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十週日目 それは標的を目指す。








 




「え~っとじゃあ、シルナさんとカイトさんは怪物を倒してもらうために此処に来たんだね?」

「ああ、不甲斐ないがそうするしか手がなかったのだ」

「そう言っておいたから今回は無事だったけどな」


 戦いが終わってからやってきて転んだ千鶴を起こした後、軽い状況説明をすると彼女はたいそう驚いた表情になる。無理もない。現にこうして三人が同時に行動し、僅かではあったが黒い灰が屋上の床に落ちていたのだ。

 こんな身近で、人外の者との戦闘が……

 そんな不安げになっている様子に気がついたのか、イアルが安心させるかのように、


「斉藤さん大丈夫、気にするなっていうと傲慢だけど、いつものことよ。だって私たちがいるじゃない」

「う、うんそうだね」


 その言葉で千鶴も微笑み、それから『怪我が無くてよかった……』とみんなに伝えた。

 それを聞き入れたユキナがゴソゴソと自分の懐から何かを取り出しながら、


「さ~てお弁当お弁当」


 と、先程まで中断していた昼食をその場で再開する。


「って、おまっ、持ってきてたのか!?」

「うんそうだよ。いちいち戻って食べに行くの面倒だし」

「あ、じゃあ私も……」


 と言いつつ今度はイアルがその場で座り込み、持ってきた風呂敷を広げて弁当箱を置く。


「なっ、お前も……」

「そうだカイト、護熾殿の作ってくれた携帯食料を此処で食べよう」

「そうですね。此処にいた方が安全ですし、良い案です」


 そして最後にシルナとカイトが制服のポッケに無造作に突っ込んでいたラップで巻かれたおにぎりを四つずつ取り出すと同じく座って広げ始める。


「…………」

「み、みんな用意周到だね」


 唯一、弁当箱を空けたままほったらかしにしてきた護熾は何か言いたそうだったが、この場で佇んでも仕方がなかったのであとで戻ってくると告げ、千鶴は一応この場に残ることにして一旦解散となった。


 護熾が行ってしまった後、モクモクと幸せを噛みしめていたユキナはふと気がついたかのようにジーッとシルナの方に視線を向ける。

 改めてみれば、少し赤い髪の色以外、おかしなところはなくむしろ美少女に当たる。

 それに背だってイアルより少し低い程度で、む、胸も割とあるし……


「? どうしました? ユキナさん?」

「あぇ!? い、いやあの……」


 不意にカイトから声を掛けられたユキナは慌てふためいて箸を落っことしそうになるが何とか堪え、急いで誤魔化しの文を述べる。


「ええっとね~、そういえばみんなで食べてるのって全部護熾の作ったものだなって……」

「! そうなのか?」


 これに反応したシルナは自分が初めて食したおにぎりを見つめ、それからユキナとイアルがつついている弁当を見る。

 色とりどりの野菜とおかずと白いご飯が詰まった食欲を沸き立たせそうな具材の入った箱、と彼女は解釈し、もう一度自分の食べているおにぎりを見つめる。

 中身は何か桃色の魚の崩し身と謎のタレで絡めた獣の肉が入った米粒の固まり。

 この違いは何だろうか? っと眉間にしわを寄せて考えたところで、


「なるほど、じゃあ僕たちの分も作ろうとしたけど、時間がなかったから敢えてこのお米に魚や肉を入れたんんですね」


 カイトがそう言い、時間がなかったからしょうがなくこのような形になってしまった、と理解したシルナは少し安心したかのようにフッとため息をついた。


「へえ~、改めてやっぱり海洞くんってすごいね~」

「しかも使っている食材は同じなのに調理を変えてユキナと全然違うようにしてるし」


 ここが彼のすごいところ。

 同じ食材で同じ弁当だったらすぐさまクラスの人たちに疑われるので、自分とユキナとイアルの弁当をそれぞれ別のに変えるように調理しているのだ。しかも旨い。

 なのでほぼ毎回、ユキナとイアルは互いに弁当のおかずを交換して二つの味を楽しんだりしているのだ。


「……昨日から護熾殿の様子は見ていたが……一人で全部やってるのか?」

「うん、護熾は本当に色んなこと上手だよ。特に料理と特売狙いは」

「ねーねー、シルナさんはもう怪我とか大丈夫?」


 千鶴はそう何気なく言い、シルナはソッと微笑んで答える。


「ああ、御陰様で。これも、斉藤殿のおかげだ。改めて礼を言う」

「い、いいって! 人として当たり前だしほら! 私の家じゃなくて海洞くんちだったから……」


 最後に結局あの人に頼ってしまったことが情けなく思ったのか、語尾は落として言った。

 

「いいえ、あなたのような優しい方が、姉さんを助けてしかも今、こうしていられるのですから。なので僕からも礼を言わせてください」

「え、えぇ~!?」


 続いてカイトが礼を言ったので、感謝され慣れていない千鶴はここぞとばかりにあたふたと大慌てし、助けを求めるかのように脇で弁当を食べている二人に視線を向けるが、イアルは苦笑いで手をフイフイと軽く振って『ま、受け取っておきなさいよ』と言ってきたので顔を前に戻し、


「ど、どういたしまして」


 本来感謝される側の彼女が何故か二人より深々とお辞儀をしていた。




 結局のところだ。

 このあと昼食を済ませたがいいが、先程怪物に襲われたと言うことで今度はシルナがここから離れたくないと言ったのは護熾が食べ終わってからやってきた後のことである。 

 確かに結界に連れて行って置き去りというのもあるが、それではいざとなったときに護熾達の索敵に引っかかりにくいので結論からして『誰にも見つからないように、此処にいろ』と言われたので今二人は屋上で辺りを警戒しながら佇んでいた。


 時折穏やかな風が吹き、過ごしやすい環境なのでのんびりすごせるのはいいが、5時間目の休み時間に、この建物内にいる男女二人組が入ってきたので急いで給水区画に隠れる。

 そして給水タンクの隙間から屋上の様子を見る。

 服装からして二年生ということだけは分かるが、ご生憎二人にはそれが判別できない。

 むしろ気を探って、一般人かどうか見極めているほどだ。


「先程不思議な鐘の音が聞こえたから休み時間のようですね」

「うむ、しかしわざわざたった二人で此処に来るなんてどういった了見だろうか?」


 1-2組の教室では護熾が何かあの二人がやらかさないか心配になって廊下に出たのを知らず、二人は互いに自身の考えを述べ合う。


「あ、姉さん。今女性があの枝組みされた壁に凭りかかりましたよ?」


 そう言うと、その女子に今度は男子生徒が自分の身体とフェンスで女子を挟み込むような格好で立つ。互いに、うっとりとさせた目で見つめ合っている。


「? 何をしようとしているんだあれは?」

「いや、もしかしてあれは……あっ」


 カイトがあの男女が何をしようとしているのか先読みした直後、穏やかな日差しが屋上に差す中、そのカップルの顔と顔とがゆっくりと、重なった。


「…………」

「…………」


 その光景、僅か三十秒。

 三十秒後に、男女は顔を離し、互いに恥ずかしそうにしながら手を繋ぎ、それからまた屋上の鉄扉の方に戻っていった。どうやらそのためだけに此処に来たようである。


 その一部始終を生中継で見ていた二人は、少しの間絶句していたが、やがて、


「……接吻か」

「軽く言えばキスですね」


 互いにそう言い、また無言になる。

 彼らにとってそれは、割と身近にあった行為なのでそれほど驚きはしなかったが、何かこう、自分たちのよく知っている何かとは違ったのだ。

 自分たちがよく知っているとして、負傷した戦死の呼吸を取り戻すために気道を確保し、口と口を合わせて空気を送り込む作業である。

 しかし先程のは、互いに全てを任せて良いような、信用しきっている上での行為。

 決して互いに呼吸困難に陥ったからした行為ではないのだ。

 そうそれは、自分たちの世界とはほど遠い甘い世界。


「……いやなものを見てしまったな」


 やれやれと言いたげに重い腰を上げ、誰もいなくなった屋上にトボトボと移動を始める。

 すると、また誰かが鉄扉を開けて入ってきたので急いでUターンしようとすると、


「お~い、様子見にきたぞ~」

「元気~?」


 今度は違う男女の組み合わせの二つの声が掛けられ、それが知った声だと判断するとすぐさま振り向いて確認する。

 そして、屋上に足を踏み入れた二人の姿を確認すると、少し安心した口調で名前を言う。


「護熾殿、ユキナ殿」

「護熾さん、ユキナさん」


 見知った姿に安心した二人は小走りで二人の元へ向かい、そして数歩手前で立ち止まる。


「で、どういった了見でここに?」

「いや、何か無茶なことしてないか心配で」

「でも今のところは大丈夫そうだね」

「そこまで信用されてないと逆に落ち込みますよ」


 此処で互いにちょっとした笑い声。

 それから次の時間で終わるから四時二十分になったらあの道路の交差点で待ち合わせ、という約束事をするとじゃあね、と言ってから二人は屋上の鉄扉へ引き返していった。








「…………」

「…………」


 それから暫し、互いに無言で陽が落ち始めた七つ橋町を見ていた。

 明るい緋色からオレンジ、そしてほんの少しだが瑠璃色も混じり、もうすぐこの町も夜を迎えようとしているのが分かった。


「綺麗だな」

「……はい」


 そのやりとりがあった後に、


「姉さん……」

「ん? どうしたカイト?」

「随分、護熾さんを信用してますね?」

「え?」

「僕がまだ、こっちに来ていなかった時に何かあったんですか?」

「い、いやそんなのではなく……その、彼は確かに赤の他人ではあるが一応命を救ってくれたし見た目は少し怖いが男としては中々で、ってそういうわけではなく、負傷した私を別段疑いもなく介抱してくれて感謝しているだけだ!」


 不意打ちのように訊いてきたカイトにシルナは珍しく千鶴バリに大慌てで手振り身振りで応え、そして自分が不思議な踊りを踊っていることに気がつくとすぐさま冷静になってごほんと堰を切った。


「そういうお前こそ、随分ユキナ殿と親しげだな?」

「え?」

「お前はユキナ殿と話すとき、何か緊張していないか?」

「そ、それは、その……い、いや別格に気にしているわけではなくただ話しやすくて笑顔がとても素敵、ではなく身体が小さいのにとても強くて凛々しくって、ではなく……実は彼女に狼藉を働いてしまったことがあるので、まだ怒っているんじゃないかと疑っておりまして……」

「……狼藉?」

「い、いや決して淫らな行為に及んだというわけではなく……」

「……まあいい、それは後で訊こう」

「……はい」


 互いに何故か思っていることを暴露してしまう辺りはさすが姉弟と言ったところであろう。


「ともかく、時間的にはもうじきだ。我々は、今日、こちらの持っている情報を提示することだ」

「そう、ですか。それは、どの範囲で?」

「もちろん、この場にいる経緯を、あの怪物に襲われたからここにいるということをな」


 それから暫しの間、二人はまた地平線に沈み始めた夕陽を見つめ、それから足に力を入れ、軽々とフェンスを乗り越えて飛び降りていった。







「それで、イアルはあの二人を明日か明後日向こうに連れて行くと?」

「うん。だって今日みたいなことがあったら大変でしょ? 今回がたまたま昼休みだったからよかったものの、授業中に起きたらどうするの?」

「うっ……」


 すっかり日が沈みきった六時十分。

 夕飯の支度を始めた護熾の隣に調理器具を出したりコップを用意したりと手伝ってくれているイアルはあの二人が心身共に問題がないのならこの現世よりより安全なワイトに連れて行くという提案を出し、護熾は少し困ったような表情になる。


「でもよ、俺としちゃあ、あの二人が大人しく行くとは思えねえんだよな」

「まあ、それを考慮に入れたらあんた達二人の力も借りるしかなさそうだけどね」

「そんな乱暴な……乱暴……」

「? どうしたの?」

「いや、あのさ……」


 野菜をみじん切りにしていた手を止め、イアルの方に身体の向きを変える。

 イアルは少しだけ胸の奥が高鳴る気がしたが、すぐ取り押さえて冷静になる。


「俺が初めて向こうに行ったときさ、何故か手錠を掛けられるって言う罪人扱いだったんだよ。それでお偉いさんがどやどやと何か話して正直怖かった。だから、あの二人が何か乱暴されなきゃ……ってな」

「ふ~ん、ま、そんな顔じゃ罪人扱いも免れないわね」

「さらっと嫌なこというなお前は! ユキナみてえだ!」

「はっは、大丈夫大丈夫。いざとなったら私が何とかするからさ」


 イアルはそう言ってみせるが、護熾は再び身体の向きをプイッと戻し、野菜切りを再開する。

 怒っているわけではない。やっぱり心配しているのだ。

 一瞬、私じゃ頼りないのかな、と不安な気持ちになるが、彼はそんな信用してくれないはずがないのだ。だから、少しだけ、今思った気持ちを言ってみる。


「…………でも、海洞は……優しいね」

「…………優しいだけじゃ、解決しねーよ」


 素っ気なく、ごもっともな意見。

 彼が何を懸念しているかというと、二人の眼の使い手、そしてカイトの脱走による問題。

 大凡、まともな扱いではないはずだ。

 疑って、疑って、本当に眼の使い手と明かされれば、彼らは優遇されるだろうが、あの二人は、あの二人は―――


 イアルは既に、あの二人のことを大体は知っていた。

 それは、あの昼休みの時間、怪物の出現報告と共に来た一通の手紙。

 内容は―――馬鹿馬鹿しく、何の根拠で、でも不思議と、信じた。

 それを今晩、二人に訊くつもりである。

 

「じゃ、用意できたからあとはご勝手に」

「ああ、ありがとな。絵里! お前の出番だ!」

「はいは~い!」


 用意係が仕事を済ませると今度は料理助手係の護熾の妹の絵里が居間からやってきた。

 彼は最近、絵里に何をどう加えたり、何をどう調理すればいいかを教えている。

 何気ない光景だが、彼はこうして妹に料理を教えることで、自分がいなくなったときのために保険を作っているのだ。

 そういう風に考えれば、胸が痛い。


 その光景を見ていたイアルは、ふと廊下の方からの視線に気がついたのでそちらに顔を向けると、悲しそうな視線で、ユキナがその様子を見ていた。

 いつもの明るい感じではなく、兄が妹に料理を教えている光景を、自分を責めるような視線で、ただただ見つめている。


 またこれか、とイアルはユキナの方に歩いていき、


「ユキナっ」

「え、あ、イアル?」

「何見てんのよ。ほら、テレビ見よっか?」

「う、うん」


 そう無理矢理促すようにして彼女の視線を遮る。

 これくらいしか、私にはできないから。

 そんな、自己満足している自分に、嫌気が差しているのを静かに耐えながら。




 夜、全員夕飯が終わり、お風呂に入り終わり、見たいテレビを見終えた後、各自の自由時間であれこれし、歯磨きやトイレを済ませてから、一樹と絵里を寝かしつけ、16歳の人間しかこの家で覚醒しなくなったら、互いに話し合いが始まる。

 会議場所はもちろん護熾の部屋。此処ならば一樹と絵里に話を聞かれることはない。


「言いたいことがある!」「言いたいことがある!」


 ほぼ同時に、シルナとイアルがそう言い、重なった声が響いたのでこの場にいる全員が少々驚き、互いに一時無言になるが、先にイアルが言う。


「そっちからどうぞ。元々私はあなたたち二人に訊くつもりだったから」

「申し訳ない。では……」


 そう言い、全員の視線を集める。

 因みに、ユキナのすぐ隣には通信端末を作動させ、回線をオープンの状態にしている。

 一つは、千鶴の携帯に(護熾はいつのまにと言っていたが)、二つめは、ワイトのトーマに繋げてこの話を密かに聞いてもらうことにしている。

 

「護熾殿、ユキナ殿、イアル殿、私たち眼の使い手の正体を疑ってきたであろう。我々も、そななたちを疑った故に、細かい正体は隠してきたが、此処で明かそうと思う」


 カイトはただ瞳を閉じて、姉に全てを委ねるようにしてただじっと聞いている。


「私は、"麟眼"のシルナ。ワイト城直属の隊長の任に就いている。同じく"炯眼"のカイトもワイト城直属の隊長だ」

「……イアル、ワイト城って何だ?」

「今から二百年前ほどの、今の中央にあった建物のことよ」

「!?」


 イアルからの返答により、護熾とユキナ、そして電話越しの千鶴も驚愕の表情になる。

 

「……二百年前、か……予想より随分、未来に来てしまったようだな……」


 そう静かに、シルナは事実を受け止める。

 護熾は嘘だろ? と言いたげな表情で彼女を見るが、生憎彼女の表情には一切嘘をついてはいないという気迫が溢れている。


「おいおいおかしいぞそれ。今の話の流れだとお前ら二人は過去から来たと言いたげだよな?」

「だからそう言っている」

「そんな、根拠も証拠もなしに……」

「証拠ならある、見ろ」


 そう徐に、胸の前で掌を上にした形で差し出すと同時に瞳の色が銀色になり、髪も透き通るような銀に変わる。まるで、銀河の輝きを思わせるような、美しい姿。

 その姿を見た三人はこれが二度目であるが、一度目は戦闘中でしかもすぐ解いたのでよく見なかったのでまじまじと見るのがこれが初めてである。


 そして上にした掌の上に、丁度収まるくらいの炎のような気が灯り、そして時計盤のような模様が中で回転している。


「……これは?」

「私の能力だ。ここに、先程壊したお皿がある」


 っと徐にもう片方の手で三分に割れた皿が取り出される。

 因みにその皿は海洞家のもので、しかも大黒柱の武の愛用品だったものでもある。


「ちょっ!? て、ててててめっ! 何人様のもん壊してんだよーーー!?」

「黙って見ててくれ」


 護熾がカンカンになって怒っているのも気にせず、シルナは床に置いた割れた皿に向かって先程気を灯した手を向ける。

 すると、不思議なことに、気を向けられた皿同士が互いに共鳴するかのように細かく震えたかと思えば、まるでテレビの巻き戻しかのように割れた部分からくっつきはじめ、ものの五秒で割れる状態の前に戻る。


「ほれ」


 そしてシルナはその皿を持ち、護熾に渡す。

 その光景に驚いたままの護熾は、皿を撫でくり回すようにさわるが、ヒビ一つ入っていない、完全な姿で戻っていた。


「……驚いた……もしかしてシルナさん、"時間"を操れるの?」

「時間を戻す、が正確な言い方だ。しかし命や、大規模な破壊には、対応できない」


 開眼状態を解き、元の姿に戻ったシルナは静かにそう言い、護熾に改めて視線を向ける。

 これで信用したか、そう言いたげな感じで。


「じ、時間を使う能力だってのは分かったけど……じゃあ何でお前ら、"ここ"にいるんだ?」

「…………」

「それは、僕から話させてください」


 護熾の質問に黙り込んでしまったシルナの代わりに、カイトがその答えを話す。


「僕たちはある日、近くの森で身体が干涸らびて死んでいる奇怪死を遂げる人が現れたと言うことでその調査と共に討伐を命じられていました。大凡どこかの獣に襲われ、長い間発見されなかったものだと思っていました。しかし、違いました」

「違った? じゃあもしかして?」

「ええ、本来、人を殺さずに連れ去る、あの怪物でした」












「こっちか?」


 岡山の繁華街のビルの屋上で、両眼を左右に動かしながら探っている黒いそれはそう呟き、触手で貫いていた男性を無造作に捨てると上空を仰ぐようにする。


「やはり東か。しかも大体分かってきたところだ。あの二人の眼の使い手、予想より遙かにいい能力の持ち主のようだ。」


 そう言ってフェンスの縁に足をかけると、爆発的な力で蹴り上げ、雲一つ無い、月がよく見える夜へと身体を飛ばしていった。狙うは、この時代まで送り込んだあの二人。


 ビル群を通り過ぎ、

 明かりに包まれた住宅街を眼下に、

 それは、標的を目指す。



 一応これでレギオン編は一時的に中断です。

 うん、終わりです。

 まさかこのようになるとは、パソコンが使えなかった一ヶ月間がもしなかったら何か変わったかもしれません(←単なる言い訳)

 いやほんとすいません! でもしょうがないのです。まさかこれがこんな心身苦しいものになるとは思わなかったので。


 まあこの後の展開を簡単に話しますと、シルナとカイトの二人は自分たちの正体を明かし、イアルが異世界に連れて行こうとしたり、

 護熾はお米券を手に商店街大安祭りに殴り込んだり、

 ユキナは護熾に髪を切られたり、

 レギオンが七つ橋町にやってきて物語が急変したり、

 

 っという展開の予定でしたが、このままでは物語自体があらぬ方向に行ってしまうと危惧したので頭の体操、および気分転換で中断させていただくことにしました。

 うん、怒らないでください。一応本編のその後シリーズを更新しますからそれで勘弁してください。

 それでは約三ヶ月間のご愛読、ありがとうございました! では!

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