こっくりさん
さてみなさん。
こっくりさんはやったことあるだろうか。
有名なやり方だと、まず紙にひらがなと鳥居を書いて、その上に十円玉を置いて指を乗せる。それからこっくりさんを呼び、質問する。
まあざっくり言うとこんな感じの、紙とペンと十円玉があればできる、簡単な降霊術の一種。しかも人数を問わない。一人でやろうが大人数でやろうが、こっくりさんはこっくりさんだ。
え?なぜいきなりこっくりさんなのか?
お姉ちゃんにも言われたよ。
まあそんな難しい話じゃない。ただパッと思いついた霊感を得られそうな行いの中で、今すぐにできそうだったのがそれだっただけ。
お姉ちゃん?「いいからいいから」で押しきった。
さて、用意しました紙とペンと十円玉。
そして私は鳥居を描いている。お姉ちゃんは「はい」「いいえ」と五十音。役割分担の割合がおかしい?大丈夫、鳥居めっちゃリアルに描いてるから。
あ、お姉ちゃん数字まで書いたの?私が知ってるのはこれ?色々あるんだねえ。というお姉ちゃん、やったことあったんだ。
姉妹二人、向かい合った机の上に紙と十円玉、そして指をセッティング。そして唱えるのは定番のあれ。
「「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」
その言葉の数瞬後、ゆっくりと鳥居の上の十円玉は「いいえ」に…
「「・・・」」
「…お姉ちゃん」
「なに?」
「動かしたでしょ」
「…テヘッ」
「うざい」
「ガーン」
「いや、ガーンて」
口で言っても、人の神経を逆撫でするだけだと思うんだが。
「まあまあ、緊張をほぐすためと思えば…」
「別に緊張してないし。とにかく、もっかい最初からやるよ。」
まったくこの姉は。
私はため息を吐きながら、「す」と「し」を行ったりきたりしている十円玉を…て、まてまて。
「お姉ちゃん、すし食べたいの?」
「いや別に?」
「じゃあなんでこれ『すし』に?」
「さあ?」
「さあ、て」
「そんなこと言われてもこれ動かしてるの私じゃないし…」
「・・・」
「・・・」
「…まじ?」
「まじ」
「「・・・」」
「「こっくりさん、こっくりさん、どうぞお戻り下さい」」
私たちはアイコンタクトで、それはそれは見事なシンクロぐあいでこっくりさんにお帰り願った。
その後、こっくりさんは「け」と「ち」を何度か行ったりきたりした後、帰っていった。
・
・
・
「ねえねえ、アレほんとにお姉ちゃん動かしてなかったの?」
こっくりさんをやってから数十分後。
あの後私たちは無言で片付けをやり、アイスを2本ずつ食べた。
それで一息ついたと判断した私は、ことの真偽を姉に聞いてみた。まあ、答えは予想できてるけど。
「うん。あれは間違いなく私じゃないね。」
「そう…」
答えは予想どおり。まあなんせ。
++++++
2/2
スキル
SP.3
【天才】
[運転技能]
[乗車技能]
【自転車技能】
[催眠]
++++++
催眠なんてスキルが増えてるしね。
期待してた「霊能力」や「降霊術」の類じゃなくて「催眠」。ちなみに必要なSPは1。
どうやらこっくりさんの正体が、思い込みや不覚筋動によるものというのはほんとだったらしい。
そしてあれは、私が姉を催眠状態にしたから起こった現象のようだ。
ということは今、姉は寿司が食べたいと思っている?
…気にしないでおこう。
こっくりさんの正体が、心霊現象の類いではなかったことは、少し残念ではある。
まあ、目的のものではないとはいえ、スキルが増えたのは嬉しい。それに自分の行動次第で、スキルが増やせることもほぼ確定した。
なので目下の課題は、やはりSPか。
SPがなければ、せっかくスキルを増やしても修得できない。修得できなければ使えない。
なんとかSPを増やす方法を…待てよ?
そもそもそんなに躍起になって、スキルを求める必要はあるか?
だいたいスキルが、どういったものなのかもほとんどわかってないのに。
今使えるスキルは、【自転車技能】のみ。これだって、どれくらいのことができるかわからない。
もしかすると、片手運転が上手くなるみたいな微妙な性能かもしれないし、最悪使い方すらわからず使えないみたいな状況かもしれない。
できれば有用なものであってほしいが、まだわからない。
これは速やかに確かめておく必要がある。
ちょっと自転車でその辺走ってくるかな?
「魅澄ー、ごはんよー。」
時計を見るともうすぐ18時。
まだ明るいが、ごはん食べてからだと何かするには微妙な時間。
…明日にしよう。