荒野の妖精 2
21話 荒野の妖精 2
「悪いな、お嬢さん。どいてくれないか。馬を結びたいんだ」
「コレは失礼。ジローもういいよね」
ジローは大きなゲップをした。そして店の入り口横まで移動した。
「オイなんだあの生き物は?」
「デカいネズミか?」
乗り手の女性が降りると。土煙とともに背の椅子と荷物の下は潜ってしまった。
「デカいモグラかよ」
メキシカンの格好をした男たちは馬をつなぎ店に入って行った。
「あんたも店に?」
「ええ、この店、宿もやってるかしら?」
「ああ、女将にぼったくられないよう気をつけな。じゃ中で」
悪の臭いがぷんぷんするわりに紳士ね。小者じゃないわね。
荷物を降ろしあたりを見回した。
目の青い男の子と目が合った。
「そこの君、しばらく荷物を見ててくれない5セルジオあげるわ」
近くに居た若い連中が押し寄せた。
ノアの店、入ってみれば、どこにでもある西部の酒場。
コレもよくある。わたしが入ると静かになる。
皆わたしに注目する。
そして、すぐにもとに戻る。
「あんた! 店の中では傘はとじな」
アレが女将ね。太ったおばさん。ドレスが似合わないわね。少しやせるべきだわ。
空いてる席が無いわね。
「おい、お前らそろそろ帰ったらどうだ」
外で会った男が、隣の席の男たちを追い出した。
「ここが、空いたぜ」
「どーも」
席に着くと細いメガネのウェイターが来た。
「お食事が出来ると聞いたんだけど」
「お食事だってよ!」
アハハハ
なにがおかしいのかしら? オヤジたち。
「食事はウチのおまかせだよイイかい!」
女将が。
このウェイターは、なにしに来たのかしら。
数分してきたのは、一枚の皿に小さな器に豆のスープ。それに焼いた肉と焼いた野菜が数種類。
わたしはポーチからフォークとナイフを出し食べた。思ったより不味くない。
また、店が静かになった。新しい客が来た。
それは詰め襟の服を来た。中年の男と少年だ。
「はぁなんだか今日は、珍しい客が来るね。ボブ、神父様に席を用意して」
神父と呼ばれた男。黒じゃなく灰色の服。少年も同じ服だ。
「ワインとミルクをくれ」
「ボブ、持っていきな」
「あちらの女性はフォークとナイフで食べているな。珍しい……ラン、あの方の名前を」
少年は席を立ち女性のテーブルに。
「お初にお目にかかります。ボクは、あちらのグレイ神父様の弟子をしています。ラン・マールといいます。神父様がよろしければお名前をと」
何者かしら? 神父と、言うけど、この国でよく見るキリギス教の人間じゃないわね。
「いいわよ。わたしの名はローラ・レイです」
「ありがとうございます。コレはお礼のワインです」
「なんと?」
「ローラ・レイ様と」
「そうか……おまえはどう感じた、あの女性と話して」
「はあ特に……すみません」
「はあ……まだまだだな。ああいう女性が我々の大きな壁になる。よく観察してみなさい」
「大きな壁ですか?」
「あの女性は我々と同じ宇宙に住んでいないのだよ」
つづく