第4章:儀式 その1
彼らが足を踏み入れた廊下はもはや病院の原型を留めておらず、黒い霧と赤黒い血痕が壁を覆い尽くしていた。床のタイルは不規則に歪み、裂け目からは冷たい風が吹き出している。温度が異常に低下し、息を吐くたびに白い霧が立ち込めた。壁や床のひび割れからは黒い霧が漏れ、天井には不規則に動く影が這い回っている。時折、影が一瞬だけ形を成し、まるで人間の手や顔のようなものが見えたかと思うと、すぐに消え去った。
「空気がさらに重たくなっている。」明松が低く言った。「異界化が進行している証拠です。これ以上の遅れは危険です。」
「それだけじゃない。」田村が短剣を振り、黒い霧を払いのけながら言う。「気配が変だ……怪物がほとんどいない。」
「確かに。」神宮寺が足を止め、周囲に目を走らせた。「まるで何か別の目的で動いているかのよう。もしかすると、私たちの注意を逸らしているのかもしれません。」
その時、廊下の奥から微かな音が聞こえた。それはかすれた叫び声のようだったが、すぐに霧にかき消された。三人は一瞬視線を交わし、さらに奥へ進むことを決意した。
「だからといって引き返すわけにはいかない。」神宮寺が即座に返す。「前進するしかないのよ。」
廊下を抜けると、大きく割れた窓ガラスの隙間から外の空が見えた。外の風景は現実のものとは思えない様相を呈していた。空は濃い赤色に染まり、裂け目のような黒い筋が天へと広がっている。その筋の間には、無数の目のような模様が浮かび上がり、彼らをじっと見下ろしているようだった。
「ここを中心に広がっている……!」明松は震える声で言いながら窓に近づき、空を見上げた。「外にも影響が及び始めています。このままでは、病院だけでなく周辺地域全体が飲み込まれるでしょう。」
「なら、なおさら急ぐ必要がある。」神宮寺が刀を握り直し、鋭い目で前方を見据えた。「私たちが止めなければ、誰も止められない。」
「異界の侵食がこれほど広範囲だと、時間がほとんど残されていません。」明松は鋭い口調で付け加えた。「屋上が儀式の中心であることは間違いない。急ぎましょう。」
背後の病院が崩れ去るような不吉な音を立てる中、彼らの足音だけが廊下に響いていた。
異界化が進行する病院の廊下を抜け、三人は屋上へ向かう階段を目指していた。周囲の空気は重く、冷たく、まるで時間そのものが止まっているような異様な感覚に包まれていた。廊下に響くのは三人の足音だけだった。
突然、神宮寺が立ち止まり、振り返る。冷静な瞳が明松を見据えた。
「明松さん、少し話をしましょう。」
神宮寺遥の声にはいつもと違う厳しさが含まれていた。
屋上に続く階段の踊り場で足を止めた彼女は、静かに刀を鞘に納めた。周囲は異界の冷たい空気に包まれていたが、その場だけは彼女の意思が空間そのものを支配しているような圧を放っていた。
明松真也はその気配を感じ取り、眉をひそめた。
「話?こんな状況で何を――」
「ここから先はあなたが行くべきではありません。」
神宮寺の言葉は鋭い刀の一閃のように切り込んだ。
「明松さん、ここからは私と田村さんで行きます。」彼女の声には迷いがなかった。
「……どういう意味ですか?」明松が立ち止まり、眉をひそめる。
「明松さん、ここから先は引き返してください。」
突然の言葉に、明松は目を見開き、戸惑いを隠せなかった。「……どういう意味ですか?屋上に向かうんでしょう?」
「ええ、そうです。ただし、あなたはここまで。」神宮寺は刀を鞘に戻しながら、冷静な声で続けた。「率直に言います。攻撃力も守備力も、あなたは弱い。この先、私たちが守りきれる保証はありません。」
その言葉に、明松は顔をしかめた。「それは、わかっています。だからこそ後方支援に徹しています。」
「いいえ、違います。」神宮寺は彼の言葉を遮った。「あなたを守る余裕はありません。戦闘が激化する中で、私は敵を討つことに集中しなければならない。そんな中で、あなたを庇いながら戦うのは不可能です。これ以上、足手まといにならないでください。」
その言葉は冷たく鋭く、明松にとっては鋭い一撃のように感じられた。彼は一瞬、反論しようと口を開いたが、神宮寺の視線がそれを許さなかった。
「あなたがここに留まれば、結果的に私たちの足を引っ張ることになります。」神宮寺はきっぱりと断言した。「そしてそれが、作戦全体の失敗に繋がる可能性があるのです。」
「しかし……」明松は渋々とした声で言葉を絞り出した。「何もできないわけではありません。情報を分析し、サポートすることは――」
「それならなおさらです。」神宮寺は一歩前に出て、明松をじっと見据えた。「この病院で得られる情報を外部に伝えること。最悪の場合、私たちが全滅したとしても、その情報が残ること。それこそが、あなたにしかできない役割です。」
「神宮寺さん。君の言っていることは判るよ。でも、君の本音は?」
神宮寺はさらに声を強めた。
「明松さん、これは神社の落とし前です。」その言葉には、彼女自身の苦渋が滲んでいた。「私たち神社が引き起こした責任を取るため、私はここで戦います。あなたはその責任を外部に伝え、生きて報告する。それが、私たちの使命です。」
「落とし前……ねぇ……」明松は絞り出すように繰り返した。その言葉の重みが、彼に一瞬の間を作らせた。
「田村さんではなく、あなたが外部に戻るべき理由は明確です。」神宮寺は冷静に続けた。「田村さんは戦力として必要不可欠です。そして、神社としてこの事態を引き起こした者たちが責任を取らなければなりません。」
「……わかりました。」明松は深く息を吸い込むと、彼女の視線を正面から受け止めた。
明松は軽く息を吐き、ポケットから小さな布袋を取り出した。それを神宮寺に差し出す。「これを全部使ってください。霊力を補充する魔晶石です。戦闘中に術を強化するのに役立ちます。」
魔晶石には「霊力」が蓄えられており、これを使用することで自身の霊力を消耗せずに術を発動することが可能になる。また、術を強化するのに役立せることもできる便利なアイテムだ。
田村はその光景に驚愕した。明松が渡した小袋が全て魔晶石なら20カラットはあるだろうか。金額は少なくとも20億円はするだろう。
神宮寺はそれを受け取り、軽く頷いた。「ありがとうございます。後は任せてください。」
「ええ、わかっています。」明松は穏やかに微笑んだ。「外の世界で最悪に備えます。万が一の時は、全てを暴露しますのでご心配なく。」
「明松さん。」神宮寺がその名を呼ぶ声には、わずかな感情がこもっていた。「どうか気をつけてください。そして、必ず外で伝えてください。」
「それはお互い様でしょう。」明松は軽く敬礼するように指を額に当てた。「無事に戻ってきてくださいね、神宮寺さんと田村さん。」
その場に一瞬の沈黙が流れた後、明松は後方へと足を向けた。その背中が廊下の闇に消えるまで、神宮寺と田村はじっと見つめていた。
「さて。」神宮寺が刀を握り直し、前方に視線を向ける。「行きましょう、田村さん。」
「おう。」田村は短剣を構え直しながら、神宮寺に続いた。「ここで負けるわけにはいかねえからな。」
二人は緊張感を抱えたまま、屋上へと続く階段に向かって歩き始めた。その背後には、明松の覚悟と、神社が背負うべき責任が確かに刻まれていた。
三人は短い別れの後、それぞれの道を進む。明松は一瞬だけ振り返ったが、すぐにその場を離れ、彼らの背中が霧の中に消えていった。
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屋上に到達した神宮寺と田村の二人は、空気がさらに重くなるのを感じながら、息を整える間もなく視界に広がる異様な光景に足を止めた。
冷たく澄んだ空気の下、月は赤黒く染まり、満月の光が不気味に歪んでいた。その光に照らされる屋上全体には、巨大な魔法陣が血で描かれ、異様な力を放っている。魔法陣は脈動するかのように光を明滅させ、まるで生き物のように息づいていた。
中央には異界の扉を象徴する異常な構造物がそびえ立ち、裂け目のような暗闇がその上部に広がっていた。その暗闇からは無数の目や手のようなものがちらつき、不気味に動いている。それは異界が現実を侵食し、完全に融合しようとしているかのようだった。
「これは……」田村が短剣を構えながら低く呟く。
その場の空気は息苦しいほど重く、二人の足元には乾いた血の跡が続いていた。魔法陣の周囲には、生贄として捧げられたと思しき遺体が転がっていた。彼らの身体は血にまみれ、儀式のための生贄として無惨に捧げられた痕跡が見て取れる。遺体の配置は魔法陣の重要な構成要素となっており、冷酷かつ計画的な儀式が進行中であることを物語っていた。
「……」神宮寺が低く言葉を漏らす。「なんて酷いことを」
彼女は刀を構え直し、周囲の状況を一瞬で見極めると、冷静な口調で続けた。
「……ナベリウスが見当たりませんね。」
田村も短剣を握りしめ、警戒を強めた。「そうだな。あいつがいないのは、逆に不気味だ。」
「油断しないでください。」神宮寺は低く冷静に告げた。「どこかに隠れているか、私たちの動きを見ている可能性があります。」
そのとき、屋上の中央に立つ一人の人影が、ゆっくりと二人の視界に入った。
それは看護師の倉田美緒だった。彼女は儀式用の司祭服を身にまとい、その布地には血のような赤と黒の紋様が刻まれていた。胸元には異界の象徴とも言える装飾が垂れ下がり、肩から腰にかけては無数の細かい鎖や鈴が付いており、不気味な音を響かせていた。その顔には異常なまでの高揚感が浮かび、彼女の目は狂気に染まっていた。その姿は完全にこの異界の一部と化しており、かつての看護師としての面影はどこにも残っていなかった。
「ようこそ、私たちの新しい世界へ。」倉田はゆっくりとした動作で両手を広げ、神宮寺たちを迎え入れた。「ここは神聖なる儀式の場……アスタロト様とナベリウス様の祝福を受ける地です。」
「祝福だと?」田村が短剣を握りしめながら一歩前に出た。「お前のその狂気じみた儀式のどこが祝福だ!」
倉田は冷たく笑い、赤黒い衣装の袖を揺らしながらゆっくりと歩み寄った。「わからないのですか?この病院は選ばれた地なのです。そして、選ばれし者たちが導かれる場所……」
「見て、アスタロト様……私たちの新しい世界が今ここに生まれようとしています。」倉田は優雅に両手を広げ、まるで支配者のような態度で語りかけた。「ナベリウス様のお力が、ここまでの道を切り開いてくださいました。そして今、アスタロト様がその扉を完全に開いてくださるのです。」
彼女の視線が屋上の端に向けられる。病院の外では惨劇が起きていた。
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病院から逃げ出した患者たちには異変が起きていた。彼らは、まるで異界の力に操られるように、口元には狂気じみた笑みが浮かび、手を伸ばして天を仰ぐ。その姿はまるで神に祈りを捧げているかのようだった。
「アスタロト様……」
「ナベリウス様……」
彼らは何度もその名を繰り返し呟いた。
その場で力尽きると血を滴らせながら倒れ込む。
「私は選ばれた……!」
「神のもとへ……!」
声を震わせながら彼らは口々にそう叫び、自らを儀式の生贄に捧げることを歓喜しているようだった。
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「聞こえるでしょ。歓喜の言葉が」倉田が声を上げ、手を大きく広げた。「アスタロト様とナベリウス様の導きにより、外の弱き者たちもその愛を受け入れ始めています。自ら進んで儀式に参加する姿こそ、真の幸福を見出した証です。」
「弱い人間たちは、このようにして真実の愛を得るのです。」彼女の言葉は優しい響きのように聞こえながらも、その実、狂気に満ちていた。
屋上の風が吹きすさぶ中、倉田の言葉は冷たく響き渡った。その声には、アスタロトとナベリウスへの盲信と、自身の計画に対する絶対的な確信が滲み出ていた。
「ふざけるな……!」神宮寺が刀を構え直しながら低く呟いた。
「何もわかっていないのね。」倉田は冷ややかに笑みを浮かべた。「弱き人間たちは、強大な存在に導かれることでしか救われないのです。そして、私はその道を作るのです。」
彼女の言葉は熱を帯び、狂信的な情熱が滲み出ていた。
「愛に満ちた完全なる世界の創造……弱き者たちが強大な存在に支配され、真の幸福を得られるのです。」倉田の声が次第に高まり、周囲に響き渡った。「これが私の使命。そして、アスタロト様とナベリウス様が与えてくださった神聖なる運命!」
「愛だと?」田村が怒りを込めて叫んだ。「お前がやっているのはただの虐殺だ!どこに愛があるというんだ!」
「愛とは人を支配し、正しい方向へ導くこと。」倉田は冷ややかに言い放った。「弱い人間たちは、自らを正しい道へ導けない。だからこそ、私が彼らを導くのです。これは神聖な使命であり、崇高な愛の形です。」
その言葉には、狂気と異常な信念が混ざり合っていた。倉田の視線が再び神宮寺と田村に向けられる。彼女の瞳には、人間としての理性の欠片も残されていなかった。
「倉田美緒……!」神宮寺はその名を呼びながら、刀を構えた。「この儀式を止めてもらうわよ。」
「止める?」倉田は笑いながら小さく首を振った。「あなたたちは何も理解していない。この儀式は新たな始まりなのよ。ナベリウス様を召喚しただけでは終わらない。私はさらなる世界を手に入れるためにここにいるの。」
田村が眉をひそめて問いかけた。「さらなる世界だと?」
倉田は小さく笑い、目を細めて語り始めた。「そう、私は中野真一の言葉に導かれ、この儀式の意味を理解した。彼の語った神の声、それが私の運命を教えてくれたの。人間の弱さを克服し、愛に満ちた世界を創造するために、私は彼を生贄に捧げ、この扉を開いたのよ。」
「中野を……?」神宮寺の目が鋭く細められる。
「そう。」倉田は満足げに頷いた。「彼は小物の召喚には成功した。でもナベリウスには届かなかった。それならば――」彼女は両手を広げて笑みを浮かべた。「彼を捧げればよかっただけのこと。そして、見事にナベリウス様は降臨したわ。」
田村が唾を飲み込みながら低く呟いた。「なんて狂気だ……」
「でもね。」倉田は一歩前に進みながら続けた。「それで終わるわけがない。ナベリウス様、すらただの序章。私はさらなる高みに到達するために、アスタロト様をこの地に招き入れる準備をしているの。」
その言葉に、神宮寺の手が刀の柄を強く握り締めた。「そのために、これだけの犠牲を出したのね……!」
「犠牲?」倉田は冷たく笑った。「彼らは選ばれたのよ。この神聖なる儀式に参加することで、新しい世界の礎となれるのだから、むしろ光栄だと思うべきでしょう。」
神宮寺は怒りを抑えながら鋭い声で応じた。「あなたの歪んだ理想のために、無関係な人々を巻き込むなんて許されない。」
「歪んでいるのはどちらかしら?」倉田は不気味な笑みを浮かべながら手を広げた。「弱い人間たちは、強大な存在に導かれることで初めて真の幸福を得られるのよ。それが私の望む愛に満ちた世界。」
神宮寺はその言葉に微動だにせず、一歩前に進んだ。「その理想、私が叩き潰してやるわ。」
倉田の笑みが消え、彼女の背後で異界の扉が音を立てて開き始めた。薄闇の中から無数の触手のような影が這い出し、血で描かれた魔法陣がさらに輝きを増していく。
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屋上の中央、巨大な魔法陣の中心にそびえ立つ異界の門。その周囲には、血で描かれた紋様が脈動するように赤黒い光を放っていた。門の裂け目からは、不気味な囁きと黒い霧が漏れ出し、空間全体を浸食している。
倉田美緒がその門の前に立っていた。彼女は異界の司祭のような漆黒と赤の衣装をまとい、胸元には逆さ十字が刻まれた金属製の装飾が揺れている。血染めの司祭帽をかぶったその姿は、異様に神々しい同時に、背筋が凍るほど禍々しかった。
倉田美緒がその門の前に立っていた。彼女は異界の司祭のような漆黒と赤の衣装をまとい、胸元には逆さ十字が刻まれた金属製の装飾が揺れている。血染めの司祭帽をかぶったその姿は、異様に神々しい同時に、背筋が凍るほど禍々しかった。
倉田のの目は異様な輝きを帯び、口々に奇妙な言葉を呟いていた。
「アスタロト様、ナベリウス様……私たちを導いてください……」
倉田が自らを捧げるように手首を切り裂き、門の取っ手にに血を滴らせた。
倉田はその様子をまるで祝福するかのように微笑みながら見守っていた。
「見てごらんなさい、私たちの新しい世界の幕開けよ……」倉田は狂気に満ちた声で呟いた。
その時だった。門の裂け目が広がり、闇の中から眩いばかりの光が射し込んできた。そこから現れたのは、一見して天使のように美しい存在――ナベリウスだった。
ナベリウスは中性的な顔立ちを持ち、輝く白金の髪が肩まで流れていた。その瞳は黄金色に輝き、冷笑を浮かべながら倉田の隣に降り立つ。その姿は、見る者を圧倒する威厳と不気味さを兼ね備えていた。背中には黒と白が交じり合った翼が広がり、彼の一挙手一投足が異界の力を具現化しているようだった。
ナベリウスは裂け目の前に立ち、獰猛な笑みを浮かべながら神宮寺たちを見下ろした。そして、不気味な声で低く語りかけてきた。
「人間の身でこの領域に踏み込むとは愚かなことだ……」ナベリウスは静かだが、不気味に響く声で語りかけた。「だが、お前たちも祭りの生贄として捧げてやろう。」
「ナベリウス様、ありがとうございます。この新たな世界の礎となる儀式が、いよいよ完成しますわ。」倉田の声は柔らかく、それでいて不気味なほど感情が高ぶっていた。「アスタロト様が降臨なされるその時まで、彼らをお引き留めくださいませ。」
倉田は両手を広げ、何か呪文のような言葉を囁き始めた。すると、足元の魔法陣から黒い霧が噴き出し、その中から次々と怪物たちが姿を現した。それは、無数の鎖が絡み合い異形の人型を形成したものだった。鎖が動くたびに金属音が響き渡り、その音は人間の神経を逆撫でするような不快さを伴っていた。
「出でよ、我がしもべたちよ!」倉田が叫ぶと、さらに多くの怪物たちが次々と召喚され、周囲を埋め尽くしていく。
ナベリウスが静かに指を動かすと、鎖の群体は一斉に彼らを取り囲むように移動し、ゆっくりと間合いを詰めてきた。
田村は短剣を構えながら叫んだ。「どうやら怪物の掃除から始める必要がありそうだな!」
彼は式神を召喚し、「火狐」と呼ばれる炎を纏った狐を生み出すと、即座に鎖の群体へ向けて放った。火狐が怪物に噛みつくと、鎖が激しい金属音を立てながら燃え上がった。