リンゴタウン
6話 リンゴタウン
ネロタウンで町長と判事を助けた礼に馬と馬車をもらった。
ハッキリ言ってボクは何もしてないが、もらえるのならいただこう。
アスカたちは何もいらないと町を出た。
後で知ったが、アスカたちは、ドッドの牧場からいくらかいただき残りは町の教会に置いていったと聞く。
とりあえず、ボクはアスカたちと別れて約束の地へ向かった。
十数年前に悪党一味から救った少女の居る町だ。
少女の両親は殺された。
平和になった町のある夫婦に少女を託した。
リンゴタウン
町は変わっていた。家の数も増え、なぜだか通りには女性の数が多いように思えた。
だいたいの西部の町は男の方が多い。
やっと見つけた少女を託したカーペンター夫婦の家だが空家だった。
近所の婆さんの話ではカーペンター夫婦は病で亡くなり娘はシルバー・プールという店で働いていると聞いた。
来てみれば、シルバー・プールは酒場。
むさ苦しい男共がたくさんいる。
まさか町の男どもは。
いや、ありえない。そこまでの人数じゃない。それに歳が、皆同じくらいだ。老人とよべるほどの高齢者はいない。
珍しいカウンターのバーテンが女性だ。
ピアノ弾きもだ。
空いているカウンター席へ。
ビールを注文すると厨房の方に居た中年の女がビンとグラスを持ってきて。
「いらっしゃいボーヤ。あんた新入社員? 見なれない顔ね」
「え、ボクは今日、ココへ来たばかりなんだ。新入社員って、今日は貸し切りかい? この店」
「よそ者か。貸し切りじゃないわ。近頃ココに来るのはハーバード社の社員ばかりなの」
「ハーバード社?」
「鉱山で銀を掘ってる会社よ」
「そうなんだ。で、あんたはこの店の?」
「女将よドリューと呼んで。おにいさん、ハンサムだからあたしがお相手してあげる」
「あ、あのこの店にハンナ・カーペンターが居ると聞いて」
「ハンナ・カーペンター?」
「ああ、雑貨屋の裏に住んでた子だ」
「ハナの……たしか本名がハンナだったわ。あんたもハナが目当て? 彼女はココの人気ナンバー1よ」
「人気ナンバー1?」
「ヒィィイイイ」
階段を裸の男が転げ落ちて来た。
二階部屋のドアが開き下着姿の女が。
「この粗チンのソーロー野郎! あんたなんか二度と御免だよ!」
女は男の服を投げ捨てた。
男は階段下で恥ずかしそうにズボンを履いた。
「オイ、サイフが無いぞ!」
「部屋代とあたしの指名料はもらっておくよ」
と、サイフから札だけ抜いてサイフを男に投げた。
「おい取り過ぎだぞ! 胸もさわってねーのに」
「ほら、ハナだよお客さん」
あの女がハンナ? 娼婦じゃないか。
まさかハンナが。
「次は俺だ」
がたいのいい髭ヅラの男が、階段を上がりはじめたトコをボクはスタンガンで。
「アヒィイ」
気絶させた。奴を蹴落とし。階段を上がり。
ドアの前のハンナに。
ハンナはボクを見て、持っていたリンゴをひとかじりした。
ボクがわからないのかハンナ。
「約束だ、迎えに来たハンナ」
はじめは、ナニ? って顔をしたが、表情が変わるのがわかった。
「ジャン? ジャン・P・ホワイト……遅かったわ。とうさんもかあさんも死んじゃたわ〜」
と、彼女は涙と鼻水を出して顔がくしゃくしゃになった。
つづく