第二章:殺人者の記憶
第一の謎──「君は、昨日、誰を殺した?」
床に落ちていた白紙のカードを拾い上げると、その文字は徐々に滲み、消えていった。
代わりに、ノートの2ページ目が勝手にめくられ、何かが浮かび上がっていく。
> 【ヒント】
・赤いマフラー
・雨の夜
・右手に重み
・名前は“アユミ”
頭が痛む。鈍く、じわじわと刺すような痛み。
ミナトは額を押さえ、壁にもたれかかった。
──赤いマフラー。
──雨の夜。
──アユミ……誰だ、それは。
その瞬間だった。
――ズズ……という音とともに、洋館の壁の一部が“滲み”、人影のようなものが現れた。
人影は形を変え、やがて“少女の姿”になる。だが、顔だけが塗りつぶされたように黒い。
「……返して」
声がした。空気が凍りつく。ミナトの喉が、無意識に震えた。
「かえして……“わたし”を……アユミを……」
少女の影が、一歩ずつ近づいてくる。足音はしないのに、体の奥で“音”が鳴っていた。
ノートが熱くなる。見ると、新たな記述が現れていた。
> 【選択肢】
A:「アユミなんて知らない」と否定する
B:「アユミを殺したのは俺か」と問う
C:「返す方法を教えてくれ」と願う
ミナトの手が、自然とノートの選択肢に触れる。すると、壁の“影”が反応した。
彼は、選んだ──
B:「アユミを殺したのは俺か」
そのとき、少女の影が止まり、言った。
「……やっと、名前を呼んでくれたね」
そして、壁一面が“血の記憶”で染まっていく。
雨の夜、橋の上。
赤いマフラーの少女が、彼に向かって何かを叫んでいた。
だが、右手には鈍器のような何か。少女の顔が、恐怖に引きつっていた。
──俺は……何をして……?
──本当に、殺したのか……?
目の前の“記憶”が、途切れる。
次の瞬間、部屋にいたはずの少女の影が消えていた。ノートには、また新たなページが現れていた。
> 【正解】
第一の謎、回答完了。
記憶の一部、復元:
「アユミは、かつての“恋人”」
だが、これは始まりに過ぎない。
“本当に殺したのは誰か”──その答えは、第五の謎に記されている。
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次回予告
第三章『壊れた手紙、二重の真実』
> 「誰が嘘をついている? 彼女か、自分自身か」
第二の謎──“この手紙は、誰が書いたものか?”