリエルに対する彼らの接し方であり、ラインハルトも黙認している事だった。


 そして彼女たちは、リリエルを守る立場だったはずのこの国の第二王子マクシミリアン王子との婚約さえ、彼女から奪い取ったのだ。


マクシミリアンとの婚約はまだフィリアが存命の頃、顔合わせも済ませ婚約する事が内定していた。

けれど婚約発表するひと月前、不幸な事にフィリアが亡くなってしまう。



当然の如く、リリエルが『第二王子の婚約者内定済み』というのをローザやクララが不満に思わない訳がない。


彼女たちはラインハルトに訴えかけ、侯爵は『リリエルは前妻の不義の子の疑い有り』とし、カテッツォ侯爵家の血を確実に受け継ぐクララを婚約者に据えたのだ。



 こうしてリリエルは『内定』だったとはいえ、クララに婚約者を奪われただけでなく、彼らが吐いた嘘の為に、『侯爵の子では無い不義の子』とまで言われるようになってしまった。




実はここまで話は、作中で昔の話として語られるリリエルの過去話なんだよねぇ。


小説のプロローグは、十五歳でリリエルとクララがシュテルン王立学園に入学するところから始まるんだよ。



そうだった!

肝心な事を思い出したわ。



 乙女ゲームでよくある攻略対象者の立ち位置の第二王子、それから騎士団長子息、魔術師団長子息、宰相子息、大商会の息子と、学園でヒロインは出会う。



最初はクララたちが流した噂でリリエルの事をよく思っていなかった彼らは、ヒロインとのエピソードを幾つも重ね誤解が解けて心を通わせ合う。


そして最後はクララの本性を暴き断罪した後、学園の皆に祝福されて卒業と同時にリリエルは、()()()()()と結婚する、というエンディング。



 愛するひと、という言い方や攻略対象者の立ち位置、なんていう曖昧な言い方をするのは、この作品が人気があり過ぎて、王子エンドだけでは満足出来ない読者の希望が反映されたから。


ファンは推しには、いつでも幸せになって欲しいと願っているからねぇ。



 つまりスピンオフ小説で、基本ストーリーは本編の流れと一緒だが、新たな追加エピソードを含んだそれぞれの攻略対象者(ヒーロー)とのハッピーエンドを迎える作品が数多く書かれているのだ。



だからこそ、小説の内容をしっかりと思い出して、どの作品の世界なのかを調べなければならない。



 実は学園入学前までのリリエルの過去話は、彼らと交流があった時に語られるだけだ。

だから今の段階では誰と結ばれる作品なのかは全く分からない。



 本編の小説の中ではリリエルは彼らと五歳の時に一度、全員揃って会っている。

王子の婚約内定者と王子を守る側近候補者として。



だからその彼らの誰かの婚約者となるはずのリリエルがお茶会に呼ばれるエピソードは、スピンオフ作品でもそのまま使われている。



 実際、私にはお茶会に呼ばれた記憶がある。たぶん、五人の内の誰かの婚約者候補になっているはずだ。そこら辺の記憶は前世の記憶が戻る前だったから曖昧なんだけどね。



一体、誰とくっつく作品なんだろう?



スピンオフ作品は全て読んでいるし、アニメ化されたものも全話欠かさず観たんだけどねぇ。



ただ、小さい頭を抱えながら小説の内容を思い出せば、ハッキリと分かる事はあった。



ヒロインのリリエルは、どの作品でもヒーローと結ばれるまでにかなり虐げられるのだ。それは何度も死にかけるほどのえげつないいじめに遭う。


リリエルが学園の池に浮かんでいたのは一度や二度ではなかったはず!


作者さん、どんだけ池ポチャが好きなのよ。


その上、侯爵家で虐げられ続けるだけでなく、母親似の美しい彼女に歪んだ愛情を向ける異母弟のガブリエルに、セクハラ行為だけでなく純潔を奪われそうになるのだ。


まぁ、そこはヒーローがしっかりと駆けつけてくれる訳だし二人の仲が深まる大事なエピソードにはなるんだけれどね。


でも!



小説の内容を思い出して強く思うのだ。


リリエルって幸せになるまでの話が辛すぎない?


どの作品も最後はヒーローと結ばれて『ハイお終い 』だよ?


確かに二人のイチャラブな番外編も有るにはある。


だけど本編に比べたら十ページ有るか無いかの薄い幸せ(ページ的に、って意味でね)だよ?



 リリエルが彼らと出会い、結ばれるまでの三年間。

その間、クララの所為で誤解を受けてヒーロー(彼ら)たちがリリエルに心惹かれ、味方になるのは二年生の後半ぐらいだったと思う。



それまでの彼らは仲はどうあれ婚約者が居るのにリリエルに惹かれていく事に罪悪感を持ち、うっかりと成り行きでリリエルを助けては、意識するあまり余計に冷たい態度を取ってしまう。


リリエルは結局、好意を寄せている相手に冷たくされて傷つき続けているのだ。



だから六歳の頃から約十年もリリエルは、" 不幸 "という漢字二文字では片付けられない辛い日々を送る事になる。



そう、()()()()に!!



目先、といっても心も身体的にもつらい十年と、運命の相手(ヒーロー)と結ばれて永遠の愛を約束された幸せな日々。



ねぇ、どっちを取るのが正解なの!?

ここまでお読み下さりありがとうございます。

次話で完結となります。

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