第11話 悪魔の足
「レイン?」
「レインだと?」
「レインってまさか……あのレインか?」
周りがザワザワし始める。
「あー? なんだ? お前も殺されてぇのか?」
「はー……なぁミサカこれはどういう状況だ?」
レインがすごくめんどくさそうな顔をしながらこっちに歩いてくる。
「えー多分レインが想像してる通りの状況」
「はー……お前面倒ごとに巻き込まれてんじゃねぇよ」
「不回避イベントだったんだよ! つかため息多いなオイ」
「おい! 無視してんじゃねえぞ!」
「おいミサカ後ろに下がっとけ」
「お、おう」
レインが手で俺を後ろに追いやる。すげぇ力だ。
「どいつもこいつも俺の邪魔ばっかしやがって! 殺してやる!」
「うるせぇよ雑魚、御託はいいからさっさとかかってこい」
この人ただ酒に酔ってるってわけじゃなさそうだな……
「殺す……殺してやる!」
そう言うと酔っ払いはナイフを取り出し突っ込んできた。
そいつは本当に人を殺しかねない……そんな目をしていた。
「レイン!」
「死ねぇぇ!」
――ドガァァァァァァァァン
――それは刹那……
俺が左を向くと壁に穴が開いていた。酔っ払いの型がとられている。
レインは酔っ払いのナイフをすらりとかわし横っ腹を蹴り飛ばしたのだ。すると酔っ払いはギルドの壁を突き破り空の彼方へ消えていった。どんな脚力だよ……
「ちょ、ちょっとレインさーん……やりすぎじゃないですか?」
「倒したとしてもあいつがここにいたら後処理めんどくせぇんだよ」
だ、だからって飛ばしすぎだろ……
いやー飛ばした方がめんどくそうだけどな……
壁の穴とか大丈夫なのか?
つか壁の穴の型大の字って……笑える。
「さすがレインさんです! ありがとうございます!」
「あーお前誰だ?」
「ル、ルリです! 何度行ったら覚えてくれるんですか?」
「あーいたなそんな奴」
「ひっひどいですー」
俺完全に空気。多分だけどレインモテるな。
あのルリって人ももしかしたら惚れてるんじゃないか?
うらやまし!
「で、スズの奴らはどこだ」
「あースズさんならあっちです」
「あっちか……おいミサカ!」
「は、はい!」
「お前はここにいろ。もう面倒ごとに巻き込まれんじゃねえぞ」
「りょーかいであります!」
そう言うとレインは奥に進んでいった。
『起こすな』ならわかるけど『巻き込まれるな』は不回避なんだよなー。心なしかすごい視線を感じる。あんな強い奴と知り合いってなったら、俺のことも少し気になるよな。喧嘩とか申し込まれたらどうしよ。
「あのー」
「は、はいぃ!」
「助けていただきありがとうございます」
「あっいや……大丈夫です……俺は殴られただけなんで……」
バカッ! もっと気の利いたコメントを言えよ俺!
でもほんと何もしてねぇな俺……
レイン来なかったらグサッといかれてたかもしれねぇな。
「で、どういたしましたか?」
「え?」
「いや並んでいらしたので。何かご用があるのかと」
「あ、あーその冒険者テストの応募をしたくて」
「あーそれでしたらこの紙を書いて私に渡してください」
「あ、ありがとうございます……うっ!」
「どういたしましたか?」
「あ、いや、大丈夫です」
「そうですか……その紙は今日中にだしてくださいね」
「はい!」
ま、まずい。ほんとにまずい。
紙を渡されたのはいーが……まったく読めねぇ!
なんて書いてあんだこれ。
つーかおれもこの文字で書かなきゃいけねぇじゃねぇか!
なんで俺は字が読めないんですーって言えねんだ。
バカか!
聞く恥ずかしさが勝っちまった。
(名前)
「え?」
(まず名前書くんだよそこに)
「読めんのレーギル?」
(当たり前だろ)
「神かよ!」
おっこれで文字問題が解決したんじゃないのか?
俺は自分の名前を書く。
(それは日本語だろ)
「あー! そーだったどうしよう」
(文が何個かあるだろ?)
「うん」
(1文目の18文字目、2文目の23文字目、3文目の1文字目を書けば『ミサカ』になる)
「おーすげぇなありがと!」
すげぇ難しい字だな。覚えられそうにねぇ。
(はいいいえで答えるやつだから読めなくてもいけるぞ)
「よかった……」
(全部はいにしとけ)
「ちょっ……ちょっと怖いからなんて書いてあるか読んで」
(めんどくさ)
こういうのはちゃんと読んでた方がいい。
なんかあった時あなたサインしてますよね? じゃあ文句は言えませんよみたいなのやだし。
(あなたは本当に冒険者ID未所得者ですか?)
「はい」
(テストで命を落としたとしてもギルドは一切の責任を負いません。それを了承しますか?)
「はい」
「家族の了解は得ていますか?」
「はい」
二個目に爆弾があったような気がするけどこれだけか……
よし! 受付行こ!
「あのー」
「はい!」
「か、書きました!」
「お預かりします……確かに」
これでいいのか。意外とあっさりだな。
「あとは冒険者テスト受験料10万ラルグになります」
「え?」




