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第1話 魔法を使ったら死ぬ

 

「――うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 俺はそう叫びながら目を覚ました。


「くそっ……! なんだったんださっきのは……」


 思い出そうとするだけでも、身の毛もよだつような恐怖。ジェットコースターやゴキブリ。恐怖を抱くものは色々あるけど、こんな恐怖を感じたのは初めてだった。


「は?」


 思わずそう口に出ていた。俺は周りを見渡す。見たことのない場所だ。とても自然豊かな場所。こんなわけわからない状況は2回目だ。

 俺は怖かったがこうなる前、何をしていたか思い出すことにした。

 俺はトイレにいたはずだ。それで尿意を感じて……そういえば尿意がなくなっていた。その理由はもう分かってた。下半身に違和感を感じる。


「高校生にもなって漏らしたのかぁ……」


 ……ってそんなこと今はどうでもいんだ。自分を騙した。たしか尿意を感じ、俺はトイレの個室に入ったんだ。

 そして()()()に……


 なんだ? じゃあ俺は()()()()()()()()ってことなのか?

 じゃあここはまさか……


「――トイレの王国?」

「ちげぇえぇぇぇぇぇぇえよ!!!!」


 俺の渾身のボケを悲しいのか自分でつっこんでいた。いやおれはつっこむつもりなどなかった。でもおれの口から出ていた。つっこんだのは俺じゃないレーギルだ。


「おお! すげぇえ! お前の体操れるようになったぞ!! しかも帰ってこれた!」


 俺の意思とは関係なく俺は奇怪なダンスを踊り始める。


「やめろぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉー!」


 俺はそう叫んでいた。これは間違いなく俺の意思だ。まったく……何回叫ぶはめになんだよ。


「なんで急に操れるようになんだよ! 頼むからいつものスタイルに戻ってくれ!」


 これは俺のシンプルな願いだ。勝手に体が動き、勝手に俺の声で喋るなんてたまったもんじゃない。


(わかったわかった)

「やけに素直じゃんレーギル」


 俺はレーギルの素直さに驚嘆した。こんな素直に言うこと聞いてくれたのは初めてだ。


「なんで俺の言うこと聞いてくれたんだ?」

(お前の体を操る時は(マナ)を使うんだよ。 こっちの世界だと空気中にもあるから使ったけど、やりすぎると疲れるし、あんま使わないことにするわ)


 マナ?こっちの世界?そう俺は忘れていた。というか目をそらしていた。おれは急に訳の分からないとこにいる。これは夢なんかじゃない。夢が始まってすぐ漏らしたことに気づく夢なんかあってたまるか。これは現実。なら答えは一つだ。


「なぁレーギル…… おれは死んだのか?」

(死者は蘇らない。 それが普通の考え方だと思うが?)

「そ……そうか……」


 転生した訳ではない……のか、じゃあ転移したってことか。恐らくトリガーはあの()()()。おれの体は小刻みに震えていた。


(なんだ? 武者震いか?)

「――ちげぇぇえよ! シンプルに怯えてんだよ。」


 現代の日本には基本的な生きる道が用意されている。それに沿っていけば少なくとも生きていくことはできるだろう。

 だが異世界はどうだ?

 そんな道あるのか?

 そんな世界でおれが生きていける気がしない。


(なんでだよ……普通自分と違う世界に来たらやったぜ! って喜ぶのがお約束なんじゃないのか? お前が前読んでた小説に書いてあったぞ)

「それは元から肝が据わってる奴だからそうなんだよ! 俺はそんな人間じゃねぇんだよ! これから起こるであろう悲劇に不安で胸いっぱいなんだよ!」


 当たり前だ。だって異世界は毎日のように命を賭けた争いをするのがお約束。そんなの今の日本では少なくともありえないことだ。俺にそんなことができる気がしなかった。


「つかお前さっき、帰ってこれた、とか言ってたよな……まさかお前のせいでおれはここにいるのか?」

(残念だけど違うよ。俺もなんで帰ってこれたかのかは謎だ。まぁ俺は理由なんてどうでもいいけどな。俺がお前の中にいた時点でこうなることは決まってたわけだし)


 そういやレーギルは俺が日本にいた時も元の世界に帰る方法を探してるとか言ってたっけ。あの時適当に流したりしなければ……。


「日本に帰る方法はあるのか?」

(こっちに来れたんだから帰る方法もあると思うが、本気で言ってんのか?)

「当たり前だ、俺は帰る」

(絶対こっちの世界の方が楽しいぞ! あっちの世界は毎日暇だろう)

「あのなぁー楽しめるのは強い奴だけなんだよ。俺は強くない」


 異世界だろうが日本だろうが強い奴が人生を謳歌できるという事実は変わらない。俺みたいな奴は誰かに使われるのが関の山だ。

 でも日本には今まで1人で俺をここまで育ててくれた母さんとかまだまだ危うい弟もいるしな……。俺は帰るという決意をより強固なものにした。

 まぁ帰ると言ってもそんなさっと帰らせてくれるほど、世界は甘くないだろう。だからある程度はこっちで生活しなきゃいけないのか。


「なぁレーギル……この世界のこと教えてくれないか………」


 レーギルは話してくれたこの世界のことを長々と。創造神がこの星を作ったとか、そいつは今封印されているとかなんとか。こーゆー話は今聞いても訳がわからないので聞き流していた。

 そして魔力の存在。空気中または体の中にある(マナ)というものを自分の魔力で変化させ技としたものを魔法というらしい。


「――ってことは空気中に(マナ)がある限り魔法は使い続けられるのか?」

(いや空気中の(マナ)を集めるにも体の中の(マナ)を使うからな。まぁ体の中の(マナ)を直接魔法に使ったらすぐ(マナ)切れになっちまうよ)

「じゃあ基本的には空気中の(マナ)を使うってことか……どうやって(マナ)って使うんだ?」

(お前には使えないよ)


 なんとなくそんな感じはしていた。俺にはレーギルが言う(マナ)というものの存在を全く感じないのだから。


「理由は?」

(まぁお前はこの世界に限ってみれば、生後1日目みたいなもんだからな。実際の生後1日目の赤ちゃんの方が遺伝とかあるからまだましだけど)

「赤ちゃんの時からポンポン使えたりするほど甘くないかぁ……ってことはいつかは使えるようになるのか?」

(多分使えるようになると思うよ。俺は7歳ぐらいから使えたっけか。まぁお前は俺がいるからもっと早く使えるようになると思うよ)

「待て!じゃあお前魔法が使えるのか?」


 俺はこいつの年すら知らないなと思いつつ、それより聞きたいことがあったのでそれを聞いた。


(使えるよ)

「なら俺が危険になったら、さっきみたいに俺を操って魔法を使えばいいんじゃない?」


 俺はこんな名案俺以外思いつかないだろうと思った。


(それはやめた方がいい)

「――え? なんで?」

(それやったら十中八九お前は死ぬ)

「……理由は?」

(魔法ってのはただでさえ使うのが難しいんだよ)

「うん」

(それを慣れない体なんかでやったら、魔法が使えたとしても制御がきかなくて、体の中の(マナ)を使い果たしちゃってお陀仏だね)


 お先真っ暗とはこのことかとひしひしと感じた。


 夕日が周りを赤く染めていた。そういえば俺は今どこにいるかいつなのかも分からないことに不安を感じ持ち物を確認した。

 持っているのは極楽坂高校の制服とスマホとイヤホンだけだった。もちろん圏外。全く知らない土地でこれだけでどーすりゃいんだよと思い泣きそうになった。俺は自分が弱いことを再確認した。


(元気出せよ)


 そんな声が聞こえた。この落ちついた声は……


「ナギか、お前の存在完全に忘れてたわ……」

(ひどいな)

「逆にお前は今まで何してたんだ?」

(考え事だよ)

(まぁナギは基本的に喋らないからなー)

「レーギルは一旦黙ってくれわけわかんなくなる」

(ひでぇな)

(前さ三坂がやってたゲームあったじゃん?)

「あーあったな」


 ナギは俺がゲームをやってる時はよく楽しそうに喋ってたなそういえば。


(そのゲームやってた時三坂言ってたじゃん。やりごたえがないとつまらないって! 今もその状況なんじゃない? やりごたえはバッチリだよ)

「そ……そうだな……」


 正直自分の命を賭けたゲームにやりごたえなんていらないんだよと思ったが、俺を不器用なりにも励ましてくれてるのが伝わってきたので、言わなかった。まぁやりごたえがあればあるほど、感じることができない気持ちが存在するのは確かだ。何があろうと動かないことには何も進まない。俺は覚悟を決めた。


「よーし、まずはこの森みたいなとこから抜け出すかぁ……村とか近くにあんのかな……」


 長い間この場所にいた。だが魔物の様な類のものを見ていない。ここは安全な地域なのか?と思った時だった。


「グルゥゥゥウゥゥゥゥゥゥウ」


 後ろからそんな音がした。

 ふと振り返るとそこには黒くて人間ぐらいの大きさがありそうな、犬だか狼だかわからない生物が立っていた。目に傷があり歯がギザギザだ。


 俺は走って逃げた。枝をかき分け湖の横を通過しとにかく走った。走り続けていると奥に木がないところが見えた。出口か?と思いそこに向かって走り続けた。


(……れ! ……れ!)

(そ……だ……だ!)


 あいつらが何か言ってる気がしたが、食われるかもと焦っていた俺にはよく聞こえなかった。


「もうすぐだ」


 そして俺は森を抜けた。

 そこに広がるは崖。

 俺は崖から落ちてしまった。


「うわぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ」

「ぐはっぁっ」

「ぐへっっぁ」


 俺は崖の途中にあった枝に当たりながら下に落ちた。体中が痛い。体が動かない。血が止まらない。


「クソがっ…… 俺が何したってんだよ……」


 実際俺が悪かった。確認もせずに飛び出すから悪いのだ。あいつらがなんか言ってる気がする。だが俺には聞こえない。命の灯火が消えかけているのを感じる。


「まだ親孝行もできてねぇよ……」


 そう言った時だった。青い髪をなびかせた少女が、疾風の如く俺の目の前に現れた。


回復魔法(ヒール)


 少女がそう唱えると俺の体が軽くなっていくのを感じる。

 俺は窮地を主人公に助けてもらったヒロイン達がバーゲンセールのように好きになっていく理由がわかった気がした。


 そして次の瞬間、俺は再び意識を失った。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。できれば毎日投稿したいです。ストックはないです。これも今日書きました。

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