第五話:エロギツネの本領発揮
狩りを繰り返し日が暮れてきた。
なんとか、神殿の手前までやってきたところだ。
あの神殿に入るのは明日にすると決めて、野営の準備を始める。
今回はダンジョンの事前知識がないので、可能な限り厳重に結界を張り、魔物を避ける香も強く炊いておく。
「今日は大漁ですね」
「ええ、魔物がうじゃうじゃいたわね」
「ここには他の冒険者がまったくいないからな。まさか、魔物を倒しすぎて魔石を収納するスペースが確保できなくなるとは思った」
俺たちのリュックにはぎっしりと魔石が詰まっている。
なので、仕方なく休憩のたびにある程度魔石を使っている。
魔石は強くなれるし、瘴気を取り除けば害はないのだが、いかんせん、性的な興奮に近いものを覚え、そういう気分になってしまうし、下手をすれば腰が抜ける。
とくに、クーナは魔石の快楽に弱い。こんな大きな魔石を与えると戦闘不能になりかねない。
なので細心の注意のもと、最低限必要な魔石だけを消費した。
「夜が楽しみだな。明日のことを考えると、全部空にしないといけない」
「うっ、こんなに大きいのを、たくさんですか。壊れちゃいます」
クーナが顔を赤くして、もじもじと内またをこすり合わせる。
思わず、押し倒したくなってしまった。
「クーナ、どこからどう聞いてもエッチにしか聞こえないのは気のせいかしら?」
気のせいじゃないと心のなかで相槌を入れておく。
「仕方ないじゃないですか! 気持ちよくなる体質なんですから! それよりご飯です! たくさん動いてお腹が空きました。シカ肉なんて久しぶりです」
ちなみに、今日の晩御飯はシカの魔物、サファイア・ディアーという魔物の肉だ。
シカで一番うまいの後ろ脚を持ってきている。
すでに血は【浄化】で飲み水にしてあった。
「わかった、すぐに作る。初日だから元気になる料理を作ろう」
今日のために、せっせと試行錯誤をして作り上げたミックススパイスを取り出す。
いろいろな街でスパイスを買い込み、ようやく満足のいく調合ができた。
そのミックススパイスをもっとわかりやすく言えばカレー粉だ。
カレー粉は優秀だ。どんなものでも臭みを消して旨くしてしまう。これだけあれば、食べ物ならなんでも食える。
さらに、スパイスの効果で健康にもいい。
万能なだけに、栄養面でも、効能面でも、味でも拘りに拘り、完成するのが遅くなった。
ミックススパイスを水を張って鍋で溶かしつつ、シカ肉をステーキようにカットして、こちらにはミックスパイスをすり込んでからフライパンで焼き上げる。
カレー特有の食欲をそそる香りが周囲に漂う。
「すごくいい匂いです。だけど、この匂いはダメです。余計にお腹が空いちゃいます。こんなの生殺しです」
「ソージの料理は不思議なものが多いけど、今日はひと際ね。こんな香り初めて。でも、確かに美味しそう。よだれが出てくるわ」
「じゅるり、楽しみです」
二人ともカレーを知らないようだ。
鍋のほうに変化が出始めた。スパイスが溶けて茶色のスープができる。
日本風ではなく、インド風なので出汁は取らないし短時間で完成する。ここに粉末ミルクと、ステーキを焼いたときに出たシカの脂、調味料で味を調えれば完成だ。
焼きあがったシカのステーキを一口ステーキのようにカットして鍋に投入する。肉汁もすべて鍋に入れるのを忘れない。
あとはしばらく煮込んで馴染ませる。
短時間でも、ステーキは焼く前にミックススパイスを揉みこんでいるのでカレーと肉は良くなじむ。
「完成した。俺の大好物。カレーという食べ物だ。」
皿と、乾パンをクーナとアンネに渡す。
「やっと食べられます! もう、いい匂いすぎて我慢が大変でした! あんまり美味しそうな色合いじゃないですが、これだけいい匂いがするんだから美味しいに決まっています」
クーナの言う通り、茶色いスープというのは見た目があまりよくない。
カレーを知らない二人からすればなおさらだろう。
だが、その香りは見た目のハンデを容易に覆す。
「ソージ、これはどうやって食べるのかしら?」
「乾パンにたっぷりと汁を含ませて食べるとうまいぞ」
口で言うだけではあれなので、実演する。
たっぷりと汁を含ませたパンにかぶりつくと、口の中でいろいろな香辛料の旨味が爆発する。
粉末牛乳とシカの脂を加えたおかげで、旨味が増強されて、味もまろやかになっている。
パンを食べたあとはスプーンで一口大にカットしたシカ肉のステーキをスプーンで口に運ぶ。
短時間しか煮込んでいないから噛めば肉汁がこぼれてくる。スパイスと肉が口の中で混じりあうのは最高だ。
いくらでも食べられそうだ。
「私も食べます。はむっ、おいひいです! ぴりっとして、こんなの知らないです」
「ええ、とっても美味しい。初めての体験ね。このスープも美味しいけど、シカ肉のステーキも素敵」
クーナとアンネも気に入ったようで、どんどん食べてしまう。
「ソージくん、お代わりです! パンも追加で」
「私も頂けるかしら?」
「カレーのほうはいいが、パンはダメだ。持ってきたのがぎりぎり一週間分だ。現地調達できる肉はたくさん食べていいが、主食は節約しないとな」
「ううう、パンを一番美味しく食べる方法なのに残念です。でも、お肉とスープだけでも十分美味しいのでお代わり!」
「私もそうするわ」
俺は二人に大盛でカレーを良そう。
スパイスは一回の料理での使用量が少ないし嵩張らないので、余裕がある。
水も肉は大量に手に入る。
だが、どうしてもパンだけは持ち込んだものを大事に使うしかない。
こういうのは長期滞在時はいつも頭を悩ませられる。
主食は重要だ。直接的なエネルギーになる。一日目にたくさん食べて、後は肉だけで我慢なんてことはできない。
「ごちそうさまです! ソージくん、この料理気に入りました。明日も作ってください」
「それはいいが、二日続けば飽きないか?」
「これなら毎日でも大丈夫です!」
俺はくすりと笑ってしまう。
毎日カレーでいいなんてまるで子供だ。
「アンネもそれでいいか?」
「ええ、辛いだけじゃなくて複雑で飽きない味。さすがに毎日は辛くなるけど、明日も食べたいと思うわね」
「わかった、明日も作ろう。だけど、今日とは別の楽しみ方だ」
少量だが米も持っている。
これでカレーリゾットを作ると、パンとは違った魅力がある。
明日も喜んでもらえるだろう。
◇
テントを設置し、お湯で体を拭いてから、楽な格好に着替え終わり、魔石タイムになる。
リュックの中にある山のような魔石を今日中に始末しないと、明日困ることになる。
改めて、【浄化】済みで良かったと思う。これだけの大きさの魔石をこの数【浄化】しようと思ったら、それだけで一週間はかかるだろう。
「ううう、緊張します。こんな、大きいの、こんなにいれるなんて」
「そのセリフ、さっき聞いたばかりよ?」
緊張といいつつ、クーナの顔には期待と興奮があった。
相変わらずのエロギツネっぷりだ。
俺はそんなクーナが大好きだ。周囲には全力の結界が這っており、安全は担保できている。
魔石で発情したクーナとそのまま、愛し合おうと内心で決める。そんなことを考えていると、アンネが俺の顔を見てため息をついた。
「……エッチなのはクーナだけじゃなかったわね。どうして二人ともそんなに顔にでるのかしら?」
「エッチじゃないです!」
「心外だ」
俺とクーナは二人でアンネに抗議する。
ひどい言いがかりだ。
「とにかく、魔石を二人に与える。まずは二人にランク4になってもらうことを優先する。そうなれば、いろいろと出来ることが増える」
すでにランク4の俺は魔石を使わず、今日稼いだ魔石は二人だけに使う。
「きっ、来てください。ソージくん」
「覚悟はできているわ」
寝間着姿の二人が俺を上目遣いに見てくる。
そんな二人に、右手と左手で、同時に額に魔石を押し当てる。
「ああんっ、あついのが入ってきます。すごい、すごく熱い」
「んっ、すごい魔石ね。体のなかで暴れまわって」
二人の呼吸が荒くなる。
クーナの背筋がピンと伸びて痙攣した。
アンネも内またをもじもじとさせる。
「……二人とも、あと一人二十個ある。まだまだこれからだ」
ニ十個と聞いて、二人の表情が固まる。
だけど、俺は心を鬼にして魔石を与え続けた。
◇
「もっ、もう、むりれしゅ、こわれちゃいまひゅ」
完全にろれつが回らなくなって、真っ赤な顔をしたクーナをアンネが押さえつけていた。
二人とも着衣が乱れに乱れて目の毒だ。
「逃げないで、クーナ。私も我慢したのだから、あなたもがまんしなさい」
「そんにゃぁ」
クーナは逃げようとするが、腰砕けになっておりろくな抵抗ができていない。
罪悪感があるが、俺はそんなクーナに魔石を押し当てる。
残り二つだ。
「ひゃうっ、これ、おかしくなりゅ」
びくんびくんとクーナが背筋を振るわせる。
いったい、クーナはどこまでエロギツネなのだろうか。
うつろな目をしているクーナに止めのもう一つを与えると、思いっきり背筋をのけぞらせて全身を痙攣させた。
もふもふのキツネ尻尾も限界までふくれあがり、天に向かって伸びてびくびくと震える。
クーナが絶頂するときはこうなる。
「よく頑張ったこれで終わりだ」
ふう、これが毎日続くのか。なんてたのし……大変なんだ。
発情したクーナと愛し合うつもりだったが、さすがにここまでの状況になると無理だろう。
今日は大人しく寝ようと決め、着替えを用意しようと鞄に手を伸ばすと、背中から急に衝撃がきた。
「ソージくん、体が、熱くて、熱くて、しょうがないんです、鎮めてください」
完全に肉食獣の目で、クーナが俺を押し倒していた。
そして、俺の下腹部を凝視する。
……思えば、いつも俺が主導を握っていたな。
たまには押し倒されるのもいいかもしれない。むしろ興奮する。
「ソージ、もう止められないわ。大人しく食べられて」
「食べちゃいます!」
クーナが大胆に攻めてきて、俺はなすすべもなく弄ばれる。
まあ、抵抗する気なんて初めからないのだが。
結局、その日はクーナに蹂躙されるだけされて、クーナが満足したところで一転攻勢をして、泣くまでいじめてみた。
そのときはアンネも協力して、非常に楽しかった。
全部終わったあと、俺を押し倒したことをからかうと、顔を真っ赤にして悶絶したところも可愛かった。
やっぱり、クーナは攻めるより攻められるほうがいい。
いいリフレッシュになった。
明日からも頑張るとしよう。




