第5話 謎が謎を呼ぶ
「おいミサカー」
「はいっ!」
「もうあんま俺から離れんな」
「了解しました!」
俺は敬礼しながらそう答える。
俺から離れんなとかかっこよすぎだろ……
か弱い女の子なら確実に惚れてるぞ。
「ミサー、やっぱリュック自分で持つよ」
「あ、ありがと」
助かったー……
ミサーはあだ名かな? ミサーはもはや女やん。
つかなんなんだよあの物騒な武器は……
この世界はあんな近未来な武器を作れるほど発展してるのか?
言っちゃ悪いけど今のところそんな兆しは全くないんだけどなぁ……
俺は聞こうと思ったが、サニーの武器を見る瞳が哀愁を帯びていたので聞くことができなかった。
「早くしねぇと日が暮れちまうぞ」
「まだ正午だよーお兄」
俺達はルーグを目指し歩き始めた。
俺ふと上を見上げる。太陽が真上にある。頭に色々な疑問が飛来する。
あれは本当に太陽なのか? 違う恒星って可能性もあるよな。
今いる世界の自転周期は地球と変わらないのか? それによっては1日の長さも変わるぞ。
いや、まず球体なのか? 平面という可能性も十分ありえる。
まぁ俺の頭だけじゃ一生考えても分からねぇな。
いつもそこにあった太陽。それが違う何かかもしれないというだけで、俺は言い表せないような恐怖を覚えた。四方八方わけわからないものだらけだ。
そう思うとなんか体が痒くなってきた。この得体の知れない光を俺は浴びて平気なんだろうか。
クソッ、ネガティブ思考は俺の悪い癖だ……
このまま考えても不安になるだけなので俺は考えることを放棄した。
異世界転移したら恒星の光で死んじゃった……なんて話はないだろうしな。
「ついったぁー!」
「うるせぇ」
「むぅー」
サニーは可愛くむくれる。どうやらそうこう考えてる間に目的地についたらしい。足がパンパンだ。
「おぉー」
俺は街並みを見てつい感嘆の声をもらす。そこに広がるはまさにファンタジー。こういうのは中世風というんだっけか。
実際生活レベルなどを踏まえたら現代の方が絶対いいのだろう。これから待っているのは多分、楽とは程遠い生活だ。でも俺はこの幻想的な風景に心を躍らせざるおえなかった。
「で、スズの野郎共はどこいんだ?」
「今日は『眠り猫』って宿に泊まるって言ってたよ」
「は? このまま王都行くんじゃねぇのかよ」
「王都までは遠いから万全の準備をしてから行くんだよ」
「めんどくせぇなー……早くそこ行くぞ」
「おっけー」
宿か……俺の分とってくれてるのかな……
つか俺金ないじゃん……
「なぁ、レイン」
「なんだ?」
「俺金ねぇよ」
「知ってるわそんなこと」
「宿泊まる金なんてないよ」
「お前の分も払ってるだろ、多分」
俺の分も払ってくれてるのか……何でだ?
「なんで俺なんかのためにそこまでしてくれるんだ?」
ずっと疑問だった。だって俺は邪魔しかしてない。最初助けてくれた時だって、さっきのゴブリンの時だってお荷物でしかない。俺ができる恩返しだってたかが知れてる。
王都までついてこいっていうのも、実際俺が見たことをレインに伝えればいい話だ。
せめて王都に行くまで面倒見てやるよって言われてる気がする。俺に世話焼いてもいいことないのに。
「当たり前のことだろ」
「は?」
「当たり前のことって言ってんだよ」
「アタリマエ?」
レインはため息をしながらそう答えた。思いもよらぬ答えだ。俺は呆気にとられた。これまでのことが当たり前っていう言葉だけで表せるなら、この世は善人で溢れている。
「お前この世界のことなんも知らねぇんだろ?」
「ああ」
「そんな奴を命助けてやったからあとは勝手に自分で生きろ、なんてできねーだろ」
「そういうもんなのか?」
「そこで見捨てたら見殺しと変わらねぇからなー、ある程度助けになってやるって話だ」
レイン、前は嫌々助けたみたいなこと言ってなかったっけか。ツンデレなのかな。
「理解したか?」
「まぁレイン達が超がつくほど良い奴らってことはわかったよ」
「うるせぇ」
レインはさっさと先に行ってしまった。照れてんのかな……
俺の最初の出会いは本当に恵まれたものだった。俺は本当に助けられてばかりだ。
「ねぇねぇ」
「な、なに?」
レインが先に行ってしまったので、俺とサニーは今2人きりだ。この状況は非常にまずい。女の子と2人きりの状況なんて俺にはきつすぎる。
レイン戻ってきてくれ……
「お兄はあんなこと言ってるけど、お兄がここまでするなんて珍しいよ」
「そうなのか?」
「お兄本当はすごーく優しいんだよ。でも嘘を見抜く力があるから他人をあまり信用しないんだ」
「そうなんだ……」
「だけど多分お兄は、ミサーは信用していいって感じとったんだろうね」
「ありがたいことにな」
嘘を見抜く力か……そういえばそんな力があるのか。それはレインだけが持つ特別な力ってやつなのか? 俺にもそういうのあるのかな。
「レイン先行っちゃったし、俺らも早く行こうぜ」
「そりゃあ超良い奴とか本心で言われたら誰でも照れるよね」
「こっちも恥ずかしくなるからヤメテッ」
俺結構話せてるな……年下の女の子だとあんま意識しないのかな。年下かは定かじゃないけど……
つかこの町広いな。どんだけ歩かせんだよ。結構歩いたぞ。俺は周りを見渡す。ここは察するに商店街ってところか。
「あっスズさんだ!」
そう言ってサニーは指をさす。俺はその方向を見る。そこにはあの青髪の少女が誰かと歩いていた。凛とした立ち振る舞いにとても可愛い笑顔。彼女の周りがとてもキラキラして見える。俺は多分あの時助けられた時から彼女に惚れていたのだろう。これ程、心が躍ったのは初めてだ。




