第十八話:クラスメイト
四位の人の名前が、ライルとライナ混在していたのでライルに統一
そして、チート魔術の発売は12/28であと2日! もう早売りが出まわってるよ!
午後からは実習だ。入学試験のときに使った試験場にクラスの全員が集まっている。
そして、今日は月に一回の【格】の測定がある。
クラスメイトは、期待と自信に溢れた顔をしている集団と、そうでない集団に綺麗にわかれている。
クラスメイトの何人かが俺のほうに歩いてきた。
「おまえのおかげでかなり探索できるようになってきたぜ」
「私たちのパーティも地下三階まで行けるようになったの!」
「今度また、いろいろと教えてくれよ」
俺のところまで来て次々に話しかけてきたクラスメイトたちは、期待と自信に溢れた顔をしていた連中であり、俺が授業終了後にいろいろと、講義をした連中だ。
授業では習わない、実践的な地下迷宮のノウハウを定期的に叩き込んでいた。
【低層フロアのこつ~ベテラン探索者の罠~】以外にもいろいろと教えている。この様子だとしっかりと役にたったのだろう。
「俺も教えた甲斐があったよ」
微笑し応える。今の言葉は本心からの言葉だ。自分の教え子が自信と力を身につけるのは嬉しい。
「ソージ、いえ、ソージさん今度、飯でも奢らせてくれよ」
「いつも、ただで講義してもらってわるいから、何かお礼がしたいの!」
俺を取り囲んでいるクラスメイトたちが次々に言う。
「喜んで招待をされようか。ただ、しばらくは忙しいから来月ぐらいにお願いしたいな」
クラスメイトとの親睦を深める場だ。断ることはない。
今はクーナのことに注力するが、それが片付いたら酒を飲んで騒ごう。
ふと、視線が気になり、そちらの方を向くと、険しい顔をした一団が俺たちのほうを遠巻きに見ていた。
彼らは、俺の講義を受けなかったメンバーでもある。
おそらく、あの調子だと地下迷宮の探索がうまくいっていないのだろう。
浅い階層に張り付いているベテランたちにカモにされるのは、新人の誰もが受ける洗礼だ。
その一団の中から、数人がこちらに向かって歩いてきた。
「……次の講義から俺たちも教えてもらっていいか。今まで、嫉妬とか、負けたくないって思って、教えてくれって言えなかった。だけど、このままじゃ、俺たち、ダメになる。……すまない。このとおりだ! 俺たちに出来ることならなんでもするから」
そう言って一斉に頭を下げてきた。
「別にいいよ。数人増えたところで手間は変わらないしね」
「ありがとう! 絶対にこの恩は返す!」
この男たちは見込みがあるかもしれない。負けず嫌いで、きちんと現実を受け入れる度量がある。
少なくとも、目の前にチャンスがぶら下がっているのに、遠巻きに見るしか出来ない集団とはちがう。
俺は見ているだけの連中に手を差し伸べるつもりはないが、こうして頭を下げるなら力を貸してやりたいと思う。
◇
しばらく雑談をしていると、授業の開始時間になり、ナキータ教官がやってきた。
彼女は俺たちの教官で、童顔の女教師だ。
「さぁ、みんな。今日は待ちに待った【格】の測定だよ! きっと、前の測定のときよりも、ずっと強くなってるよね! 先生は、期待してるよ!」
そこまでを朗らかな声で言う。そして、溜めをつくり急に真剣な顔になった。
「予め言っとくけどね。前回発破をかけたのに、この時点でなんの進歩もしてないようなら……才能ないよ。探索者に向いていない。状況把握と、行動力。それこそが、探索者にもっとも必要な能力だ。それが致命的にかけている」
生徒たちの何割か一気に青い顔をした。
ナキータ教官の言っていることはある意味真理だ。
一ヶ月もの間、状況を何も変えられない生徒は、この騎士学校では生き残っていけない。
ナキータ教官の一言によって、緊張感のある雰囲気の中、次々にクラスメイトが【格】を測定していく。やはり俺が教えた生徒たちはみんな、【格】を順調にあげていた。自分の【格】を知ると喜んで自慢な顔をしている。
逆に俺が教えていないほとんどの生徒は、成長のあとが見られずに悔しそうな顔をした。
……もっとも例外は居る。
「すごいね。ライル、ランク1の最上位だ。このペースだと来年までにランク2に行けるんじゃない?」
「当然です! 私は、我が姫クーナ様に追いつかなければならないのですから! これぐらいはこなして見せましょう。……ふふふっ、クーナ様の前回のあがり幅を見るに、ランク1の最上位になっているはず。だが、計算では、同じランク1最上位でも、私が若干上。ふふふ、これでクーナ様を守れる!」
例外の一人、四位の人が非常にうざいテンションで騒いでいる。
もともと入学前からランク1の上位だったとはいえ、この成長速度は異常だ。かなりの無茶をやっているのだろう。
俺達が居なければ、学園中の羨望を集めていたことは間違いない。
だが、残念なことに彼は知らない。彼が相当の無茶をしたように、俺たち【魔剣の尻尾】は、それ以上の無茶をし、彼以上のペースでランクを上げていることに。
そして、次々にランクの測定が終わり、いよいよ俺たちの番が回ってきた。
「よろしくおねがいします」
俺は、ナキータ教官に頭を下げる。
「君の番か、少し身構えるな。君ならもう、ランク1の最上位にまで上がっていても驚かない」
「見ればわかると思いますよ」
俺はニコリと微笑む。
「すごい自信だ。この様子だとランク1最上位に到達しているね。この学校で歴代トップのペースだよ。」
そして、ナキータ教官が【格】を測定した。
「ランク2の下位ぃぃぃ!? まだ君、入学して三ヶ月経ってないよね? こんなの早すぎる。こんな速度、聞いたこともないよ」
ナキータ教官が、驚きの声をあげる。
そして、周りの生徒たちも同様に、ざわつく。
かつて、一度目の測定で俺がランク1の上位になったときも驚いていたが、今回はさらに別格だ。ランクをまたぐ、その壁は遥かに高い。
数年に一人、一年の後半にぎりぎりランク2に届く。それがこの世界の常識だ。
その常識を遥か彼方に置き去りにした。
他の生徒達も、俺なら何かあるとは思っていても、ランク2に届いてることは想定の範囲外だったのだろう。
「もしかして、君だけじゃなくて……。クーナ、アンネ、二人共来てくれないかな?」
ナキータ教官はアンネと、クーナを呼ぶ。
そして、手を震わせながら二人の【格】を測る。
「クーナは、ソージと同じランク2の下位ぃ、そして、アンネは……ランク2の中位!? ありえない。この前の魔石加工の魔術を考慮してもありえない。君たちは、いったいどれほどの敵と戦ったというの? どれほどの絶望的な戦いを経験したら、吸収した力が体に馴染むって言うの!?」
ナキータ教官が驚くのも無理はない。
なにせ、同一ランク内での【格】の上昇はただ魔石の量を積み上げればいい。
だが、ランクをあげようとすれば、長い時間をかけてゆっくりと体を馴染ませるか、一瞬が永遠に感じるような命がけでの戦闘で、力への強い渇望。それこそ魂の奥底から湧き上がるほどの強い願いが必要なのだ。
「少しだけ、無茶をしました」
俺たちは、ティラノとの戦いで、ランク2へとあがった。あれは、本当に苦しかった。一人ひとりが極限までの力を絞り出したからこそ勝てた命がけの戦い。
そして、アンネだけ、ランク2の中位にまであがっているのは、クラネルとの決闘に向けて、手持ちの魔石をアンネに集中して使ったからだ。
その中にはティラノの魔石も含まれている。
「たいていのことでは驚かないと思ったけど、まさか、パーティ全員がランク2なんて度肝を抜かれたよ」
ナキータ教官は心臓を抑えながらつぶやく。
ついでに、四位の人のほうをみると、灰になっていた。まさかクーナがランク2になっているとは夢にも思っていなかったのだろう。
「えっと、このクラスの皆も、ソージたちに追い付け……なんて、無責任なことは言えないけど、彼らから得られるものは多いと思うから、いろいろと話しを聞いたほうがいいと思うよ。同じ世代に彼らが居るのは幸運だ」
ナキータ教官が言うと、生徒たちが頷いて、憧れ、嫉妬、野心。さまざまな感情を込めた目で俺たちを見つめる。
……悪い気持ちはしない。俺たちの邪魔をしないのであれば、これからも彼らの成長の手助けをしよう。
「じゃあ、みんな。一通り今の君たちの力を確認した。今日も実技を叩き込む! いつもより厳しく行くから覚悟してね!」
その言葉に、クラスメイトたちは強く頷く。
生徒の大半は、きつい訓練だと宣言されたのに、嫌な顔をしないどころか、気合が入ったいい顔をしている。さすがだ。あの試験をくぐり抜けてきただけはある。
「やっと、追いついたと思ったのに……我が姫君は、ランク2……そんなぁ」
そんな中、四位の人だけは、まったく別の理由で落ち込んでいる。気持ちはわかる。少しだが同情したくなった。
「だが! このライル諦めませんぞ! 絶対にクーナ様にふさわしい騎士となり! 魔王ソージの手からクーナ様を救ってみせます!」
四位の人は力強く叫ぶ。前言撤回。やはりこいつに同情する必要はない。
……こいつの頭の中で変な設定が作られているのが気になる。
そうして、日が暮れるまで実践訓練で俺たちは腕を磨いた。