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死者の代筆者(ゴーストライター)

静寂が、空間を締めつけていた。


夜羽の目の前に立つ“男”は、まるで鏡を見ているかのように、彼自身と瓜二つだった。

顔、体格、髪型……違うのは、ただ一つ。

その瞳だけが、記録の奥底に沈んだように冷たい。


「……お前、誰だ」


男は、微笑んだ。


「僕の名は“ヨハ”――君の“写し身”。

君が死者の記録を読み取るたび、君の無意識が生み出した、“もう一人の君”だよ」


夜羽は一歩下がり、蓮華に問いかける。


「これは……どういうことだ。俺は能力者だ。だが、こんな存在を作った覚えはない」


蓮華は静かに頷いた。


「写魂能力の中には、強すぎる共感性と記録投影能力を持つ者が稀に現れる。

彼らは“代筆者ゴーストライター”――

他者の記録を読むだけでなく、自分自身の中に“記録を宿し、書き換える”存在を生み出すの」


ヨハは言った。


「君が見た“妹の死”。それは本物でも偽りでもない。

君自身がその死を“代筆”した可能性があるということさ。

澪を守ろうとして、君は“改変”した。だが――

その改変が、澪の死の“本当の引き金”になったんだ」


「……っ!」


夜羽は拳を握る。


「なら……俺が、澪を殺したってのか? 自分の意思も知らないままに……?」


「違う。君が書いたのは、“別の死”。

だが、誰かがその“記録”を利用して、本当の死に変えた。

その“誰か”こそが――“本物の編集者”たちだよ」


蓮華が言った。


「写魂局の最奥には、“運命の編集室”がある。

そこでは、死の記録を『国家の都合』で書き換え続けている者たちがいる。

彼らにとって、君は危険な存在。

自分で死を代筆できる“能力者”は、制御できないから――」


ヨハは夜羽に一枚の記録媒体を差し出した。

それは、澪が死ぬ直前に残した未記録の写魂ログ。


「これが、君に残された“最後のページ”だ。

君がそれを読むとき、すべてが繋がる」


夜羽は震える指で媒体を握りしめた。


澪の声が、すぐそこにある――


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