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異世界物語  作者: 安月勇
3/5

異世界と認識

やっと自己紹介が出来ました

迷路の様な建物を2人は迷いなく進んで行く。

その後を追いながら、明は思った。


「(何かパソコンで見た城みたいな感じだな)」


磨き上げられた長い廊下に、大きな窓。そして扉の数々。

前に家で時間つぶしに見ていた<お城>の中の様だった。


「(ってか……メイドさんとか普通に居るな)」


壁際で頭を下げているメイドをチラリと見る。

黒を基調とした服装に白いエプロン。テレビ等で見たメイドさんだ。流石にマジマジと見つめる事はしないが、歩きながら何度か視線を送ってしまう。


「(興味ないと思ってたけど……気になるもんだなぁ……)」


そんな呑気な事を考えている時だった。


「お待ちください!!!!」


突然後ろからした大声に振り返れば、何とも横に大きくやけに豪華な服を着た男性が走って来るのが目に入った。そして隣には執事の様な服装の人いる。


「うっ……」


見た目の割に中々のスピードで走って来る男性に、思わず一歩引く。

と、女性が隣に移動してきた。そして男性は明の前に立つ。相手は恰幅が良いため姿は完全に見えなくなる事は無かったが、顔は隠された。


「これはレイテヴァイス侯爵。 どうされました?」


「何の告げもなく出て行こうとされていると知り急ぎ来たのです。急に出て行かれるなど……それに例の青年も連れて行こうと……!!」


「いきなの行動については申し訳ありません。ですが、青年については此方での対応を許可されたと聞きましてねぇ。それが故に、いち早く我らがあるじの元に戻ろうとしたのです」


走ってきたのに息を余り乱さず、だが語気が荒い相手に対して、淡々と返す男性。


「それとも……今になって先の許可を取り消されるのですか?」


「そ、それは……」


言葉濁す相手に男性は、更に言い募る。


「そうなれば我らがあるじはさぞお怒りになられるでしょうねぇ。すでに此方での出来事については連絡しておりますので。そしてわたくし達が急ぎ出て行こうとしていたのも、主から戻れと指示があった為です。それなのに……」


「と……取り消すなどその様な事はありませんぞ!!!!」


「でしたら失礼致します。早く戻れと指示が出ていますので」


そう言いきって男性は身を翻す。

余りに早く話を切り上げた男性に驚いていると、両肩に手が置かれた。そして強引に向きを変えられ、押される。押しているのは女性だ。


一方で話を強制的に切られた相手は、後ろで何やら言っているが余り聞こえない。

あんな形で終ってしまって良いのかと思った明だが、これに関しては何も言わない方が良いと直感的に思い何も言わなかった。




それからは誰にも引きとめられる事無く出口へと向かう事が出来た。そして門を通る。

先程の人物が何か言ってもっと時間を取られるのではないかと考えていた明は、意外な展開に軽く驚いた。だが、何事もないのが一番だ。


「(ふぅ、やっと外だ……)」


やはり閉鎖的な空間に、それも緊張気味に居た為に外は気持ちが良かった。


「(さて……外はどんな感じなのか)」


俯き気味だった顔を上げ、そして明は足を止めた。


「……!!」


自分の知っている光景が広がっていないだろうと予想はしっかりしていたが、それを越える光景が目の前に広がっていた。


「すげぇ……」


思わず感嘆の声が漏れる。

中世のヨーロッパの様な色とりどりの家が立ち並び、そして中心部には白を基調とした美しく見事な城が建っている。

そして、そんな街を囲む様に存在する灰色の巨大な壁。現在地が少し高く街から離れた所にある為に、街の様子を一望する事が出来た。


「此処はシュトレイ帝国の首都マルベリナです。中々綺麗な所でしょう」


「あぁ……初めてだこんなの」


男性の言葉に半ば呆然として返す。

だが、言い方に反して明の心は弾んでいた。初めて見る光景。そして初めての世界。全てが明の好奇心を刺激して、可能ならこのまま走り出したい程に気持ちは高まっていた。それが顔に出ていたのだろうか。


「君は変わってるな」


そう女性は面白そうに言って来た。


「そうか?」


「あぁ。大抵ならここで本格的に絶望しそうなものだからな」


それを聞いて明は納得する。

なんせ外が余り見えなかった建物に居たのだ。まだ外を見ていないから、まだこれがテレビ関係の何かではないかと心の奥底で考えても可笑しくない。そして、それ等の考えを有していたなら、この外の光景はそれを打ち砕く存在だ。


「あんまし考えて無かったなぁ……」


目の前の事に一杯だったのか、それとも其処まで考えが至らなかったのかは分からない。

だが、そのお陰で今こうして目の前の現実に絶望しないで済んでいる。結果オーライなのでこれで良しとしようと思う。


「まぁ、絶望せずに済んだから俺的には問題なしだな」


「そうか」


少し笑いを含んで返された言葉。

だが笑われても仕方のない事なので、明は何も言わない。ただちょっと恥ずかしくて顔を俯け頭をかく。


「さてさて~何時までもお話していないで、そろそろ行きますよ~」


その声に下げたばかりの頭を上げると、男性は何時の間にか歩き始めている。

置いて行かれる形になった2人は急いでその場から離れたのだった。




街中を歩き、3人は門を目指した。途中物珍しさに明の足が少し遅れて、2回程逸れそうになる事はあったが、特に何も無く門までたどり着く事が出来た。

そして首都を囲む壁を越えて暫く歩いてから、女性が足を止めた。

辺りを見渡してから、振り返る。


「こんな場所で悪いが、自己紹介させてもらおうと思う」


「あぁ、そう言えばまだでしたねぇ」


呑気に笑う男性に女性は1つ頷いてから、口を開いた。


「私の名前はレナ・アイディーン。レナって呼んでくれ。で、こっちが」


「アシュレイ・レイステネイトと申します。呼び方は好きにして下さい」


レナの言葉を引き継ぐ様にして男性も優雅なお辞儀と共に自己紹介をする。

やっぱ外国風と言うかRPG風だなぁと思いつつ、明も改めて自己紹介をした。


「もう知ってるけど改めて……上条明かみじょうあきらだ。歳は17で、俺も明って呼び捨てで呼んでくれ」


「分かった。それと17なのか。私と一緒だな」


「あ、やっぱそうなんだ」


「あぁ。つい最近17になったばかりだ」


最初見た時も歳は近いだろうと思っていたがまさか一緒だったとは。

少し驚くのと同時に、こんな綺麗な子と歳が同じだと言う事に若干嬉しいとも思ってしまった明だが、すぐにそれを頭から追い払う。いきなり何を考えているんだと、心の中で自分を叱咤する。


「いやぁ、頭から追い払わなくても歳相応の考え方ですよ~」


急にかけられた声と内容にギョッとしてアシュレイを見ると、彼は口元に手を当てて、にんまりとしていた。


「(妖怪かよ……)」


「失礼ですねぇ。そんな化け物みたいに思わないで下さい~」


「!!??」


更に心の中で思った事を当てられ、明は声こそ出さなかったが驚きで目を見開いた。

明の反応が面白かったのか、笑みを絶やさないアシュレイ。


「……アシュレイ、明で遊ぶな」


「だって、彼の反応面白いですよ~ころころと表情変わるんですよ~」


面白いと笑うアシュレイに、明は背筋が凍る気分だ。

絶対ヤバイ相手に目を付けられたと思う。これからどうしようと考えを巡らせ様としたが、それを遮る様に男性が声を出した。


「そろそろ進みましょうかねぇ。魔物が現れたら面倒ですし~」


周辺を見渡しながらアシュレイが言う。


「そうだな。……何か聞きたい事があったら、歩きながら頼む」


「……あぁ。暫くは質問攻めな」


「覚悟してるよ。それじゃ行こうか」


こうして3人は再び歩き始めたのだった。

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