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カガスタ!〜元社畜ドルオタの異世界アイドルプロジェクト〜  作者: 中務善菜
第七章:輝く“星”になって
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“視”直すとき

 あれから“ニジイロノーツ”やメンバーの名前で検索をして情報を集めていた。アレンくん、オルフェさん、ギルさんの話題は概ね好意的なもの。イアンさんとネイトさんに対しては批判的なものが目立った。


 二人はやっぱり立場の関係上、難しいところはあるよね。宰相と騎士様だもん。元から目立っていただろうに、こんな形で注目を浴びればそりゃあこうなっても仕方がない。こればかりは二人のパフォーマンスで黙らせてもらうしかない。


「……っていうか、いま何時? ……ええっ!? 十七時なんですけど!?」


 十七時ってなに? アレンくんたちが出て行ったの、三時間くらい前だよね? まさかずっと発声練習してるの!?


 窓から城門を見下ろす。わあ、まだやってる。熱心なのはいいことだけど、ちゃんと休憩してるの!?


 慌てて塔を駆け降りて、中庭へ全力疾走。侍女さんが驚いて道を開けてくれる。はしたない真似をしてしまって申し訳なさがえげつない。でもごめんなさい、こればっかりは譲歩できない!


「こらぁーっ! いつまでやってるんですかあなたたち!」


「リオ? あれ、いま何時?」


 アレンくんがきょとんとした顔でこちらを見る。それに倣って他のメンバーの視線も集まる。疲れてる様子じゃないけど、私の頭はカンカンだ。


「もう十七時です! 何時間ぶっ通しなんですか!?」


「そ、そんなに怒んなくてよくね? ぶっ通しじゃねーよ、ちゃんと休憩してっから!」


「無茶なことしてねぇって、だから落ち着け……!」


 ギルさんとイアンさんが及び腰になっている。いまの私は般若の如き形相をしているんだと思う。だけどそんなのどうでもいい。稽古がない分、体調管理もしっかりしてほしいだけだ。


 オーバーワークはいいことなんてなにもない。限界を超えて得られるものなんて虚無感だけ。あんなもの、私のアイドルには感じてほしくない。やりきった達成感だけ感じていてほしい。そして、今日それを感じるのは間違いなくいまだ。


「でしたら今日の練習はここで切り上げてください。いいですね!」


「はぁーい……」


 エリオットくん、ちょっと不満そう。素直なのはいいことなんだけどね、体調も気に掛けられるようになってくれたらいいな。アーサーくんとネイトさんもため息を吐く。


「やり過ぎで調子を崩しては元も子もない、か」


「私としては物足りないところですが、アーサー様のお言葉も尤もですね」


 ここ二人は本当に物分かりがいいな。大人というか、理性的で在れる貴重な存在なのかもしれない。どうか暴走することのないまま、精神的な支柱になっていってほしい。


「それじゃあ今日は解散するとしよう。アレンの指導は初心者の僕たちにもわかりやすいものだったよ、ありがとう」


「あはは、こちらこそありがとう。偉そうにするつもりはないけど、みんながコツ掴んでいくの見れてよかった。お疲れ様」


 アレンくんの声でみんなはお城に戻っていく。うーん、背中が大きくなったなぁ。ミランダさんの過酷な稽古を越えて、アメリアさんの稽古が始まって。どれだけ成長したんだろう。楽しみだなぁ。


 ……っていうか、私は確認出来るじゃん!


「ちょっと待ってェ!」


「ええっ、なに!? まだなにかある!?」


 勢いよく身を翻すアレンくん。他のみんなも同じ動き。うわあ、みんな体勢が崩れない。体幹はしっかり鍛えられていたんだね、感心。いやいや、いま大事なのはそこじゃなくて。


「ミランダさんの稽古が終わったことですし、改めて皆さんを“視”てみようと思って……」


「そういうことか……驚かしやがって……」


 イアンさんが胸を撫で下ろす。私、あなたを驚かせたことなんて一度もないです。ごめんなさい、そんなことなかった。陛下やジェフさんに土下座したとき、激しく取り乱していましたね。あなたも私も。


「というわけで、皆さん整列してください」


「ぼくたち、成長してるかなぁ?」


「成長しているよ。ミランダの稽古を乗り越えたんだ、なんの実りもないはずがない。リオの目にはちゃんと“視”えていると思う」


「なあなあでやってたわけじゃねーし、ちょっとでも前進してりゃあ大したもんだろ」


 オルフェさんの言葉は説得力が段違いだ。エリオットくんの期待通りの結果が得られると思う。ギルさんだってそう。最初に発破かけてくれたおかげで、みんなも気合を入れられただろうし。そういう意味では影の功労者だったのかもしれないね。


「あまり実感はないが、成長していると思いたい……」


「大丈夫だよ、お前だって頑張ってただろ? 胸張れよ」


「私も緊張してきました……」


「俺らはやれるだけのことはやった。今更ビビッても仕方ねぇよ」


 自信がなさそうなアーサーくんと、励ます側に回るアレンくん。練習が始まる前までは不安だったけど、いまはすっかり本調子だ。ネイトさんもいつもより表情が固くなっていたけど、イアンさんも腹を括ったみたい。


 みんなの心の準備が整ったところで、私も頷く。彼らの成長はどれほどのものか。正確性はわからないけれど、きっと前よりも伸びているはず。私は“視”るための力を起動する。


「それじゃあ“視”させていただきます――“スキャン”」

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