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チート魔術で運命をねじ伏せる  作者: 月夜 涙(るい)
最終章:チート魔術で運命をねじ伏せる
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第十六話:女神の置き土産

 すべてが終わり、女神の導きで帰還した。

 女神は、転移した先にはおらず、探しても見つからなかった。


【破滅】に導く神との戦いを思い返す。

 奴は、絶対に俺が勝てない存在として、シリルを複製した。

 たしかに、偽シリルは脅威だった。

 だが、奴は致命的なミスをした。

 プレイヤーたちの心を俺が取り戻したのを見て、やつは心をもたない空っぽのコピーを作ってしまった。

 心が空っぽでは、シリルのスペックを活かすことはできない。


 勝てて良かったが、心に靄が残る。

 せっかく、全力のシリルに挑む機会だったのに。


「ソージくん、考えていることが顔に出てますよ」

「私には、その気持ちはわかるわ」


 アンネは最強の剣士を目指しているゆえに、俺側の思考をしているのだろう。


「……なんにしろ、全部終わったんだ。さて、肝心の女神はどこにいるんだろう?」

「探してみましょう。いろいろと言いたいことがありますし」「二人とも、部屋の中央を見て。手紙があるわ」


 アンネが見つけた手紙を拾い上げて、読んでみる。

 それは俺たち当てだった。

 ……まったく、最後まで自分勝手な女神だ。


「なんて書いてあるんですか?」

「力を使い果たして冬眠状態になったそうだ。感謝の言葉を直接伝えられなくて申し訳ないと」

「やっぱり、あそこに送り届けるのって大変だったんですね」

「だろうな。それに、俺たちが一気にランクを上げたダンジョンを使わせるのだって、かなり消耗したはずだ」


 手紙にはさらに続きがある。

「……それと、俺たちへのお土産を用意したって書いてある。そっちにもだいぶ力を使ったんだと」

「ソージ、お土産って何かしら?」

「そこまでは書いてない。書かなかったってことは、そのうちわかるようにしているだろう


 だいたい予想がつく。

 お土産を渡すじゃなくて、お土産をよろしくねって書いてあるからだ。

 もし、俺の予想通りだとうれしい。


「最後に、十二年後にまた会おうだとさ」


 妙に具体的な数字で笑ってしまった。

 冬眠から目が覚めれば、文句の一つも言ってやろう。


 ◇


 その後、念のため女神の屋敷内をもう一度、探したが、誰もいなかった。

 食料を使わせてもらい、夕食を食べてから体を清めてぐっすりと眠りにつく。


 そして、次の日の朝、三人で話し合って自力で学校まで戻ることにした。

 いつまでもここに居ても仕方がない。

 屋敷を出て、来るときに通った地下洞窟に向かっていると俺たちのではない足音が聞こえた。

 クイナがぱーっと明るい笑顔を浮かた。

 アンネが静かに微笑み。

 俺は口角を吊り上げる。

 さっそく、お土産とやらが来たようだ。


「ソージたち、久しぶりだね。まずは、ありがとう。本体に変わって、あたしから感謝の言葉を告げさせてもらうよ」

「……ユーリ先輩でいいのか?」


 目の前にいたのはユーリ先輩だった。

 見慣れた姿だ。

 騎士学校の制服を着ている。

「見てわからない?」

「見た目じゃわからないから聞いているんだ。最近、いろんなのと出会ったからな。疑い深くなってきた」


 俺は薄く笑う。

 ユーリ先輩は、あははとほがらかに笑う。

 それはとても彼女らしかった。


「まあ、本体が気を利かせてくれたんだよ。あたしが消滅するときに、あたしの心を引き上げて保管してくれた。それから、新しい体を作って、心を移してくれた。あたしとしては、あたしのつもりだけど。これってちゃんとあたしかな」


 悩むまでもない。


「それは、俺が決めることじゃない。ユーリ先輩がどう思うかだな。一つだけ言えるのは、自分の存在に疑いを持ててる時点で答えなんて出ている」

「そっか、じゃあ、あたしはあたしだ。改めてよろしく、ソージ、クーナ、アンネロッタ。それからさ、一つお願いがあるんだ」


 ユーリ先輩が、ごほんと咳払いして、それから照れくさそうにして口を開く。


「君のパーティに加えてもらえないかな? ……ソージたちのおかげで、あたしは使命から解放されて自由になった。自由になったら、真っ先にい言いたかったんだ」


 俺はクーナとアンネの顔を見る。

 二人とも、微笑んで頷いた。


「喜んで。ずっと四人目がほしいと思っていたところだ」


 パーティというのは四人がベスト。

 だからこそ、四人目はずっと前から探していた。


「ソージくんの命の恩人なら断る理由がないですね」

「知識と実力あって、私たちの事情にも理解がある。これ以上の人材はなかなかいないわ」


 ユーリ先輩が、目元を手でこする。

 わずかに涙がにじんでいた。


「ありがと、よろしくね」

「でも、一つだけ困ったことがあります」


 クーナが顎に手を当てて、考え込む。

 それを見たユーリ先輩が少しだけ不安になった。


「もったいぶらずにさっさと言え」

「私たちの名前って、【魔剣の尻尾】じゃないですか。名前の由来がそれぞれの大事なものです。ユーリ先輩の成分がまったくないです!」

「あはは、そんなことか。びっくりしちゃったよ」


 ユーリ先輩が胸をなでおろす。

 すごいのは、クーナの場合、からかう意図があるわけでなく、素でやっているところだ。


「女神様も、気の利いたお土産をよこしてくれたものだ」

「その、ソージ、あたしで良かった? 女神様が力を使い果たしたのって、あたしを生き返らせたからなんだ。……あたしを生き返らせなかったら、もっと別の報酬を出したはず。ちょっと、ソージに悪いかなって」

「気にするな。これ以上の報酬はないさ。俺たちは最強のパーティを目指している。頼りになるメンバー以上の報酬なんてない」


 これはお世辞や、ユーリ先輩に気を使っての言葉じゃない。 ただの本音だ。


「まあ、そう言っても、気になるなら働きで返してくれ」

「ねえねえ、アンネ。ソージくんの照れ隠しが出ましたよ」

「ソージって、照れると利益があるとか、そういう理屈を並べだすわよね」


 図星だけに何も言い返せない。

 クーナとアンネの鋭いツッコミを受ける俺を見てユーリ先輩が笑う。


「まあ、なんだ。最初のミッションだ。無数の罠と結界が張り巡らされた地下洞窟を抜けて地上にでる。来るときに、道を覚えたつもりだが。じつはあまり自信がない。ユーリ先輩、道案内を任せる」


 女神を守る地下洞窟は、入るだけでなく出るのも難しい。

 だけど、ユーリ先輩がいるなら安心だ。


「任せて。じゃあ、ついてきて後輩たち。楽しみだな。君たちと一緒に探索するの」

「だな。いろんなダンジョンに挑もう」


 ランク5が三人もいる。

 ユーリ先輩の力もそれに準ずるものがある。

 この四人ならどこへだっていけるだろう。

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― 新着の感想 ―
何度読み返しても面白い、素敵な物語でした!ありがとうございます!
[良い点] もう最高に面白かったです‼️ワクワクできました
[気になる点] 作「誤字脱王に、俺はなる!!!!」((殴 [一言] とてもいい、最高の作品でした!面白かったです!設定からして、最高でした。最初は、ゲームにあった魔法が使える系なのかなって思ったけど、…
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