第五章:黒く塗りつぶされた日、君が消したかったもの
ノートのページが、ゆっくりとめくられた。
紙が軋む音は、なぜか誰かの悲鳴のように聞こえた。
> 第四の謎:
「君が“消したかった記憶”とは、何か?」
その文字を目にした瞬間、頭の奥に“何か”が崩れ落ちた。
──重たい雨。
──血の色。
──鳴り止まない誰かの叫び声。
──そして、自分の手。何かを強く──握っていた。
ミナト……いや、ユウは膝をついた。
視界が歪む。冷たい床が遠ざかるようだった。
> 【ヒント】
・アユミの死は事故ではなかった
・「第三者の指示」によって“接近”した
・その目的は──“記憶データの取得”
「……俺が、アユミを……?」
そこまで言いかけたとき、部屋の空気が変わった。
ノートの隣に、新たな“記憶の断片”が現れる──映像だった。
《再生開始》
部屋の中、少女がユウに向かって泣きながら言っている。
> 「……そんなの、愛してるって言えない……! わたしは“データ”なんかじゃない……!」
彼女は、胸元の端末を引きちぎる。
ユウの声が応じる。
> 「……それでも、君の記憶が必要だったんだ。君の感情が、実験の……鍵だから」
“記憶の取得”。
彼は、アユミを……騙していた。
けれど、最後の瞬間だけは──
> 「ユウ……逃げて……っ!」
警報音。白衣の男たち。アユミの叫び声。
彼女は、自分を犠牲にしてユウを“逃した”のだ。
あの夜、あの橋の上で。
映像が止まり、ノートに記述が現れる。
> 【第四の謎・回答完了】
君が消したかった記憶:
「アユミを裏切り、利用し、そして逃げたこと」
だが、アユミは最後まで“君を信じていた”。
※記憶復元:
「君は、愛されていた。
それを、自らの手で壊した。」
床に崩れ落ちたユウの指先に、何かが触れた。
それは、一枚の赤いマフラーだった。
ぬくもりだけが残っていた。
ノートが、次のページをめくる。
今までより、明らかに紙質が違う。
ページの色が黒い──そこに浮かぶ、ひときわ重い問い。
> 第五の謎──
「君は“今”、誰のためにこの謎を解いている?」
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次回予告
第六章『願いか、贖罪か。最後に残された“動機”』
> 「これはただの記憶回復ではない。
ユウ、お前は“何を叶えようとしている”?」