アニメは発想力の源
私とお姉ちゃんは『ピクニック』──あくまでも私とお姉ちゃんが略してそう呼んでいるだけで正式名はもっと長い──を、仲良く一緒のソファーに座って見ている。はっきり言って熱いし、何よりお姉ちゃんのメロンが当たってたいへん殺意が沸く。率直に言って離れたいのだが、我が姉は全く離れてくれないどころか、がっちり腕を絡めて逃がしてもくれない。理由を聞いても『なんとなく安心する~』というどう反応すればいいのかわからない答えしか返ってこない。まあこれはいつものことでもう諦めてはいるのだが、無駄だとわかっていながら毎回とりあえず抵抗してしまう。
さて、そんな私達姉妹が見ている『ピクニック』──あくまでも私とお姉ちゃんが略してry──というアニメは、主人公である二人の女子大生が都市伝説や怪談を元にした化物達の世界を探索する物語だ。くねくねや八尺様、きさらぎ駅なんかはあまりに有名だろう。主人公の二人は、そうした化物との接触により特異な能力を手に入れたり、手に入れた銃などの武器で化物を撃退したり。作り込まれた設定、主人公達が抱える闇、美麗な作画が魅せる神秘的な世界。
まさに神作と言える素晴らしいアニメだ。
一つ言いたいことがあるとするなら、私は実話怪談の中で『巣くうもの』が一番好きなので、ぜひ登場させてほしいということぐらいだろうか。
「ねえ魅澄。」
エンディングが終わり、次回予告までしっかり見たところで、お姉ちゃんが話しかけてきた。
「なに?お姉ちゃん」
「霊感とか手に入れたら、何したい?」
お姉ちゃんはよく、こういう問いかけをしてくることがある。アニメを見終わってすぐの時は、たいていそのアニメに関連することについてだ。
お姉ちゃんが霊感云々聞いてきたのは、主人公の二人の女の子のうちの一人が、普通の人には見えないものを見ることができる能力を持っていることがわかったからだろう。霊感とは少し違う能力だが、使用状況が限られるあちらより、持った時のイメージがしやすい霊感にしたんだろう。
…さて、霊感を持ったらどうするか、か。
「そもそも幽霊がどんなのかがわからないからなんとも…」
というのが私の正直な気持ちだ。
まあもっとも…
「えー、つまんなーい。」
そんなことを言えばこのめんどくさい姉がさらにめんどくさい姉になるのだが。…てっ
「私の服を脱がすんじゃない!」
お姉ちゃんは自分が裸でいるだけでなく、時折こうして私の服を脱がそうとしてくる時がある。
今のところ9割方防ぐことには成功しているが、たまに気づかないうちに全裸に剥かれていることがある。
朝起きたら裸でお姉ちゃんと同じベッド寝ていた時はかなり驚いた。
「じゃあもっと真剣に考えてよ~」
「いや、真剣に考えたんだけど…」
「む~。幽霊がどんなのなんて、だいたい想像つくでしょ。魅澄はそういう話とかいっぱい知ってるでしょ?なんかのアニメを参考にするのでもいいから。」
「そう言われてもなぁ」
色んな怪談を見て読んできた私からすると、幽霊は千差万別だ。一人一人に個性がある。ある程度の傾向はつかめるが、それだけだ。基本的に関わったら何がおこるかわからない。それが私の幽霊に対する認識。ゆえに
「無視、不干渉、回避。こんなところかなぁ。」
この三つにつきる。無視はそのまま無視。見えても気づかないふりをする。不干渉は近づかない、関わらない。回避はあちらから近づいてきたら逃げる、避ける。まあこんな面倒な説明をしなくとも私達は仲良し姉妹。たった三つの単語からでも、我が姉ならば容易く意味を汲み取ってくれる。
「面白くない!5点!」
「えぇぇ…」
真剣に考えろっていうから真剣に考えたのに…
「ほら、もっとあるでしょ。破あ!ってやるとか結界はったりとかさぁ。」
「いや、そんなアニメのスーパー霊能者を例にだされても…」
「あんまり上手くない!9点!」
「は?なにが…て、ダジャレちゃうわ!」
というかこっちの方が地味に点が高いのがなんとなく
ほんとにもう。お姉ちゃんは。だいたいそういうのは霊感とはまた別モノだと思うんだけど。
「というかそもそも、実際にそういう力って持ってみないとわからないと思うんだよねぇ。まあ、それが無理だからこんな話してるわけなんだけど…ん?」
「?」
いや、ほんとにそうだろうか?
確かに普通ならそうだ。しかしだ。私はつい先ほど、非現実的な事象に遭遇したばかりだろ?
++++++
1/2
名称:籠嶺 魅澄
種族:人間
性別:女
年齢:12
状態:普通
クラス:神童
LV.1
HP:98/98
MP:104/104
STR:9
VIT:9
MST:12
MND:19
DEX:21
AGI:10
++++++
++++++
2/2
スキル
SP.3
【天才】
[運転技能]
[乗車技能]
【自転車技能】
++++++
自転車に乗ってたら、スキルが増えた。正確には習得可能スキルが、だけど。
これ、ステータスにはMPという表記がある。詳しい説明なんかは無いから予想しかないけれど、これがあるなら魔法も、あるはずだ。
魔法なんてモノがあるなら、霊能力があってもいいんじゃない?
姉を見る。
「ん?」
色々おちゃらけた姉だけど、私のほんとに嫌がることはしない。
冗談は言っても嘘はつかない。
何より私はお姉ちゃんが好きだ。
「ねえお姉ちゃん。」
「なにかな?」
「こっくりさんしない?」