第6話 髪に宇宙を宿す少女
その少女は眠り猫と書かれた宿に入っていった。彼女を見たのはほんの数秒。しかし俺は時間が止まったかのように感じた。
髪は青だと思っていたが少し違い、青系の色のグラデーションがされている。青や紺などバラバラに見えて、とても綺麗に髪を形成している。
彼女の髪を一言で表すなら宇宙といった感じだろうか。
俺は何を言ってんだ……
長さは肩に届かないぐらいで、毛先が少しカールしている。
「おっ! あそこが泊まるとこじゃん! 早く行こ!」
「お、おう」
そう言ってサニーは俺の手を引っ張る。こんなことをされるととんでもなく意識してしまう。手汗は出てないだろうか。
「おぉー」
俺は宿の前に立ち、思わず感嘆の声をもらす。修学旅行の時、宿が綺麗だとかで感動してだけど、それとは別の感動だ。ゲームの世界ので見たことあるような宿だ。来たことはないのになぜかすごい親近感がわく。
「眠り猫にようこそ。一晩3ラルグですがお泊りになりますか?」
なんか聞き覚えのあるセリフだな……なラルグってのは察するに金の単位か。
これに『はい』なんて答えようもんなら暗転して次の日になってるだろう。このネタ俺にしかわからないかな……
ゲームかぁ……おれいろんなヘマして主人公を死なせたりしてたけど、この世界じゃそんなヘマはしに直結する。自分の身の丈にあったことをしてコツコツ成長していこう。
俺まだレベル1だぞ……もはや0だな。
「いや、もう部屋取ってるよーはいこれID」
「サニーさんですねこちらです」
受付の人が部屋まで案内してくれるそうだ。
「ねぇサニー、IDって何?」
「冒険者IDのことだよ! これ」
そう言うとサニーはカードのようなものを見せてきた。そこにはよくわからない文字が書かれていた。
「これなんて書いてあんの?」
「まさか……文字の読み方も忘れたとか言わないよね?」
「残念なことに……」
「じゃあなんで言葉は喋れるの?」
「こっちが聞きたい」
「はー……まぁここには私の名前と冒険者としての序列が書かれてるよ」
やっぱ冒険者ってのが主流の職なのか?
「ふーんそれでサニーの序列はどれくらいなの?」
「へーへーん! 聞ーて驚くな! なんと私はAランクの27位だよ!」
「おぉーすげぇー」
「心がこもってないっ!」
サニーはすごく誇らしげに語る。Aランクってのは確実にすごいよな。1番上か、上にSランクがあるかだろうな。まだ俺には漠然とした凄さしか分からないけど、やっぱすげぇ奴らなんだな。
「まぁ……うちのパーティーの中だとビリッケツなんだけどねー」
「そうなのか?」
「そうなんだよースズさんになんかは手も足も出ないって感じ」
「すごいな」
あの人そんなすごいのか。そんな人と今から会えるのか。
礼儀正しくいこう。第一印象が大事っていうからな……いやもう会ってるのか。俺は助けられた時のことを思い出していた。
最初会った時、俺は泣き言吐きながら血だらけで地面を這いつくばってて、しかも漏らしていたと……
あれ? 第一印象絶望的じゃね? 会うのがとてつもなく恥ずかしくなってきた。
「ここがお部屋になります」
「案内ありがとう!」
――ガチャ
ドアを開けると中にはスズさんともう1人女性がいた。
「スズさん、アフィさん私が来たよー」
「おーサニーじゃん……で、後ろの人は……あー遺跡にいた人か」
ここは天国ですか? スズさんは前から思ってたけどスカート短すぎ。凄く軽装だ。鎧とかいらないのかな……
もう1人はアフィ、多分アフィシナンテって人だろう。レインが前名前だしてたし。緑の長髪にでかいとんがり帽子に黒いローブ。そしてとてつもなく爆乳。これこそ異世界クオリティだ。そして多分エルフというやつだ。耳が尖ってるしな。レインうらやましっ!
ベットが5個あるけどここで寝るとかなったら、確実に一睡もできない。
「反応うすいよースズさーん」
「はー久しぶりの再会でもあるまいしー昨日ぶりでしょ」
「た、たしかに……」
「でっ、君名前は?」
「は、はいっ! ミサカと申します! この度は助けていただき本当にありがとうございます。」
「あーいいよいいよ、当たり前のことをしただけだし」
見返りを求めるのではなく当たり前だって言い切っちゃうとこが人として尊敬する。すげぇかっこいい。
「まぁ聞いてるとは思うけど私の名前はスズ。よろしく」
「よ、よろしく」
なんていうか確信はないんだけど、握ってる手から俺を警戒してる感じがした。結構鋭い目をするんだな。
「アフィの名前はアフィシナンテ……よろしくよ」
「よ、よろしくおお願いぃします」
自分をアフィって言ってるのか……つか大人の女性の香りがプンプンする。だめだ胸を見るな俺。
俺の胸の大きさの好みは手に収まるぐらいのサイズだ。デカすぎず小さすぎずって感じである。まぁどちらかといったら巨乳より貧乳の方が好きだ。現実世界だと巨乳で美女なんて人が身近にいなかったからかもしれない。でもこう目の前に爆乳があると抵抗できない男のサガってやつがある。フィクションでしか表せないものが目の前にある。
「で、ミサカはこれからどうするの」
「えーあのー王都までご一緒しようかと……」
「それは無理だよ」
「え?」
「君と一緒にいれるのはここまで」




