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チート魔術で運命をねじ伏せる  作者: 月夜 涙(るい)
第六章:ソージが呼ばれた意味
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プロローグ:つかの間の日常

大変、お待たせしました。今日からチート魔術再開です! この章が最終章となります

三日に一回更新を最終話まで維持します

最終話までお付き合いいただければ嬉しいです

【浄化】の講演中に襲撃を受けた。

 謎の魔物が現れて暴れ出し、俺は強制的に【転移】させられ異空間での天使たちに襲われた。


 死力を尽くして戦い抜いた。

 それでも、敵はゲーム時代のライバルたちを何十人も同時に呼び出して絶体絶命の窮地に陥った。

 さすがにダメかと思ったがユーリ先輩の救援によって生き延びることができた。


 戦いが終わったあとは、元の場所に戻って来れた。

 そして、シリルの手引きでユーリ先輩のいう本体ほんとうのわたしというものに会いに行くことになった。


「馬車が来ましたよ。ソージくん」

「ああ、行こうか」


 シリルが手配した馬車が来て、俺たちはそれに乗り込む。

 真実を知り、俺たちがどう進むのかを決めるために馬車は出発した。


 ◇


 そうかっこよく出発した直後、軍に拘束された。

 俺とシリルがいる以上、強引に突破することはできるが、それをすれば即座に軍全体を敵に回す。


 それは今後の生活まで考えるとまずい。軍を敵に回して犯罪者になれば、この国で暮らしていくことは難しいだろう。

 だから、この場は大人しく連れていかれる。

 軍が呼び出したのは俺だけのようだ。

 シリルは俺が連れていかれる寸前、耳元で『必ず迎えに行くから焦るな』と言っていた。

 彼の案内がなければ、ユーリ先輩の本体ほんとうのあたしとやらとは会えない。


 シリルからの連絡があるまでは、待っているだけしかない。

 そして、俺はすべてが終わったあとクーナやアンネたちと引き離され、個室に連れていかれていた。


「これが、俺が転移された場所で起こった全てです」


 騎士学校の代表であるスゴート教官の立ち合いのもと、軍の連中に事情徴収を受けていた。

 もともと、【浄化】の講演は注目度が高かった。

 有力な研究者たちが集まっていることもあり、警備にあたっては軍も派遣されていた。

 今回の襲撃も、【浄化】の秘密を狙ったものと軍部が考えられているようだ。


「……にわかには信じられません。ですが、【転移】の魔術なんてものを完成させている組織であればあるいは」


 軍部の人間は二人いる。

 一人は若い青年でもう一人は恰幅がいい中年だ。

 今の言葉は若い青年のものであり、中年のほうが口を開く。


「相手が何であれ、【浄化】を手に入れようと襲撃してきたに違いない。早急に軍部による保護が必要だ」


 内心で、深くため息をつく。

 軍部はもとから、俺に学園を辞めさせて、軍属の研究所に連れて行き、【浄化】の一般化に注力させたいという思惑があった。

 そんななか学園に通えているのは、陛下の配慮だ。


 だが、軍部は今回の件で俺を保護を名目に、軍属の研究所に連れていこうと考えているようだ。

 非常に面倒だ。

 俺はクーナやアンネたちと共に学園生活を送りたい。

 研究所に行けば、報酬や地位は思いのままだろうが窮屈で息苦しい生活になる。

 そんなのはごめんだ。


「今回の相手は【浄化】目当てじゃなかったと説明したはずです」


 無駄だとはわかっていても一応は反論をしておく。


「いや、君がそう言っても状況的に【浄化】狙い以外はありえない。しばらく君に護衛をつけよう。一流の軍人だから安心してくれたまえ。今後のことは追って連絡する」


 満足そうに、軍の中年は頷くと立ち去っていき、入れ替わりに二人の鍛え上げられた肉体を持つ軍人がやってきた。

 魔術でランクを測定する。ランク3。

 ランク3は滅多にいない一流だ。それを二人もつけるとは、よほど【浄化】を重要視しているらしい。

 ただ、ランク4になった俺に、俺より弱い護衛をつけて何か意味があるのかとは思う。

 追って連絡するとは言っているが、何も手を打っていなければ奴らの狙い通り、保護のために学園を辞めさせられるだろう。


「我々は常にソージ様と共に行動します」


 声を聴いてわかった。

 融通が利かない堅物タイプだ。懐柔もできないだろう。

 おそらくだが、彼らは俺の護衛ではあるが、同時に俺の見張りでもある。

 シリルが迎えにくるまでにこいつらを撒く方法を考えないといけない。

 それも脱走とみなされる方法ではダメだ。

 ……いっそのこと、敵にさらわれたことにしようか。

 そのための布石を今日から用意するとしようか。


 ◇


 学生寮に戻って来る。

 学生たちは遠巻きに俺を見ている。俺が襲われたこともあるが、ごつい軍人が二人もいれば目立つ。

 そんな俺のもとに、キツネ耳とキツネ尻尾が生えた少女と、銀髪で剣を携えた少女が走って来る。


「ソージくん、やっと帰ってきたんですね。父様に聞いても、大丈夫だって言って笑うだけですし。……それから父様からの伝言です。『出発日は後で連絡する。それまでに準備を整えておけ』」


 さすがシリルだ。俺の状況をしっかりと把握しているみたいだ。

 なら、それまでに抜け出しても問題ない状況を作らないと。


「たくさん、心配したんですからね!」

「大丈夫と聞いていても、あまりに遅いから気が気ではなかったわ」


 クーナとアンネ。

 俺の恋人であり、大事な仲間だ。


「悪かった。いろいろと細かく聞かれてな」

「ソージくん、どこも痛いところはないですか? 拷問なんてされてないですよね?」

「本当にただ話を聞かれただけだ。俺たちの部屋に戻ろう」


 今日の出発はなくなった。

 もどかしい気持ちはあるが、割り切って体と心を休めよう。それも出発前の備えだ。


「それから、父様、ソージは体も心も疲れているし、傷ついているから、癒してやれって私とアンネに言ったんです」

「それが恋人の役目とまで言われたら、本気でソージのことを癒さざるを得ないわ」


 クーナとアンネが真剣な表情で、おかしなことを言うものだから笑ってしまう。

 たしかに、今日は疲れた。二人に癒してもらえるのはありがたい。


「ふふん、ソージくん、お腹が空いたと思って、クラスで出したお店のケーキを用意してしたんです。今日は出発できないと聞いたので、今日はこれで疲れを癒してあげます」

「……クーナ、くすねてきたのか」

「失礼なことを言わないでください。ちゃんとお金は払ってますよ。原価で!」


 クーナはいろいろと抜けているところが、変なところでちゃっかりしている。


「なら、気兼ねなく食べられるな。部屋で食べよう」

「私も楽しみね。給仕するばかりで食べれなかったから、味が気になっていたの。……それから、喫茶店で使った衣装を買い上げたの。ソージが可愛いって言ってくれたから。これもソージを癒すためよ」

「二人でご奉仕しちゃいますから! お店では恥ずかしくてできなかったことまで」


 自然と頬が緩む。

 ただでさえ美少女の二人が可愛い恰好をしてくれる。なんて素敵な時間だろう。

 ただ、一つ問題がある。


「それで、ソージくん、その後ろの人たちは何ですか?」


 ジト目でクーナが護衛の人たちを見る。


「えっと、俺の護衛かな。不要だと言ったんだけどな」

「私どもはただの護衛です。空気だと思い気になさらないでください」


 そう言われて気にしないでいられる奴はいるのだろうか?

 クーナとアンネが微妙に嫌そうな顔をしていた。


 ◇


 自室に帰ってきた。

 さすがに部屋の中にまでは入ってこないが、扉の前で二人並んでいる。

 クーナとアンネがいそいそとメイド服に似た衣装に着替える。


 いつも通り、背中を向けつつ。魔術で着替えを覗く。

 この魔術は便利だ。特に俺のような着替えフェチにとっては。

 しつこいようだが、服を脱ぐより着るほうがエロいと思っている。


「じゃじゃーん、可愛いでしょ。ソージくん」

「返事は必要ないわ。ソージの顔を見ればわかるもの」


 そう言われて顔を押える。この姿を見るのは二度目だが、やっぱり可愛い。

 やはりにやけてしまっていたのか。


「ソージくんは、席に座っていてくださいね」


 二人は本格的なおもてなしをしてくれるようだ。

 クーナとアンネがそれぞれ、お盆でケーキとお茶を運んでくる。


「ご主人様、ケーキです」

「こっちは特製の紅茶よ」

「ありがとう。せっかくだ。食べさせてくれないか」


 二人が顔を赤くして、それでもフォークでケーキをカットして口へと運んでくれる。

 天国だ。


「うう、こういうのも楽しいけど、ぐぬぬぬ、ソージくんに食べさせてばかりで食べられないです」


 そうか、クーナも食べたいか。

 それなら、いい考えがある。

 俺からもケーキを食べさせてあげよう。


「んっ、んんん。ソージくん、いきなりなんて照れちゃいます」

「ソージ、クーナだけなんてずるいわ」

「もちろん、アンネにも」


 こんなに甘いキスは初めてだ。

 生クリーム以外にも甘さを感じる。

 こうしていると、その先もしたくなる。それはクーナとアンネも一緒のようだ。

 席を立ちあがり、後ろからクーナに抱き着いて、まさぐる。

 このままベッドに連れて行こう。

 だが、クーナに拒否される。

 いつものやんわりとしたもののではなく、本気で。


「駄目です。さすがに、扉の前に人がいるのにそういうことは無理です。恥ずかしすぎます」

「特にクーナはそういうことをしているときは声が大きいから止めたほうがいいわね」

「アンネだって、大きいです!」


 本気で、扉の前の護衛がうっとうしくなってきた。

 俺は扉の前まで歩く。

 そして、掌底を両手で放つ。

 扉の向こうで崩れ落ちる音が聞こえた。


「よし、これで邪魔者はいなくなった」

「いったい何をやっているんですか!?」

「発勁の応用だ。気と衝撃波を扉を通して放って脳を揺らす。加護は傷を癒してしまうが、気を失わせれば行動不能になる。これで、安心して愛し合えるな」

「そういう意味で言ったんじゃないです!」

「呆れるわね。エッチなことをするために、そんなことをするなんて」


 そう言うアンネの声はどこか嬉しそうだった。

 興奮しているのは俺だけじゃない。


 最近、忙しくてご無沙汰だった。ゆっくり愛し合いたい。

 それにクーナたちがわざわざ衣装を着ているのはそういうことを期待したのもあるはずだ。

 ……そして今のはエッチなことをするためではあるが、それだけじゃない。穏便に抜け出すための布石だ。


「ソージくんはしょうがないですね」

「ええ、仕方なく付き合ってあげるわ」


 二人と次々に口づけをして服の中に手を入れる。

 せっかく、こういう服を着てもらっているんだ。

 こういう服ならではの楽しみ方をしよう。


 出発前の時間としてこれ以上の癒しはないだろう。

 今日は疲れただけじゃなく、悲しいこともあった。

 少しでも二人のぬくもりを感じていたい。

 

いつも応援ありがとうございます。面白いと思っていただければ画面下部の評価をいただけると嬉しいです

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