第三章:壊れた手紙、二重の真実
夜が来たのか、それとも時間の感覚がおかしいのか。
部屋の中は、まるで深海の底のような暗さに満ちていた。
ノートの次のページが、ぺらりと音もなくめくられる。そこには、また奇妙な問いが記されていた。
> 第二の謎:
「この手紙は、誰が書いたものか?」
そのすぐ下に、紙片が貼り付けられている。
薄く破れかけた便箋。震える文字。インクがにじみ、いくつかの単語は読めない。だが、その内容はこうだった。
> 「──ごめんね、ミナトくん。
あのとき、わたしは──あなたを信じたかった。
でも、“あの人”の言葉に、どうしても抗えなかった。
これを読んでいるなら、きっともう──」
(以下、破損)
手紙の筆跡には、覚えがあった。柔らかく、少し癖のある文字。
アユミ……なのか? だが、それだけでは判断できない。
すると、ノートの文字が浮かび上がる。
> 【選択肢】
A:この手紙はアユミのものだと判断する
B:誰かがアユミになりすまして書いたと疑う
C:自分が書いた可能性を考える
ミナトは、しばらく迷った末に──C:自分が書いた可能性を考える を選んだ。
その瞬間、部屋の壁がざらざらと剥がれ、別の空間が姿を現す。
学校の屋上──濡れた制服。強風。
フェンスの向こうに誰かが立っている。こちらに背を向けて。
「……ミナトくん。……どうして、あの人のことを信じたの?」
その声は、確かにアユミのものだった。だが、背中しか見えない。
目を凝らすと、彼女の手には……一枚の手紙が握られていた。
ミナトの胸が、ぎゅっと痛んだ。
──あの手紙は、自分が書かせたのか?
──それとも、誰かに“書かされた”のか?
そして彼女が、ゆっくりとこちらを向く。
──顔が、ない。
目も鼻も口も、ただの平面。だが、そこに“涙”だけが流れていた。
ノートに文字が浮かぶ。
> 【第二の謎・回答完了】
手紙の筆跡はアユミのもの。だが、その内容は“記憶の操作”を受けた痕跡あり。
書いたのはアユミ、だが書かせたのは“第三者”。
※記憶復元:
「ミナトは“誰かの指示”で、アユミに接近した可能性あり」
視界が、ぐらりと揺れた。
──誰かの、指示?
──俺は、操られていた……?
ノートが、再び一人でにめくられる。次の謎が現れる。
第三の謎──
> 「君の“本名”は?」
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次回予告
第四章『借り物の名前、失われた本当の自分』
> 「ミナトは仮名──ならば、君は一体、誰なのか?」
次に暴かれるのは、“自分という存在”そのもの。