プロローグ
"ストライク、スリー!"
銀色のバットが空を切り、白球がキャッチャーミットに収まる。
"ワーッ!"
その瞬間、球場全体がどよめいた。
選抜高等学校野球大会――通称 "春の甲子園"
全国の選ばれし32校が紫紺の優勝旗を目指して聖地・甲子園で激突する。
出場校の大半を占めるのは地方大会を順当に勝ち上がり、地方枠で出場権を獲得したいわば強豪。
その中で三校だけ "ハンデを克服した" "高校球児の模範となる" といった理由で選ばれる枠があった。
――21世紀枠――
特殊な理由で選出される21世紀枠と言ってももちろん成績も考慮される。
ただメインが成績じゃない分、21世紀枠に選ばれる高校の大半が県大会どまり。
甲子園に出場しても強豪校にコテンパンにされることの方が多く、その存在意義についてはたびたび論争の的になってきた。
しかし今、21世紀枠で出場した高校が地方枠で出場した強豪校に勝った。
世紀の大番狂わせだ。
――埼玉成風のエース・植松、慈愛学園和歌山打線を六安打完封!――
歓喜のあまり裏返る実況の声。
甲子園の歓声のど真ん中で校歌を歌う十八人――これが成風旋風の始まりだった。