ネロタウン 2
4話 ネロタウン 2
「そろそろ帰る頃だぜ爺さんたち。その席をゆずって欲しいんだ俺ら」
「お前らは、はきだめ牧場の牧童か?」
「しかも、最近雇われたガキ共じゃ。わしらを知らんのか」
「はきだめとは言ってくれるぜジジィ!」
「どうするね?」
「席を譲るのもしんどい」
「ジジィ、早くどけねーか。俺は喉が乾いてんだ!」
「オイ、あんたら。そこの老人たちに、暴言吐いてると吊るされるぞ」
「なんだ若僧、黙っとけ!」
「黙っててもいいが、あんた、そこの二人誰だか知ってて暴言吐いてんの」
「誰だこいつら?」
「町長のライアンさんとモンロー判事だ。まあボクもバーテンに今、聞いたんだが。ボクなら席はゆずってもらわない」
「……」
三人のカウボーイは、カウンターの隅に向った。
「コレはどーも。お若いの」
爺さんたちはそれだけ言ってポーカーの続きをはじめた。
まったく、メンドーな町だな。
そこに保安官バッジ付けた男が店に入って来た。そして爺さんたちのテーブルに。
「町長大丈夫でした? 客にからまれてると聞きまして」
「問題ない。おいまたか! 3度続けてスリーカードとはイカサマじゃあるまいな」
「わしがいつイカサマを? ただの偶然じゃ」
町長は負けているようだ。
今来た男は保安官事務所には居なかったが。バッジを付けてるから助手?
あの悪党保安官より貫禄あったな。
「ジャン・ホワイト、礼を言う」
誰かと思えばデカいのといた少女。
こうしてあらためて見ると大きな青い目、長いまつ毛。カールが入ったブロンドのロン毛。ポチャとした唇がカワイイ。
何歳なんだ、この子は。ポワッとしたピンクのワンピースも似合ってる。
「礼を言われるコトは。アレ、ボク名のりました?」
「チコから聞いた」
「あ、そうなんだ」
たしかチコが兄妹と言ってたが、あのデカいのが兄か。
「あっちの大きいのは弟のダイゴ。わたしはメロディ。以後よろしく」
「あっちが弟!」
あ、いかん。おもわず声に出してしまった。
ビールを一杯飲んで店を出た。
宿ヘと外に出たら、今度は外が騒がしい。
「おい、ネエちゃん。お前らみたいなのは町には居ないと聞いたんだが」
アレはアスカだ、人種にうるさい男にからまれてるのか。
どうやら格好からしてあのカウボーイと仲間か?
「ブロンコ、やめろ。この娘は先住民じゃない」
「そうかぁ似たような服着てるじゃねーか」
アスカなら、問題ないと思うが。
あの正確だと血を見るかも、そしたらメンドーなコトに。
「先住民は嫌いか?」
「ああ、俺のジイさんもオヤジもウルフ砦で死んだんだ」
「行くぞブロンコ、ほっとけ」
「あたしの義母は先住民だ」
ああ、アレはヤツを挑発しているとしか思えない。
「ホラ、みろこの小娘は奴らの仲間だ。町から追い出してやる!」
こうなるのわかって言った? アスカ。
カウボーイは銃を拔いた。
やった。
カウボーイの銃を持った手首が銃ごと落ちた。
「ぎゃあああ。俺の手がぁ」
「ブロンコ!」
仲間が銃を抜いたが、あっという間に銃を握った指を斬られ銃が落ちた。
騒ぎに事務所からあの悪党保安官が。
「なにがあった!」
銃を抜いた保安官が。
「その剣を捨てろ。捨てないと撃つぞ」
「ゲイル、銃をしまえ、おまえもあの二人のようになるぞ」
保安官助手の男だ。助手とは思えないしゃべりだ。
「私は見てた、斬られた男がまる腰の娘に銃を抜いた。男は娘にからんでた。自業自得だ。裁判になれば私が証言する」
さすが、貫禄の男。保安官は黙って銃をしまった。
「誰か、こいつらを医者に」
アスカに助手の男が。
「ここの町には、ああいった連中がまだいる。メンドーになる前に出た方がイイ」
「言われなくても、明日には出る」
とりあえずボクの出番はなかった。
アスカの入った宿に向かった。
「悪い奴だなぁ。半分取られるとこだったんだ」
オマエに半分取られた。
「あんた馬は?」
そうだ忘れてた。チコに半分やらなければ馬が買えた。
あの重い荷物引きずって歩くのは。
「相談がある。しばらく馬車に乗せてくれないか」
「それはかまわないけど、一日5セルジオでなら」
「ヤッパそ~くるよな。でも賞金の半分払った。それでチャラにならないか?」
「ソレはヤツの輸送料だ」
「高すぎる!」
「あん時は納得したよね」
「あたしに免じて、ただにしてあげてチコ」
あのデコボコ姉弟の。
「どういうこと? メロディ」
「その人に借りがあるの。駄目かしら」
「メロディが言うなら」
チコは床に寝転がるアスカを見た。
「チコの馬車だからチコが決めれば」
アスカ、アスカのぶんもベッドはあるぞ、なんで床に。
アスカはベッドの毛布を取りくるまってる。
「アスカ、ベッド……」
「ベッドは嫌いだ」
「じゃ私たちは自分たちの部屋に帰るわ。行こうメロディ」
酒場でウウッとしか言ってなかったダイゴがしゃべったしかも低音で女言葉。
「それじゃボクも。 おやすみ」
つづく