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写魂局からの依頼

――その日、一ノ瀬夜羽は悪夢にうなされていた。


胸元を貫く鈍い衝撃。

体が地面に叩きつけられる感覚。

顔のない誰かが、無表情に銃を構える。


“死”の記憶。


通常、それは死者にのみ訪れる最後の幻影だ。

だが夜羽は、生きたまま“自分の死”を見た。


夢から覚めた時、全身が冷たく濡れていた。

喉は乾ききり、頭の中にはあのメッセージが焼き付いている。


《死ぬのは、三日後。第五区、崩壊予定の地下施設。犯人は――一ノ瀬 夜羽》


「……俺が、俺を殺す?」


自問する声が、虚しく部屋に響いた。


夜羽の部屋は殺風景だった。古びたマンションの一室。

壁には時計もポスターもなく、机の上には一冊のノートがあるだけ。


唯一、目を引くのは机の横に置かれた小さな写真立て。


写っているのは、彼と妹のみお


今はもう、この世にいない。


あの日――

写魂師としての実地研修中、澪は巻き込まれる形で命を落とした。


犯人は未だ捕まっていない。

警察は「事故」と処理した。

だが夜羽だけは信じていなかった。


妹の死には、何かがある――そう、ずっと思い続けてきた。


そして今、未来の自分が何者かに殺されるという“予告”を読み取ってしまった。


それは、偶然ではない。

きっと、すべては繋がっている。


そう確信した時、部屋のインターホンが鳴った。


ピンポーン――。


夜羽は素早く立ち上がると、ドアを開ける。


そこに立っていたのは、一人の女性だった。


「一ノ瀬夜羽さんですね。写魂局の白河です。本日からあなたの補佐につきます」


長い黒髪を後ろで結い、スーツに身を包んだ女性は、きびきびと名乗った。


年齢は夜羽より少し上だろう。

瞳は強く、まっすぐに彼を見つめていた。


「……補佐?」


「命令です。あなたは先日の現場で“自己の死”を読んだと報告しましたね。

写魂局はそれを【特級異常現象】として認定しました」


彼女は手帳のような端末を取り出し、ホログラムの証明書を表示する。


「本件は極秘扱い。あなたは今後、私と二人での行動が義務付けられます」


夜羽は眉をひそめた。


「監視役、ってことか」


「まあ、そう取ってもらって構いません。……ただし」


白河は言った。


「私も、“死者の声”を聞いたことがあります。妹さんの――澪さんの、声を」


その一言に、夜羽の瞳が揺れた。


「どういう、ことだ?」


「続きは、移動中に話します」


白河夕凪は、夜羽に背を向ける。


「行きましょう。あなたの未来を救うために。……そして、彼女の死の真相を知るために」


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