道中
歩きながら、明はレナからこの世界について教わっていた。
取り敢えず知るのはこの世界の名称と、この世界がどんな所かについてだろうかと思った明の問いに、レナは丁寧に答えてくれた。
この世界の名は<アルステイル>
存在する国は地球と同じく、かなりの数があるらしい。
そして、存在する種族は人族、エルフ、獣人、魔族の4種族。5割が人族で、存在する国の殆ども人族が治めているらしい。エルフと獣人が2割で、魔族は1割の割合になる。
「一回で覚えられないから、また世界地図広げて説明する」
「頼む。それとこの世界で有名と言うか……強いって言うか…名の知られてる国ってあるのか?」
「そうだな……軍事力的にこの世界で一番な<セルタイア帝国>これは人族。で、広大な自然と有能な人物を多く従えるかなり豊かな国<アリステア王国>此処はエルフ。そして、独自の文化と戦法を持っている獣人が治める<セイラン>だな」
「う……ん……」
長くはないが、一回聞いただけで覚えるには些か無理のある名前が出て来たので変事が何とも曖昧なモノになる。その曖昧な返事の意味を正確に理解したレナは笑みを浮かべた。
「だからさっき言ったろ?地図こみでもう一度説明するって」
「頼みます」
何かに書いて覚えないとダメかなぁ…そう考えた明は、世界や地名に関しての質問は打ち切り、もう1つの気になっていた事を尋ねる事にした。
「じゃ、さっきアシュレイが言ってた魔物って何だ?」
「一言で言うなら、世界共通の敵だな。姿形に強さは様々。この世界で何処にでも姿を現し、ヒトや家畜を容赦なく襲って行く」
簡潔な説明だが、地球にもRPGではよく使われて居た言葉と意味なので理解には苦しまなかった。
「何処にでも姿を見せるって……さっきの所には居なかったけど?」
「何処にでも現れると言う言い方ではそう取られてしまいますけどね~もっと正確に言えばある条件を満たした地域以外でなら何処でも姿を見せると言う事ですよ~。」
そんな疑問に訂正を入れたのは今まで黙っていたアシュレイだった。
「ある条件?」
「そうです。そして、その条件とはですねぇ……」
先までとは違って声音、表情共に真剣になるアシュレイに、明も真剣な表情になる。もしかしたら余り知られてない事なのか、世間には知られてはいけない事なのだろうか……どっちにしろ、真剣になるアシュレイに明も唾を飲み込む。
「ヒトが複数人住む所と言う事です」
一拍の間。その後に明は間抜けな顔をした。
「は……? え……もっとこう、特別な何かをするとかじゃ無くて?」
「えぇ。家を建て、どんなに小さくても良いので集落を形成すれば特別なヒトや措置は必要ではありませんよ~。まぁ、今の我々の様に歩いていれば襲われますけどねぇ」
そう言って笑うアシュレイに、明は何とも言えない表情をした。
また、からかわれたのだ。一応警戒していたのだが、嵌ってしまった。と言うか今それより言いたいのは。
「……レナ分かってたよな!? アシュレイ止めろよ!!」
そうレナだ。この事を彼女が知らない訳がない。それならもっと早くに止めろよ! と思いレナを見ると、顔に手を当てて震えていた。
「っ……ふふ……!!」
そして時折聞こえる声。今彼女は間違いなく、笑いを堪えている。明は顔に熱が集中するのを感じた。
「っ……!!!!! アシュレイ!!!!」
もう当事者に怒鳴るしかない。勝てる気がしないけど、それでも怒鳴るしかない。
「いや~中々ですねぇ明君」
「誰のせいだ!!!!!」
そう声を張り上げるも、アシュレイは笑みを消さない。
ダメだ。これ以上怒っても逆に弄りのネタにされかねない。取り敢えず明はアシュレイの雰囲気は余り信じない様にしようと心に誓い、何とか心を静めるのだった。