ルーカス親子 3
40話 ルーカス親子 3
「お帰りなさいませ、旦那様、お嬢様」
ルーカス家に着いて、迎えてくれたのはふくよかな黒人女性のメイドだ。
来る途中に聞いたがスザンナの母親は彼女が生まれてすぐに亡くなったそうだ。メイドの子育ては彼女が。
「不味くはなかったが、あの店の料理は雑だった。ナオミの料理は美味いぞ」
メイドの名はナオミという。
博士の父親の頃に雇った娘が、いい年に。婿を捜してるという。
「ドッグマース牧場のシマロンさんはどうなのナオミ?」
「お嬢様、知らないのですか? シマロンは若い子が好きで、わたしなんて相手にされません。わたしはここにずっと。追い出さないでください」
「おい、べつに追い出したいわけじゃない。誤解をするな」
なんて、ルーカス家の事情はさておき。
「例の話は明日にしよう。夕食とって、くつろいでくれ。部屋は別の方が」
「あ、ルーカス博士、あたしはジャンと一緒で、いらぬベッドを汚すことないです」
「でも、ベッド一つではせまいですよハンナさん」
「いいわよ、重なって寝るから」
何を言ってるんだハンナ。娼婦のころのクセか?
男女がベッドで重なって寝てるって。よく言うなハンナは。
「お客様、空いてるベッドをお持ちします。一人は、寂しいのでしょう」
ホントに美味しい食事をした。
食後に果物とスザンナが焼いたクッキー。これはナオミに教わったそうだ。
「あ〜あ新しい馬車と馬を買ったから、わずかね。そろそろ賞金稼がないと」
ナオミが隣に置いてくれたベッドの上で下着姿のハンナがサイフの中身を見ながらボヤいてる。
「ねえ、このまえもらってきた手配書にめぼしい奴いて?」
「ああ何人か……ここを出たら行くか」
「でも、ココに居ると寝るにも食べるのも困らないわねナオミの料理はホント美味しかったわ」
「そうもいかないだろ」
翌日朝食をすましルーカス博士の書斎に。
「コレが例の本だ」
「『賢者のいななき』でしたっけ。何なんですこの本は?」
かなり古い本らしい。分厚い表裏扉と背は木片で、それをなにかの皮で包まれてる。中の文字はわからない。
「タイトルは通称だ、古代から伝わる魔導の書だ。この書を使い魔術をおこなった賢者が間違ってロバになって、泣いたことから、そう呼ばれている。ホラ、本当のタイトルが書いてあるんだが、コレを読めたものがいないのだ」
「魔術書ですか。そっち方面よく知らないのですが、なぜボクに?」
「君がグレイ・ブルーレスの話しをしてくれたからだよ。奇妙な生物を使い住人を操り、弟子がコウモリに変身し、呪文で竜巻をおこした。ただの神父に出来る事ではないし、神につかえる者がすることではない。この本に書かれている太古の神ならわからんでもないが」
「太古の神ですか?」
「ああ、キリギス教会がひろめる神よりはるか昔の古い神々だ、その存在がこの本に」
「博士はこの本が読めるのですか?」
「コレはね、先住民の言葉で書かれてるからね。本物はヴァージニアン大学の図書館にあるんだよ」
「旦那様たいへんです!」
「どうしたナオミ、ノックもしないで」
「すみません旦那様。買い物に出かけたお嬢様たちが、町の大通りの銀行で銀行強盗の人質になったと。保安官の助手の人が今見えて」
つづく




