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どうも。先日助けていただいたダークドラゴンです  作者: 紅井止々(あかい とまと)


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94話 道化の笑顔

 その男は突然現れた。

 なんの気配もなく。なんの前触れもなく。

 突然その場所に現れたのだ。


「どうも、王子様。ご無沙汰しておりますねぇ」


 ご無沙汰と言われても、こんな男見たことも……


「あぁっ! あの人は!?」


 が、ルゥシールは心当たりがあるらしく、軽薄そうな男を指さし、大きな声を上げた。


「知り合いか?」

「ご主人さんも会っていますよ。ほら、オルミクル村でこの髪飾りを売っていた露天商の方です!」


 そう言って、ルゥシールは自身の髪を結える花飾りのついた髪留めを指さす。


「あっ!? あの時のムカつく店員か!?」

「酷いなぁ、ムカつくだなんて。まぁ、ルゥシールさんはこんなものつけなくても可愛いんでしょうけども」

「やかましい! さっさとそれを忘れろ!」


 えぇい!

 余計なことを思い出させやがって!

 顔が熱いじゃねぇか!


 そんなことよりも!


「お前が黒幕だったのか?」

「黒幕? はて、なんのことでしょうねぇ?」


 黒いゴーレムの上で、男はニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべる。

 道化師のように、不気味な笑顔だ。


「とぼけるな! そのゴーレムを俺たちにけしかけただろうが!」

「嫌だなぁ。勘違いですよ。私はただ、ゴーレムを使いに出しただけで」

「使いだと?」

「えぇ。王子様とちょっとお話をしたくてですねぇ、ご足労願いたかっただけなんです」

「馬車を思いっきり殴ってただろうが! 突き上げるように!」

「ノックですよぉ、ノ・ッ・ク☆」


 ムッカァ~……ッ!

 どうしてくれようか、このお調子者!?


「何事ですかぃ、姉さん!?」

「ご無事ですかお姉さま!?」

「姉たま! ぬぁっ!? こ、こいつは!?」


 駆けつけた四天王たちは、再出現した黒いゴーレムを目にして身構える。


「あららぁ。気持ちの悪い男連中が出てきちゃいましたねぇ……なるべく関わり合いになりたくなかったんですが……」


 その気持ちは分かるぞ。


「誰が気持ち悪いというのか!? ねぇ、姉たま?」


 お前が筆頭だ、髭オヤジ!


 そんなわけで、俺たちと四天王で黒いゴーレムを挟み込むような格好になっている。

 中心に黒いゴーレムに乗った軽薄な男がいる。


「また……消すっ!」


 ザワリと、シルヴァネールの髪が波打つ。

 が、それをルゥシールが制した。


「力を使っちゃダメですよ、シルヴァ」


 力を使う度に、シルヴァネールの身体は徐々に消失していく。

 無駄に使わせるわけにはいかない。


「まぁ、こいつ一体くらいなら、俺だけで何とかなるさ」


 俺は腰のルスイスパーダを抜き、構える。

 刀身に魔力が集まってきている。ちょっとした魔法剣なら使えそうだ。


「もぅ~、話し合いに来たと言っているでしょう? 短気だなぁ、乱暴だなぁ、野蛮だなぁ」


 軽薄な男は黒いゴーレムの上でくねくねと気持ち悪く身をよじる。

 ……斬るぞ?


「まぁ、戦いになっても負けることはないですけどね」


 急に凄味を増した男の声に、緊張が走る。

 黒いゴーレムの足元。河原の石が振動を始めカチカチと音を鳴らす。

 次第に濃密な魔力が集まり、地面が隆起し始める。ゴーレムが出現する兆候だ。

 それも、一体や二体じゃない。河原中の土がデコボコと隆起し始めた。


 なので、俺はルスイスパーダを地面に突き立て、ありったけの魔力を解き放った。


「させねぇっての」


 河原の土が凍り、徐々に分厚い氷が辺りを埋め尽くしていく。

 土でなければゴーレムは出現出来ないってのは、アルジージャでの戦いで立証済みだ。

 鉄や鉱石からなら出て来られるかもしれんが、氷は無理だろう?


「あぁ、確か前にそれで負けてるんだよねぇ」


 軽薄な男が額に手を当て、大袈裟にのけぞる。


「でも、同じ手が何度も通用すると思う?」


 男が指を鳴らすと、氷の下のゴーレムどもが一斉に分厚い氷を殴り始めた。

 通過出来ないのなら壊してしまおうということらしい。


 そして、ついには分厚い氷に巨大な亀裂が走り、一体のゴーレムがその姿を現した。

 そして……姿を現すと同時に砂粒へと変わり、風に溶けるように消失した。


「なんだってぇ!?」


 両手を広げ、カエルのような格好をして驚く男に、面倒だが説明をしてやる。


「実はこの氷の下はな……」

「あっ! 湯気が出ています!」

「……なるほど。氷の下の土を高温にしてあるのね」

「おぉ、四天王がやっていた『熱した後急激に冷やす』というヤツだな」

「でも、熱い土と冷たい氷が接していれば、氷が溶けちゃうんじゃないですか?」

「……接地面に魔力を遮断する結界が張られているのよ。自分の肉体に炎や氷を纏う時に使われる技術の応用ね」

「器用なことをしてのけるなぁ、主は」


 ……うん。全部言われた。


「つまりは、我らのパクりか」

「まぁ、華麗な僕の技に憧れるのは無理もないけどね!」

「最後に崩壊した礫を砂に変換したのは俺の魔法の模倣だな」

「風で吹き飛ばすところなんてぇ、まんまコピペ過ぎて指摘する気も起きないよねぇ」

「やかましいぞ四天王!」


 お前らが一人一つずつしか使えない魔法の複合技だぞ!?

 凄いだろうが!


「改良は誰にでも出来る。オリジナルを生み出すことこそが難しいのだ」

「テメ、グレゴール。お前んとこの姉たまも模倣でレベルアップしたんだろうが」

「姉たまはいいのっ! 可愛いからっ!」

「つくづく気持ち悪いな、この髭オヤジ!」


 乳揉んで魔力を吸い尽くしてやろうか!? ………………なにそれ、キモい!?


 そんなことをギャーギャーと言い合っていると、黒いゴーレムの上の男がガシガシと両手で頭を掻き奇声を上げた。


「あぁーもうっ! これだから王子様と戦うのは嫌なんだよなぁ!? こっちが苦労して生み出して折角準備したものを簡単に壊しちゃうんだから!」


 なんだよ、人を空気の読めない悪ガキみたいに。


「だいたい君ね! 先代の遺跡でもトラップをほとんど無視したでしょう!? どれだけ難しいか知ってる、あの規模のトラップをあそこまで緻密に人の感情を逆撫でし続けるように設置し続けるの!? 芸術だよ、もはや!?」

「なんの話をしてるんだ?」

「古の遺跡だよ! あと、四つくらい遺跡飛ばしたろ!? あぁ、そうだ! 古の遺跡の前に太陽と三日月の神殿も無視したよね!? 有り得ないんですけどぉ!?」

「だからっ、なんだよ、なんなんだよ!? なんでお前がそんなに怒ってんだよ!?」

「先代が折角作ったものを君があっさり飛ばすからだろう!?」

「だって、めんどくせぇんだもんよ」

「メンドクサイ!? ちょっとみなさん、聞きました!? この人、今、メンドクサイと、そう言ったんですよ!? 有り得ますか!? 歴史上もっとも尊い人物マウリーリオが生み出した芸術的な遺跡や神殿を、メンドクサイって! 信じられないわぁ……最近の若い人理解出来ないわぁ……」

「お前とさほど年齢変わらんと思うが?」


 大袈裟に表情を変化させる軽薄そうな男は、見た感じでは俺より少し年上くらいではなかろうか?

 というか、『先代』ってことは、こいつがオイヴィの言っていたヤツってわけか。


「お前が、マウリーリオの意志を継ぐ者ってヤツだな」

「ん? あぁ、そうそう。マウリーリオの意志と技術を受け継ぐ正統後継者だよ」


 やはりか。

 これまでは予測でしかなかったが、ゴーレムを生み出したのはマウリーリオの技術で間違いなかったってわけだ。


「名前は?」

「人に名前を聞くときは……」

「知ってんだろ」

「ん~、まぁ、そうだけどね」


 軽薄な男はどこまでも飄々としている。

 こほんとわざとらしい咳払いをして見せ、男は恭しく自らの名を口にした。


「私は、ポリメニス・ブレンドレル」

「……ブレンドレル?」

「えぇ、そうです。君の遠~い親戚ですよ、マーヴィン君」


 おどけた風に、俺へウィンクを飛ばしてくる。

 叩き落としてやった。


「酷いなぁ。そこは君もウィンクを返してきてくれなきゃあ」

「するか、気持ち悪い!」


 なんで男同士でウィンクを飛ばし合うんだ。なんの儀式だ!? 呪われるわ。


「まぁ、実のところゴーレムはまだまだ出せるんですが……まぁ、やめておきましょう。一時的に君たちを追い詰めても、最終的にはこちらが負けちゃう気がしますし……」


 肩をすくめてみせるポリメニス。

 それは好都合だな。ルスイスパーダの魔力もなくなり、この次魔力を補充するには四天王の乳を順に揉んでいくしかない状況だからな。

 メイベルはともかく、他三人は御免蒙りたいところだ。

 あぁ、でもメイベルは………………


「メイベル、とりあえず揉ませてくれないか?」

「あはぁ!? 意味分かんないしぃ!」

「君には、真面目に会話する気がないのかな?」


 目の前に突如現れたブレンドレルを名乗る謎の男と、奇跡のロリ巨乳。どちらに意識が行くかなど論ずる必要もないだろう。帰れ、ただ謎だけの男!


「ロリ巨乳は………………正義だぞ?」

「よく分からないのだが……そのロリ巨乳が物凄くドン引きした顔で君のことを睨んでいるよ?」

「気にするな、いつものことだ」

「いつもこうなら是正しなよ……」


 謎の男風情に諭されてしまった。

 生意気な。


「ブレンドレルを名乗るってことは…………なるほど、お前は二代目国王サヴァスの兄、エイルマー・ブレンドレルの家系の者ってことか?」

「さすがだね。王国の人間でその名を知っているのはそう多くはないはずだよ」

「すっげぇ厳重に隠されていたからな」


 事実、王宮図書館の奥深くにひっそりと隠されていた隠し部屋の奥深くにそれらのことを記した書物が厳重に保管されていた。

 王国内でもその話は禁忌とされ……いや、そうされていたのは数百年前までで、その時間の間に歴史は人々に忘れ去られ、もはやエイルマーの名を知る者はいなくなっていた。


「でもよ、必死になって隠されてるものって意地でも見たくなるだろ、パンツとか」

「……ぉ、おぉう、最後の一言がなければ素直に共感出来たんだけどねぇ」


 熱く語る俺に、ポリメニスは微かに表情をこわばらせる。

 初めて軽薄な表情が剥がれた瞬間かもしれんな。さっき絶叫していた時ですらどこか嘘っぽかったし。


「あ、あのご主人さん……そ、そのエイルマーという人は……?」


 ルゥシールが声をかけてくる。

 見ると、寒そうにシルヴァネールと身を寄せ合っていた。


「あ、悪い。もういいんだよな」


 ポリメニスに戦闘の意志が無くなったようなので、俺は地面に突き立てたスルイスパーダを引き抜いた。

 瞬間、地表を覆う氷は地表の熱せられた土によって溶かされ、同時に地面も適温に冷やされる。


「お前も、そのゴーレムをしまったらどうだ?」

「ヤだよ、怖いもん」


 何が怖いもんだ。そんなデカいもんに見下ろされて、こっちの方が怖いわ。


「……それで、エイルマーという歴史から抹消された男と、彼……ポリメニスは何者なの?」


 ぬかるむ足元をやや気にしながら、フランカが俺に近付いてくる。

 テオドラも、話を聞くためか身を寄せてくる。


「あ、ズルいですよ」

「ルゥ……私たちもつめよう」


 そして、ルゥシールとシルヴァネールがぐりぐりと体当たりをしてくる。

 なんなんだよ? 近ぇよ、お前ら!?

 気が付けば、俺は四人の女子に取り囲まれるようにぎゅうぎゅうと体を押しつけられていた。

 話聞く距離じゃないだろ、これ!?


「フランカさんが最初に抜け駆けしたのがいけないんだと思います」

「……違う。私は普通に話を聞きたかっただけ。テオドラが最初に動いた」

「ワ、ワタシだけちょっと遠かったのだ! だから近くに行こうとしたらルゥシールが」

「……ではやはりルゥシールに責任は帰結する」

「そ、そんなはずありませんよ!? ねぇ、シルヴァ?」

「ルゥ……早とちりさん」

「シルヴァ!? 裏切る気ですか!?」

「何をごちゃごちゃ言ってるんだ、アホのルゥシールと愉快な仲間たち!」

「ちょっと待ってくださいよ、ご主人さん!? なんでわたしだけアホ扱いなんですか!?」

「いいから全員三歩ずつ後ろに下がれ!」


 俺の言葉に、全員がちょろっとだけ後退する。

 うわ、みんな歩幅狭っ!? 小股なんだねぇ……ってバカ! もっと下がれよ、狭いだろうが。


「なぁ~んで、あんなのがモテるのかなぁ?」

「うむ、それに関してはポリメニス殿に同意だな」

「まったくだ、僕の方が断然美しいのにね」

「いや、王子は顔で勝負してねぇから」

「でもジェイルもさぁ、言うほどではないよぉ?」

「はぁ!? よく見てみなよ!? 美しいだろ!? 芸術だろ!?」

「も~ぅ! 暑苦しいよぉ~!」

「ジェイル。お前も髭を生やしてみてはどうだ? ダンディになれるぞ?」

「いや、ジェイルに髭はないだろ?」

「ちょっと、私の周りでごちゃごちゃ言わないでくれるかな四天王の君たち!?」


 ポリメニスの周りで四天王がくだらないことを言い合っているらしい。

 ま、興味がないから放置するけども。

 でもバプティスト。お前の発言だけはしっかり聞こえてたからな? 誰が『顔で勝負してない』だ? めっちゃ勝負してますけど!? ルックスだけでここまで来たような部分ありますけど!?


「……四天王、黙りなさい」

「はい、姉さん!」

「分かったよぉ、お姉ちゃん!」

「かしこまりました、お姉さま!」

「お口チャックだね、姉たま!」

「髭、キモイ」

「黙れ王子!」

「……グレゴール、あなたも黙って」

「はい、姉たま!」

「う~ん…………こんなユニークな連中と交渉するの、やめようかなぁ……」


 黒いゴーレムの上でポリメニスが頭を抱えてうずくまる。

 なんだよ、勝手にダメージ受けやがって。失礼なヤツだ。


「交渉ってなんだよ?」

「こちらの条件を呑んでくれれば、君たちの目的のために力を貸そうって、そういう分かりやすい交渉だよ」

「俺たちの目的って……どれの話だ?」

「次元の穴の結界を壊すんだろ?」


 まったく。こいつは俺たちのことをよく知っていやがる。

 まるで、ずっと盗み聞きでもしていたみたいだ。

 そういう魔法があるんだよな、遠く離れた場所の会話を盗み聞きするいやらしい魔法が。

 何かされてたんじゃないだろうな?


「次元の穴は空の上にあるんだよ。当然足場も何もない。どうやってそこまで行くつもり?」

「なんだ、そんなことか……」


 ポリメニスの問いに最初に反応したのはテオドラだった。

 自信たっぷりなところを見るに、何か手段を確保しているのだろう。

 そもそも、こいつは一人で結界を壊しに行くつもりだったわけだし、何か宛てがあるのだろう。

 まぁ、正直俺は、今指摘されるまですっかり失念していたけどな。


「ふん! ウチのテオドラにはちゃんと策があるんだよ。なぁ?」

「無論だ」

「よし、じゃあ言ってやれ!」

「跳ぶ!」

「無理だよ!?」

「めっちゃ、跳ぶ!」

「状況が好転してない!」

「肩車して跳べば……」

「……テオドラ。もういいから、黙って」

「うむ。了解した」

「黙っちゃうのかよ!? 策なしかよ!?」

「ご主人さんも、一度落ち着いてください。ね?」


 テオドラめ……まるで無策じゃねぇか! 

 よくそれで、単身次元の結界に挑もうとしたな!?


「え~っと、じゃあそろそろ話に戻ってもいいかな?」


 達観したような表情でポリメニスが声を投げてくる。

 なんだよ、その「あぁ、もうこの人たちダメだ」みたいな目は!?


「まぁ、ルゥシールのお嬢ちゃんがドラゴンになって飛んでいけば、次元の穴にたどり着くことは簡単だろうね。けど、あまりお勧めはしないなぁ」

「なぜですか?」


 ポリメニスの言葉にルゥシールが律儀に反応を示す。

 ポリメニスは「よし、食いついた」みたいな表情を見せる。……こいつ、やっぱり商人だよなぁ。人を話に引き摺り込むのがうまい。


「次元の穴をふさぐ結界は、魔法陣なんだよ? 知ってる?」

「はい。ご主人さんに教えてもらいました」

「じゃあ、魔法がその魔法陣に依存していることは?」

「その魔法陣を介して、魔界から魔力を借りているんですよね?」

「そうそう。よく知ってるね」

「いやぁ、それほどでもぉ~」


 褒められて調子に乗るんじゃないよ。

 ルゥシールはそういうところ、ちょっとアホの子丸出しなんだよな。


「じゃあ、魔法に依存して、魔法しか取り得のない大国があったとして、君たちが魔法陣を破壊しようと次元の穴に向かったら、どんな反応を示すだろうね?」

「王様が『わぁ、困ったぁ』って言いますね!」

「……言う、だけ、かな?」

「あと、そわそわしますね、きっと!」

「………………」


 ポリメニスが無言でこちらをじぃ~っと見つめてくる。

 やめろ。俺に助けを求めるな。

 そいつはアホのルゥシールの二つ名をほしいままにしているヤツなんだよ。


「……ルゥシール。魔法陣がなくなると魔法が使えなくなるから、魔法に依存している大国は死に物狂いで私たちを阻止しようと攻撃を仕掛けてくると予想されるわ。大国の総攻撃というのは、個人でどうこう出来るレベルではないのよ」

「なるほど。では、そんな国があると、ちょっと困ったことになりますね」

「……魔法王国ブレンドレルという国を知っている?」

「はい! ご主人さんの故郷で、ちょっと嫌な王族がはびこっている国です。…………あっ!?」


 やっと気付いたか!?


「そう。君たちが魔法陣へ向かえば、ブレンドレルは全軍を上げて君たちを排除しにかかるだろう」

「そんなことに……」


 ルゥシールが驚愕の表情を見せる。

 が、以前こういう話をした気がするんだがなぁ……テオドラと初めて会った時に。


「空に浮かぶ君たちは恰好の的だ。無事にたどり着くことも難しいだろうね」

「で、お前ならそれを何とか出来るってのか?」

「そういうことっ☆」


 ポリメニスがまたウィンクを飛ばしてくる。

 むろん、叩き落としてやった。

 が、今度はそれを気にせずポリメニスは話を続ける。


「こちらには、空を飛ぶゴーレムの用意がある」

「マジでか!?」


 空を飛ぶ乗り物なんて、どこの国もまだ開発出来ていない空想上のものだぞ!?

 学者や魔導士が議論を重ね、「どうやら、上手くやれば出来なくもないかもしれない」くらいのところまでは話が進んでいると聞くが……こいつは実際に生み出したのか。まぁ、マウリーリオの技術を継承しているのなら、信じられないこともないが……


「どうかな?」


 空を飛ぶゴーレムか……

 あの強度があれば、地上からの攻撃にも耐えきれるかもしれない。それに、こいつのゴーレムはとにかく数が多い。かく乱も可能か……ん?


「お前、さっきのゴーレム襲撃は、ゴーレムの性能を俺たちに見せつけるためのデモンストレーションだったろ?」

「んふふ……さぁ、どうでしょうねぇ?」


 クソ商人が……

 まんまと乗せられた。

 身をもってこいつのゴーレムの手強さを知った俺たちは、こいつの協力に魅力を感じてしまっている。他の連中もそうだろう。

 こいつのゴーレムがいれば安全に次元の穴にたどり着ける。

 見事にそう確信させられているってわけだ。


「条件にもよるな」

「なぁに、大したことじゃないよ。君たちの冒険の途中にちょろ~っと片手間で済ませられるような、些細なお願いを聞いて欲しいだけさ」


 もう胡散臭い。

 けど、聞かないわけにはいかないか。


「言ってみろ」

「それじゃあ、せん越ながら……」


 こほんと、ワザとらしく咳払いをして、ポリメニスは言い放った。



「王位を奪い返してください。我々から掠め取った偽りの王族どもから、ね」



 ポリメニスの顔には笑みが浮かんでいた。

 本心を覆い隠す、作り物の笑みが。


 綺麗に整い過ぎた完璧な笑みの奥には、押し込められた憎しみが透けて見えるようだった。








ご来訪ありがとうございます。



というわけで、

『3話 儲けたお金でお買い物』

『59話 アルジージャ事件 鎮圧』

に、ちろっと出てきた行商人の軽薄そうな店員、

ポリメニス再登場です!


実は、あの人、

マウリーリオの継承者だったんです!!


……正直、40話くらいまで古の遺跡攻略に費やした時は、

「あ、そこまで書いてる余裕ないわ」と再登場を取りやめようかと思いましたが……


出せてよかった!


なんとか、最初のプロット通りに書き進められそうです。



ちなみに、次元の結界を壊すとブレンドレルに狙われる云々は、

『55話 天才鍛冶師の行方』で触れてます。

念のため。



さて、

物を書く時に最も気を使っているのが、

『セリフがそのキャラの言葉になっているか』ということなのですが、

四天王がごちゃごちゃしゃべっているところとかちゃんと伝わっているでしょうか?


長くしゃべると各々の特徴が出て来るんですが、

「なに!?」と、「お前黙れよ!」的な、短い口調やツッコミ口調って混同しがちなんですよね。

今回のポリメニス+四天王の会話だけのシーンとか、不安になりますね……

ちゃんと誰が誰か伝わってますように…………



あと、

微妙にテオドラとご主人さんがかぶる時が……


今回だと、

「なんだ、そんなことか……」とか「無論だ」とか、

テオドラのセリフなんですが、ご主人さんもこういう言い回しするんですよね。

理想は、『地の文一切なしでセリフだけで一話書いても誰が誰だか分かる』ことなんですが、

(あくまでセリフに関しての理想です)

まだまだ精進が必要なようです。


いっそのこと、テオドラの語尾に「ござる」とかつけてやろうか……


いや、でも、

テオドラらしくない語尾を「変じゃないかなぁ?」って恥ずかしそうに言ってる方が好みだなぁ……


それなら「にゃん」とか……

「だもん」とか、

「なんだからねっ!」とか、

「だっちゃ」とか、

いっそのこと「とまと」とか。



「次元の結界を斬るとまと!」





……さっぱり意味が分からないっ!?





セリフにその人となりが出るよう、一層の研鑽を積む所存です。





今後ともよろしくお願いいたします。


とまと

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