遭遇
色んな意味で遭遇、あと後半はかなり個人的な趣味に走っとります…まあ自己満小説だし(ry
「王国騎士?」
城に住む代わりに一つの条件を出された
それは…
沙織と、この国を守る王国騎士───通称ファントムに所属する事
「嫌?」
沙織に言われて嫌なわけないんだが…
「なんで王国騎士?」
「アネットが、人手不足だって言ってたから」
あんな鬼みたいな奴の下で働くってなったらそりゃ人手不足になるわな…
「なんだ、その顔は」
アネットに睨まれる
「別にぃ…で、入るだけでいいのか?」
「まあ…当分はね」
というわけで、俺はファントムに加入する事となり
――――――
ただいま急ぐアネットの遥か後方
さすがに鍛え方が違うのかアネットの早さが尋常じゃない
「はあ…はあ――!」
「置いていかれてるぞ、主」
「わーってるよ!あいつが早すぎるんだ!」
最早アネットの姿が見えん
「沙織が狙われてるかもしれないぞ?」
「だー!もう!!わかってるよ!」
疲れも無視して走る…!
―――――――
「はあはあ…!」
城門前に着き、王国騎士の腕章を着ける
「よし」
内部へと進む
…………
見た目としては派手な損壊は無い…かと思えば、一ヶ所でかい穴が空いている
「この下って、牢屋だっけ?」
「そうだ…多分仲間の救出だろうな」
仲間の救出…ねぇ
「主、急いだ方がいい」
「…?」
そういう事なので急ぐ
…………
地下牢に下りると、アネット…王国騎士の面子が血に塗れていた
「なんだよ…これ?!」
腕が転がっていた、足が転がっていた、胴体が転がっていた、頭が転がっていた、血肉を撒き散らして壁や天井に着いている
「…!」
その事に気付き、瞬間的に自分の悪寒が膨れ上がって
吐いた
「一樹…」
エイミの悲しみを込めた声が聞こえる
何がどうなってるのかわからない、人かどうかすらもわからない形状でソレはある
「ん…?なんだ、お前か」
海で会ったあの男女が、アネット達の前に立っていた
男女の手には血に濡れた黒い剣がある
「一樹」
こんな時になんだがエイミの奴、怒ってる時や不満な時…敵が現れた時…か…?
そういう場合には俺の事をわざわざ主から一樹と言い換える…なにかの癖なのか
「一樹、しっかりしろ」
「わかってるよ…んなこと!」
エイミを構える
「やるのか?」
男女は笑っている
「一樹…逃げろ!!」
アネットが叫んだ
その瞬間には、もう目の前に男女が立っていた
「なあ、覚えてるか…俺の事?」
「…なんで俺が!」
エイミを振るう
それを男女は後ろに飛びのき避ける
「お前の事なんか知ってんだ!!」
軽くイラついていた
会う奴会う奴そんな事言いやがる
自分の知らない奴が俺を知っているってのはストレスになる
「…馬鹿は死んでも治らないを体で表してるなお前は」
黒い剣を構える
「俺は、」
言葉を区切り、俺に向かってくる!
「サイスだ!」
飛ぶようにして、俺に向かって走ってくる
早い──!
「ッ!」
「遅い」
気付いた時には、後ろに立たれていた
「…ははっ」
あまりに衝撃的過ぎて笑えてきた
こんな状況なるとはな
エイミを握りなおす
「お前、弱くなったな」
なんつー言われようだ
そもそもこんな状況で全力出せるやつの方が凄い
「…」
サイスが無言でいる
「…?」
気付いたがこいつは、俺を倒す…殺そうとしてない感じがある
実際持ってるのは人を切れる獲物だ、目の前にはそれを証明するものが転がっている
そんなものを持っているにも関わらず、俺を殺そうとしない
そもそも殺されそうになれば、俺自身緊張でこんな…
?
なんで俺はそんな事知ってるんだ…?
「そろそろ…か」
サイスが呟く
牢屋の中にはもう誰もいない
逃げるまでの時間を稼いでたのか
「さて、じゃあ俺も下がるか」
スッ、と後ろから気配が消える
───振り向けば、サイスの姿はもうなかった
「…」
────
サイスが去った後他の騎士団のメンバーに"後始末"を任して、アネットと二人で上に上がって来た
「逃げろと言っただろ!」
怒鳴られた
廊下のど真ん中だったので何事かと城の人間から遠巻きに眺められる
「…あそこで逃げるわけにも行かないだろ」
「お前なぁ…」
呆れた様子
「まあいい…お前が来てくれたお陰で"一人"で済んだ」
"一人"ってのは多分…
「すまなかったな、こんな事になると思わなかった」
アネットに謝られてしまう
「な、なんでお前が謝るんだよ」
「相手が悪かった…普通の相手ならお前に任せようと思って呼びに行ったんだ」
エイミと同じ事考えてたのかよ…
「すまなかった」
「いいって、もう…な?」
「ああ…」
アネットが顔あげる
「だからって、お前が私の命令無視したのは忘れないからな」
うわぁ…
そもそも逃げようにもサイスの動き早すぎたのもあってどうしようもなかったんだよな…
…………
その後
アネットは沙織への報告に向かい
俺は俺で自室に戻っていた
目を瞑れば
あの光景が思い浮かび、落ち着くこともできない
「大丈夫か、主?」
「…」
エイミがまた主に呼び直していた
「…どうした、主?」
「呼び方さ一樹でいいって、めんどくさいだろ言い換えるの?」
そう言った後、エイミが
「二人でそうしようって決めただろ」
何故がエイミが不機嫌になった
「…そんな事決めたっけ?」
まったく記憶にありゃしない
「ッ──!」
秘密にしていた事がばれてしまったかのような
「い、言ったんだ!お前がそう言った!」
逆ギレ気味に言ってくる
しかもお前呼ばわりされてるし
「じ、じゃあ…せめてその主ってのをやめてくれよ…なんか慣れないしさ、そういうの」
「それもお前が…そうか…」
何か思い出した様子
「少し待っていろ」
そう言って、エイミは出て行った
あいつなに怒ってたんだ…?
つか何する気だよ…機嫌悪かったみたいだし
な、なんか怖いな…
────
「おい!」
アネットが制止してくる
「すぐ終わる、それまで話は中断だ」
我ながら勝手だと思うがあいつが呼称を認めるならやるしかない
「どうしたの?」
姫が子供をあやすような対応する…腹が立つやつだ
「あの服は何処だ」
「…?」
よくわかってないらしい
「この城の給仕の服だ!」
「ああ、あれね…って、なんで?」
聞き返される
「主の為だ」
そう言うと、姫が
「兄さんが!?なんで!?」
声を荒げる…主の事になると人が変わるな…
「…前の事、お前なら覚えているだろ」
「へ…?」
何かを考え思い出したようだ
「あー、そっかそっかー…なーんか違和感あるなーって思ってたのよねぇ」
何を今更
「…でも、そんな事して大丈夫?」
…こいつも、やはり心配しているのか
「前は大丈夫だった」
「だからって今回も大丈夫かな…」
悩んでいたが、やがて
「しょうがないか…色んな人見て未だ大丈夫みたいだし…いいよ」
そう言うとアネットに
「悪いんだけど、給仕の服…この子に合うの用意できるかな?」
そう言いながら私の肩を持つ
「給仕の服…?」
「うん」
アネットは困った様子だったが、何も言わずに取りに行ってくれた
「エイミも兄さんの事好きだねー」
アネットが居なくなった途端そんな事を言いだす
「何が兄さんだ、少し前までお兄ちゃんお兄ちゃん言ってた奴が」
こいつが主と距離を取っていたのは知っている、必要な事ではなかったが…あの女に感付かれても面倒な事になっただけかもな…
「今更言い直すのもなんか恥ずかしいしさ」
そういうものか…?
まあ私も今更主から言い直すの恥ずかしいし、嫌だからこんな事してるのだが
「…」
主は私のあの格好を見てご主人様と呼べと言った
恥ずかしいから嫌だと言ったら、主と呼べと言った
だから主と呼ぶようになった
一樹は自分である為に一樹と呼べと言った
そして私は痛みを忘れる為に愛する一樹の名を呼んだ
だから私は
この呼び方が好きだった
それをあいつは…
まあ忘れているし、仕方ない事だが
こればっかりは、やっぱり譲れない
このやり取りも何回かやった覚えがある
だが…やはり私はこの事を忘れていた
力が弱まっているからか
主と過ごした日々は昨日の様に思い出せる…
つもりだったが、実際はこうだ
私より、正式な"血"が流れている姫は全て覚えているのだろう
私は虚ろだ、だから主の為に生きたい
あの人を守るのが私の生き甲斐だ
そんな取り留めもなく…何回も…何百回もしたであろう思考
「姫」
アネットが戻って来た事で中断する
…この娘は何も覚えていない
主と過ごした日々、覚えているのがいい事か覚えていない事がいい事か、それはわからない
だけど私は
「エイミ、これでいい?」
姫が給仕の服…主いわくメイド服を私の体にあてがう
「ああ」
今、幸せだ
これを見て主はどんな反応をするだろうか
そんな事を考える…
────
「はあ…」
エイミが何を考えて出ていったのかわからない
なにか嫌な予感がする…
「主」
扉の外から声が聞こえる
そして、幸か不幸か…予感は的中した
「こ、これで…どうだ…?」
なにがどうなのかイマイチわからないが、扉を開けて入って来たエイミに度肝を抜かれた
「な、なにその服?」
それはどう見てもメイド服だった
かといって、元の世界でよく見たミニスカートのメイド服ではなくロングスカート…それも黒を基調とした、どちらかというゴシックロリータに近い色合いのメイド服
胸元は白のレース調であしらわれ、エプロンは腰に巻くタイプのやつだ
そんな的確に俺の心を掴んだこの服装
見覚えがあると思ったが、この城の給仕さんの服だった…エイミが着たせいかとてつもない
っていうか、こんな低身長のエイミに合うサイズがよくあったな…
「こ、これでもまだ…主と呼んではいけないか…?」
「──」
これはダメだ
さっきまでの憂鬱とした気分が一気に晴れやかになる
「主…?」
ハッ!?
あまりにも衝撃的だったので見とれてしまった
「い、いいと思うよ」
発せれた一言がなんとも情けない
「ふっ」
何故か勝ち誇った笑みを見せる
「やはり、主は主だ…!」
「うぉっ!」
突進して頭突きをかまされる
身長差のせいで鳩尾に綺麗に入った…!
「ぉぉぉ…!」
うめき声をあげながらうずくまる俺
今、気付いたがエイミは頭突きしてきたのではなく抱きついて来たみたいだった
「あ、主…!?」
エイミが支えてくれる
「大丈夫、か…?」
「お、おう」
絞りだしたような声になる
そのままなんとかベッドの上に倒れこむ
その横にエイミが座る
…この格好のまま過ごすつもりなのか
っていうか…同じ部屋なんだよな…?
これは…精神が持つのだろうか…
元の世界に戻れる希望も無い今、梓が居る事をすっかり忘れていた
「…」
何してるのかな…?
「主…?」
わざとなのか天然なのか
とてつもなく可愛いらしい
ある意味戦いである意味拷問だ…
こんな調子で大丈夫なのかな…
──────
さーて選挙はどうなるかなー?民主だけはほんとやめてください