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チート魔術で運命をねじ伏せる  作者: 月夜 涙(るい)
最終章:チート魔術で運命をねじ伏せる
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第三話:最後のダンジョンへの準備

 ユーリ先輩が本体と呼んだ人と出会い、いろんな真実を知った。

 そして、【瘴気】を生み出す元凶を倒してくれと頼まれた。


 彼女の話では、そいつを倒したからと言って【瘴気】がこの世界からなくなるわけではない。

 だが、今のように【瘴気】の生産量が増え続けるということはなくなる。

【瘴気】の生産量が増え続ければ待っているのは世界の【破滅】だ。なんとしても防がないといけない。


 ……そして、これをやり遂げれば神聖薔薇騎士団が守っている封印も不要になる。

 溢れ出る【瘴気】を抑制する封印に必要なクーナの心臓も不要になり、クーナが狙われることもなくなる。

 なんとしてもクリアしないといけない。


「すぐにでも三人をダンジョンに送り届けたいところだけど、その前に準備をしないとね。特別に私の宝物庫にあるものをなんでもあげる」


 女神の宝物庫?

 その言葉に惹かれる。


「いいのか? 俺をこの世界に呼んだとき、ミスリルの塊とわずかな金だけで限界と言っていた記憶があるが」

「色々と制限が解除されたから、できることが増えた。……それに、私の宝物庫にあるものだけど、私のじゃない。君がユーリ先輩と呼ぶ端末をはじめとした、私じゃない、私たちが集めたものだ。私が君にあげるわけじゃない。いわゆるズルってやつだ」

「……わかった。遠慮なくもらっていこう。ユーリ先輩たちの置き土産、存分に使わせてもらおう」


 ある意味、ユーリ先輩の形見のようなものだ。

 彼女の想いを連れていく。


 ◇


 来たときと同じように茶くみ人形に宝物庫へと案内された。

 宝物庫の中にはところ狭しと、武器や防具、アイテムが並んでいる。

 いったい、何百年かけてこれだけのものを集めたのだろう。


「ソージくん、あの人、ここにある装備や道具全部もっていいと言っていましたが、ここまで種類あると悩みますね」

「そうだな。……質も量も一級品ばかりだ。大変だが、妥協せずにしっかりと選ぼう。強い魔物が出るダンジョンに一週間も潜り続けるし、その後の本番がある。少しでも戦力を上げたほうがいい」

「わかりました! 一番いいのを選びます」

「私も頑張って探すわ」


 クーナとアンネが倉庫の武器や防具を手に取り始めた。俺も装備を探そう。

 一つ一つ、装備を確認し、いいと思ったものは頭の片隅に留めて、武器、防具エリアを一周する。

 ……さすがは女神の宝物庫、普通じゃ手に入らないものが多い。


「クーナ、アンネ、いいものは見つかったか?」

「ううう、無理です。いくらなんでも多すぎますよ」

「……まだ、一割程度しか見れていないわね」

「しっかり選べと言っても、一つ一つ手に取って調べるのは無理がある。どれも超一級品の武器ばかりだ。作りがしっかりしていることよりも、強い魔力が宿っているものを優先して、その後に手になじむか見ていったほうがいい」


 しっかりと見るということとは矛盾するが、今日を含めて一週間しか鍛える時間がない。

 ここで悩めば悩むほど鍛える時間が失われる。

 だから、しっかり見つつも迅速に選ぶ必要がある。


「俺が見て回った中だと、クーナにはこの籠手、アンネにはこのベルトがおすすめだ」


 クーナには俺が作った二振りの姉妹剣、蒼慈、空那があり、アンネにはクヴァル・ベステがある。

 それらを超える性能の武器はなかった。


 だが、防具の面では現状の装備を上回るものが多く、その中でもずば抜けていたのはこれらだ。

 クーナに渡した籠手は、素早さに補正がかかるもので、アンネに渡したベルトには筋力を上昇させる効果がある。


 能力に補正がある魔道具は、複数装備したら効果が打ち消し合うので、複数装備しても意味がないので、これら一つだけでいいだろう。


 そして、俺自身は魔力が宿った上着を選んだ。

 身体能力を向上させてくれるし、材質が良く斬撃と耐熱に耐性があり、軽い。


「ソージくんの言う通り、この籠手しっくりきますね」

「こっちは力が湧いてくるわね。それに、他の装備と違って体の感覚が変わらないのがいいわ」


 二人とも新たな装備を気に入ったようだ。


「クーナ、アンネ、それを基準にして手に取ったとき、それよりも劣ると感じたらすぐに手を放して次を探すといい。それなら、あと一時間ぐらいで見終わるだろう?」

「かしこい方法です!」

「ええ、やってみるわ」


 そうして、クーナとアンネは今までとは比べものにならないペースでいろいろな装備を確認していった。

 最後には俺が選んだものを使うことにした。


 一見、無駄な時間に覚えるが自分の意思で選ぶということが大事だ。そっちのほうが愛着がわく。

 命を預ける装備に思い入れは必要だ。

 装備を見終わったあとは、道具類のある区画に移動する。

 その中にひと際目を引くものがあった。

 手に取り、魔術で解析する。思った通りだ。


「これはすごいな。実在したとは」

「その小瓶がどうかしたんですか?」

「【加護】を回復するポーションだ。体力や魔力を癒すポーションは作れるが、【加護】を増やすポーションは誰も完成させてない」


 この世界では傷を負っても【加護】が癒してくれる。

 だけど、その【加護】そのものは時間でしか回復しない。【加護】そのものを回復できるのはありがたい。


「ソージ、ありがたくいただきましょう。もてるだけダンジョンにもっていきましょう。」

「そのつもりだ。一週間も潜れば【加護】不足に悩まされるだろうしな。……それに、実物があれば解析して再現できるかもしれない。いや、絶対に再現して見せる。腕がなる」


 ゲーム時代に、俺を含めて何十人も挑戦した。

 開発チームまで作られたが、基礎理論は完成し、いざ製作というところまで進展したが、結局誰一人成功しなかった。

 どうしても、理論を実現するだけの素材が見つからなかったからだ。

 過去の文献には、すべての要件を満たした薬草が存在していたのだが、もしかしたらこのポーションは、その薬草が存在した時代に作られたものかもしれない。

 当時はそこで足を止めたが、こうして実物があれば解析し、代用品や、あるいは過去に失われた薬草の再生に挑める。

 こんな状況なのに、わくわくしてきた。


「アンネ、ソージくんの顔が新しいおもちゃをもらった子供みたいです」

「悪い癖が出たわね」

「ごほんっ、ちゃんと弁えているよ。研究はすべてが終わってからだ。それにしても、改めてすごいと思う。高くて手がでない、魔力回復ポーションもたくさんあるし、体力回復ポーション、変わり種で疲れを認識できなくなるバーサークポーションもある」


 めぼしいアイテムは【加護】の回復ポーションだけじゃなかった。

 少し、困ってしまう。

 持っていきたいものが多すぎて、取捨選択が難しい。


「回復アイテムだけじゃないですね。これは爆弾でしょうか?」

「正解だ。そいつの威力は相当だ。魔物を倒すのにも、目くらましにも使える。二つほど持って行こう。……【加護】のポーションを最優先に、魔力回復ポーションと体力回復ポーションをできるだけ入れてっと」


 ある程度、割り切って次々に必要なものを見繕う。

 食料を入れるスペースも確保しないと。

 なにせ、一週間もの間地上に戻ってこれない。

 現地で魔物肉は確保できるだろうが、肉だけでは一週間を乗り越えられない。

 どうしたって、ビタミンや炭水化物を摂取可能な食料を持ち込まないといけない。

 三人の一週間分となると相当量だ。

 限界まで頭を回転させて、最適な荷造りをする。


「よし、余り荷物を増やしても動きにくくなるし、こんなものだろう。これだけあれば、一週間、耐えられるはずだ」


 最後に、もう一度倉庫の中を見回り、必要なものがないかを確認して、女神のもとへ向かった。

 女神が鞄をぱんぱんに膨らました俺たちを見て微笑を浮かべながら口を開く。


「準備は終わったかな? もう一度言うけど、特別なダンジョンに行けるのはたった一度きりだけ、途中退場はできるけど、そうしたら二度と足を踏み入れることができない」

「わかっているさ。一週間、ずっと現地にとどまり続けるつもりで準備をした」

「うん、わかった。じゃあ、君たちを送り届けよう。ついてきて」


 先ほどの部屋には隠し扉があり、その先には巨大な魔方陣があり、その中央に女神が足を踏み入れ、手招きをしてくる。

 三人で女神の前に立った。


「今から私の力で特別なダンジョンへ送り届けるよ。ソージには、この宝石を渡しておく。これを砕くと戻ってこれる」

「わかっている。必ず強くなって戻ってくる。三人でな」


 俺がそう言うと、女神が頷いた。


「さあ、【黄金宮】への道を開くよ。言ってらっしゃい。力をもつ英雄になるために」


 その言葉と同時に、俺たち三人は転移独特の浮遊感に包まれた。

 きっと、目が覚めればそこは【黄金宮】の中だろう。

 強力な魔物たちがうじゃうじゃと存在し、魔石に込められた力が数倍のボーナスステージ。

 こんな美味しいボーナスステージ、途中退場なんてするものか。

 必ず、一週間戦い続けて、圧倒的な力を手に入れる。

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