②虫とスキルと初戦闘
「アレクー、そっち行ったよー!」
「おう、分かった」
俺は今、レイアと虫取りの真っ最中である。なぜって?他にやることがないから。
俺が住むこの村(バイス村という名前らしい)は、かなりのど田舎である。そのため子供は基本、日中は村の中にある空き地で虫取りや木登りに明け暮れている。
「よっと」
レイアに追いかけられ、こっちに飛んできたバッタをキャッチする。ふっ、この程度、前世で戦ったソニックホッパー(音速を超えるスピードで襲ってくるバッタ型の魔物)に比べれば楽勝である。
「アレクすごーい!これで10匹目だね!」
虫かごを見ると、ちょっと引くほどのバッタが入っていた。
「たくさん取るのはいいが、後でちゃんとはなせよ」
「はーい」
「言っておくが、前みたいに庭にはなつなよ」
「ぐっ、」
こいつは話しているぶんには素直なのだが、その実は予想の斜め上の行動をするかなりのお転婆娘である。去年もこの季節に虫取りをしていた際、この空き地にバッタをはなせと言ったつもりが、彼女は家の庭にバッタをはなち、家の中に大量のバッタが上がってくるということがあった。
その後は俺がバッタを全部捕まえることで事態は解決したが、その日以降、俺はレイアの面倒係のような立ち位置になってしっまた。
まぁ、俺も体を動かすのは好きだし、そういったことにさえ気を付ければ、レイアと遊ぶのは楽しいからいいが。せめてもう少し落ち着きをもって欲しいものである。
「わ、分かってるよ。それより、そろそろお昼ご飯のじかんじゃない?」
「もうそんな時間か」
見上げると、太陽は真南に昇っており、もう正午であることが分かる。
「じゃあ、俺は昼からやることがあるからまた明日な」
「うん、またあしたね!」
そのとき、俺は見逃してしまった。レイアが悪い笑みをうかべて、家の庭の方に向かっていたことを・・・
「よし、ここまで来れば大丈夫か」
昼食を取った俺は、村を出てすぐのところにある森に来ていた。
「【ステータス】」
初級無属性魔法、【ステータ】を起動させる。この魔法は自らの能力値や獲得しているスキルなどを確認できる魔法であり、【ウィンド】同様、子供でも使うことができる。
そして、今の俺のステータスがこれだ。
アレク 10歳
レベル:1 NEXT:10/10
HP:20/20
MP:1000/1000
筋力:10
耐久:10
敏捷:10
魔力:10
幸運:10
スキル:拳聖<固有スキル>
格闘:LVMAX
風魔法:LV3
無属性魔法:LV:1
スキルポイント:10
赤子の頃から魔力量増幅トレーニングをしていたおかげか、MP値はかなり高い、また、前世のスキルを一部引き継いでもいるようだ。
俺が今日ここに来た目的は【隠蔽】のスキルを得るためである。
<固有スキル>というのは、この世界に使い手が一人しかいないスキルであり、通常のスキルよりも強力な効果を持っている。
もし俺が<固有スキル>を持っていることが知られれば、平穏な暮らしが遠のく事は目に見える。だから、【隠蔽】スキルはなんとしてでもてにいれなければならない。
スキルには主に二つの種類がある。
一つは一定の条件を満たせば習得できるもの。
もう一つはスキルポイントを消費することで習得できるもの。
スキルポイントはレベルアップによって得ることができ、【隠蔽】スキルは後者に当たる。そのため、こうして魔物を狩る必要があるのだ。
「数は・・・3匹か」
あたりの気配を探り、こちらに向かっている気配に気付く。どうやら、あっちはこちらに気付いていないようだ。
「さて、先手必勝といくか!」
体に魔力を巡らせ、身体強化を発動し走り出す。そして、相手の背後に回り込む。背が低く、緑色の皮膚を持つ魔物、ゴブリンだ。
「セイッ!」
身体強化魔法によって強化された拳がゴブリンの頭に命中し・・・ゴブリンの頭が爆散した。
「え?」
『グギャ!?』
残ったゴブリンたちが何が起こったのか分からないという声を上げる。ゴブリン達よ安心しろ、俺も何がおっこったのかわからない。
ただ隙だらけだったので、そいつらも漏れなく殴り飛ばす。
<レベルが上がりました>
「ふぅ、なんか呆気なっかったな」
そんな呟きと供に、おれの初戦闘は幕を引いた。
「レイアァァー!」
「ギャァァー!」
その夜、レイアの家ではそんな声が響いたのだとか。
作者:あああああああああああああああああああああああああああ
アレク:どうした?ついに気が狂ったか?
作者:俺は!虫が!苦手なんだよ!
アレク:あー、なるほど。
レイア:みてみてアレク!おっきいバッタ捕まえたよ!
作者:ギャァァァァァァーーーーーーーー
レイア:どうしたの?
アレク:あー、何でもない。
レイア:???